はぶかれた2人が世界最強   作:カワイイもの好きのスライム

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今回の作品は本文の文頭にも書いた通り訓練場でのできごとの後から天乃河が目を覚ますまでを幾つかに分けて書きました。今回のは王から罰を言い渡されたその日にベヒモスと戦闘になってしまうところまで。次回は4人対ベヒモス(もしかしたら、トラウムソルジャー戦も書くかも?)を書きます。


訓練場でのその後①

これは、訓練場で天乃河が瀕死の重体になってから目覚める少し前のお話。

 

 

 

訓練場での一戦闘のあと、すぐにメルド団長と数名の宮廷魔術師がいつの間にか呼びに行っていたクラスメイトと共に駆け込んできた。状況を確認したメルド団長と宮廷魔術師には、俺(剣弥)が天乃河をやった犯人に見えるだろう。なにせ、今俺の手には先程の戦闘で使った天鎖斬月が握られているのだから・・・一応、雫は既に刀を鞘にしまっていたようだが・・・

すると、険しい表情をしたメルド団長が俺に質問してきた。

 

 

 

「剣弥、これをやったのはお前か?」

「・・・」

 

 

 

 

と。だが、俺はすぐに返答をすることはなかった。

すぐに言わなかった理由・・・それは、迷ったからだ。

確かに俺は、天乃河の攻撃に対して剣を振るい彼にトドメを刺そうとした。しかし、その際雫の乱入によって結局彼を刺したのは雫となった。やらせたのは、俺だが・・・刺したのは事実上、雫だ。そこで迷ってしまった。やってもいないのにやったと嘘を付いて雫を庇うのか、それとも雫を売って自分だけ免れるか迷ってしまったのだ。それが一瞬だったとは言え、一瞬でも自分を好いていてくれる彼女を売るという考えに至ってしまった。本来なら考える間もなく、俺が庇わなきゃいけないのに・・・だから、すぐに返答することができなかった。

しかしながら、売るという考えはすぐに消えた。俺は一体何を考えていたのか、と・・・

 

 

 

 

「あぁ、やったのは俺だ。こいつらはなにもしていない。しかし、これは正当防衛だ。」

「なに、正当防衛だと?」

「あぁ、先に仕掛けて来たのは勇者の方だ。証人はここにいる全員だ」

 

 

 

結局、メルド団長の返答として嘘を付いて俺が庇うことにした。しかし、ズルいことにちゃんとに正当防衛だと言い放ってな。俺の答えを聞いたメルド団長はすぐに周りを見渡し何人かの生徒に「本当なのか?」と質問をした。すると返ってきた返事は全て「はい」だった。別に彼らに強制したつもりはないのに皆口を揃えて雫を庇った。これも一概に雫の人としてが為せるものだろう。しかし、なんか罪を擦り付けられたようで複雑な気分だ。

 

 

「そうか・・・それなら正当防衛と言うのは本当らしいな。しかし!お前さんを拘束させてもらうぞ?なに、王の前じゃちゃんとに正当防衛のことを言ってやるさ。」

「そうか、わかった。しかし、俺の剣は大切に持ってくれよ?」

「あぁ、そのつもりだ。おい、こっちに何人か手の空いてるやつ寄越してくれ!」

 

 

 

メルド団長は聞き込んだ結果、どうやら剣弥の正当防衛を信じてくれたみたいだが一応加害者扱いされるらしい。そんでもってこれから王の前に突き出されるらしい・・・面倒なこった・・・

そんなことを思っていると、天乃河の応急処置が終わったのか、先程まで天乃河に付いていた魔術師が数名俺の方に向かって走って来た。なんか彼らの目から物凄い憎悪を感じるのだが・・・

 

 

「団長、来ました。」

「ご苦労。こいつを拘束してくれ」

「わかりました。(二重拘束 /ダブル・ディバイン)」

 

 

 

詠唱をせずに名前だけで発動させることができる簡易詠唱により俺の両手は背中側で二重に拘束されてしまった。それにより持っていた天鎖斬月が地面に落ちそうなところを後ろにいた雫がキャッチしてくれた。

そのことに「ありがとう」と一言発すると「黙って歩け!!」と言われ腹に一発きついパンチを喰らわされた。

俺が連行されるのを確認するとメルド団長は今度は雫たちの方に向かって「お前たちも証人として一緒に来てもらうぞ」と言われると誰も逆らうことなく素直に団長と共に歩き出した。

一方、瀕死の渋滞だった天乃河はと言うとあれだけ大量の血を出していたにも関わらず今では何かしらの魔法によって一人の魔術師と天乃河の右手を細い管で繋げ血を輸血されていた。その医療行為により、先程までの表情とは一変し、落ち着きを取り戻したのか安定した呼吸をしているように見える。

 

 

 

 

               ★★★★

 

 

 

しばらく王宮内を歩いていると、貴族やメイドたちが何事だろうといった感じで俺たちをジロジロ見ていた。その視線が非常に気持ち悪く、内心ではかなりイライラしていた。

 

 

(そんなに俺たちを見るな!気持ち悪くて吐きそうだわ!それに俺、無罪だからな?!先に攻撃してきたの天乃河だし!正当防衛だからーーーーーーーーーーーーー)

 

 

 

内心で正当化していると宮廷魔術師から「着いたぞ」と声をかけられた。

顔を上げて見ると目の前には他の部屋より豪華絢爛な扉が聳え立っており、高級さが伺えた。扉に目を奪われているとさっき俺に拘束魔法をかけた魔術師が門兵と何やら会話をしているものの、少しばかり距離がありなにを話しているのか聞き取ることはできなかった。

 

 

話が終わると門兵は扉の中に入るとすぐに出てきて「入れ」と発した。どうやら、国王に俺たちが来たことを伝えたのだろう。

中に入るといたのは、国王とその護衛が2名、あとは秘書だろうか?秘書ぽっい服を着たいかにもパッとしない男性が1名、部屋の片隅には給仕に来ていたメイドが1名の計5名しかいなかった。

 

 

 

「なに用だ、メルドよ」

「は。王よ、訓練場内において勇者 天乃河光輝とその仲間の黒野剣弥が戦闘を行っているとの知らせがあり、急行してみると既に勇者 天乃河は瀕死の重体であり彼が剣を手に持っていたため拘束し、連行致しました。その際、その後ろにいる者に聞いたところ剣弥の行いは正当防衛であり先に攻撃を仕掛けて来たのは勇者だと言うので、他の者に確認したところ確認が取れましたので一応証人として同行を命じました。それで、王の前に赴いたのは黒野剣弥と勇者 天乃河光輝の罰を伺いたく参上致した次第です。」

 

 

「あい、わかった。それで勇者 天乃河は今はどうしておる?」

「はい、今は医療班に引き渡し治療を行っております。」

「そうか、では罰を命じる。勇者 天乃河光輝から勇者の称号を剥奪し、黒野剣弥に於いては10日間の部屋からの出禁を命ずる!!」

 

 

「王よ、その采配理由を聞いても?」

「ふむ、そうじゃな。勇者とは、本来人々から信用と信頼を得て、人類のために戦う存在のことを指すものじゃ。しかし、仲間内で仲違いがあったとしても彼もまた異世界から召喚された勇者じゃ。真の勇者はいかなる理由があっても敵以外に剣を向けてはならぬものじゃからな・・・それを踏まえ、今回天乃河光輝が犯した事実は極めて悪質なもの。よって、勇者の称号は剥奪することにした。一方、黒野剣弥に関しては正当防衛であることを鑑み10日間の部屋からの出禁とした。以上」

 

その理由を聞いた剣弥や仲間たちは王の采配にホッとしたが、これには王の思惑が隠されていた。が、彼らが知るのはまだ先のこと。

 

 

 

               ★★★★

 

 

 

罰が言い渡され、玉座の間を退室すると緊張が切れたのか扉の前でヘナヘナと座り込んでしまった。

 

「もう、空気ヤバかったね」

「そうね、あんな所に居たら空気だけで押しつぶされてしまうわ」

 

 

先ほどの雰囲気のせいでヘトヘトになっている彼らに今は聞きたくない言葉が聞こえてしまった。

 

 

「あー疲れてるところ悪いが、一時間後にはオルクス大迷宮に挑むからな」

 

 

そう発したのはメルド団長。その言葉を聞いた彼らの表情は、絶望していた。

 

 

暫くして優花や香織、雫といった女子たちが復活すると、既にそこにはメルド団長の姿はなかった。剣弥とハジメはというと、2人して壁に寄りかかり同じポーズを取っていた。

すると、女子が起きたことがわかるとみられていたのが恥ずかしかったのか、顔を赤らめていた。

 

 

「起きたか。もう時間だ、行くぞ」

 

剣弥に言われ時間を確認すると玉座の間を出てから既に15分ぐらい経っていた。こんなに時間が経てば、もう落ち着くことができる。これから私たちはオルクス大迷宮に挑む。初めての迷宮攻略ということで若干不安や緊張はあるもののそこまで酷いものじゃない。だって、仲間がいるから・・・

気を引き締め治すと、私たちは自分たちの武器が回収されていることを思い出し、武器庫に向かった。

 

 

 

 

               ★★★★

 

 

現在、メルド団長率いる異世界組はオルクス大迷宮の入り口にいる。剣弥は迷宮というぐらいだから洞窟みたいにもっと暗くジメジメとした場所を想像していたが、実際にはそんなことなく入口から見ただけでも所々に松明みたいなのが壁に埋め込まれており、中は明るい。そして、一番驚いたのが入り口から少し離れた場所には博物館の入場ゲートのようなしっかりとした入口が存在し、そこには『受付窓口』と書かれており、受付嬢がいることだ。どうやら、ここでしっかりとステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握しているらしい・・・戦争を控え、多大な死者を出さない措置なのだろう。 

 

 

また、入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っていて、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。攻略行く前に腹ごしらえをしたり、攻略後にお疲れ様会をしたりするようでどの店も賑わっていた。

 

 

 

メルド団長がなにかを話しているが、その光景に魅入ってしまっているため全く聞こえなかった。話が終わると、メルド団長と何人かの兵士を先頭に迷宮内に入って行った。その後を追うようなかたちで異世界組も続いた。

 

 

中に入ってみるとやはり中は明るく、鉱石なんかも至る所に落ちている。本当にここは迷宮なのかって思うぐらいだ。それに今の所モンスターとの遭遇はしていない。初めは、元勇者と言えど攻撃力やスキルで言えばクラスメイトの中じゃ群を抜いていた。だから、そんな天乃河なしで攻略に挑むなんて無茶だと思っていたが、実際入ってみると意外とイケるんじゃない?って思えてきた。

 

 

 

どれだけ、歩いたのだろうか。時間にしたら多分一時間は経っているのではないかと感じるころ、入り口はとうに見えなくなり今まであった松明の数もだんだんと減ってきて暗くなってきた。すると、突然ガサッという音が聞こえ、なんの音だと目を凝らして見るとそこには何かが立っていた。シルエット的には、小動物のそれだが、それがなんなのかはサッパリわからなかった。クラスメイトの一人が持っていたランタンをその何かが立っている場所に向けると、そこにいたのはウサギだった。しかし、ただのウサギではなく、両手足の筋肉が異様に発達し体が灰色、目が真っ黒だった。

 

 

魔物の姿がハッキリとすると、今度はメルド団長が魔物の情報を全員に聞こえるように叫んでいた。

 

 

「アレは、ラットマンと言う魔物だ!すばしっこく、異様に発達した両手足の武器に主に戦う。一発でも喰らえば即死だ!!攻撃に当たるなよ!」

 

 

 

即座に魔物の情報と主な戦い方を教えてくれたおかげで、クラスメイトたちはパニックにならずに訓練で習った陣形を組み始めた。しかし、ラットマンもおとなしく待っているつもりはないようで結構な速度で飛びかかってきた。それを焦らずに隊の後ろにいた魔術師が防御魔法を展開し、防御しその隙に前線にいた雫が一刀両断した。なかなかに息がピッタリあっていた。

 

 

 

ラットマンを討伐し、売れるとこや魔石なんかの回収を終え奥に歩いていくと今度はやけに大きな石がたくさんあるエリアにでた。辺りを見ると魔物の姿はなく、クラスメイトの大半も疲弊しているため少し休むことになり近場の岩に座った瞬間その岩がぐらぐらと揺れ始めた。すぐにその岩から退くと驚くべきことにその岩だと思っていたものは岩型風の魔物であったことが判明した。その一匹が起きると、それに続いてこのエリアにあった岩らしきものが全て起き上がった。あっという間にエリア内が魔物で埋め尽くされ、数にしたら10匹弱だろう。

 

 

多少の動揺はあったものの、やることはさっきと一緒。ちゃんとに自分のやることを理解しているのか、すぐに防御魔法の詠唱をする者、身体強化して剣を抜く者、攻撃魔法を唱えている者など行動を起こせていた。その甲斐もあってか5分足らずで岩型風の魔物を討伐することができた。今度こそ休憩時間だとホッとしていると香織がなにか光っているモノを見つけた。

 

 

「見て、キレイー」

「えぇ、そうね。あんなにキレイなのは見たことないわ」

 

 

 

その言葉に全員が香織の指差す方へ目を向けた。

そこには緑色に発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になっていた。

 

 

 

香織が見つけたのはグランツ鉱石と言う鉱石だ。別名、緑鉱石とも言われている。

グランツ鉱石(緑鉱石)とは言わば宝石の原石みたいなものであり、特に何か効能があるわけではないが、その涼やかで煌びやかな輝きが貴族のご婦人ご令嬢方に大人気である。そして、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるため他の鉱石より市場に多く出回っている。求婚の際に選ばれる宝石としてもトップ三に入るのだとか。

 

 

「じゃあ、俺が取って来てやるよ」

 

 

 

そう口を開いたのは、檜山だ。彼は、香織に好意を抱いておりこれを取って彼女にあげれば自分のポイントが上がると考え、メルド団長の声を無視して上り始めた。すぐにグランツ鉱石の元まで辿り着き、取ろうとしたとき急に光始めた。

 

 

 

眩しすぎて全員が一瞬目をつぶり、再び目を開けると目も前に広がっていたのは数十メートルはあろうか長い橋だった。いったい自分たちに何が起きたのか理解できていないクラス迷路たちはパニックになりかけていたが、メルド団長を含むベテラン組はすぐに自分たちが他の階層に飛ばされたことを理解した。

 

 

 

「ここは、さっき俺たちがいた階層ではない。多分だが、どこかの階層に飛ばされたんだ。だが、落ち着け!何があっても俺たちが助けてやる!!」

 

 

 

その言葉に安心したのか、さっきまでパニックになっていたクラスメイトたちも落ち着きを取り戻し始めたが、予想外の展開が起きた。それは、橋の上と自分たちの後ろに大きめの魔法陣が展開され、目の前から出て来たのが伝説の魔物ベヒモス、後ろに現れたのがトラウムソルジャー数百体。それを目の当たりにした瞬間、クラスメイトもメルド団長たちも絶望した。

 

 

 

「ベヒモスだと!?あれは、本来なら65階層に出てくるモンスターだぞ!しかし、ここに出て来たということは65階層なのか!」

 

 

 

メルド団長はベヒモスの脅威に付いては嫌と言うほど理解していた。ある書記によれば、以前現れた伝説の勇者でもベヒモスには敵わず唯一倒せなかった魔物とされており、メルドも王国騎士団長になる前にいた攻略組パーティーの一員として挑み仲間を失ったことがある。だから、この場にいる誰よりもベヒモスの強さは理解していたし、即座に勝てるわけがないと悟ってしまった。

 

 

 

しかし、彼らは違った。

彼らの中には絶望し、心が折れている者が多いがその中でも数名の目には『絶対に勝つ!!』という闘志が宿っている者がいた。特に顕著に現れていたのが剣弥とハジメ、雫だった。3人は、既に戦闘態勢に入ってはいるものの若干震えているのが見てわかる。しかし、これは恐怖や怖れからくるものではなく強い敵と戦えることによる喜びや緊張感といった感情からくるものだ。

 

 

 

ここまでくれば、メルドにも恐れや恐怖といった感情が無くなってくる。だって、自分よりも若い剣士3人が絶望の状況下で諦めていないのに長年、王国騎士団長を務めてきた自分が屁っ放り腰になっているわけにはいかないから・・・そこでようやく死地を覚悟することができた。

 

 

 

今から自分たちが挑むのは伝説の魔物ベヒモス。多分、生きて帰ることが難しい相手。

だから、メルドは戦う気満々の3人に強い言葉をかけた。

 

 

 

「いいか、3人とも!相手は、伝説の魔物ベヒモスだ。無傷とは言えないが、絶対に生きてまた会おう!!勝手に死ぬことは許さん!!無事に生還できたら、4人で祝勝会でもしようぞ!」

 

 

 

メルドからの最後になるかもしれない言葉を聞いた3人はメルドの声に負けないくらい力強い声で返事をした。「「「はい!!」」」と。

 

 

その言葉を合図に4人はベヒモス相手に突貫していった—――




更新するのが遅くなり申し訳ありません。

なかなか文を纏めることができずに手こずってしまいました。
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