王子から婚約破棄されて王都追放された悪役令嬢がショックでしおらしくなってて可愛い   作:松風呂

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死んだと思ったらそこは乙女ゲームの世界!?愛を知らない悪役令嬢を救う子爵家長男の転生無双 第一話 異世界転生

 

 最後に目にした光景は、暴走するトラックが僕に突っ込んで来る瞬間だった。

 

 

 気がつけば僕は10歳程度の少年の姿で、名前も生まれも世界も、全てが変わっていた。

 

 ずっと夢に見ていた、まごうことなき異世界転生。物語の主人公では無く、僕が選ばれた。いや、僕こそが主人公だ。

 

「アクズお坊ちゃん。どうかなさいましたか?」

「やったぞ……ふふ、やはり僕は特別な人間だった。僕は神様に選ばれたんだ……!」

「ぼ、坊ちゃん?」

 

 この世界が生前にやっていた乙女ゲームの世界だということには直ぐに気づけた。

 

 本来ならこの世界は、辺境の男爵令嬢であるクリスが主人公となり、攻略対象の男の誰かと恋仲になる、そんなどこにでもありふれている凡庸な乙女ゲームだ。

 

 キャラもストーリーも世界観も平凡なレベル、しかし一点だけ、僕にとっては何よりも価値があることがある。

 

「メアリー公爵令嬢、ようやく、君を救うことが出来るんだね……」

 

 ゲームでの立ち位置はいわゆる悪役令嬢、そんな彼女を画面越しに見た時、その美貌に一目で恋に落ちた。

 

 だが、いくら主人公の選択を変えて、何度彼女を救おうとしても、彼女の結末はいつも同じだった。

 

 "王子から婚約破棄されたメアリーは平民の従者に引き取られ、遠い地にてその余生を過ごしました"現れるのはそのテキストだけ。

 

 彼女は主人公に嫌がらせや暴行未遂を行ったことが原因で、どのルートでも王都から追放されて、従者と共に辺境の地に飛ばされてしまう。

 

 可哀相に、絶対的に貴族主義な彼女に平民としての生活が耐えられるはずが無いというのに、そんな酷い仕打ちをするなんて、本当に彼女の家族はくそったれだ。

 

 放任主義の父親と姉のせいで、彼女は歪んでしまった。ゲームの説明書にもそう書いてある。おそらく根は素直で可愛い、愛に飢えているだけの少女だと言うのにそんなのあんまりだ。

 

「僕がこの世界に選ばれた理由、誰よりも彼女を愛している僕が、彼女を救う為に来た。そういうことだよね? 神様」

 

 神様なんて会った事は無いが、この世界に転生した理由を、僕はすぐに理解した。

 

 現代知識と、ゲームをやったからこそ分かる未来予知。その二つを持って、僕は彼女を救ってみせる。

 

 

 

「父上、まだサマリー家との会食の場は持てないのですか?」

「何度も言うがな、アクズ、それは無理だ。うちは子爵、最低でも伯爵くらいの家柄じゃないとサマリー家にパイプを作るのは無理だ」

「それでもやらないと! 今この時にでもメアリー公爵令嬢は悲しんでいるかもしれないんです!」

「確かにあの器量の良さ、男の子として惚れる気持ちも分からんではないが、彼女は第二王子の許嫁だぞ? お前も貴族なら諦めろ」

「~~っ!! 父上の分からずや!!」

 

 全く、最悪だ。折角転生したのに、僕の周りの環境が悪過ぎて、何年経ってもメアリーにまともに会えない。せいぜいパーティの場で遠目に見るくらいしか出来ず、僕は日々焦燥感に駆られていた。第二王子の婚約者という設定上仕方無いが、ガードが固い。

 

 最善は、幼い頃の彼女に僕の愛を分かって貰うことだったが、それが出来ないのならば仕方無い。学園に通った後から彼女を救う方が簡単だ。

 

 大丈夫だ。既に種は蒔いてある。学園は平民と貴族が両方通える設定があった筈だ。その点を考慮して、僕に従う私兵は何人も用意するつもりだ。

 

「もう2年もすれば、楽しい学園編の始まりだ。タイトルをつけるなら、『真実の愛に気づいた悪役令嬢を守る異世界転生主人公の転生無双』ってところかな」

 

 僕は自室で一人悪い笑みを浮かべた。いけないいけない、主人公はこんな顔をしないよな。擬音をつけるならニヤリ、いやへらりだろうか。そういった笑いをしてしまった。女の子にみせるには少し怖いかもしれないな、でも僕カッコいい。

 

 

 

 そして学園編が始まった。メアリーは取り巻きの女子と使用人を従えて、毎日偉そうに学園に君臨していた。

 

 一度ガードが緩い時に、愛の告白をしに行った。少し馴れ馴れしいくらいが僕の愛に気づけて貰えると思って、その肩にふれたが、返事は上段蹴りだった。

 

 階段から落とされた僕はその後、彼女から脅された。もし大ごとにしたら公爵家の力でもってお前の家を潰すと。その言葉に僕は歓喜した。

 

 本物だ。本物の悪役令嬢だ。万が一、彼女に誰か普通のOLの魂でも憑依していたらどうしようかと思った。僕が愛したのは悪役令嬢の彼女で、どこの誰かも分からない元の世界の女では無いのだから。

 

 

 

「アクズ様、今後はどうなさいますか?」

「勿論、方針は変わらない、メアリー嬢の悪行は全て証拠として残しておけ、断罪イベントを早める為には必要だからな」

 

 僕は学園に潜り込ませた平民の部下達にそう命じた。肩書は僕の使用人となっているこいつらは僕に従順だ。

 

 僕の予想通りだった。第二王子の断罪イベントは本来なら冬のクリスマスパーティーに行われる筈だった。だが、僕が密かに証拠を集め、嘆願書として王子に伝えることで、そのイベントが発生したのは春の新入生歓迎パーティーだった。

 

 これで学園でのメアリーの権力は地に落ちた。既に彼女には取り巻きも居ない、クリスへの復讐に駆られ盲進している彼女に接触することは簡単だった。

 

 一人使用人が彼女のそばにいるみたいだが、所詮は平民のモブだ。どうという事は無い。

 

「メアリー公爵令嬢、少しお話があります」

「誰よあんた」

「アクズと申します。しがない子爵家の長男です。貴方様の復讐、どうか私めに任せてみませんか?」

「……いいわ。話だけでも聞いてやるわよ」

「それは良かったです」

 

 僕の事を忘れているのは気に食わなかったが、メアリーの本来の姿が愛に飢えている乙女な性格の女だと知っていれば、全てツンデレみたいなもので可愛いもんだ。僕はへらりと笑った。

 




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