銀の兄【修正版】※半分凍結中   作:泡泡

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 ヒロイン候補?


右手に金の薔薇、左側に・・・

 「しっかし、このカードは何を意味しているんだか・・・」

 

 アドルが右手の指に(はさ)めて持っているカードは最近、ルバーチェから押収した物品の中に入っていた珍しいカードだった。どことなく高級感を漂わせる品は怪しさ満点だった。

 

 それにどこかで使う用途があるのかもしれない。誰かが悪戯で作ったものには見えなかった。それはカードに気品があるように思えたからかもしれない。

 

 「まっ、今日は記念祭初日だし少しぐらい仕事(暗殺)を忘れて騒いでもいいよね・・・。おや?」

 

 目の前には困った様子の二人の姉妹が立ち尽くしていた。

 

 「どうかしたんですか?」

 

 「へっ?」

 

 「・・・・・・・・・」

 

 二人の様子は真逆だった。一人は抜けた妙な返事を返し、もう一人は返事を返した女性の後ろに隠れたのだ。

 

 「あ、怪しいものじゃないよ。目の前に困っている女性がいたから声をかけただけ。じゃ、じゃあこれで・・・・・・」

 

 ここで警察を呼ばれても怪しいのはこっちのほう。だからあまり深入りしないで(きびす)を返した。

 

 「待って下さい。あ、あのっ・・・」

 

 さっきの女性から声がかかった。

 

 「なんです?」

 

 「きょ、今日姉妹二人で休日を過ごしていたんですが時間が空いたのでどうしようか考えていたところだったんです。一緒に回りませんか?」

 

 「えーっと・・・・・・。本当にいいの?」

 

 「もちろん。ねぇ、お姉ちゃんいいでしょ?」

 

 「もぅ、フランがそう言うなら・・・・・・」

 

 「やったー。私はフラン・シーカーって言います。そしてこっちが姉の」

 

 「ノエル・シーカーです。よ、よろしくネ」

 

 「(か、可愛い・・・・・・)はっ、俺はアドルって言います。ちょっと見惚れていた」

 

 「ふえっ?ア、アドルさんったら、お世辞が上手ですねー」

 

 「ハハハ、それでこれからどこかに行くつもりだったのかい?」

 

 お世辞じゃないんだけどなぁ、と言う言葉をグッと飲み込んで話題を変える。

 

 「えっとー・・・・・・フラン。どこかない?」

 

 「え、お姉ちゃんがどこかに行きたいとかないの?」

 

 「じゃ、じゃあ、ブラブラしようか?実は俺、クロスベルに一時的に住んでいるだけでここの住民じゃないんだよー」

 

 肩をすくめて、そう言う。

 

 「そ、そうなんですかー」

 

 と、フラン。

 

 「そ、それじゃあ少し遠いですがミシュラムに行きませんか?保養地として有名なんですよ。どうですか?」

 

 少し考えてからノエルが思い出したかのように言う。

 

 「いいんじゃない、と言っても俺は全然分からないけど。二人に着いて行くよ」

 

 「じゃあ、行きましょう。港湾区から水上バスが出ているんです。アドルさん?」

 

 「ん?なんだい?」

 

 フランから呼ばれたのでそちらを向くと、手を差し出してきた。

 

 「手を・・・つ、繋いでくれません?」

 

 「えっ?」

 

 「ちょ、ちょっと、フラン?」

 

 「エヘヘ、男の人と行くなんてなんかデートみたいじゃないですか?らしいことしてみたい年頃なんですよ?」

 

 「お、俺は別にいいけど・・・・・・」

 

 と言ってから、ノエルのほうを向く。そこには地面を向いて表情が見えないノエルがいた。そしてバッとアドルのほうに近づくともう片方の手を握った。

 

 「あ、あのー。ノエルにフラン?君らは何を考えているのか全然分からないんだが?」

 

 「エヘヘ・・・・・・」

 

 「フフッ・・・・・・」

 

 含み笑いをされたところでアドルはかなりの鈍感スキル保持者。分かるはずもない。これの感情が分かる日は来るのだろうか。

 

 しばらくして水上バスが来てそれに乗り込んでも、二人は繋いだ手を離そうとはしなかった。周囲の男性陣からの冷めた視線は減るどころか、増える一方。歯ぎしりする音も聞こえてして物騒な雰囲気になりつつあった。

 

 「??な、なぁ。周囲の男らが睨んでるんだが。俺は何かやらかした?」

 

 「「えっ?(も、もしかしてアドルさんこの状況に気づいていないの)」」

 

 二人同時に返事をして、姉妹は目と目を見合わせ空を仰ぎ見る。

 

 「「はぁ~・・・(鈍感にもほどがあるでしょう・・・・・・)」」

 

 そして、呆れられた。

 

 「(ゴメン、二人とも。俺はそこまで鈍感じゃないよ。わかっているつもりさ。俺にはそれに答えを出すことなんてできないんだ)」

 

 まぁそんなこんなで、ミシュラムの波止場に着いた。

 

 「着きました!ここがミシュラムでーす!」

 

 フランが元気良く教えてくれる。やっと繋いでいた手を離してくれる。横にいたノエルも手を惜しみながらも、離す。もう少し繋いでいたかったかのように恐る恐る手と手が離れる。

 

 「もぅ~お姉ちゃんったらそんなにアドルさんと手を繋ぎたかったの?」

 

 「あっ、こら。フランっ!」

 

 「きゃあ~~」

 

 げんこつを振りかざしたノエルから逃げるかのようにクルッと回ってアドルの服の袖を掴む。

 

 「お、おいっ・・・」

 

 「だ、駄目だった・・・・・・?」

 

 フランは、目を潤ませ上目遣いで見上げる。

 

 「うっ・・・だ、駄目じゃあないけど。ホントフランって、恐ろしい子・・・」

 

 アドルは波止場に生えていた樹木に手をつき、女性の感情の難しさを実感していた。

 

 「・・・あのーアドルさん?そろそろ行きません?」

 

 ノエルが近づいてきて告げる。

 

 「そ、そうだな。ここから何か見れる場所はあるかい?」

 

 「ミシュラムと言ったらテーマパークがあるんですよ?でも一日では回りきれないので、近いうちに一緒に行きませんか?」

 

 「おっ、いいねぇ!」

 

 さりげなくフランが右側に近づき、手を繋ぐ。負けじとノエルも左側に来て手を繋ぐ。これが今日の定位置になったようだ。アドルも少しずつ慣れてきたのかもしれない。

 

 「じゃあ、次は何がある?」

 

 「レストラン、服飾店、アクセサリー店と・・・あとこれは見物するような場所ではないんですが、ハルトマン議長邸でしょうか」

 

 少しトーンを落として言うので最後は聞こえにくかった。

 

 「えっ、ノエル。最後に何て言ったの?」

 

 「ハルトマン議長邸があります。でもそれは観光スポットではありません」

 

 「へぇ。じゃあ一通り回ってみようよ。案内よろしくね!」

 

 「オッケーだよ」

 

 「分かりました」

 

 それからの時間はあっという間だった。レストランでは美味しい食事に会話を弾ませた。服飾店やアクセサリー店ではあまりの高級ぶりに目を丸くするシーカー姉妹がとても面白かった。そしてもう少しで帰らなくてはならない時になってアドルは。

 

 「今日は楽しかったよー。お礼と言う訳じゃないんだけど、ミシュラムに観覧車があるみたいだから一緒に乗らないかい?」

 

 姉妹の返事は二つ返事でオッケー。早速行くことにした。

 

 観覧車の内部では、アドルの正面に二人が乗り込み上昇してゆく。

 

 「それにしても・・・・・・」

 

 「どうかしました?アドルさん?」

 

 「何かあったの?」

 

 フラン、ノエルの順番に聞いてくる。

 

 「いやぁ・・・クロスベルに来て、こんな楽しい思いをするなんて夢にも思ってなかったものだからね。つい感慨深いものになったなぁってネ」

 

 「そ、そうなんだ・・・・・・」

 

 「アドルさんの目的って何ですか?何か探しているものがあるとか?」

 

 「ノエルは鋭いなぁ。さすが警備隊だわ」

 

 「私とアドルさんは初対面ですよね、どうしてそのことを知っているんですか?」

 

 「まぁ、偶然だ。マインツで魔獣被害があった時、支援課を装甲車で送ったろ?その時見かけたんだよ・・・」

 

 「私の事は見たことあります?」

 

 「フランは警察署で働いているんだろ?何度か入っていくのを見かけているよ」

 

 「エヘヘ、当たりですー。アドルさんは仕事何してるんですか?」

 

 「要人の護衛とか。色々・・・。まぁ敵対することはないだろ」

 

 って、言った瞬間ノエルの目の色が変わったのを見逃さなかった。

 

 「っ・・・・・・」

 

 そして俺は窓の外に目をやる。するとその方向には・・・。

 

 「へぇ・・・・・・」

 

 「何が見えました?」

 

 フランも続けて外を見る。

 

 「なんにも見えないじゃないですかー?」

 

 視力を増幅させて眺めた先には、最近潰した組織と同じ黒服の男性がハルトマン議長邸の周囲で、警備しているのが見えた。

 

 「湖面が夕日に照らされて綺麗だと思ってね・・・」

 

 「えーっ。ここに綺麗な子がいるのに浮気ですかぁ?」

 

 茶化したかのようにフランが言い放つ。

 

 「そうだったね。ごめんごめん。君たちの方が断然可愛いのにねー」

 

 それに対して真顔で返事を返すアドルに、赤面する姉妹。

 

 「あれ?どうしたの。風邪?」

 

 「「いいえっ!何でもないです!」」

 

 少し呆れ気味、不機嫌気味に返事を返された。そして観覧車が下降し到着するまでそのまま。

 

 「やれやれ。やっぱり女性って何考えているか分かんねー」

 

 あなたがそれを言いますか?

 

 そしてミシュラムから水上バスに乗ってクロスベルの港湾区へ。その帰り道は来た時と比べてあっというまだった。

 

 「それじゃあ・・・・・・」

 

 乗った水上バスの中から、港湾区に着いてもそのまま二人が不機嫌だったので、アドルは挨拶もそこそこに帰ろうとすると。

 

 「待って・・・」

 

 ――チュッ――

 

 

 フランに呼び止められたので振り向くと・・・・・・、何だか柔らかい感触がアドルの唇に、そして髪の毛の良い匂いが鼻をくすぐった。

 

 「フ、フラン・・・・・・?」

 

 「エヘヘ、今日のお礼だよ。お姉ちゃんはイイの?」

 

 「え、えーっと。それじゃあ、私もお礼に・・・・・・」

 

 ――ッ、チュ――

 

 いきなり飛びつかれてノエルがアドルの頬に軽く触るぐらいのキス・・・。

 

 「きょ、今日はありがとうねっ」

 

 「ありがとー。アドルさん、またねー」

 

 フラン、ノエルが次々に返事しアドルを置いて帰る。その場には呆然としたアドルだけが残された。

 

 「お、俺は二人からキ、キスされたのか?ど、どうして?俺にはその資格すらないというのに。ここに来ると過去を思い出してしまう」

 

 両手で顔を覆い、地面にしゃがみ込む。そして次に両手を離したアドルの顔には冷笑しか残っていなかった。今日、日中に見せた笑顔なんてどこにもないぐらいの冷たい、冷たい表情。

 

 「“D”。それに“叡智”か?()()君は後一歩に届かずに悔しい思いをするのかな?」

 

 ――ねぇ、キー○?――




 あれ?こんなはずじゃなかったのに、オリキャラが悪役になりつつある?今日はここまでの投稿と致します。


 読んで下さっている方たちに感謝を示したいと思います

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