銀の兄【修正版】※半分凍結中   作:泡泡

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 あと一週間で発売。・・・何が?ってそれは・・・


影で支える者

 

 『じゃあ、ここらで一旦休憩しましょう』

 

 アルカンシェルにイリアの声が響き、小休憩となった。それでアドルも気配を隠す必要はないと思って舞台袖でリーシャを待つことにした。ほどなくしてアドルに気づいたリーシャは・・・。

 

 「っ。お兄ちゃーんっ!!(抱きっ)」

 

 やっと会えてもうどこにも行かないでと言わんばかりの雰囲気を出すリーシャに、そこにいた劇団員は誰もが苦笑いを浮かべるハメになった。

 

 「おっ、おいおい・・・・・・」

 

 口では嫌がりながらも、抱きついてきた偽妹《リーシャ》を優しく抱きしめそのままの状態を保ち続けた。

 

 「リーシャ姉・・・・・・」

 

 「シュリもお疲れ様」

 

 「ああ、でもリーシャ姉をこんなに骨抜きにするなんて兄貴はすげぇな!」

 

 舞台袖に来たシュリに声をかけるとそう返答する。俺のことは、兄貴と言って慕ってくれるシュリだが最初は揉めたものだ。詳しく言うと、シュリの呼び方にリーシャが反応してしまってにっちもさっちもいかない状態になったのだ。その時はイリアさんがその場を静めたのだがそのまま、呼び方に関する火種は燻りつつあった。

 

 「リーシャ、駄目だよ。ちゃんと教えなきゃ・・・・・・」

 

 「うぅ、だって・・・・・・」

 

 シュリに対するリーシャの教えは的確と言えるが、今回に限っては大雑把すぎる。リーシャが口でうまく言えないのもその理由となっているが、それでも後輩に当たるシュリを大切にそしてうまく育てないといけなかった。そしてそれを肴にリーシャは俺に対してグレるのだった。

 

 『master(マスター)・・・・・・』

 

 誰もいないはずの暗がりから声がする。アドルの配下の者だ。

 

 「どうかした?」

 

 『いいえ、赤い星座が動き出しました。それと支援課も幻獣を二箇所で打ち倒しました』

 

 「そうかい・・・・・・」

 

 見張ってもらっていた赤い星座が動き出した事と、支援課はアルカンシェルから立ち去ったあとすぐに幻獣を倒したという情報を聞くことができた。

 

 『いかがいたしましょうか?』

 

 「そうだな・・・。支援課は放っておいてもいいだろう。別に俺たちの邪魔になるようなことはないだろうし・・・。問題は赤い星座の方だな。だがそのまま見張れ。そして見つかったらそいつらだけ消せとは言わないが邪魔ぐらいしてもいいんじゃないか・・・」

 

 『了解致しました。master(マスター)

 

 それっきり気配は消える。しかしそれでさえ気配に聡いリーシャも気づくことは出来ない。少し離れていたとはいえ気づくことが出来ないのは異常な事と言える。それは中期の犠牲者だから・・・・・・と言っておこう。隠密性、暗殺者として人工的に育てられた()()は廃棄処分として捨てられそうになった時に、アドルが助けてからアドルに尽くすようになった。 

 

 「全くこの世というのは、救えねぇ事ばかりだなぁ・・・・・・」

 

 別れることを極端に嫌がるリーシャと別れて、外に出てきたアドルは澄み切った青空を見上げながらそう呟くのだった。

 

 先ほど別れたとは言え、情報交換をする必要性を感じたのでアドルの事をmaster(マスター)と読んでいた彼女を呼び寄せることにした。エニグマで連絡を取るとすぐに繋がった。

 

 「・・・如何いたしましたか。master?」

 

 「情報交換をしたいから近くにいるんだったら会おうじゃないか?今どこにいる?」

 

 「人形工房のほうを歩いております。しかし()んでくださったらすぐに参上いたします」

 

 「そう?だったら喚ぶよ・・・・・・“ユエ召喚”」

 

 誰が見ているか分からないので、裏通りに入ってから召喚する。天を貫いた光はすぐに消えて、その光の中から14歳ぐらいの女の子が現れてくる。アドルの唯一の仲間・・・ユエと言う名前だ。

 

 「ユエ、お疲れさん。どこも怪我してないかい?」

 

 「ええ、大丈夫です。それよりも久しぶりにmasterにお会いしましたが、お元気そうで何よりです」

 

 硬っ苦しい挨拶はほどほどにして、裏通りのジャズバーを訪れた二人だった。そこはアドルがよく使用する場所でユエも数回訪れているので、カウンターの主人も手馴れた様子で奥まったところに二人を案内した。

 

 「それじゃあ意見交換をしていこうか・・・。って言ってもそれほど時間が経っていないから他に付け足せる情報はあるかい?」

 

 「ええ、幻獣が出現した場所ですが・・・ほかにも蒼い花が咲いていました」

 

 「そう・・・。ユエはその花に心当たりはある?」

 

 と聞いてみると、微妙に表情を崩してアドルに答えた。

 

 「master。これはプレロマ草だと思います。確か・・・前に忍び込んだレミフェリア内部で、外典を拝見したのですがそこに書かれていた内容と合致すると思われます」

 

 「・・・・・・(やはり・・・か)」

 

 「master?どうかされましたか?私何か粗相でもしたでしょうか・・・・・・?」

 

 「あぁ、いや何でもないんだ。ただ俺の思考を刺激したからね。ユエに落ち度があったわけじゃないんだよ。安心してくれ」

 

 「そうですか。masterに捨てられたら私・・・どこにも行くところがないんですよ?」

 

 いつも気にかけ、優しくしているつもりであっても、それでも自分の仕えている(アドル)の様子が変わったことに気づいたらそれは不安になり情緒不安定に陥る困った子だった。しかしアドルはユエを手放す気など更々無かった。

 

 「大丈夫だから、その手に持った暗器で手首を切ろうとするのはやめなさい!」

 

 ・・・そして少し育て方を間違えたかもしれない。否、間違えた。

 

 「・・・(master。私はいつまでも貴方のお側におりますゆえ・・・・・・)」

 

 ユエの持っている暗器をその手から外し、手を絡ませると落ち着くのだ。

 

 「あぁ、それと本当の姿になったら呼び方も変えてくれ。フィーと名乗ることにするよ。長ったらしい名前は噛むかもしれないからな・・・」

 

 「分かりました。フィー様とお呼び致します」

 

 ユエはアドルと握っていた手を自分の額に当てて敬意を表し、それからジャズバーをでることにした。外の天気は晴れていたものの、何かが起こりそうな雰囲気を出していたのでユエに、気をつけるように促して一度別れた。





 修正する前は四人の仲間がいましたが、難しかったので一人にしました。アドル自身暗躍する身となるので、大勢よりは少数精鋭で書いていったほうが雑にならないかな?と思ってそうしました。

 ここまで見てくださる方がおられることに感謝します。

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