最初のほうは原作通りで進みます。
特務支援課ビルを出たロイドたちを出迎えたのは、一匹の白い鳥だった。
「あれ?」
「鳥の鳴き声・・・?」
ロイド、エリィが空を見上げる。すると一直線に飛んできて、グルグルとロイドらの頭上を回りそして柵に止まる。
「白いタカ・・・?」
「いや・・・ハヤブサみたいだね」
ノエルの疑問にワジが答えた。
「おいおい、なんだってこんな街の真ん中で・・・・・・」
ランディは驚きを隠せないでいた。
「ピュイ、ピュイ。ピューイ!」
「も、もしかして俺たちに用事があるのか?」
何かを言おうとしているのは分かるが、ティオがいないと言っている言葉が分からない。どうしようかと迷っているとビル内からキーアが出てきた。
「あれー。どうしたのー?わぁー白いトリだぁー。クチバシも尖っててカッコイイー!」
駆け寄ってきて、柵に止まった鳥を見て目を輝かせ興奮する。
「ピューイ♥ピュイイ、ピュイ、ピュイ♪」
「ふむふむ。なるほど、そうなんだー」
「(キ、キーア。やっぱり判るんだ)」
「(す、すごいですね)」
ロイド、ノエルがキーアの様子にぴっくりする。
「えっとね、この子ジークって言うんだって。ロイドたちに伝言があるから、受け取ってって言ってるよー」
「そ、そうなのか・・・・・・?」
「おっ、確かに脚のところにメモが括りつけられているな」
ランディの指摘通り脚にはメモが括りつけられていたので、ロイドはそれをジークの脚から取った。
拝啓 クロスベル警察、特務支援課様
皆様の評判を耳にして不躾ですが連絡させていただきました。
もしお時間があれば内密に相談に乗っていただけないでしょうか。
本日夕刻、クロスベル空港待ち合いテラスにてお待ちしております。
追伸 もしご都合がつかない場合でもご返答はいただかなくて結構です。
「・・・・・・・・・」
呆然とするロイド。
「こ、これって・・・・・・」
「内容といい、差出人不明といい、怪しすぎますけど・・・・・・」
「でも綺麗な筆跡だし、文章も丁寧な感じだね」
「何よりも、メモに押されているその白ハヤブサの紋章は・・・・・・」
エリィ、ノエル、ワジ、ランディの順番に言いそして目の前に止まっているジークを見た。
「ピュイ、ピュイ、ピューイ」
ジークは飛び立ち、そのまま来た方向を引き返してゆく。
「えっと、ジークは何て言ったの?」
「んーと、行くも行かないもロイド次第だって・・・・・・」
「そっか・・・・・・。ありがとう、キーア」
「うんっ」
ロイドはキーアから伝えられた伝言を受け何かを考えているようだ。
「ど、どうするの?まさかそんな訳はないと思うけど・・・・・・」
「あぁ、さすがになぁ~」
「あはは、いやが上でも期待しちゃうよねー」
ロイドが出した答えは・・・・・・。
「せっかくのお誘いだ。ここはお受けしておこう」
「さすがに正装して行かなくてもいいと思うが・・・」
「き、緊張しますね」
「よくわからないけど、がんばってねー」
ロイドは行くことに決めたようだ。キーアの後押しを受けて夕方までにすべての用事を終え、クロスベル空港の待ち合いテラスに向かうことにした。
さてところ変わってアドルの方はというと、旧市街にある自宅で黙想していた。それはリベールにおける勘違いからの別れや、それ以前のユリアとクローディアとの楽しい時間の全てを思い出し想いを整理するためだった。これから仕事として二人に会うので、公私混同せずに果たすことが出来るかを黙々と考えていた。
「クローゼ・・・。ユリアッ・・・。俺は仕事・・・として割り切れるだろう、か?」
窓から外を見ると、段々と太陽が下がり夕刻へと近づいているのを確認することができた。それで身元を証明する書状を持ち外出することにした。
空港に行き、アルセイユに近づくとユリアとは別の見たことのない王国親衛隊が立っていた。
「何者だ・・・?」
「アリシア女王の命令により、クローディア王太女の護衛に就くことになった。証拠の書状はこのとおり持参した」
「っ・・・?か、確認した」
しどろもどろになる親衛隊の誘導によってクローディアの元に行くことができた。
「失礼します。アリシア女王より護衛の任に当たる人物を連れてきました」
「っ・・・・・・。ど、どうぞお入りになって」
少し慌てたような雰囲気がドアの外まで漂ってくる。そしてすぐに入室許可の声がかかったのでそこからはアドル一人で入ることになった。
「失礼します。・・・護衛の任を
一礼してから部屋の中に入る。するとそこには目を潤ませたただの少女がいた。失礼、クローディア姫だが泣き出してアドルの胸の中に収まる様子は年齢相応の少女だった。
「ア、アドルさんだぁ・・・。ゆ、夢じゃないですよね・・・?あ、あの時からずっと言いたかったのに言えなかった事とか、どうしていなくなったのぉ?」
ポカポカと両手でアドルの胸を叩くがそれには力が入っておらず、痛くもなかったがアドルの心には響いたようだった。
「ごめんなぁ。俺も未熟だったから分からない事があれば少しでも遠くに逃げようとしたんだ」
「ば、ばかぁぁ・・・・・・・・」
「ゴメンな・・・」
泣き止むまでそのまま胸を貸していたが、空港のほうに感じ慣れた気配が5つと、ユリアの気配を感じ取った。
「そろそろ泣くのを{止《や》めてくれ・・・」
「ふえっ・・・ど、どうして?」
「アルセイユに俺以外の誰かを呼んでいるんじゃないのか?」
「・・・・・・あっ、そうでした。支援課の皆さんとオリビエさんたちを呼んでいるんですよ」
「縁があるなぁ。クローゼ?こっちに顔を向けなさい」
クローゼと呼んでいるのは最初にクローディアと呼んだ時に『昔のように言ってください』と懇願され仕事以外でなら良いとした。仕事中はクローディアと呼ぶ。
「ふえっ?んっ。な、なに?」
「ほら・・・、じっとして。涙を流しすぎたせいで、少し顔が赤くなっているから今のうちに誤魔化しておこうと思ってさ・・・。ほら元通り。可愛いクローゼの出来上がりだよ」
「も、もぅ。冗談ばっかり言っちゃってー」
頬を膨らませて、『私、怒っているんだよ』と言わんばかりのアピールをしているが、それも笑いのツボに入ったアドルだった。それはロイドたちが部屋の外に来るまで続いた。
『殿下、失礼します。特務支援課の諸君をお連れしました』
外から凛とした声が響いてくる。ユリアの声だ。少し離れていたが変わっていないのだろうか。不安が脳内をよぎっていたが、それを緩和してくれたのが横に座っていたクローディアだった。
『大丈夫だよっ』と言って緊張している俺の顔を覗き込んだ。それだけで救われた気分だ。俺が落ち着いたのを見てからクローディアはユリアに返答する。
「どうぞ、お通ししてください」
「は、はい・・・」
ロイドの緊張した声も聞こえてくる。5人の次にユリアが入ってきてアドルを確認するや、驚きの表情を浮かべた。そばではクローディアが自己紹介をしていたので、ユリアも迂闊なことを言えないでいた。
「(パクパク・・・。ど、どうしてアドルさんがここにいるの?)」
しかし、声に出せない口の動きで何を言っているかが分かったので簡潔に一言だけ言っておいた。
「(護衛・・・)」
なるほど。と納得したような様子。どうやらアドルが不安がっていたような雰囲気にはならずに済んだようだ。それぞれの自己紹介が終わったようだがもう一人ここに呼ばれていうようだがまだここに来ていないことを聞いた。
「(ミュラーさんか?)」
アドルの予想は当たっていたようだ。飄々とした声が部屋の外から聞こえてくる。リュートの響きに合わせて、オリビエとミュラーが入室してくる。
「クローディア殿下、遅れてすまない。いつものようにこの
ミュラーが遅れた理由を説明している。
「あら、まぁ・・・」
「フッ、改めて紹介しておこう。エレボニア帝国。皇帝ユーゲントが名代。オリヴァルト・ライゼ・アルノールだ」
金色に輝く髪の毛をかきあげて自分の名を高々と告げる。
「いや、有り得なくねぇか?」
「遺憾なことに本当でな。帝国軍。第七機甲師団所属、ミュラー・ヴァンダール少佐だ」
ランディのツッコミに冷静に自己紹介したミュラーだった。
「で、どうしてここにアドルがいるんだ?」
ここでロイドが我に返ったように、クローディアの横に座っているアドルに気がついた。
「
「え、ええ。私ももしかしたらと思っていましたが、まさか本当に会えるなんて。夢のようです」
ユリアの両目にも同じように涙の粒が溜まっていたが、二人きりではないので敬礼する時に涙を拭って潤んでいる目を隠した。
ここから支援課とクローディアとの密談が開始されたわけだったが、そこに一緒にいることをアドルは辞退した。それは・・・。
「悪いが私はここで部屋の外に出ようと思う。許可して下さるか?」
「理由をお聞かせいただけないでしょうか?」
確固とした決意を
「なに・・・簡単なことさ。俺は“赤い星座”とも昔親交があったからな。それに他にもこの場では言えない事情があってな。辞退させていただく・・・・・・」
「ランディ・・・、アドルの言っていることは本当か?」
「ああ、俺がやっていた頃アドルと猟兵王が戦っているのを見ている。それに俺やシャーリィはアドルに良くも悪くも惚れたみたいだからなぁ。俺が知らない間に、会っていそうだ」
「着眼点は合格ってところだな。あと猟兵王とは戦ったんじゃなくて、じゃれ合っただけ・・・。間違えないでくれよ?」
「・・・・・・・・・」
そう言うと一同が唖然とした表情を浮かべて言葉を失った。
「俺はクローディア殿下側だが、用心しておいたほうがいい。私はこの通商会議中はクローディア殿下が安全な状態に至るためにどんな犠牲でも払うつもりだ。そのことは数日前に“赤い星座”に警告しておいた。もし手を出したら傭兵団の一個や二個は壊滅するだろう・・・。」
――ま、被害などは考えないと思うがな・・・――
そのあとに飛び出してきたセリフには、更に一同アッと驚く展開だった。
「そ、そんな。あなたは他の市民がどうなっても良いとでも言うんですか?」
「極端な言い方をすればそうなるな。・・・でも別に大したことではないだろ?」
ノエルの興奮気味の質問にも冷静に答えるアドル。
「アドルさん。そのように言って下さることは、嬉しいことは嬉しいんですが・・・。可能であれば私だけじゃなくてクロスベル市民も守ってくださると嬉しいです?」
はにかみながらクローディアがそう答える。その表情は俯きながらも嬉しそうだ。
「善処します。・・・ですがどうしてリベール王国の貴女がクロスベルの為にそう仰るのかがよく分かりかねます。・・・すみません。少し頭を冷やしてきます。しかし貴女が呼ばれる時にはすぐそばで貴女を、守ります。失礼します」
そう言うと、アドルは自分の影に身を隠しその影もスッと消えて、その場には理解していないほかの連中が残された。
「す、すみません。さて本題に入りましょうか」
「え、ええ・・・・・・」
「ゴメン、クローゼ・・・。俺は忘れたつもりは無い事が一つだけあるんよ。それは・・・俺の長きに渡る人生の中で辛かったが、それでも忘れられないキーアとの日々なんだ。キーアが歩む道が茨の道であるならその棘ごと潰してやる・・・」
最後の文章は私自身書いていて分かりにくかったですが、これからの伏線となりつつある事柄ですので大目に見てください。