いつも通りの神社の掃除を始める。
三十世紀の未来から帰ってきた俺の平穏な日常だ。
うさぎとリオちゃんに何か起こったのか、うさぎが腑抜けているが…。
ソレはソレ。
今ある平穏を満喫してもバチは当たらないだろ。
それなのに…。
何で、原因の一人であるリオちゃんはウチの神社で座り込んで呆けているのか…。
「いつまでそうしてるんだ?」
声をかけると、今気づいたのか驚いた表情をする。
少しイラッとして、リオちゃんの頬をつまむ。
「いいか?ココはウチの神社であって、休憩所じゃない。悩みがあるなら亜希にでも聞いてもらえ。」
「……いや、亜希君には今はちょっと……。」
「何、うさぎだけじゃなくて亜希とも気まずいのかよ…。」
呆れた様に言うと、更に悩み始める。
俺には、言えない事なのかよ。
箒を置いて、リオちゃんの隣に座り込む。
ちょうどいいから、前からの疑問をぶつける。
「リオちゃんは、……オリオネスは未来を知ってるんだな…。」
俺の言葉に、顔色を変えていくのがわかった。
唇を震わせて、言葉にならない様な息を吐く。
「別に責めたい訳じゃない。…マーズの時にオリオネスが教えてただろ。」
「レ…、レイ君と違う。私は、何もしなかった。逃げただけだよ…。」
青ざめた彼女は思い詰めた顔で、続ける。
だけど、そんな事ない。俺はそう思わない。
「あんたは確かに逃げたけど、あの時に戻ってきただろ。それで……十分だ。」
俺自身が思った事を言っただけだった。
それだけなのに、リオちゃんは驚いた顔をする。
そして、徐々に顔色が戻ってきた状態で嬉しそうに笑う。
「レイ君は優しいねぇ……。……ありがとう。」
風でふわりと揺れる彼女の髪を見て、嬉しそうな顔を見て、時間が止まったかと思った。
過去に父の秘書で同志だと感じていた人から裏切られてから俺は、恋なんて出来ないと思っていた。
だから彼女に感じていた感情も、親しい女性がいないからの気持ちの乱れだと思っていた。
でも、違った。初めは同族嫌悪だ。
俺達は未来を知って、何もできない自分自身を許せない所が似ていた。
マーズの時もそうだった。
初めて会ったオリオネスに今を見てないと言われた。
それは、オリオネス自身の事でもあったのだろう。
「俺は、あんたが嫌いだった。」
「えう…?」
意味のない声を出して、目を白黒させる。
そんな彼女を見て笑う。
「俺のプライベートに勝手に入ってきて、勝手に掻き乱して、勝手に居なくなる。」
俺が言葉を重ねる度に、申し訳ない顔をするリオちゃん。
思いつく事が多いのだろう。また顔色が悪くなっていく。
「だけどそんな、あんたが俺もマーズも好きだ。」
呆気にとられた表情で、俺の顔を何度も見直す。
「あんたがいないと、息が出来ない…。」
息が出来ないんだ…、ともう一度言いながらリオちゃんの手を握る。
照れて、慌て始めるのを繋ぎ止める。
「困らせるつもりはない。だから、どうか俺を避けないでくれ。」
悲しそうな表情を作り、逃げられない様にする。
恨むなら未来の自分を恨んでくれ。
自覚させたのは、クイーン・オリオネスだ。
許容範囲を超え始めたのか、叫びそうなリオちゃんを見て手を離す。
距離をとろうとする彼女の額にデコピンをする。
「まあ、覚悟しろよ…?」
宣言した瞬間についに叫び出しながら、別れの挨拶をして走り出した。
ああ、なんて息がしやすい世界なんだろう…。
思わず声を出して笑ってしまった。
イメージ崩れてない?大丈夫??