リーシャ視点で始まる過去話です。
私には家族がいた。いた・・・と言う言い方は違っているかもしれない。と言うのも3歳の時に父親に連れられて、代々続く仕事を教えられたからだ。私には母親、父親そして多分だけれど兄がいた。母親は元々病弱だった為に私が連れられてからすぐ亡くなったと聞いている。家があったところに土葬したと思われるこじんまりとした墓を見つけたからだ。
だけど、兄の墓は無かった。その近辺をよく通る人の話によると、母親が亡くなってすぐにこの家を旅立ったというのを聞いた。だから生きているはず・・・。
私は父が引いたレールをそのまま辿っているのだろう。東方人街で知られている
そしてしばらくして父が亡くなった。よく分からない言葉を残して・・・。私はその後至るところを旅していた。それは多分、無意識の内に兄を探しているゆえの行動だったと私は思う。そしてクロスベルではイリアさんに出会った。最初は劇団に入ることを拒んでいたが、
最初は辛かった。夜、
そんな時だった。噂で裏の凄腕暗殺者を知ったのは・・・。同じ東方人街出身ということもあって直ぐにではないけれど、二言三言は会話するようになった。その頃からかもしれない・・・、私が、幼い時別れた兄の夢を見るようになったのは・・・。
「おにいしゃーん。ま、まってよぉ~・・・。あぅっ」
――ドテッ――
「あ~も~、そんなに急がなくても俺はここにいるよ。リー坊?」
優しい兄は私が慌てて転ぶと横に来てくれて、転んで汚れた服を払い立ち上がらせてくれた。
「エ、エヘヘヘ・・・(キラキラ)」
「ったくしょうがないなぁ・・・。ほらこっちにおいで・・・・・・」
何かを期待するかのような表情を浮かべるとすぐに抱っこ、もしくはおんぶしてくれる。そんな優しい兄に憧れていたのかもしれない。それに幼いときにありがちな夢も持っていた。
「おっきくなったら、にいちゃまのおよめさんになるのっ!」
「そうか・・・・・・」
――ナデナデ・・・・・・――
だけどそう言うと兄は決まってどこか冷めたような表情を浮かべ、その表情を隠すように頭を撫でてくれたものだ。その時は分からなかったが、私か兄にこれから将来忍び寄るだろう仕事を継ぐ事を考えていたのだろう。
父と兄はたまにフラリといなくなり数日後に帰ってくることを繰り返していた。帰ってくるといつも父は兄を叱りつけ呆れ顔をする。変わった事と言えば、それは私が二歳ぐらいの時だっただろう。
「ヒック・・・・・・、ヒック・・・。お、おにいしゃんはどこぉ?」
「もうすぐ帰ってくるから安心して寝てていいのよ」
その時は母と二人きりで過ごしていたのだが、母も私が顔を覗き込むと険しい表情を浮かべておりそれに私が気づくと何でもないかのように取り繕った表情をした。
「お、おかぁさん・・・・・・?どうしてそんなにこわい顔をしているの・・・?」
「っ。な、何でもないわ。さぁ、リーシャは早く寝ないと。お父さんとア○○が帰ってきませんよ?」
「そ、そんなこと・・・ないもん。わたち、ちゃんとねるもん!」
「ふふふ、良い子ね・・・」
あれ、あの時母さんは兄さんの名前を何て呼んでいたっけ・・・・・・?ア※※何とか。思い出そうとすると何か記憶に鍵がかかっているかのような・・・。そういえば父も私に何かやっていたっけ。あれは母と兄と別れて数年後だったっけ。
「ご苦労だったな。偵察とはいえちゃんと職務を果たしてきたようでなによりだ」
「ありがとうございます」
「今日はお前の力を強めるように余計な思い出に鍵をかけようと思う。お前にとって余計な思い出はあるか?」
「・・・・・・えっと。分からないです」
「そうか、なら先にロックをかけようと思うが異存無いな?」
「・・・はい」
私の頭の上に父の手が置かれる。あれ・・・?今何か思い出したような。温かい・・・手?あ、あれ?誰だっけ・・・・・・。ううん、私の頭の上に手を置くのは父が最初。誰もいない。私に必要なのは・・・父親だけ。それ以外は必要ない物。父の手・・・冷たい。うん、私はこれからもずっと独り。
「ごめん、アドル。私はお前がこの家の息子でないことを薄々わかってたんだ。それでも男の子が欲しかったから、うやむやにしてそのまま問題を伸ばし続けていた。見知らぬ男の子が私たちに何か術式をやったのは覚えている・・・」
あれから数年後には父親は仕事を私に任せ、突然引退宣言をして私に
そうして現在に至るわけだが、最近妙に思い出したい思い出があるらしく頻繁に幼い時の夢を見る。最初はつぎはぎだらけの夢だった。だけどこのごろ、兄さんの名前を思い出してくるようになった。それと私の呼び方も。
リ、リー坊だっけ・・・?フフフ・・・、今考えると恥ずかしいけれどこの呼び方は世界でたった一人だけ。そう世界で最も信頼するお兄ちゃんだけ。クロスベルにいて情報屋をやっているアドルさん。その横顔が兄と被るのはなぜ?早く確かめたいなぁ。
そう思うと最初の一歩が踏み出せずにいる。モヤモヤした記憶でもどかしさを感じているけれども、この気持ちは一体何なのだろうか?
アドルにとって父親は冷酷なイメージでしたが、アドルが記憶操作していることに気づいておりそれをふまえて息子同然に過ごしていました。
あとリーシャの記憶に鍵をかけた父親ですが、自分が亡くなる前にそれを解き兄の事を思い出しそうになってますが、いたのかいなかったのか・・・そこが不明瞭な点です。
いつ、形だけの兄妹と名乗りを上げるかそこは「なろう」で上げていた作品と大きく変化している箇所なので、自分自身さまよいつつ執筆している最中です。