銀の兄【修正版】※半分凍結中   作:泡泡

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 遊撃士教会での意見交換の場に、アドルも呼ばれたと言う場面です。


意見交換と再来する白き翼

 

 俺は、アリオスから意見交換をしないか?と誘われて遊撃士協会へと足を運んだ。そこに支援課のメンバーもいたことは少し意外だった。アリオスはまだ来ておらず、しばらく経ってからやっと登場した。

 

 ロイドたちとアリオスらを含めた面々で通商会議及び、黒月(ヘイユエ)と赤い星座についての情報交換を行なうことにした。

 

 「なるほどな。クリムゾン商会というのにそんな裏があったとは・・・」

 

 「最近帝都方面の情報が入りにくくなってたものねぇ。ありがと、たすかったわ」

 

 アリオス、そしてちょっと変わったクロスベル支部の受付ミシェルが答える。

 

 「いえ、お役に立てれば幸いです」

 

 「しかし“赤い星座”の情報はそっちでも掴んでいないわけ?ギルドって猟兵団と小競り合いをすることが多いって聞くけど・・・?」

 

 「確かに多いが“赤い星座”クラスの大物と事を構えることなど滅多にない。下手をすればお互い全面戦争になりかねんからな」

 

 ワジの(もっと)もな質問にアリオスが答える。

 

 「そこまで・・・・・・」

 

 「ちょっとした小国の軍隊レベルの戦いですね」

 

 「数ある猟兵団の中でも“赤い星座”は別格と言えるわ。大陸全土にコネクションを持ち、紛争の兆しあれば即座に介入して自分たちを高く売り込む・・・。同じ猟兵団で匹敵しそうなのは“西風の旅団”ぐらいかしら?」

 

 受付嬢?もとい受付男ミシェルが知っている情報を告げる。

 

 「確か、ルバーチェの若頭の古巣だった場所だっけ?」

 

 「あっちもあっちで歴戦の猛者(もさ)どもが集まる猟兵団だ。特に“猟兵王”と呼ばれたトップは化け物みたいなヤツだったが・・・半年前に“闘神”うちの親父と相討ちになったらしい」

 

 ランディが苦々しく吐き捨てるように話す。

 

 「ランディ・・・・・・・・・」

 

 「ふむ、色々あったみたいだな」

 

 「一応、ギルドでもその情報は把握しているわ。ちなみに現在“西風の旅団”は活動を休止しているそうだけど“赤い星座”のほうは相変わらず、精力的に活動しているみたいね?」

 

 「伯父貴が残っているからなぁ。赤い星座の副団長、赤い戦鬼(オーガ・ロッソ)シグムント。闘神と猟兵王に匹敵するほどの化け物だ」

 

 「その三人は特に有名だろう。話を聞く限りでは俺ですら太刀打ちできるかどうか・・・」

 

 アリオスの弱気な発言にアドルを除く支援課メンバーに驚きが走る。

 

 「そ、そんな“風の剣聖”が太刀打ちできない?」

 

 「あんたも強いが伯父貴は化け物だ。殺り合うとすればお互い無事ではすまないだろう」

 

 「ああ、場合によっては敵対することも考えておかねば。だが、現時点での問題として彼らがなんの目的でクロスベル入りをしたかだが・・・」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 ランディがちらりとアドルを眺めたような気がした。『何を知っている?』と言わんばかりに。だがすました顔を崩そうともしないアドルに諦めたのかみんなと一緒になって考えに没頭する。ふと、何かを思い出したかのようにミシェルが口を開く。

 

 「一つ気になる情報があるの。共和国方面でアリオスが掴んでくれたんだけど・・・・・・」

 

 「えっ?」

 

 「どんな情報ですか?」

 

 「ああ、黒月(ヘイユエ)に関するものだ。どうやら現在、共和国政府が“黒月”の長老たちと何かの取引を行なっているそうだ」

 

 「それでね。もうひとつのポイントなんだけど、その取引を主導したのがキリカ・ロウランって女性なの」

 

 「へぇ、黒の競売会で見かけた黒髪のお姉さんか」

 

 「(っ・・・キリカ、一体何を企んでいる?)」

 

 アドルの顔が一瞬曇ったが、誰にも気づかれずにその顔を無表情に変えた。横ではアリオスが遊撃士協会と深い縁のある女性であることを述べているが、思考の渦に没頭しているアドルには半分ぐらいしか聞こえていなかった。

 

 「ま、まさか、帝国と共和国がクロスベルの地で代理戦争を・・・・・・」

 

 慌てた声を出したノエルに気づいて、それ以上考えるのをやめたアドルだった。それよりも、自分が把握している以上の情報がここで手に入るかもしれない。それは自分のマスター(クローディア)を守ることに繋がると考え一心不乱になって聞きに入った。

 

 「特に明日の通商会議ではエレボニアからは宰相と皇子、カルバートからは大統領が来るわ。お互い機に乗じてそれぞれのトップを抹殺するつもりかもしれないけど・・・・・・」

 

 「だが、それにしてはお互い、接触を隠していないのは不自然だ。仮に“黒月”や“赤い星座”が動けば、そうした背景が明るみに出て国際社会の非難を招き寄せるだろう。どちらにしてもそれだけのリスクを負うとは思えん」

 

 「多分俺たちがまだ手に入れていない【欠けたピース】があるはず・・・。それを掴む必要がありそうですね」

 

 「さすがロイド君、先回りされちゃったわね」

 

 「遊撃士協会でも同じような見解でな。総動員して情報網をあたっているところだ」

 

 「何かわかったらこちらに知らせてくれるのか?」

 

 「ああ、新しいことが分かったら警察本部に伝えよう。これからの三日間を何事もなく終わらせるためにも・・・」

 

 「了解しました・・・・・・」

 

 話が終わってしばらくするとツァイトが、キーアとシズクを連れてギルドに戻ってきた。これから父娘水いらずで過ごすというアリオスとシズクと別れたロイドら。アドルも立ち去ろうとした時アリオスはアドルに用事があったみたいだ。シズクをギルドに入れてからそこにいるのは二人だけ。

 

 「・・・」

 

 「何か言いたいことでもあった?」

 

 「アドル・・・さんは俺がこれからしようとしていることは・・・」

 

 「・・・・・・ああ、そういう事ね。分かっているさ。と言うか別件であの子と話したからな。それでも、俺が正しいとかアリオスが正しいとか言う必要はないと思っている」

 

 「だ、だったらアドルもこちらに・・・・・・」

 

 「待った!」

 

 何かを言いかけたアリオスを手で(さえぎ)り話す。

 

 「なぁ、アリオス?ちゃんと自分の足でしっかり立って、後ろ指差されないようにあの時こうしていれば良かったって、後悔しないように行動しなきゃいけないよ?」

 

 「・・・ええ、分かっているつもりです」

 

 「そっ?ならいいや。今度会う時は・・・敵対しているかどうかは分からないけれど、アリオスの示した道を見させてもらうよ?」

 

 「ええ、見てて下さい。負け続けは嫌ですから!」

 

 決意したアリオスを眺めそのまま家に急いだ。それはガラにもないことを喋って少し赤面していたからだ。誰にも見られたくなかったからだ。その後、ロイドやランディがシグとシャーリィと会っていたことを聞いて少し残念がっていた。それは・・・。

 

 「俺も高級クラブで飲みたかった・・・」

 

 どうしようもない理由がそこにはあった。

 

 

 

 

 ~リベール王国上空・高速巡洋艦“アルセイユ”~

 

 「・・・・・・いい風。この雲の流れ具合だと向こうも晴れなのかしら?」

 

 アルセイユのデッキに佇む可憐な娘、その名はクローディア・フォン・アウスレーゼ。通商会議に出席するためにアルセイユでクロスベルを目指している最中だった。

 

 「ピューイ」

 

 後方から鳥の鳴き声がし、クローディアの腕に器用に留まった。白いハヤブサの名前はジーク、クローディアの飼っているとは言っても友達のような存在。

 

 「ジーク、いつもご苦労様」

 

 「ピュイ、ピュイ・・・・・・」

 

 よく見ると足首にはメッセージカードが取り付けられていた。それを見つめるクローディアの眼差しが段々と鋭いものになった。 

 

 「やっぱり、共和国方面でも火種がくすぶっているみたい。そして黒月の存在と大陸有数の猟兵団の介入・・・・・・やはり“鉄血宰相”の配下として働いているのは・・・・・・レクターさん?」

 

 「ピュイ?」

 

 「なんでもないわ。明日は北東に向かうから今日はこのまま船に乗っていてね?いくらあなたでもさすがに外国まで付いてくるのは大変でしょうから」

 

 「ピューイ」

 

 腕から離れてアルセイユで羽根を休めたジーク。そこに扉が開き、もう一人の女性が登場した。

 

 「殿下。こちらにいらっしゃいましたか」

 

 聞こえてきたのは凛々しい声。名前をユリア・シュバルツと言う。

 

 「ふふ、風に当たりたくなって。どうやら明日からの会議で少し緊張しているみたいです」

 

 「ご冗談を・・・。おやジーク来ていたのかい?」

 

 「ピュイ、ピュイ」

 

 「これを。R&Aリサーチからの手紙を届けてくれました」

 

 「リシャール殿からの。拝見させていただきます」

 

 手紙を両手で受け取り向かい合ったまま、後ろに下がる。

 

 「急進的な民族主義者・・・・・・それに共和国政府の動きですか。どうやら想定外の事態が各方面で進行しているようですね」

 

 「ええ、皇子と会ったらそのあたりも相談しないと。それとちょっとしたツテを頼らせてもらうかもしれません」

 

 「ツテですか?」

 

 「ええ、本当に頼ってもいいのか見極める必要がありますけど。もしかしたら私たちの助けになってくれるかもしれません」

 

 「ああ、エステル君たちが言っていたという・・・。なるほど当たってみる価値はありそうですね」

 

 「ええ・・・・・・」

 

 そして二人と一匹は夜空を見上げる。そしてふとユリアが呟く。

 

 「そう言えばR&Aリサーチでも分かりませんでしたね。クロスベルで就くとされている新しい護衛の正体・・・」

 

 「そうね。私も少し期待していたのだけれど『かなりの情報規制により見当つかず、申し訳ありません』とあったわ」

 

 「ピュイピュイ・・・・・・」

 

 「何かジークは知っていそうですね」

 

 「フフ、そうね(まさかアドルさんではないでしょうね)」

 

 「殿下・・・・・・私はアドルさんではないかと思っております」

 

 「っ!ユリアさんもですか?」

 

 「はい。アリシア女王によって規制がかけられているという状態を察するに、そのような結論に達したわけですが殿下も同じような事を考えていましたか・・・・・・」

 

 「少し期待してしまうのが私たちでしょう?全ては明日分かることですから・・・・・・」

 

 「ええ」

 

 もう一度夜空を見るが二人が思い出すのはリベール王都にいたアドル・マオの存在だった。いつの間にか通商会議に対する不安、緊張はどこ吹く風の如く消えていたのだった。

 

 「せっかく私たちの間にあった誤解が解けたのですから、そのまま何も言わずにいなくなったアドルさんにはそのツケを払ってもらいたいものですね・・・」

 

 「殿下・・・。ええ、私もそう思っております」

 

 





 アドルとアリオスは、模擬戦を繰り返し行なうほどの仲良しです。しかしアリオスは、一度も勝ったことがないという設定です。

 なろうに上げている話は修正して投稿し、その後番外編で書くかどうか迷ってます。見てくださっている方に感謝します。

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