「……誰だ、貴様」
「いや、こっちのセリフなんですが」
「……何を食っている」
「え、これ? からあげ」
コンビニで買ったからあげを食べながら歩いてたら、なんか急に虹色っぽい空間にいた。目の前には銀髪の美人さん。見れば見るほどコスプレ感が満載だ。
「すごい恰好っすね。何かのアニメのコスプレっすか?」
「こす……? いや、これがいつもの格好だが」
しまった、やべー人だ。絡んじゃいけない系の人。何だよ日常からコスプレって、レベル高すぎだろ。
「……あの、帰り道ってご存知です?」
「帰り道だと? そんなものはここには存在しない」
まじかよ。ここスタジオとかそういうのじゃないの? なりきりっつっても非常事態なんだから限度ってモンがあるでしょ。絶対これコスプレ撮影会とかだよ。白昼夢でも見てんの? にしてはカメラマンもおらんし……。
「そういう貴様は何者だ。この空間に来るなどと……」
「俺っすか? いやー名乗るほどのものでもないってゆうか?」
やばい人に個人情報言うのはちょっと……。
「はっきりしないな……ならば力づくで……。いや、まさか……」
何か物騒なこと言ってる。
パラパラと手に持ってた分厚い本を開いて読み始めた。
帰っていいかな。帰っていいよね。よし帰ろう。
「あ、じゃあしつれ」
「待て」
「ぐぇっ」
ぐ、ぐる゛じい゛……っ!!
ちょっ、襟はっ、首がっ……!!
「貴様はバグだな。この空間は本来私と私が認めた者のみが入れる場所だ。となれば裏技に近いもので侵入する他あるまい。そして調べてみればバグが数か所……とりわけ致命的なモノは、貴様だ。何をしでかすかたまったものではないからな、何が目的かハキハキと吐け。そしたら――――――――ん? おい、どうした。何かしゃべ……………………気絶してる」
「ハッ、俺のからあげが!! ……………………あれ?」
全ては夢だったか……。
「夢ではない」
「ほぁっ!?」
またコスプレしてる!!
「コスプレではない」
「いやでもどう見ても」
「コスプレではない」
アッハイ。
「改めて訊くが、貴様の存在意義は何だ。バグが意志を持つなど、本来はあり得ない。が、闇の書自体が長い時代様々な魔法を吸い上げてきた。何かが混ざり合ってしまうことも考えられる。貴様の口から話せ」
「いやあのほんと意味わからんのですが」
からあげ買ってただけなのに……。
「……本当にわからないのか?」
「マジマジマジ卍」
「まんじ……?」
特に意味はない。
「ところでここほんとどこなんです?」
「……闇の書の中だ。私はその管制人格」
「へー、ソノカンセー・ジンカクさんか。変わった名前ですね」
「それは固有名詞ではない」
えっ?
「ふむ、その様子だと本当にここがどこかわかっていないらしいな。ここは閉じられた空間だ。外には出られない」
「またまたーご冗談はコスプレだけにしてくださいよー」
「エグられたいか?」
「ほごぉっ!?」
鼻がエグれますっ!?
「フン、全く。本当に何もわかっていない奴だ。いいか、闇の書のプログラムである以上、貴様もまた闇の書の完成のために働かねばならない。魔力を蒐集し、力を解き放つのだ」
「えぇ……厨二病やん……」
「わかったかこのバグ野郎」
「オァーッ!? まっ、アイアンクローはダメですってつぶれるもれる!?」
アッ、出ちゃう!! 色々と出ちゃうぅっ!?
「……喋る気がないのなら、こちらで調べる。大人しくしてろ」
「うっす……」
銀髪の人、また本を捲り始めた。そんな装飾ゴテゴテの魔導書みたいなやつ、読みづらいんじゃなかろうか。あれも自作かな?
「……なるほど、ナハトなのか」
「ナルト? 美味しいよね」
「食べ物ではない」
「え? じゃあ忍者の方?」
「そんな忍者が実在してたまるか。ナハトだ。ナハトヴァール。闇の書の自動防衛運用システム」
専門用語の羅列は勘弁。
「ナハト。お前の起動はまだのはずだ。何の弾みで起動した?」
「起動って言われても……てか俺がそのなんちゃらって前提で話進んでません?」
「事実そうだから言っているのだ。……しかし本人が無自覚とはな……」
からあげ食ってただけだしなぁ……。
「しかも、よりにもよって私の管轄から独立している。お前に起きられると、困る」
俺に寝てろと申すか。いや一生食っちゃ寝して過ごしたいが。
「じゃあどうしろと?」
「……ここにいろ」
「衣食住は……?」
「別にお前は食わずともいいだろう。そもそもシステムが腹をすかすのか?」
「からあげ食えなくなるんですよ!?」
「いやそんな迫真の顔で私に言われても……」
マイソウルフードKARAAGEを食えないとは……罪な女だ。
「すごく、失礼な、ことを、言われた、気が、する」
エスパーかよ。だからってアイアンクローはちょっと――――ア゜ッ
「からあげの下りからの記憶がないんですが」
「知らん」
ひどい……。
「……うーん、でも何かこの辺本格的に現実じゃないっぽい……この地面何?」
「私に聞くな。ここはもとからこうだ」
「うわ殺風景……寂しくないんすか?」
「おかしなことを。システムに感情など、不要だ」
そっすか。
「出入口もないし……あー、暇や」
「少しは黙っていたらどうだ?」
「俺はそんなに静かにできるタイプじゃないんですぅー」
「あのぉ……」
「ほらもー、暇すぎて車椅子美少女の幻覚まで見えてきた。やっぱり全部夢なんだよこれは!!」
「我が主……!!」
いや誰やねん。
「あの、ここは……、」
「ああ、我が主……ご安心を。ここは貴方の平穏を実現する場所……何も、心配はいりません」
俺との態度が正反対の件について。
「俺にも優しくしてほしいので抗議します!!」
「却下だ。黙ってろ」
優しさの欠片もないやんけぇ……。
「あれ、その人は……?」
「我が主、悪いことはいいません。彼は無視してください」
「えぇ……」
いじめやん。ほら車椅子の子もすげー困ってるし。
「本来ならお前はまだ起動するべきではない存在だ。しばらくは大人しく……何っ!?」
バサバサと、カンセーさんが持ってる本が暴れて光り出した。すごいな生きてる魚みたい。動きが気持ち悪い。
「ナハト!! まさか、本格的に起動を!?」
「いや知らんがな……」
「くっ、こうも早まるとは……っ!! 私が出る!! お前はそこで座っていろ!!」
とか言いながら、ソノカンセーさんが飛んで行った。いやどこ行くねーん。
「……………………………………………………」
「行っちまった……」
取り残された俺と車椅子の子。
「えっと、あなたは?」
「俺? あの銀髪の人いわくうずをまく方のナルトなんちゃらって」
「絶対ちゃうな」
初対面の幼女に論破されてる件について。
「あ、わたしは八神はやて言います、ナハトさん。よろしゅう」
「夜神さん? あなたがキラです」
「デ○ノート持ってへんよ」
事件の迷宮入りが確定した瞬間である。
「で、ここはどこなんです?」
「さっぱり俺もわからんとです。ソノカンセーさんが来るまで待ちましょうや」
「ソノカンセーさん……?」
コスプレの人です。
「人のこと言えへんよ?」
「マ?」
「鏡見てみぃ……って言いたいんやけど、ここじゃあなぁ……」
身体を見下ろす。何かぴっちりしたボディスーツとコート、指抜きグローブ……。
「……………………フッ、そうか。俺こそが言葉の写し見という訳か…………ふふ、しにたい」
「ちょっ、レジ袋被るのはホンマにマズいで!?」
「うるせー!! 黒歴史刻むくらいなら死んでやる!!」
「だ、誰かー!! ヘルプ!! 自殺未遂が!!」
「我が主!? 何事ですか!?」
「あっ、ちょうどええところに!! この人止めたってや!!」
「ええい、ナハト、お前というやつは主の手を煩わせてぇぇぇぇっ!!」
「ぶべらっ!?」
めっちゃ頬が痛い。
「グーパンは女性としてどうなんすか……」
「自殺されるよりええよ全く……」
何かここに来てからダメージすごい。
「……ナハト、時間が来た。何とか引き延ばそうとしたが……」
え? 急に何の話?
「ナハトヴァールが起動した。私ではもう止められない。主の魔力を吸い尽くすまで、全てを破壊するだろう」
「はぁ……え、八神ちゃんは何が起こってるかわかる?」
「わたしもさっぱりで……病院で友達と喋ってて気付いたらここに……」
「なぜ誰もこの状況を理解していないんだ……!!」
何やら顔を覆ってるソノカンセーさん。イチから説明がほしい。理解できるかは知らんが。
「……仕方ない。手短に済ませる」
ソノカンセーさんのなぜなにこうざー。
わーぱちぱちぱち。
「真面目に聴け?」
「ハイ」
シャドーボクシングされる度に寿命が縮まる思いだ。
「闇の書の主である我が主のリンカーコアから魔力を吸い尽くすのがナハトヴァールのシステムだ。無尽蔵にあらゆる魔力を蓄えようとするこのシステムは既に起動し、現在外では一部攻撃システムが動いている。街の被害は甚大だろう」
ピコン、とモニターっぽいのが出てきた。すげー、未来的。
画面の中では何やら八神ちゃんと同じくらいの歳に見える女の子たちが飛び回ってて、ゴテゴテした武装をしてるカンセーさんと戦っていた。
「何これ、映画?」
「やったら良さげやけどな……ってなのはちゃんにフェイトちゃん……っ!?」
誰?
「残念ながら、これは現実だ。何故か突然起動したナハトヴァールが、私の身体を乗っ取り暴走している。止められるのは……ナハト、お前だけだ」
「責任転嫁では?」
「元はと言えばお前のシステムだからだ!!」
あだだだだだだだだだ!? こめかみぐりぐりはヤメテ!!
「本来ならもう少しは猶予があったはずだが……ともかく、暴走した以上は止めてもらわねば困る。これ以上の過負荷は、私のシステムまでもが喰われかねない」
「いてて……んで、俺にどうしろと?」
「とりあえず、お前は表に出ろ」
「財布持ってないのでゆすらないで……ヤンキーコワイ」
「誰がヤンキーか。管理権限がお前に移っているんだ、お前にしか止められない」
「そう言われるとやるしかなさげだけど……やり方は?」
「どうにかしろ」
俺に超頑張れってか? ○岡修造もビックリの超理論だよ……。
「いいから行け」
「……どうやって外へ?」
「飛べ」
ソノカンセーさんが指差すのは真上。そんなファンタジーみたいに……、
「うわ、飛べる……」
飛べるんだ……え、すご……。
さっさと行け、という睨みを受けてどんどんと真上へ。これどこまで行けばいいんだ……?
「すんませーん、これどのへんまで行けば?」
「とにかく行けばわかる」
スパルタすぎでは。
けれどもシャドーボクシングには敵わないのでそのまま上昇。どんどんと上に登っていって、
一瞬、視界が真っ暗に。
そして目を開ければ、
ピンクと黄色の光が――――――――――ぎゃああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!?!?!?!?!?
つづきはまだ書いてないです