ーー私、どうしたいんだろう。
日曜日の朝。ヤマブキパンの店番をしながら、沙綾はまたもや頬杖をつく。
全日制へと転入出来るかもしれない……。その事実が、沙綾の行動を雁字搦めにしていた。
ーー全日制に、いけるなら行きたい。香澄ちゃん達と、ポピパ達と一緒に居たい。
……けど、行ったらお店に迷惑かけちゃうかも。お父さんはどうなるの? 陸、海、空達は? どっちつかずになっちゃって、結局ポピパに迷惑かけちゃうんじゃないの?
そんな思考が、沙綾の脳内をぐるぐる駆け巡る。ああ言えば、こうなったらどうなる? とか。こう言えば、もしああなったら? だとか。可能性の話ばかり付き纏ってくる。
1分、10分……。今、何分たっただろうか。思考をかけ巡らしている内に、今どのくらいの時間が経ったかわからなくなっていった。
お客さんが来ない、昼下がりの中。沙綾は、溜息をつきながら俯いた。
ーーあ。確か、香澄ちゃん達が遊びに来てくれるんだっけ……。
辛い時とか、考え込んでしまう時に思い出すのは、いつだって大切な"
沙綾に笑顔を浮かばせる彼女達が、昨晩の雑談の中。トークグループでそういった話になっていたことを思い出す。
いつもだったら、沙綾と香澄達。5人揃ってみっちりとバンド練をできる日曜日だったが、生憎店番をしなければいけくなっていた。
そのことを面々に伝えると、
「それじゃあ、ヤマブキパンまで遊びに行くね!」
という香澄のメッセージを最後に、皆がヤハブキパンに遊びに来てくれることになった。
「沙綾ちゃん、こんにちは!」
どうやら、自分が思っている以上に時間が経っていたらしい。色々思い返していたら、香澄ちゃん達が来る時間になっていた。
若干曇っていた表情から何とか笑顔に戻し、沙綾は香澄達を迎え入れる。
「こんにちは、皆!」
ーー大丈夫。悩んでいる風には見えていない。
香澄のニコニコとした表情を見て、沙綾は確認する。笑顔を崩さずに、内情をばらさないように沙綾は4人を迎え入れた。
「獅子メタル殿、その、なんだ。前に貰ったチョココロネをだな……」
「ふふっ、いいよー。ちょっと待ってね!」
店内に並べられているパンの数々。香澄と共に店内へと入ってきたりみは、ソワソワしながらチョココロネをチラ見している。……なんだろう、涎を垂らしているようにも、錯覚できてしまった。
いつも堂々としているりみが、恥ずかしそうにリクエストをしている。そんな姿が愛おしくて、なんだか心から笑えてきた。ちょっと前まで悩んでいたモヤモヤが、若干晴れた気がした。
「それじゃあ、りみりんリクエストのチョココロネと……。後は……」
トレイを手にとった。トングでチョココロネを挟む。そのままコロネをトレイに置き、隣のあんぱん、メロンパン、ベーグルを次々トレイに乗せていく。
「さ、さーやセンパイ。そんなに載せて大丈夫っすか? 一応、お店で売ってるんじゃ……」
「大丈夫、大丈夫! 今日はもうお客さん来なさそうだし、売れ残っちゃうなら皆に食べてもらった方がいいでしょ?」
たえに心配される。だが、沙綾はこのくらいの量なら、私達ポピパのオヤツにちょうどいいことを分かっているのだ。
沙綾は大丈夫大丈夫と、大量のパンをトレイに載せていった。
ワイワイと話しながらパンを取っていると、後ろから声がかかる。
「お、みんな来たのか。沙綾、店番変わるぞ」
「うん。ありがとう、お父さん」
キッチンから、手を拭きながら出てきた。店番をするといいながら試作のパンを食べているが、良いのだろうか……。
ーーま、いっか。
「それじゃあ、行こっか」
実は、友達を家にあげるのは久しぶりだったりする。沙綾は、ちょっとドキドキしながら自室への階段をあがった。