破壊者はその世界で何を成す   作:ベリアロク

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お待たせしました。続きをお楽しみください。


第15話 光と風と切り札

「まずい……緑谷っ!」

 

「おおっと、俺を無視するなんて酷いじゃねぇか。アンタの相手は俺だぜ? ディケイド」

 

「チッ……」

 

 

脳無の拳が緑谷へと迫るもそこへ誰も駆け付けることが出来ない。否、皆その場から動くことが出来なかった。

生徒はちりじりに、頼みの綱だった教師二人は既に倒れ、この場にいる者すべてが悪意と恐怖の暗闇に覆われていく。けれど光あるところに闇があり、闇あるところに光もまた在る。闇が深ければ深いほど眩いほど輝くのだ。

そんな暗闇を晴らす”光”が扉を弾き飛ばす轟音とともに現れた。

 

 

「もう大丈夫……私が来た!!」

 

 

「オールマイト……!」

 

「オールマイトが来たァ!!」

 

 

彼の放つ”光”はUSJの隅から隅まで行き届く。それはオールマイトの姿を、声を耳にしていなくとも生徒らの心のどこかに希望を、そして敵の心に絶望を与える。彼の姿動向ではない、彼の存在そのものが人々に希望を与える――平和の象徴なのである。生徒らがオールマイトの登場に顔をほころばせる中、敵が一人―――死柄木弔もまた笑みを。笑顔と呼ぶには酷く歪んだ、けれど心の底から喜ぶ表情でオールマイトを見ていた。

 

 

「来たな平和の象徴! 会いたかったぜ……こいつを殺したらお前を――――」

 

 

気味の悪い笑い声を漏らす死柄木の五指が相澤の額を覆い、相澤の顔を己が個性を用い砕こうとする。その一瞬、ほんの瞬きをするほどの一瞬に黄色い閃光が走ったかと思えば死柄木は彼の周りにいたゴロツキ共々数メートル先まで吹き飛ばされ、つい先ほどまで地に這いつくばっていた相澤の身体はまるで瞬間移動したかの如くそこにいたオールマイトに抱えられていた。

 

 

「――――カハッ!?」

 

「死柄木弔!」

 

「来るのが遅れた。すまない……相澤君」

 

 

「敵を一瞬で――――「緑谷ちゃん!」」

 

 

憧れの存在の瞬神の如き動きに緑谷は目を奪わるも蛙吹の叫びでハッとし、視線を目の前の怪物へと戻すと血走ったおどろおどろしい目がこちらを眺めていた。次の瞬間オールマイトの登場に一旦止められた脳無の拳は再度緑谷へと振り下ろされた。

 

 

(速いッ……けど身体は動く! オールマイトみたいに素早く動くんだ!)

 

 

凄まじいスピードの一撃、けれどオールマイトの登場により恐怖が薄れ、身体に活力が戻った緑谷は己の指を渾身の力を込め弾く。一撃で湖に穴を開けたその攻撃の威力は地上においても健在で、地へと放ったその一撃は凄まじい風圧を伴い緑谷の身体を宙に浮かせ脳無の攻撃を避け切った。

 

 

「いッ……たい!」

 

「避けろーっ!! 緑谷!!」

 

 

感覚は失われ、激しい痛みに顔をしかめるも脳無は緑谷の一撃による風圧にひるんだ様子もなく第2撃を構えていた。

 

 

「さっきと同じように……ッつう!?」

 

 

脳無の攻撃を避けようと緑谷は再びデコピンの構えを取るも指の激痛に思わず膝をつく。緑谷の指は既に二本個性で使用している。その力に耐えきれない緑谷の指は肉体としての形は保っていても中では血管はちぎれ、骨は粉々に粉砕していた。

 

 

「逃げろ緑谷ーッ!」

 

「緑谷ちゃん!」

 

 

峰田は叫び、蛙吹は自らの舌を伸ばし緑谷を救おうとする。けれどその舌が伸びるスピード以上で繰り出される脳無の拳が痛みに顔を歪める緑谷に迫る。けれど瞬きのうちに迫りきていた黒い拳は消え去り、英雄の大きな背中が緑谷の目の前にはあった。

 

 

「……えっ?」

 

「オール……マイト!」

 

「来る途中で飯田少年とすれ違って事のあらましは聞いたよ。……皆入口へ! 相澤君を頼んだよ。意識が無い、早く!」

 

 

オールマイトはギュッと唇を噛みしめる。

恐怖に耐えながら必死に起きたことを説明する飯田の様子、そして背中を大きく損傷した13号、身体中が脆い石のようにひび割れ血を流す相澤の姿と怯え切った生徒らの惨状は子どもたちがどれだけ恐怖し、後輩らが自分の身を犠牲にして戦ったのかオールマイトは悔しいほど読み取っており、同時に今にも溢れんばかりの激しい怒りを心の中でも炎々と燃やしていた。

 

 

 

「貴様ら、ここから逃げれると思うなよ」

 

 

オールマイトの鬼神の如き覇気に敵はもちろん、遠く離れた緑谷らも思わず後ずさりする。敵もヒーローの卵もこの時に限っては同じ思いを持っていたことだろう。今目の前にいる男こそ紛れもない”ヒーロー”なのだと。

 

 

「これが平和の象徴、現役ナンバー1ヒーロー。流石の気迫ですね」

 

「ホントだよ。全く……虫唾が走る。助けるついでに殴られて、その上見えないなんて余計に腹が立つ。国家公認の暴力だ」

 

「死柄木弔、それ以上は……」

 

死柄木は納得がいかないことに癇癪を起す子どものように言葉を荒げ首をかきむしる。肌は荒れ、血が出てもおかしくないほどかきむしるその手はフラストレーションの蓄積に反映するかのように加速していく。その様を横から眺める黒霧もこれ以上は余計な負傷につながると懸念し止めに入ろうとするもその時、死柄木の首をかく手が電池切れを起こしたラジコンのようにピタリと動きを止めた。

 

 

「――――でも……思ってたほどじゃない。本当だったんだ、弱ってるって話

 

「……っ」

 

 

死柄木の言葉に緑谷は顔を青くする。それは彼が明かせぬ秘密を抱えていたから……というだけではない。死柄木の顔に張り付いた手の隙間から見せるこれほどまでかと口角を上げた不気味な笑みが悪意以外の何物でもないおぞましいものだったからでもあった。

 

 

 

「このゲームのクリアも近そうだ……なぁ黒霧」

 

「そうですね死柄木弔。ですが最後まで気を抜かないように」

 

「わかってる。お前にオールマイトの相手は任せた、脳無。俺は――――」

 

 

死柄木は血走った眼を目の前に立つオールマイトから背後で相澤を抱え出口へと向かい歩き出した緑谷らに向けた。

 

 

「峰田君はそっちをお願い。僕は左肩を……」

 

「――――あのガキたちを殺す」

 

 

死柄木がターゲット(緑谷たち)に向け飛び出し、オールマイトが攻撃させまいと死柄木をねじ伏せようとする。そんなオールマイトを同じレベルのスピードで脳無が殴り掛かる。睨み合いも終わり、敵とヒーローの決戦が始まる……そんな時、突如隕石かのように何かが遠方から飛来し周囲砂煙を巻いた。

 

 

「ム!? 新手の敵か!?」

 

「敵じゃないぜオールマイト! 大丈夫か門矢!」

 

「……門矢少年!? 黄色と紫の奇抜な姿をしているが……きっと彼なのだろう。大丈夫か?」

 

「いてて……遅かったじゃないかオールマイト。緑谷たちも無事だな」

 

「う、うん。さっきはありがとう!」

 

「その様子なら門矢少年も大丈夫のよう……って待ちたまえ!」

 

 

100メートルほど先から飛んできたにも関わらずディケイドは何事もなかったかのように立ち上がる。それどころか敵に向かって歩き出す姿にオールマイトは肩を掴み強く引き留めた。

 

 

「何だよオールマイト?」

 

「何だじゃない! 他のヒーローもあと少しで到着するんだ。門矢少年もここは私に任せて緑谷少年たちと速く!」

 

 

オールマイトはディケイドに対して避難を促すもディケイドは退く様子を一切見せず、カードを一枚取り出すとニンニンコミックの姿から元来の姿へと姿を変えた。

 

 

「オールマイト、いくらアンタでも2体相手は無理だろ。アイツは俺が相手する」

 

「アイツって――――」

 

 

目の前にいる脳無に対し注意を払いつつオールマイトが問おうとすると激しく地を削る音と振動をオールマイトは感じ取り言葉を止める。その音と振動は次第に大きくなり、ディケイドが飛ばされてきた方向に突如砂煙が立ったかと思えばそこにはエネルギー体とも言えようか、水色一色の大きなな蛇のような何かがこちらへ津波の如く襲い掛かってきた。

 

 

「ったく、面倒くさい……な!」

 

 

ディケイドは携えた剣を掲げ地を蹴り巨大な蛇に向け飛び上がると、剣を大きく振りかざす。剣の放った一撃は巨大な蛇を両断すると蛇は地に倒れる前に空へと無散していった。

 

 

「酷ぇじゃないかディケイド。俺の蛇を豆腐みたいに簡単に切っちゃってさぁ」

 

「ケホッケホッ……おいエボルト、こっちでやんな。これから平和の象徴を潰すってのにお前とあのガキは邪魔だ」

 

「あーあー悪かったよ死柄木。今の俺の力じゃ戦いの主導権を握るのは難しくてな。状態が万全ならいけるんだけどなぁ……力が万全ならなぁ……」

 

「こっち見て言うな。文句は鳴滝たちに言え、俺は関係無い」

 

「それもそうか……なら力を取り戻すためにも早いとこカタをつけるとするかね」

 

 

 

「オールマイト! あいつ、あの脳丸出しの奴はやばいです! 凄まじい速さがあったし、相澤先生もあいつにやられて……」

 

「そしてあの蛇を出した敵も同等かそれ以上……そういうことだね門矢少年」

 

「そういうことだ。教師やヒーローの立場とか色々あるんだろうがそんなことは言ってられるほど余裕はないってことだ」

 

 

ディケイドの言葉にオールマイトは自らの背に居るものたちを見る。相澤は意識を失うほどの怪我を負い、緑谷も負傷している。USJ内にまだどれだけの敵がいるかわからない。そして何より目の前にいる2体の怪物は証言がなくともそこらの敵とは一線を画すほどの脅威を秘めた存在であることをオールマイトは直感で感じ取っていた。視線を目の前の敵に戻し、軽く唸り声をあげるとディケイドの横に並び立った。

 

 

「仕方ない……ここは力を貸して貰うぞ、門矢少年!」

 

「ああ。そっちは任せたぜ平和の象徴!」

 

「ただやばいと少しでも感じたならすぐに戦闘を止める事、いいね? どちらもプロが対処すべきレベルだ」

 

「はいはい、わかってるよ!」

 

 

片や世界の平和の象徴、片やクラストップの信頼すべき実力者。その二人が肩を並べ立つ姿は歴戦の雰囲気を感じさせるとともに絶望の欠片すらも感じさせない希望に満ち溢れさせてくれる光景だった。

 

 

「おおっと来るみたいだ。悪いがしばらくうるさくするぞ死柄木」

 

「チッ……脳無、平和の象徴を潰せ」

 

 

「行くぞ!」

 

「ああ!」

 

 

死柄木の言葉に脳無が応じるとほぼ同時にそこにいる怪物とも言える力を持った4人が一斉に駆け出す。目指すはヒーロー(ライダー)、目指すはヴィラン(エボルト)。各々が相手との拳と剣がぶつかり合う。その衝撃は大地を震わせ屋内であるにもかかわらず風を生み出すほどのものだった。

 

 

「凄い……っ! 目を開けてるのが精一杯だ……!」

 

「ケロ……相澤先生を連れてちょっとずつ歩くのでも結構大変ね。振動だけでこの衝撃だなんて……」

 

「レベルが違いすぎるぜ、こんなのよお!」

 

 

目の前で繰り広げられる戦いに緑谷らは唖然とする。この世界の柱にその男と同等のスペックを持つ巨人、幾つもの星々・生命を滅ぼしてきた宇宙人に世界の破壊者。その4人が繰り広げる戦いは僅かにした経験を積んでいない彼らからすれば何層にも次元の違う戦いだった。

 

 

「マジで……効いてないな!」

 

「そいつは平和の象徴を殺すために作られた怪物だ。お前に勝ち目はない」

 

「そう……かい!」

 

DETOROIT SMASH!!

 

 

オールマイトは渾身の一撃を脳無の腹部に御見舞いする。突風を伴ったその一撃は並みの敵なら一発KO。けれど脳無は依然変わりなく剥き出しの歯をギラギラとさせてオールマイトのことを見下ろしていた。

 

 

「無駄だよ。ショック吸収に超回復、おまけにオールマイトレベルの超パワーだ。正面から殴り勝てるかなぁ?」

 

「わざわざ個性の説明どうも! SHITだな全く……」

 

 

「あっちは苦戦してるみたいだなぁディケイド。助けにいかなくていいのか?」

 

「そんなに軟じゃないさナンバー1ヒーローは。それに……お前をほっといた方がやばいことになるって俺の第6感がささやいてるんでなァ!」

 

ATTACK RIDE…BLAST

 

 

ディケイドは剣でエボルトの剣を持つ腕を大きく薙ぎ払うと瞬時に武器を変形させ、銃口を胸部に突きつける。銃口ごと熱して発射される光弾は火花が散るような音を鳴らしながらエボルトごと大きく吹き飛ばした。吹き飛ばされたエボルトは撃たれた胸を抑えながらも立ち上がった。

 

 

「ぐ……っ良い感してるよアンタ。その警戒心が戦兎たちにもあったら俺も騙して悪気を感じるようなこともなかったんだろうが……生憎今の俺にはその気持ちが感じ取れなくてな。こういうのって怒るべきなのかすらわからないんだ」

 

「知るかよ!」

 

 

独り言を長々とこぼすエボルトに対しディケイドは追い打ちをかけるように切りかかる。けれどエボルトの風のような跳躍で剣は空を切った。

 

 

「ま、破壊者に感情なんて聞いてもわからなそうだな。それよりそのピンクの奴じゃなくてビルドはもう出してくれないのか? 折角昔を懐かしんでたのになぁ」

 

「懐かしむ感情すらあるのか俺には疑問だけどな。ともかく、悪いがあの姿は慣れてなくてな!」

 

 

空を切った剣をすぐさま収納すると一気に間合いを詰めたディケイドの蹴りがエボルトの腹部に叩き込まれ、エボルトは後ろに大きく後退する。その隙にディケイドは新たなカードを一枚取り出した。

 

 

「それに……懐かしむだけじゃ面白味がないだろ? 似たような奴が他にもあるからな……見せてやるよ」

 

 

KAMEN RIDE…DOUBLE

 

 

 

電子音声とともにディケイドの周囲に紫電が走り、紫電とともに現れたモノクロの写真の切れ端のようなものがディケイドの身体に張り付いていく。紫電を払うように風がディケイドの周りを吹き、色づいたその姿はディケイドではない全く別の存在。V字に分かれた触覚のような角にディケイドよりもスリムになったその身体は半身が緑、もう半身は黒、首には特徴的なマフラーが風にたなびいていた。

 

 

「へぇ……それが別の世界のライダーの姿って奴か。ビルドも似たような姿だったしどこの世界も似たようなもんなのかねぇ。そのライダーの変身する奴も科学者か?」

 

「そうでもないさ。そっちは物理学者こっちは探偵だ」

 

「探偵ぃ?」

 

「そう、街の平和を人々の笑顔を守る探偵だ」

 

 

ディケイドはエボルトに語りながらある姿勢を取る。

余計なポージングは何もなく、右手で帽子のつばを上げるように動かし左人差し指を相手に向けるその姿勢はハーフボイルドに風都を駆けた彼らのお決まりの型だった。

 

 

「――――さぁ、お前の罪を数えろ」

 

 

 




このまま書き続けると1万文字超えそうな勢いだったので今回はここら辺りで。最近多忙につき続きまで少しかかると思いますが是非お待ちいただければと思います。
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