蒼い、海。それが身体に重くのしかかって、海面に浮上させてくれない。
要するに今、溺れているのだ。
ああ、と俺は心の中で呟く。
どうやら俺は、この海であっけなく死ぬらしい。
ならせめて、心の中でこう叫ぼうじゃないか!
――我が魂は、『アズールレーン』と共に在りぃぃぃぃ!
そうして、俺の素晴らしき人生は、
誰かが、呼んでいる。どうやら
やれやれというふうに、今はまだない首を振る。
いったいどこの誰が、こんな亡霊を呼んでいるのだろうね。
だけど、呼ばれたからには、応えなくては。
そう思うと、小さいけれど、非常に明るい光が私を照らした。
徐々にその光は大きくなっていき、私を優しく包み込もうとする。
さぁて、そろそろ行くかな。私たちの――海戦へ。
「――五航戦、瑞鶴。ただいま馳せ参じたわ!」
私は身体が構成されたと感じた瞬間、自身の〈艦名〉を名乗る。
目の前には、赤みがある双眸が特徴的な
けれど、彼は指揮官用の軍服を着ていなかった。
「だ、誰……?」
私の指揮官は身体をびくびくと震わせながら、そう問うた。
「ああ、そういうことね。だいたい分かったわ」
私は
「安心して。私はあなたの味方だから」
その言葉を聞いた指揮官は体力の限界が近かったのか、こちらに手を伸ばしたのち、ふらりと倒れこんだ。
指揮官の身体は、一言でいえば小さかった。いえ、子供だから小さいのは仕方ないわね。
だけど問題は肉体。彼の身体にはちっとも肉がなく、ほぼ皮のみだった。
恐らくだけど、私の指揮官は戦災孤児なのだと思う。〈アズールレーン〉と〈レッドアクシズ〉の戦い、もしくは先の大戦に巻き込まれたか。理由はそのどちらかだろう。
そして今、
「そこにいるのでしょう? ――〈セイレーン〉」
私は背後にいる〈セイレーン〉に言う。
「あら? いつから気づいていたのかしら?」
不気味な笑みを浮かべ、〈セイレーン〉――テスターが問う。
「指揮官に建造されたときからよ。あなたの気配がムンムンしてたわ」
「隠密には自信があったけれど、こうも簡単に見破るとはね」
私がそう答えると、「凄い凄い」とテスターは軽い拍手を送る。
しかし、とテスターが続ける。
「
私は刀をするりと音も立てずに抜き、刹那の間で刃の先をテスターの喉元に突きつける。
「問答無用よ」
「速いわね。けれど――」
一瞬のうちに、テスターが私の背後に立つ。
「この程度かしら?」
「……ええ。その言葉、そっくりそのままお返しするわ」
深紅の飛沫が舞い散った。それは血だった。
「――え?」
テスターは己の右腕を見て、信じられないという表情を浮かべる。
だって、肩からずれ落ちたように、なくなっているのだから。
「アハハ、アハハハハハ――!」
テスターは右腕を斬られたというのに、逆に狂ったように笑っていた。
「まさか、まさか、まさか! これほどとはね!」
そして私は興味なさげにテスターの首を刎ねた。
刀の刃から、血が滴り落ちた。
「また会いましょう。そういえば、あなたは名乗っていないけれど、私はあなたのこと、知ってるからね。テスター」
私はそう言ったのち、気絶していると思われる指揮官を背負う。
「さぁて、と。まずはどうしようかしら」
背負ったものの、早速途方に暮れてしまった。
そうしてどうしようかと思考しているさなか、走っていく人影が見えた。
よし! と思い立ち、私はその人影に近づいた。
「生存者はまだいるわよー!」
「うおおお!? なんだ!? なんだ!?」
いきなり現れたから、驚かれちゃった。まあ、子供を背負いながら走ってくる人なんてこの世にそうそういないからね。
「……もしかしてあんた、生存者か?」
「そ、そうよ」
我に返ったように男性が問うてきたので、肯定する。
「よ、良かった! 生存してる奴がいたか! それにしても、その子供、かなりげっそりしてんな。
……よし! とりあえずこっちに来い! 話はそれからだ!」
男性は背を向けて歩き出す。それに私たちはついていく。
「指揮官、私が必ず守り通すからね」
ポツリと、私はそう呟いて、指揮官の頭を優しく撫でた。
初期案は、「人間を艦船に転生させたらどうだろうか?」という何番煎じかよく分からないものでした。
まさかそれが、「瑞鶴のおねショタも見てぇなぁ」と思いつきで書いた結果、こうなるとは……。