銀の兄【修正版】※半分凍結中   作:泡泡

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 伏線張ります


※赤い星座?別れ?※

 いきなりだがどうしてこんなことになったんだろう?どこかで分岐点間違えたかなぁ。そう思えてくるのは目の前に広がる光景だ。これについて説明させてくれ。あのな。目の前に大陸中で二大猟兵団のうちの片割れ“赤い星座”がいるんだよ。

 

 「がははは、にいちゃん。強ええなぁ。もっと熱く(たぎ)る戦いをしようぜ?」

 

 「ハァ・・・俺はメンドイ。付き合いきれん。もう帰っていいか?」

 

 何十時間も、もしかしたら日をまたいでいるかもしれない。時間の感覚がなくなりつつあるが俺の目の前で張り合っている男性は闘神もしくは猟兵王なんて呼ばれている男性・・・だったかな。

 

 「おいおい、そう言うなって。最近じゃ、身内の中にも滾る戦いをするヤツがおらんで、退屈しとった時だしなぁ・・・少し遊んでけ?」

 

 「あんたが言うと遊びじゃないんだわ!いったい幾つの山を無くした?更地しか残っとらんだろうさ!」

 

 「お?そうだっけ。ガハハハ・・・いいじゃねえか」

 

 「俺より、あんたの隣にいる身内のほうが面白いヤツいんぞ?」

 

 「どこに?まーだ乳飲んでる餓鬼が二人と、発展途上の青年しかしねぇぞ?」

 

 「身内だからってうかうかしてると足元救われる恐れがあるぞ」

 

 「そいつは・・・楽しみじゃ」

 

 「まぁ、俺は疲れた。・・・・・・あんたらの名前を聞いておこうか?」

 

 「フム・・・気は紛れたからいいじゃろ。儂はバルデル・オルランド、ほれお前たちも自己紹介ぐらいせんか!」

 

 「・・・バルデルの弟、シグムント・オルランドだ」

 

 「団長の息子、ランドルフ・オルランド・・・です」

 

 「あたしはシャーリー・オルランドだよ!」

 

 「・・・くくくっ、やっぱ隠した牙を持ってるじゃねぇか。闘神に赤い戦鬼、それにもう少しで異名を持ちそうな連中がゴロゴロと・・・・・・はぁ、ここらで引き上げてホントによかった」

 

 うんうん、と納得し頷くアドル。

 

 「今度はお前さんの名だぜ?」

 

 「あ、そっか。忘れてたよ。俺はアドル。アドル・マオだ」

 

 「フッ・・・ハハハハハ。今日という日に乾杯したいぐらい気分がすこぶるイイ!そうか、お前があの――狂喜乱舞――だったとはな」

 

 「・・・・・・もう広まってるのか。参ったな」

 

 やれやれだと言わんばかりに片手で顔を覆い天を見上げるアドル。だが、口元は少し微笑を讃えている。

 

 「今度、会ったときは再戦だ。覚えておきなよ!」

 

 「ああ!俺も忘れない」

 

 

 

 赤い星座と言う猟兵団との死闘・・・?なのかどうかは分からないが楽しめたと言えよう。

 

 「あれっ。俺って戦闘狂だっけ?段々と平和的じゃなくなってる気が。少し落ち込んできたかも。それはそうとクローゼどうしてるっかな?」

 

 18の時、リベール王国の女王の護衛と、クローゼの話し相手をしていたはずのアドルがどうして赤い星座とやりあっていたのかと言うと、平和になったのでその必要がなくなったのだ。

 

 まぁ別れに際してはクローゼには泣かれたが、ね・・・。

 

 「行っちゃやーだぁ。アドルぅ、どーしてここにいてくれないの?ねっ、ねー」

 

 「アリシアさんから話は聞いたでしょ?」

 

 「ううん、私は何も聞いてないよ!聞いちゃいないんだから!!」

 

 首を大きく音が鳴るのではないかと思うぐらい左右に振り、そして両手で両耳を塞いで聞く耳を持たないクローゼ。

 

 「聞いてってば。アリシアさんを守るのが俺の仕事だった。けど、平和になったんだよ。だから俺の仕事はもう無くなったの。クローゼだって平和になって嬉しいでしょ。いつだって外で遊べるんだからさ?」

 

 駄々をこねるクローゼの目を見ようと、屈んで話しかける。固く耳を塞いでいるわけではなさそうだが、やはり一年近くも一緒にいた護衛兼話し相手と別れるのは淋しいらしい。

 

 「う~っ、う~っ。もしかして私のこと嫌いになったの?他に好きな人できた?」

 

 上目遣いと涙目の表情・・・それ反則。あとそんな根も葉もない噂話を誰から聞いたんだ。

 

 「嫌いじゃないけど・・・」

 

 「だったら、ずっと一緒にいて?それでいいでしょ?」

 

 「・・・・・・ごめん。ムリ」

 

 「っ・・・そうなんだ。だったらもういい。アドルなんて友達じゃない。大っ嫌い。早くここから出てって・・・」

 

 泣きじゃくりながらクローゼは最後の(とど)めをアドルに刺す。

 

 「分かった。じゃあ明日出ていく・・・な?」

 

 「・・・・・・(プイッ)」

 

 その返事にビクッと体を震わせながらも、こちらを見ることなく手を握り締めたまま、クローゼは無言のままアリシア女王と謁見の間から出ていく。

 

 「お疲れ様・・・だ。アドル」

 

 「モルガンさん。ハハッ、嫌われちゃいましたよ・・・・・・。いやぁモテる男はつらいなぁ」

 

 「そう言うなって。ああは言ったがあれが本心ではないとお前さんにも分かっておろう?それにしても・・・この一年近く儂にとってもお前の存在は助けになったぞい?」

 

 「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいですわ」

 

 「ワシも願うことなら、お前さんにはこのままリベールにいて助けになって欲しいと願っておるのじゃ。まぁ、お前さんは嫌かもしれないがワシは本当の息子のように思っとったのでな。体に気を付けていくんだよ?」

 

 そう言うと、クローゼがいた場所を見つめているアドルの肩をモルガンは軽く叩き謁見の間を立ち去っていった。

 

 「まったく、アドルさんは罪作りなお人ですね?」

 

 「ユリアか。まぁ話し相手がいなくなると淋しいのだろう。クローゼにはユリアがいるから大丈夫だろうよ」

 

 「そういう意味ではないのですが。あなたは鈍感ですね?」

 

 やや呆れ気味にそう呟かれる。

 

 「なんのことかな、ん?まぁいいさ。さてと俺はこのまま消えるぜ」

 

 「えっ、明日ではないのですか?」

 

 「明日とは思ったが、時間的に地方へ飛ぶ最終便が残ってるらしいからそれに乗って行くよ。それにクローゼの泣き顔をふたたび見ることは辛い。泣き顔を見るのは一回だけで充分さ」

 

 「そうですか?な、なんかあなたがいなくなると少し淋しくなりますね」

 

 ユリアは零れた涙をアドルに見せないように袖で拭うと、会話を始める。まるで残された時間を惜しむかのように。もしくは気が変わった小さき迷い子が、こちらに来るかもしれないと思いつつ会話をする。

 

 「フフッ、ユリアは俺に負けっぱなしだったもんなぁ。レイピア捌きは上手くなったか?」

 

 「ええ、あなたに(しご)かれましたから。最初の頃よりはだいぶよくなってますよ。負けっぱなしでは説得力はないかもしれませんが・・・・・・」

 

 「そうか・・・・・・。それはそうと、どうして俺に対して敬語を使ってるんだ?同世代なんだからもっと軽く話してくれてもいいのに・・・・・・」

 

 「そ、それはですね。わ、笑いませんか?」

 

 「内容によるが、笑わないぞ。ほれ、話してみれ」

 

 (あお)るように手で催促してみると、覚悟が決まったかのように話し始めた。

 

 「う、うまく言えませんがあなたは私にとって憧れなんです。シード隊長を退けた体術や、扱うのが難しい武器をいとも簡単に扱う貴方は私にとって・・・」

 

 最後のほうは小声になってしまって聞き取れなかったが。

 

 「そうか、ありがたいな。ユリアがそう思っててくれるなんて・・・さ」

 

 嬉しいことを行ってくれるユリアの頭を優しく撫でるとユリアは嬉しそうに顔を緩める。

 

 「・・・・・・本当に行ってしまうのですか?」

 

 「平和になったことは結構なことじゃないか?それともユリアは平和じゃない方がいいって言うのか?」

 

 少し意地悪な質問をしてみる。ユリアもアドルと一緒に警備の仕事にあたっていたので、ピリピリした雰囲気にいつも体をこわばらせていた。それが終わったと言うのはユリアにとっても素晴らしく良いことと言えた。

 

 「で、でも!」

 

 「それに別れは誰にでも起こる事だ。遅かれ早かれ万人には別れが到来する。その時が少し早く来たってだけの事」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 ユリアもクローゼと同じように黙りこくってしまった。そしてもう話すことはないと言わんばかりにアドルの横から立ち去った。そして謁見室にはもう誰もいない。

 

 「ハハッ。な、慣れていることじゃないか。別れは誰にだって起こる事だよ」

 

 アドルが一番長い時間を過ごしていた場所の一つ、謁見の間に一礼しその場所を立ち去る。

 

 「・・・あっ、忘れていた。そこの女王が座る椅子の上でいいや。クローゼとユリアにこの間散歩のときに欲しそうに眺めていたネックレス。最初で最後の贈り物、だ・・・」

 

 クローゼにはハヤブサを形作ったネックレス。ユリアには月を形作ったネックレス。

 

 「気に入るといいなぁ。未練が無いと言えばそれは嘘になる。ここでの思い出は多すぎた。だが、これは永遠の別れじゃない。生きていればいつかきっと会える・・・。きっと、きっと・・・・・・」

 

 

 

 意気消沈してたアドルはいつの間にか赤い星座が活動する土地に入り込んでいたらしい。そして都合よく“赤い星座”の一員と間違われてそれと敵対関係にあった“西風の旅団”に問答無用で襲いかかられたので、身に降りかかる火の粉を振り払っていた結果西風の旅団は壊滅状態に至っていた。

 

 ――そして話は冒頭に戻る――

 

 「助かったぜ。名も知らぬ青年よぉ。()りあおうぜ?」

 

 「・・・・・・は?ええええっっっ!」

 

 そんなこんなで、闘神と戦ってたわけだがそこらへんを消滅させながら相対していた。結果、山が4つ消え、森林に至っては見渡す限りを更地に変えていた。近くに俺たち以外の非戦闘員がいなくて本当に良かったと思っている。

 

 そしてアドルの異名の如く狂喜していたらしい、と言うのを最後に聞いた。何とも面倒なことになりそうな話だった。最近は世の中も荒れに荒れている。リベールのほうは比較的平和を保っているが隣国は、誘拐事件が数年の間に多発しているというのを聞いた。

 

 しかし、アドルにとって(イン)が復活したと言う噂のほうが気になっていることだった。

 

 「銀の正体は親父なのか?それとも別の誰かなのか?親父は死んでいるのか。それともまだ生きているのか?どちらにしても少しの間、クロスベルに行かないと分からないな。よしっ、行くか!」 




 赤い星座=最狂の戦闘軍団

 西風の旅団=赤い星座と対を成す猟兵団の一つ。

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