ヤンデレさんのヤンデレべリング   作:フユガスキ

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短いのに投稿頻度が低いとかいうダメダメ感。一週間に一度かな、と思っている。


お勉強会(会員2名)〜ヤンデレベル2〜

 今日はヤンデレさんが家に遊びに来ている。俺も親も家には入れていないが、不思議なこともあるものだ。きっと、親が入れたのを忘れたのだろう。

 

「私、Aくんの部屋を見てみたい」

 

「何回か見ていると思うが?」

 

 むしろ、三日に一回は見ているため見飽きているものだと思っていた。

 

「いや、私の離れた30秒で何か起きてるかもしれないし」

 

「30秒だと、本を読めば150文字〜200文字ぐらいか?」

 

 そんなもので何が変わるのかは分からないが、ヤンデレさん曰く、シュレディンガーの猫ということらしい。

 

 二階にある俺の部屋に連れていき、中に入る。大して変わったことはない。

 

「ベッドの下は…」

 

「俺は布団だ」

 

「……Aくん、ウスイ本持ってないの?」

 

「ハハハ、ボクガ、ソンナモノ、モッテルワケ、ナイジャナイカ」

 

 今やコンピュータの時代。アナログは既に時代の彼方である。

 とはいえ、ケンゼン本は持っているため、隠している。もし見つかったとしても、メンタルは半殺しで済むだろう。

 

「…ノートパソコン」ボソッ

 

「ヤンデレさん、今日は勉強しに来たんだ。遊んでる暇はない。さぁ、ノートパソコンに触らずに、この座布団に座るんだ」

 

 別に焦っているわけではない。ただ、高校生の俺たちにとって、勉強というのはその学校に残るためのスキルである。

 そして近々、定期テストが実施される。それはある程度優秀な成績をとるのに、必要不可欠だ。そのための今日の勉強会である。

 

 ヤンデレさんは問題集とノートを開き、シャーペンを持ってカリカリと文字を書いている。

 

「Aくん、ココ、わかんない」

 

「君は毒使いではなく、ヤンデレさんだ」

 

「?」

 

「…忘れてくれ。で、何処が分からない?」

 

 あの美食屋の戦いは、俺もあまり知らない。知識として、髪の長い奴と口が裂けてる奴と小松菜がいるのは知っている。

 

「えーと、ここの、唐が行っていた試験はなーんだ?って問題」

 

「科挙だ」

 

「カキョダ?」

 

「科挙」

 

「かきょー?何か、頭が爆発四散しそうな名前だね」

 

「胸に7つの坑ッッッッ、貴様、北斗●拳の伝承者かッッッッ…!」

 

「刃●を混ぜちゃだめだよ、●牙を」

 

「理解った」

 

「んで、かきょーって何?」

 

「理科の科に挙手の挙」

 

 ヤンデレさんは、それね、と言いつつ科挙と書き込み、次の問題を解いている。

 俺も数学の微積分の問題を見る。この、接線や法線などと言うものは面倒くさい。中点を求めるとか、小学生の算数の上位互換ではないか。

 

「そううつとした茂みの、そううつって何?」

 

「ヤンデレさん、歴史やってなかったっけ?」

 

「今は現代文」

 

「躁鬱は、躁が に操るの右側。鬱は、まぁ、いけるんじゃない?」

 

「躁は分かったけど、うつは分からない」

 

「ハ●ヒは?」

 

「聞いたことある」

 

「…書いたほうが早いな」

 

 鬱とノートの端に書いて、俺は数学Ⅱの問題にとりかかる。

 そういえば、時間を測るものがなかったことを思い出し、デジタル時計を見ると、まだ、勉強を初めて5分しか経っていなかった。

 

「飽きたぁ」

 

「早い…と言いたいところだが、30分ぐらい経たないとやる気が出ないのは分かる」

 

「飲み物とジャンクフードない?」

 

「ウォッカとテキーラならあるぞ。ラムの方がいいか?」

 

「何故、蒸留酒縛り」

 

「いや、言ってみたかっただけで、あるかは知らない」

 

「炭酸は?」

 

「CO2?」

 

「炭酸水は?」

 

「ウィルキンソンならある」

 

「あれは苦手だなぁ」

 

「じゃあ、そこらへんに自販機あるから、好きなの買えば?」

 

「一緒に行ってくれる?」

 

「いや、俺は勉強するし、一人で行けると思うが」

 

 全く、今の子どもでも一人でお使いはできる。高校生ともなれば、自主的に大抵のことはできるだろう。

 

「」ザクッ

 

「なんで、私よりノートなの?ノートの方が私よりアイせるの?私はAくんだけをアイしてるのに、Aくんはノートをアイするの?そんなもの、要らないよね?私とAくんを妨げる奴なんて、要らないよね?ねぇ?」

 

「な、何、だと…!」

 

 早口で何も聞き取れなかった。ノートとヤンデレさんがどうのこうの…。

 というか、ノートに包丁が刺さってる。しかも、真ん中に。これでは、いつかノートがバラバラになってしまうではないか。

 

「ヤンデレさん。このノートは俺の人生を決める一端を背負っている。無論、こんなノートがなくても、俺は死なないが、より良い将来には必要だ。故に、ノートに包丁を突き立てるのは、オススメしない」

 

「それでも、要らないでしょ?私だけいれば、それで十分でしょ?」

 

「そもそも、包丁と言っても種類があり、魚を切る、パンを切る、野菜を切る。このように色々あるうちで、それぞれに共通するのは、衛生面の良さだ」

 

「え…?」

 

「どれも、衛生的でなければならない。それに対して、ノートに刺すという使い方を誤ったものに用いた上、食事に害を及ぼしかねない不衛生。しかも、俺という者が近くにいるのもダメだ」

 

「あ…う…」

 

「人に向ける、食材以外に刺す。この二つの使用上の誤りは、包丁を使う上で避けなければならないルールだ。包丁という危ないものは、使用用途を間違えてはいけない」

 

「…はい」

 

「…あと、一緒に行きたいとき、暴力的になるのは、酷く感情的だ。俺の行くメリットを提示するか、行かないデメリットを言えばいい。もう少し、理性的な対処を覚えよう」

 

「はい…じゃ、行ってくるね」

 

「…ちょっと待って。俺も行く。前に、ジュース奢った貸しがあるからな。その分を返してもらおう」

 

「…うん!待ってるね」

 

 俺は部屋着の上にコートを羽織り、ネックウォーマーを着けてヤンデレさんとすぐ近くの自販機へと歩を進めた。

 

 次の日、数学の教師に呼び出されたのは別の話。


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