銀の兄【修正版】※半分凍結中   作:泡泡

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 やっと秋らしい天気が続いている毎日です。皆さん如何お過ごしです?


水上バスにて・・・

 その後、ホテルに戻り疲れた体に冷たいシャワーを浴びてスッキリさせてから眠りにつくことができた。そして遅い朝食を取った後、水上バスに乗りひと時の休息を終えるのだった。アドルにとって実りの多い休息になったことは間違いなかった。偶然、ロイドたちとも乗り合わせたが疲れているのか声をかけてくることはなかった。

 

 「ふぅ・・・・・・」

 

 水上バスの二階の部分、風の通りが良い場所に陣取って昨晩ミシュラムで起きた出来事を振り返っていた。濃い夜だった。リーシャと再会して、キーアの半覚醒状態と出会うことができた。

 

 「おにぃty・・・・・・アドルさんも一緒でしたか?」

 

 後ろから控えめな声がかかる。見知った、それも昔いつも聞いていた声だった。そして昨晩と同じ声だったから振り向かなくても分かる。リー坊の声だ。

 

 「おやおや、リーシャですか。あなたと一緒に帰れるなんて、夢のようですね?」

 

 まだ、兄妹と言いたくなかった。恥ずかしいとリーシャが言ったためだ。もう少ししたらみんなに打ち明けたいと言ってたが、この件に関してイリアさんの口止めが難しかったらしかった。

 

 

 ~朝食後~

 

 朝食後に偶然二人と会ったアドルだったが、ニヤニヤするイリアさんと、その様子を見て恥ずかしそうに柱の裏に隠れようとするリーシャがいて混沌(カオス)だった。

 

 「ほれほれ、どうだったの?昨晩再会して・・・・・・どうだったの?おねーさんに包み隠さず話してみなさいな!」

 

 「え、えーっと。ま、まぁ久しぶりに兄妹の絆を確かめ合うことができましたよ」

 

 「もっと面白いコメント出来ないの?」

 

 イリアの暴走が止まらなくなってきた。柱の裏に隠れようとするリーシャを引きずってきて俺の前に連れてきて話させようとするのだ。

 

 「・・・・・・あぅ。お、おはよー?・・・・・・お、お兄ちゃん・・・。はぅー・・・」

 

 「お、おぅ。おはようリー坊。昨日ぶりだな?」

 

 「う、うん。・・・・・・・・・」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 こんな具合に夜は月に魅了されていたのか、あんなに喋っていたのに朝起きてもう一度出会ってみると、二人の様子は違うものとなっていた。

 

 「あんたたちを見てると漫才が出来そうね。ね、ね、やってみない?」

 

 イリアはイリアでむちゃくちゃな発言を繰り返していた。それも耳に入ってこないぐらい、緊張の渦に取り込まれていたのだ。しかしここでアドルはふと気づいたように言う。

 

 「そういえばここのフロアには誰も泊まってないはずだが、どうして二人はここに来たの?」

 

 「昨日の密会からアドルもここに泊まってるはずと思ってね、どこにいるんだろう?ってリーシャが気にしすぎるもんだから探しに来たのよ。リーシャの普段着を見れて嬉しいでしょ?」

 

 そういう事か、と思ってまじまじと正面に立つリーシャの服を見てみる。

 

 「ふむ・・・・・・初めて見るが可愛いな」

 

 自分の心に思っていたことを言葉にして出てしまった感想は、ストレートすぎるものだった。それはリーシャの顔を真っ赤に染めるのに十分のダメージだった。

 

 ※作者の表現不足ゆえここで着ているリーシャの服についての補足情報です。ベトナムのアオザイをイメージしてください。上部は白に花柄。スカートは淡い水色でゆったりとした雰囲気。

 

 

 「ほほぉ~。可愛いだってさ。リーシャ良かったね?って。あ、あれ?」

 

 「直立不動で気絶・・・してますね?からかいすぎたでしょうか?」

 

 「あまり異性から言われることのない殺し文句だったから、すんなり心を打ち抜いたんでしょ?あとのことは私が見ておくわ。邪魔したわね」

 

 「いいえ、朝から楽しい思い出が作れたので邪魔とは思いませんよ」

 

 「そう?それは良かったわ」

 

 イリアは自分の肩にリーシャの腕を絡ませ、顔を真っ赤にして気絶しているリーシャを半ば引きずる形でそこから出て行った。

 

 バタンと扉の閉まる音が聞こえてアドルは一息ついた。それは疲れた時に出る溜息ではなく、嬉しさを実感したいのに、現実についていけないことに対する一息だった。

 

 「どうしてこんなにも俺の心を揺さぶるのだろうか。これが家族なのかな。でもこれはどうにも出来ない問題だ。過去は変えられないもの・・・。リーシャ()本当の妹だったら良かったのに」

 

 心の中を整理したが、それでも中々落ち着けないアドルだった。

 

 ~水上バス内~

 

 「どうしたの?あ、俺と話したいことでもある?隣り来るかい?」

 

 「・・・・・・うぅ(コクン)」

 

 頷いたあと、リーシャは俺の横に座った。そのまましばらくの間、沈黙が続いた。心地よい風が二人の間を通ってゆく。

 

 「気持ち・・・・・・いいですね?」

 

 「ああ、そうだね」

 

 やはり世間に隠したままで過ごすのは無理があるのだろうか。俺は会話する時の口調の固さに無意識に口を歪めていた。

 

 「私といると苦痛ですか?さっきからずっと怖い顔をしてますよ?」

 

 「いや、これはなんでもない。・・・ワケじゃないか。あのなー、もう少しリラックスして喋れないだろうか?隠したままだったとしても友達のような、そんな関係とか・・・どうだろう?」

 

 「あっ・・・・・・そうですね」

 

 俺が何を言いたいのか分かったのだろう。他人行儀の話し方は、リーシャにとっても苦痛だっのだろうか。深呼吸をしている二人。その光景は少し異様だった可能性がある。

 

 「なぁリーシャ?」

 

 「なんです、アドルさん?」

 

 丁寧だがそれでも少し落ち着きを取り戻し、口調は柔らかなものと変化していった。

 

 「俺が住んでいるところ知ってるか?」

 

 「もしかして・・・私の隣?」

 

 「ああ、そうさ」

 

 「いっつも、いないところ?」

 

 「(ククッ)ああ、そうだ!」

 

 段々と話しているうちに堅っ苦しい言い方が無くなり、友達感覚で話せるようになっていた。他愛もないことを話していると、昔から知っているかのような感覚に陥る。いや、昔に戻ったかのような、そんな気分。

 

 それから数十分話したあと、リーシャは階下に戻りイリアのところに行くみたいだ。それでアドルはリーシャと別れることにした。すぐにでも再会できるから・・・・・・と言って。それからすぐの事だ。俺の前にはロイドがキーアと話している。

 

 「ふんふふーん♪」

 

 「キーアご機嫌だな。色々とあったけどキーアは楽しめたか?」

 

 「うんっ!またみんなで一緒にお出かけしたいねー。今度はアルモリカ村とか・・・」

 

 「はは、いいかもしれないな・・・・・・」

 

 嬉しそうにキーアと話すロイドだったが、いきなり難しい表情を浮かべて考え込んでいる。

 

 「んー?ロイド、どうしたのー?」

 

 「いや、なんでもないよ。・・・・・・それよりキーア。本当に昨日の夜、変なヤツを見かけたりしてないんだな?ピンク色の服を着たヤツとか」

 

 「んー、見かけてないと思うけど。キーア寝ぼけてたみたいだから、ちょっと自信ないかも」

 

 「そっか、それならいいんだ」

 

 キーアがどうしてあそこに(鏡の城)いたのか分からないのでロイドとしては、身喰らう蛇(ウロボロス)のカンパネルラが連れ出したと思っているのだろう。

 

 「あら、こちらにいましたか」

 

 キーアとロイドが話しているところに、マリアベルがやってくる。

 

 「あっ、ベルだー」

 

 「マリアベルさん。どうも、お疲れさまです」

 

 「ふふ、お疲れ様はあなたたちの方でしょう。しかし“結社”と言いましたか。ふざけた連中もいたものね。わたくしの人形を(さら)ったのもそいつらの一員と言う話ですし!これは保安部の警備体制を徹底する必要がありそうね・・・・・・!」

 

 少し感情的になりつつ話に熱がこもるベルだった。どうやら、怪盗Bと世間で呼ばれている人物が結社に所属するブルブランと同一人物らしく捕まえたいのが本音【?】だろう。

 

 「そ、そうですね・・・・・・」

 

 多少引きつった表情を浮かべてマリアベルと会話するロイドだった。

 

 「それはそうと、キーアさん。ロイドさん。ふと思ったのですけど、皆で記念写真を撮らない事?」

 

 「ああ、いいですね!」

 

 「えっと、記念写真って前にみんなでいっしょに撮った?」

 

 「ああ、みんなと一緒の思い出を写真に残しておくものさ。それを見れば、今回のバカンスをいつでも思い出せるってわけさ」

  

 「うんっ!撮りたーい!」

 

 ひときわ大きなキーアの声で、その記念写真を撮りたいと言う思いが伝わる。

 

 「決まりですわね。・・・・・・そうなると船内よりも甲板(こちら)のほうがいいかしら?」

 

 「そうですね。せっかくのいい天気ですし。俺、みんなを呼んできますよ」

 

 「ええ、お願いします。それと船内にいる添乗員に声をかけてください。記念写真のサービスならすぐに受け付けてくれますわ」

 

 「分かりました」

 

 ロイドは皆を呼ぶために船内へと向かう。その途中――

 

 「あ・・・・・・・・・」

 

 キーアは小さい声を漏らす。ロイドに向かって右手を伸ばすが、それのキーアの声と手にロイドが気づくことはなかった。そしてそのままロイドの姿は階段の方へ消えた。

 

 「・・・・・・・・・」

 

 「ふふっ・・・・・・、大切な人に余計な心配をかけたくない。いい女は大変ですわね?」

 

 「!」

 

 今までの口調とは打って変わって表情も一変。真剣な面持ちでキーアに語りかけるマリアベル。

 

 「何か悩みがあるのでしょう?わたくしならば力になれるかもしれませんわ」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 キーアは予想外の出来事に固まっている。

 

 「おいおい、そんな話し方じゃあ悪人かと思われるぞ。ベル?」

 

 「あら、アドルさんもいらっしゃったんですか。気づきませんでしたわ」

 

 心底驚いたかのように後ろを振り向くマリアベル。そこには、神妙な面持ちでベルと対話するアドルの姿があった。

 

 「気配を消していたからな。それにしてもその誘いは無いと思うぞ?そんな話し方だったらただの悪人だぞ?」

 

 「・・・・・・そうですわね、一理あるかと思います。ではどう言えばよろしかったかしら?」

 

 「うーん・・・・・・?それは自分で考えたらどうよ?俺はベルが道を踏み外さない限り助力してやる。それに・・・・・・」

 

 「それに・・・・・・なんですか?」

 

 「俺を手元に置いていたほうが良くね?」

 

 覗き込むようにベルのほうを眺めて少量の力を解放。感情を操作して不安を抱きやすくし、懸念を無くすためにアドルの力が必要と思わせる。

 

 「そ、そうですわね。あなたの力も必要かもしれません」

 

 パーッと明るい表情(操作された表情)を浮かべるマリアベルだった。

 

 「だが、キーアに無理強いはするな。あくまでもキーア自身が決定するまで待つんだ」

 

 「え、ええ。分かっていますわ」

 

 加えて母性本能をくすぐり、キーアを大事に思うように仕向ける。これがどこまで作用するかはまだ未定だが、良い方向に進んでくれればそれで良しとしよう。

 

 「キーア?」

 

 「ん、なーに?」

 

 首を軽く横にかしげ見つめてくる。それでキーアの顔と同じ高さまで屈み、優しく話しかける。

 

 「キーアに無理矢理させようとは思ってないよ。キーアが自分で考えて大切な人を守りたいって思ったらベルに連絡して。キーアにはその為の力があるんだよ?」

 

 「うーん・・・・・・。よく分かんない。けど、キーアが自分で決めていいんだね?」

 

 「ああ、そうさ」

 

 頭に手を置き、優しく撫でる。

 

 「んぅ・・・・・・。エヘヘヘ・・・。ふにゅーぅん・・・・・・(あったかい?それにこの頭を撫でられる事、昔誰かがやってくれた?誰・・・?見えない顔は誰?)」

 

 完全に安心しきっているようだ。それに信頼もしてくれた。

 

 「見事ですわね。あなたに関して、過去に遡って歴史を調べているんですがどこを見ても無いんです。あなたは一体何者ですの?」

 

 警戒、怯えとは別物の(おそ)れを抱いて聞いてくる黒幕の一人ベル。

 

 「今はまだ・・・・・・。しかし振るう時が来ればその時は・・・いずれ」

 

 クルリと向きを変えてその場を後にするアドルだった。しばらくすればこの場にロイド達が来るであろうことは明白だったからだ。キーアたちがいるほうとは反対側の手すりにもたれて空を眺めてみる。

 

 「うん、いい天気だ」

 

 この介入にはアドルなりの考えがあった。それは、何気なく()た時ベルがキーアに無理強いする光景(ビジョン)が飛び込んできたからだ。それを見た時リーシャとイリアにも気を配りつつ、可能な範囲でキーアにも影ながら見守ろうと思っていた。

 

 「(早く思い出してくれ。思い出さないとキーアに対する負担も大きい・・・。どうにかして思い出してくれないと・・・。これからの事が不安材料が多くありすぎてどうも視れない・・・・・・)」

 

 横目で(キーア)を見ながらそう思っていたアドルだった。




 原作プレイ中驚いたシーンでした。まさかのボイスと正面向いたベル有り。ベルが中心人物になるんだろうなーって思いながらワクワクしたものです。

 さて今回アドルが使った力のことですが、これは心を操作する力です。しかし強引にではなく例えば・・・敵対心を持っている対象の心を友好状態に持っていくとか、これからこうしようと決定しているのに違う決定をさせる、といった具合の力です。

 強引に心を捻じ曲げる事も出来ますがそうすることはないと思います。


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