銀の兄【修正版】※半分凍結中   作:泡泡

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 リーシャ視点です。


初めての邂逅・裏

 

 私リーシャ・マオが母親と兄さんから離されたのは、2歳か3歳ぐらいの時の事。だから兄さんがどんな顔で私を見送ったかはあまり覚えていない。でも、すごく淋しそうな表情をしていたのだけ覚えている。

 

 父親からは(イン)として暗殺の方法を教えられた。父親は先代の暗殺者だったらしく、私を後継者として育てたかったのかもしれない。どうして兄さんを選ばなかったのかな?

 

 幼い時はあまり疑問を抱かずに成長していった。だけど、十代を過ぎる頃私は疑問を抱いてそれを父親にぶつけてみた。

 

 その時の答えは答えてくれなかった。『そんな暇があるなら鍛錬しろ!』これが口癖だった。自分の気持ちを押し殺して成長してゆき、父親が病床に至った。その時に(イン)を譲り渡された。最後に謎めいた言葉を残して。

 

 父親が亡くなってから一度だけ、母親と兄さんがいたであろう家を訪ねる機会があったので行ってみた。しかしそこには誰もいなかった。裏庭に墓標が一つだけ残されていた。兄さんの面影はどこにも見当たらなかった。

 

 兄さんの名前は確かア、アル、とか・・・って言う名前だったはず、た、多分だけど。2歳やそこらで覚えているはずがない。でもどうして父親は兄さんを後継者にしなかったのだろうか。そこらへんの事は兄さんに聞けば分かるかな。

 

 その後私は旅を続け、遊撃士協会を訪ねたりして兄さんの行方を訪ねたりしていたが、いかんせん知っている情報が少なすぎて早くも暗礁に乗り上げつつあった。

 

 クロスベルと言う街に辿り着いたのはそのころだったかもしれない。ふと、偶然に入った劇場で声をかけてきたのがイリアさんだった。半ば強引に入れさせられたのを今でも覚えている。(イン)としての仕事も始めたばかりでどうなるか分からなかったけど入ってみた。

 

 うん、大丈夫。アルカンシェルは隠れ蓑として最適だわ。

 

 私のしている仕事は裏と言うか闇そのもの・・・、でもイリアさんは輝いていて少し羨ましかったのを思い出す。とても楽しいアルカンシェルでの演舞。でも銀として働くうちにどっちが自分か分からなくなって、泥沼の中でもがいている自分がいた。

 

 そんな時だった。私と同じ共和国東方人街出身の凄腕がクロスベルに来たというのを黒月(ヘイユエ)から聞いたのは・・・。それにアドルと言う男性も入国したのも人づてに聞いた。

 

 もしかしたらと兄さん?って思って嬉しくなった自分と違ったらどうしよう?と思う自分がいた。すぐに会うことはないだろうから保留でいいよねっ。

 

 って、考えていた自分が情けなくなりました。市長がプレ公演に招待されその護衛にその男性が現れたのです。公演に集中しなくてはと思っていましたがずっと誰かに監視されているかのような気配がしていました。どこかで見覚えのある眼差しと気配。

 

 公演も終盤に近づいたころ、市長が座っている貴賓席でいざこざがあったようです。遠目ではっきりしたことは分かりませんが、市長が傷を負ったようでした。そして・・・貴賓席の真下に座っていたはずの男性が何もない空中で跳躍し貴賓席に入っていくのが見えました。

 

 『あれは・・・く、空歩(くうほ)?東方人街のしかも(イン)(つら)なる初歩の移動技を使った?』

 

 少しと言っても一瞬ですが、公演の事が頭から拭い去られました。すぐに演舞を再開しましたが私の脳裏にはあの男性と、話してみたいという思いが強くなりました。それで支配人に伝えてその男性と話す機会を作ってもらいました。

 

 あとは、行くだけ・・・でしたが主賓の方たちから挨拶をされて中々、会いに行くことが出来ません。早く行きたいのに。待っててくれるかな。

 

 兄さん・・・、だと良いなぁ。でも避けられたらどうしようか・・・。今は会うことだけを考えよう。

 

 ――兄さん・・・、私はこんなに成長したんですよ?――





 どこが成長したと言うのは流してください。

 
 オリジナル技

 空歩=気を空中に固めて浮かせ、それを足場として用い移動する。

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