思い描き、あがき、それでも届かなかった、躯の先。
異物が紛れ込もうと世界は続く。
そんな世界を覗く小説。
軽めの日常小説です。
キミは
既に死んだ。
今ここにあるのは魂だ。
我はキミを転生させようと考えている。
「どうしてそんなことを!?」
暇つぶしだ。
「て、転生って具体的にどういう風に…」
お前たちが考えるであろうファンタジーの世界に子供として放り出す。
「当然何かあるわけだよな。
特典、いや、チートとかさ。」
与えるとも。
お前に与える権能は究極の肉体だ、
お前に与える権能は動物の統制だ、
お前に与える権能は物質の擬人化だ、
お前は―お前は―お前は―
新神暦238年4月2日
―ガルド統一帝国:中央都市―
「なぁ、聞いたか?皇太子の噂」
街中で男が、
「なんでも皇太子さまが…」
女が
「カネノリ試験に出るらしいですな」
老人が
全ての人間が皇太子の話をしている。
地球―固有名詞がないため惑星名で呼ぶ―と違い、この世界では魔術と呼ばれるものが発達しており、その中に事前に用意された物語に登場人物として入り込むことができる魔術がある。
カネノリ試験とは前神暦6543年に起きたヒット平原の戦い、その最後の四日間を再現したものを戦い抜くという試験だ。
カネノリ・ケンジは海を切った、山を持ち上げたなどの伝説に事欠かない人物であるが、事実だけを述べるならば敵軍が数万人規模の戦場を一人で抑え込み、頭を半分吹き飛ばされながらも三日三晩戦い半分以上を殺し、援軍としてやってきた敵を弓で射抜き、弓を構えたままで死ぬことで半日もの間その場に拘束した英雄である。
それ以前に正式な記録もなければそもそも正式な戸籍すら見つかっていない人物であり、大抵の伝説は国の威厳付けのため後に加えられた逸話である。
試験の話に戻るが、この試験は約250年の歴史の中でも16名しか合格者がいない最高級の試験であり、受けるのも難しい試験だ。
カネノリ試験は四つの重要な能力である心技体知の内、技を図る。
技を純粋に図るための試験であるため、痛みは100%カットされ、カネノリの強靭な体が用意され、敵の知略陣形はあってないようなもの。
まぁつまり地球風に言えば鬼難易度なVR無双ゲーのようなものである。
皇太子がなぜそんな試験を受けるのか。
強くなるため?名誉のため?
違う。
民衆は知らないが、全ては一目惚れした女の為。
第23妃、それが彼女の地位。
皇族に連なる者として最低限の名誉と、多大な金銭。
それを求め彼女は皇太子の父、詰まるところ皇帝へ捧げられた。
外の憑き物を払う為に準備含めて25日、皇族へ連なるための儀式に準備含めて8日、洗礼に4日。
彼に残されていた時間は37日だけだった。
皇帝と初夜を迎えた人間は、皇帝の所有物となる。
それを覆すことは、皇太子にはできない。
皇太子は能力もきちんとあるからと順当に皇太子になったに過ぎない。
立太子の儀も満足に終わっていない者は皇帝へ意見できる立場に居ない。
諦め、37日、無駄に過ごすしかなかったであろう時間。
彼一人では無駄でも、皇太子は、多くの師に恵まれた。
剣の師、槍の師、弓の師、魔術の師、歴史の師、乗馬の師、そして最初に出会った恋愛の師。
皇太子は!恋の為にカネノリ試験に挑む!