咲ちゃんとキャッキャウフフしたいだけの人生だった   作:sannsann

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●転生したら姉がもうダメだった件。

私は転生者だ。

しかも物語の中のキャラクターに転生するというありふれたやつ。

よくあるのが乙女ゲーの中に転生しちゃうとかそういうやつだよね。

もしくはゲームの世界に入り込んじゃうやつとか。

喜んでいいのか悲しんでいいのか、私が入り込んだのは、咲-saki-という麻雀の漫画の世界だった。

喜ぶべきところは、やっぱり好きな物語の世界に転生できたこと。

と言っても私はニチャニチャ動画のコメント付きでアニメを見たくらいの知識しかないので、そこまで詳しいわけではない。

 

まあそこはまだいい。

 

主人公に転生してしまったのもまあいい。

 

ぶっちゃけ麻雀のルールなんてアニメで得た知識しか知らないし、実際にやったことあるのは幼い頃にドンジャラしかしたことないんだけどそこもまあいい。

 

そこまではまだいい、と言えるんだ。

 

 

 

 

じゃあ何が駄目って言うと、姉が何かもう・・・ダメなのだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「咲ちゃん」

 

アニメではついぞ聞くことの無かった、実姉(宮永照)からのちゃん付け呼び。

アニメでは呼び捨てだったし、しかも確か記憶によればどことなく冷たい呼び方だったような気がする。

しかし今聞いた声に、冷たさは無かった。

むしろ温かい・・・というか生温かった、何故か鳥肌が立ちそうなくらいに。

愛を感じる・・・しかしその愛は、コールタールのようなどろどろとした愛。

そんな表現がしっくりとくる声だ。

 

そしてこちらを見つめる瞳、まるで深淵を覗いている気持ちになってくるほど暗く、光すらも逃げ切れずに吸い込まれる錯覚に陥る。

 

そしてその手つき。

前世の学生時代、痴漢にあったことがあるが、まさにそれだった。

ぎこちなく、けれどいやらしく。

さわさわと、すりすりと。

 

 

幼い子供のように泣き叫ばなかったのは、僅かながらもそこに確かな愛を感じたからだ。

歪さだけだったら、とっくに泣き叫んで逃げ出していただろう。

 

 

 

 

 

これがアニメで姉妹の仲が悪かった理由だろうか。

確かにこれでは普通の子は仲が悪くなるだろう。

今、仲の良い姉妹でいれるのは、咲の中身が(転生者)だからだろう。

通常のSAN値では削れきって姉妹仲崩壊が原作ルート。

今は耐えきってなんとか仲の良い姉妹でいられているルート、つまり未知のルートに入ったわけだ。

 

私個人としては原作崩壊はあまり好きではなかったが、いくらルートどおりとはいえ、実の姉と疎遠になるのは気乗りがしない。

それに姉の宮永照だって好きなキャラだったし。

仲良くなれるなら、仲良くなりたい。

悪役令嬢が悪役にならないために頑張るように、私も仲の良い姉妹になれるように頑張ろう!

 

とりあえず、私自身の麻雀レベルもあげないと・・・アニメの咲ちゃんみたいに特殊能力があるといいんだけど、今のところ全然感覚がわかんないんだよね。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

ある日、姉に山へ連れて行かれた。

嶺上開花(リンシャンカイホー)について話を教えて貰うと、その時から何か自分の中に今まで感じなかった感覚が生まれていることに気づいた。

なるほど、咲の能力覚醒にはこのイベントが必要だったのか。

 

 

その日の晩の家族麻雀で、はじめて嶺上開花をあがった。

 

 

 

 

 

それからの日々は基本的に平和だった。

姉妹仲が崩壊しなかったせいか、家族麻雀自体は頻繁に行われていたが、アニメで語られていたお小遣い巻き上げは発生しなかった。

やっぱり原作とは微妙に違ってきているな。

このまま進んだら、まさかの姉清澄ルートに入るのだろうか。

 

 

そんな風に思っていた矢先、姉と母親が急遽東京へ行き、別居することとなった。

 

 

やはり、原作(世界の流れ)というものが存在するのだろうか。

本当に唐突な話だった。

前夜、姉と母とお風呂に入ったとき、姉からオママゴトとしてか赤ちゃんの真似か胸を吸われて、それを見た母が姉をぶっとばしたりしたが、その件は別に女同士だし、そもそも年齢的にもまだまだ姉も子供だしさすがにそれは無関係だと思う。

たぶんこれはお風呂ではしゃいだことを怒ったんだろうし、他に何かあったんだろうか。

 

 

 

結局原因は私にはわからず、別れを惜しむ暇もなく姉達は出発してしまった。

 

 

 

それからの日々は空虚だった。

ちょっと怖さを感じるところもあったが、いつも楽しそうに、騒がしく生きる姉がいないというのはやはり寂しいらしい。

 

 

 

そんな中、久々に再会した姉が、抱き合うなり"うれション"までしてしまったのにはびっくりした。犬かよ。

 

 

 

それからは頻度を増やして定期的に会うことになったが、逢瀬の時は私自身でも思っていた以上に楽しかった。

 

色々な食べ物を食べたり、服を買ったり、プレゼントを贈り合ったり、たくさんの思い出を作った。

 

一応麻雀の練習は続けていたが、ぶっちゃけ全国優勝とか興味なかったし、たまに打つ姉との局でぼろ負けだけはしないようにする程度だった。

姉からはプラマイゼロをイメージだ!とか言われたけどそんな雑なイベントだったっけな…。

 

それから、姉が高校一年で全国一位になったりして『あれこれ姉の麻雀力、原作アニメより超絶強化されてね?』って思うようになった。

姉妹仲崩壊ルートじゃないせいか、姉の麻雀成績が自重することを知らないレベルで築き上げられている。

 

麻雀雑誌では、姉のページがない巻はないってくらい取り上げられている程だ。

そりゃあ小鍛冶プロの再来かと言われる程のレベルだし、日本の高校生レベルじゃもう姉に勝てる人はいないくらいの成績だし。

世界大会ですらトップクラスってこれ完全に姉がラスボスルートなのでは?

いやまあ確かにアニメでも大魔王コメントされてたけど、これは大魔王っていうかもう・・・そんなレベルじゃないよね・・・。

高校生という枠内でなら、大魔王超越して邪神レベルだよね。

というか高校生枠どころか、たとえ成人枠入れたとしても、まともに勝てるのって国内トッププロ数人だけなんですけど。

え、このルートってこれに勝たないとだめなの?

そもそも私、原作ってアニメしか知らないから結末すら知らないんだけど?

 

まあとりあえず、全国がんばるかー……

姉のおかげで、原作では苦戦した衣ちゃんの支配もそんなに強く感じなかったし、決勝まではなるようになるでしょ!




天江衣「  」





なおこの咲ちゃんは、転生をカミングアウトする気はありません。
~咲ちゃん脳内~
パターン①BADEND
咲「実は私転生者なんだ!」
照「本当の咲ちゃんを返して!」包丁ブスッ!かなーしーみのー

パターン②監禁END
咲「実はわたry」
照「これは貴重な咲ちゃん!転生ってあるんだね!
 じゃあ来世でも一緒にいられるように、今世でもずっと一緒にいようね!ずっとだよ!ズット…ズット…」鎖ジャラリ…

こんな感じで想像しちゃってるので、怖くて言えないが正解です。

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