顔面ボコボコにされ腰にタオル一枚を巻いたワイ、複数人に取り囲まれて床に正座させられてるなう。
「部族の裁判か何か?」
「猥褻物陳列罪で死刑になるけどええか?」
なんもよくねーです。
「う、ううぅぅぅぅぅ……!!」
「大丈夫よヴィータちゃん、大したことないから」
「そうだぞヴィータ、この程度のこと、鉄槌の騎士なら泣くな」
Vitaが慰められるにつれて俺の評価が下がってくんだが? しまいにゃ泣くぞ? なんだよ大したことないって!! 平均よか立派だろうがい!!
「辞世の句を読ませてやろう」
「ちょい待って? もう判決が出てるんで?」
「命をもって償え、というやつだ」
「シグナルの思考が過激すぎる件について。弁護人は?」
「シグナムだ。必要か?」
野蛮な茶番だな!! 綺麗に韻が踏めるぞ!!
「死刑よりは終身刑の方がいいかな。冷暖房完備でオフトゥンとフリーWi-Fiと近くにコンビニがあれば他に何もいりません」
「とりあえず首を刎ねるので問題ないな?」
問題しかないが?
「まぁまぁ、シグナム。あんま反省しとらんやろうけどもうええやろ? ナハトも不可抗力的な部分はあったしな。その後の対応が考えうる限り最悪やったけど……。ひとまずは経過観察兼反省っちゅうことで、謹慎処分やな」
「え゛っ」
「きちんと反省室におるんやで? 経過観察もあるさかい」
「しょんなぁ……、あれ? バンパーリインフォースさんは?」
「バンパーは余計だ。我は無関係ゆえ、我が主と共に行く」
「なんでや!? 俺と無関係とかそんな訳にゃいかんやろがい!!」
「ナハトヴァールは完全に分離した。再生機構も丸ごとな。ゆえに、こうしていても二度とあの悪夢が再現されることはない。少なくとも、この身体が起因になることではな」
「ちなみにリインフォースは調べてもらって裏付けもあるからな、管理局のお墨付きやで」
管理局って何よいったい。何を管理してるん? 出入国?
「ほな、ハラオウン提督。ナハトのこと、よろしゅう頼んます」
「ええ、責任を持って、しっかり検査するわ」
「誰だアンタ」
「リンディ・ハラオウンよ」
わからん……また横文字新キャラだ……。
ほなな〜、と八神さんは行ってしまった。ワイは見捨てられたんや……およよ〜……。
「さて、ひとまずはアースラ内ではしばらく過ごしてもらうわけだけど……とりあえずはナハトさん、とお呼びすれば良いかしら?」
「ご自由にナハト様でもご主人様でもええっすよ」
「じゃあナハトさんと呼ばせてもらうわね。医療用区画の隣にあなたの部屋を用意したから、寝泊まりはそこでお願いね? 食事は係が一日三食、決まった時間に持って行くから」
「うっす。部屋の設備はどうなっとるんです?」
「ベッドとシャワールームがあるわ。こんな部屋なんだけど」
「うわっ、また空中ディスプレイ。SFやなぁ。……待って、これ俺が全裸になって彷徨った部屋では?」
「お似合いでしょ?」
「タオル無い部屋でシャワー浴びて全裸になってまた変質者になれと?」
「半ば貴方の自業自得も多分に含まれてると思うのだけど?」
それはそう。
「奴隷みたいな扱いではないから安心してちょうだい。アースラの外には出れないけど、それ以外は極力便宜を図るわ。はやてさんやリインフォースさんから聞いた話によれば、ナハトさんは非常に安定しているから、今後二度と闇の書の闇を生成することはないみたいだし」
「闇の書の闇とか初耳。何その厨二チックなサムシング。聞いてるこっちが恥ずかしくなってくるレベルなんじゃが」
「ナハトヴァールを中心として、夜天の書を侵食した、今回の事件の全ての原因よ……。自覚ないのかしら?」
からあげ食ってただけの一般人に何言ってんだ。こちとら被害者やぞ?
「とりあえず、しばらくは魔法等使わず、普通に過ごしていてくれれば問題ないと思うわ。検査も一週間あれば終わるだろうから」
一週間ニート生活ktkr。ネットサーフィンして自堕落してやるぜー。
「あ、ちなみにアースラには地球のインターネット回線は届いてないのよ? 元は本局の船だから娯楽用のテレビだとかもないの」
「おま、あの無機質な部屋で何もせずボーッと過ごせと? 拷問やぞそれ」
「本とかはあるから言ってちょうだい。そんなに数は多くないけどね」
んー、しゃーなし。まぁ暇つぶしできるモノがあるならええわ。本読むの嫌いじゃないわ!!
◆
とか言ってた数日前の自分を殴り飛ばしてやりたい。
持ってこられた本が軒並み異世界語なんだが?
何だよベルカ語だのミッドチルダ語って。日本語でおk。
「ナハトヴァールなのにベルカ語も読めないのか?」じゃねーよ。バカにしとんのか。
「おぼぁー。わからん、読めん。クロちゃんこれなんて読むんだっけ?」
「それは接続詞だ、読まないよ。というかいい加減クロちゃんはやめろとあれほど……」
クロノ・はら……はらなんちゃら君。なのでクロちゃん。まだまだ若き少年やないか、ええじゃろ可愛らしくて。
「ちゃん付けが嫌なんだよ。それに、僕は仕事があるって言ってるのに、どうして僕の部屋に入り浸るんだ?」
「いやだって他の人露骨に俺の事避けるんだもん……クロちゃんは声かけるとちゃんと返事くれるからいい子だよね 」
提督の教育の賜物だな、うんうん。
察してる人もいるだろうが、渡された本の大半が読めねぇワイ、クロちゃんのもとで勉強中というわけだ。まぁほぼわからんのだけど。
「ぬわぁ〜んでこの歳になって第二言語の勉強をせなアカンのか。もう脳みそ固まっちまってろくに覚えれんわ」
「そんなに難しいものなのか? なのはやその同級生たちも堪能だというのに」
「いや最近の小学生のスペック可笑しいでしょ。あの辺は特に異常よ。何であんなに頭良いの? 俺より絶対頭いいよ」
「まぁ、それはそうだろうね」
「おい認めんなよ、大の大人が小学生に負けとんのやぞ」
「潔く認めてやるのも大人の対応では?」
「老害か俺は」
「…………………………………………」
いや黙るなし。まだ若いほうだぞ。
「……しかし君は、ナハトヴァールだというのになぜ何も知らないんだろうね。闇の書の闇、その根源にあるのは夜天の書に織り込まれた防衛プログラムだ。解析の結果、プログラムが織り込まれた時期は夜天の書が作製された初期の初期。それこそ、守護騎士プログラムよりも前だ。ともなれば、リインフォースに次ぐ古参とも言える。しかしヴォルケンリッターのことも、ましてやリインフォースすら知らないとは……意図的に記録を抹消されてるのか、そもそも記録をされないようにしていたのか」
「語りが長い、三行で頼む」
「君はバカか?」
敬えよぉちったぁよォ、クロちゃんっ!!
「バカとはなんじゃいバカとは!! 俺だってなぁ、美味い唐揚げ腹いっぺぇ食いたいからバカなりに頑張って生きてんじゃい!!」
「…………もう少しこう、なんというか……高尚な理由とかは……?」
「いいじゃん唐揚げ。美味しいよ? 三大欲求に素直に生きたい、切実に」
「世知辛い願いだな……」
貧乏学生だったからね、仕方ないね。
「で、俺はいつになったら外に出て買い食いしに行けるワケ? ぼちぼち一週間経つよね?」
「まぁ、そうだね。データ自体は取り終わって、予定通りなら直に解析結果も出るだろう――――と言ってたら、ちょうどその連絡だ」
ピピッ、と音が鳴ってメールが届いたらしい。
横合いから見るとモニターが立ち上がって、よくわからん文字が並んでいた。これミッドチルダ語よね?
うーん……読めん!!
「あ、クロノって文字は読めるぞ」
「そこだけだろ、君は……。ふむ、ひとまずは解析結果が出た。結論、ナハトヴァールのプログラムは非常に安定している……というか、恐ろしいほど静かだ。感情の起伏に際しても励起せず。魔力反応も一定で、しかも君自身が魔法の使い方を一切知らないおかげでこれ以上の脅威はないと判断できる」
「つまり10文字で表すと?」
「負けたらギャグキャラ」
元敵役かよ。RPGでよくある、あんだけ強かったのに仲間になった途端めちゃくちゃ弱くなるNPCじゃんか。
「ともかく、明日には観察期間も終了だ。荷物をまとめておくといい」
「オッスオッス。やーっとこの近未来空間から出られるのね。まずはコンビニで出所祝い豪遊だな!!」
「……手持ちはあるのか? 持ち物を一通り見たが、財布らしきものはなかったぞ」
「…………それマジ?」
なけなしの5000円が? おろしたての1ヶ月が? 消えた?
「まぁ、うん、その、なんだろう………………元気を出してくれ。多少は支援するさ。……………………そこまで見境なく静かにボロボロ泣かれると……怖いぞ……」
大人だってな、泣くんだぞ。
「…………すまない、聞き取れなかった。音が全部濁音になってたし滑舌も死んでるんだ……。そう、だから…………少し、いい店にでも行こうか。僕が奢る」
ク゛ロ゛ち゛ゃ゛ん゛ッ゛!゛!゛
「うわ鼻水きったな」
クロちゃん!?
次回、Reflection & Detonation編。
ナハトの明日はどっちだ!?