破壊者はその世界で何を成す   作:ベリアロク

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大分空きましたが更新しました。
話が進んでいるかは……わかりません。


第18話 完成/気づけばもう

あれから一週間。相変わらず鉄くずが辺りに散乱する薄暗い部屋の中、発明はテーブルのスタンドがぼんやりとした灯りの下で作業を行っていた。

 

 

「最後にこれ……を……」

 

 

発目は引き出しからピンセットのような器具を取り出すとベルトから抽出したデータであるディスクを掴む。運ぶ先は新たな器である白きドライバー。腕の震えを最小限にとどめ運ばれるディスクは器へと届き、無事完了したことを告げるかのようにドライバーの左右に並ぶ6つのクリスタルが輝きを放った。

 

 

「――――――出来ました!!!」

 

「……ようやくか」

 

 

発目の歓喜の声と同時に鉄くずの山の一つが崩れそこから士が一人姿を現す。

目元にはクマが出来ていることに加えダルそうに立ち上がるその姿からもこの一週間が凄まじいものだったことを物語っていた。

事実、士は発目に朝から晩まで作業に付き合わされこの一週間は雄英高校に箱詰め状態だった。相澤が食事などを用意していてくれなければ保健室直行だったのは間違いない。

 

 

「あ、おはようございます門矢さん! 出来ましたよドライバー! 名付けて……『αディケイドライバー』!」

 

「普通にディケイドライバーで良いだろ……まぁこれで体育祭に出るのは問題無いんだろ?」

 

「ドライバーの方はそれで結構です。あとはこのカードホルダーも渡しておきます」

 

 

 

発目から士はカードホルダー……『ライドブッカー』を受け取る。

こちらは色形ともに何も変わりは無いものの受け取った士には何か違和感のようなものがあった。

 

 

 

「それは門矢さんの持っているホルダーの言わばコピー品です!」

 

「コピー?」

 

「とは言っても機能はそのまま……ではありませんが。そのホルダー内にあるカードを見てみて下さい」

 

 

 

受け取ったライドブッカーに眉をひそめる士に答えるように発目は言う。

言われるがままにライドブッカーを開いてみると本来入っている枚数の半数にも満たないほどにカードの数が減っているのがわかった。

 

 

「こちらも調整対象とのことでしたので手を加えました! ドライバーのスペックや体育祭のバランス調整の問題で枚数に制限を加えてます。搭載枚数は本来のそれの4割程度と思っていいかと!」

 

「4割……結構な枚数縛るんだな。でも、縛るのはそれだけじゃないんだろ?」

 

「ええ! 仕様として搭載されたカードは使用制限を設定していて扱ったカードは不正防止等の為消滅するようになっています。あ、勿論カードもコピー品なのでご安心ください!」

 

「そりゃどうも。そんで原本のデータはやっぱ持っていけないのか?」

 

「ええ。ここから持ち運ぶこと自体は不可能ではありませんが下手に衝撃を与えれば自壊する可能性がありますので……」

 

 

残念ですが……そう言って発目は語る。

何でも取り出したデータは脆いようで、崩壊を防ぐためには厳重補完する必要があるらしい。

見た目はUSBのようなただのカートリッジだが目に見えないだけで仮初の器の中にはデータの塊が一時的に泥団子のように固まっているだけで本来の器から出たそれは少しでも崩れれば飛び散ってしまうとかどうとか。それ故持ち運びも難しいことも重なって設備の整った雄英高校で保管することとなったのだ。

それは士も理解している。ただ一つ気になることがあった。

 

 

「なぁ発目」

 

「何でしょう?」

 

「体育祭の時この部屋含めた雄英の警備はどうなるか聞いているか? 民間の警備程度なら体育祭なんて辞退するんだが」

 

 

実際のところ別に有名ヒーローでも目指してるわけでもない士には体育祭に出場するメリットはそこまでない。ならデータを分離なんてさせず自身が持っているのが一番安心だろう。ただ数日前から世界を分かつ壁である『オーロラカーテン』が呼び出すことが出来なくなったため世界移動が出来ず、この世界での役目もわからない以上今の役職を全うする他士にはなかった。

 

 

「警備の方でしたら体育祭の方に回らなかった雄英とパイプを持つヒーローの方々が行ってくれるらしいです。それにこの間の件が例外中の例外なだけで雄英に攻め込む敵なんてそういませんよ」

 

「例外、ねぇ……」

 

「では私は準備がありますので! 失礼します!」

 

 

金庫の扉を閉め発目は部屋から飛び出し廊下を駆けていく。

部屋に一人残された士は静かに考えこんでいた。鳴滝らの動向も不明なこの状況で例外が起きることは容易に考えられた。

 

 

「例外って言っても続いて起きない……なんて保障はないしな」

 

 

会敵したのは現状鳴滝とエボルトの2人。エボルトは単体で並みの敵以上の脅威、鳴滝も何かに加担し暗躍しているかもしれない。警備に当てられたヒーローだけでは対処は難しいだろう。

それに警備に当たるヒーローも油断しているに違いない。『先のUSJ事件のように普段の状態ならまだしも何人もが警備に当たっているこのタイミングで敵が来るわけがない』……と。だが『警備してるから・雄英高校だから敵は来ない』なんて保証は元からない。奴らならなおさらだった。

 

 

「警備の奴らもどこまで当てに出来るか……一応保険を掛けとくとするかな」

 

 

そう言いながら士は懐からベルトとカードを取り出す。

片手にはダウングレードされベルトを手にした時の状態となったディケイドライバー、もう片方の手にはディケイドのカードの他にカードが2枚握られている。

一つには紅蓮の竜、もう一つにはくすんだ銀の機体の姿が描かれていた。

 

 

 

「ま、当日に出せば良いか。それよりまだ……六時だろ? 授業まで時間あるしもうひと眠り……」

 

 

鉄くずの寝床であろうと気にせず士は横になり眠りに着こうとする。

だがそれを遮るかのように扉は開き、廊下の窓から士の顔にピンポイントで光が差し込んだ。

 

 

「――入るぞ。起きてるか門矢」

 

 

眩しさと眠気から目を半開きにして士が扉の方を見ると立っていたのは先ほど飛び出した発目ではなく相澤だった。

何か手にぶらさげているようで視線を下ろし見てみると片手にはおにぎりが透けて見えるコンビニのレジ袋、もう片方の手には何故か雄英高校指定の体操着とジャージが抱えられていた。

 

 

「……zzzz」

 

 

そう言って差し込む光から目をそらすように体を背けると再び眠りに着こうとする。だが今度は何らかの固形物と衣類をぶつけられたことで眠りへと落ちることを止められた。

 

 

「寝てるなら起きろ。起きてるなら返事をしろ」

 

「……起きてるよ。起きてるけどな、俺は今ようやく解放されたんだ。好きなだけ寝かさせてくれ」

 

「10分ぐらいの仮眠ならいいがな、あんまり寝てる余裕はないぞ」

 

「余裕がない……? 今日って何かあったか? 朝会なら校長には悪いがサボらせて……」

 

 

 

 

「今日が雄英体育祭だ」

 

 

 

「は?」

 

「シャワールームは開けておく。綺麗にしてから会場に向かえ」

 

 

 

そう言い残し相澤は部屋を後にする。残されたのはあまりの衝撃に固まった士ただ一人。

ひどい倦怠感と眠気を持って士は雄英体育祭当日を迎えるのだった。

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