紫炎の転生者   作:12月の雹

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今回はあんまり原作進まないです。

外伝的なもの? でいいのかな。


9話 1‐2 風邪、どんな人でも引くもの

縁side

 

 今日の目覚めは最高だった。昨日、あんなことがあったというのに、だ。

 

 

 それもそのはず、イッセーが眷属入りしたことで俺たちがなぜかやらされていた雑用(主にビラ配りの手伝い)が減るはずだからだ。なんでリアス先輩はそんな使い魔でもできるようなことをやらせるんだか。ソーナ会長みたいに校内の風紀の取り締まりの手伝い、とかも困るんだけどさ。

 

 

 んなことを考えながら着替えて1階に下りる。今日の朝食は何かな、と。そう割と楽しみにしながら台所を覗くと櫛名がふらふらとした危ない足取りで料理をしていた。

 

 

 

「櫛名、お前どうした? 具合でも悪いのか?」

 

 

 そういいながら櫛名のそばに歩み寄って顔を覗く。案の定真っ赤だった。

 

 

 

「縁? おはよう。大丈夫よ、ちょっと寒気がするだけだから……とと」

 

「あぶねぇな……ちょっと額貸せ」

 倒れそうになった櫛名を支えながら額に手を当てる。熱かった。

 

 

「お前な……こんな時ぐらい休め。とりあえず冷えぴたと氷枕持ってってやるから、家に戻ってろ」

 

 

 

「家、今誰もいないのよ。どっちも国の依頼で出払っちゃってるから……」

 

 

 

 娘がこの状態だというのにほっとく親か……任務だからとはいえ、納得しがたい行動だな。仕方ない。あっちの家の勝手はわからないからこの家で看病するか。

 

 

  とりあえず櫛名をソファに寝かせて、と。学校だが……どうするかな。正直、この状態の櫛名を放っておくのは得策じゃない。一人でなんでもしようとするから、熱っぽいにもかかわらず自分でおかゆとかを作って倒れそうだ。仕方ない、今日はさぼるか。

 

 

 

「それなら……仕方ない。ここにいろ。下手に動かれて倒れられても困る。うちの両親も今いないからさ」

 

 

 

 目玉焼きの件を抜けばうちの両親はラブラブだ。毎年、夏にはバカンスに行き、冬には温泉旅行をし、結婚記念日には思い出めぐりをする。さらに付き合ってた頃の記念日までひっぱり出してきていちゃつくもんだから、脳みそがサッカリンまみれになりそうだよ。

 

 

あ~……サッカリンは苦いのか。

 

 そういや最近見ないな。近々夏場だし、とうきび茹でようかとも思ったんだがな……。

 

 

「いいの?」

 

 

「いいに決まってるだろ。とりあえず学校に連絡しなきゃな。……自分でするか?」

 

 

 こくんと力なく頷く。いつまでもソファに寝かせとくのも悪いと思い、客間に布団を敷くことにする……と思ったら客間が物置になってやがる! 

 何だこの魔窟! 誰も泊らないとはいえ、これはひどい……。

 

 

 あたり一面、父さんの本が積まさってる。やけに大事そうにくるまれてるのは……アルバムみたいだな。

 

 使わないコタツ、足の壊れたテーブル、いす。古いテレビ。そんなのをかき分けながら押入れを開ける。……人に見せられるような状態じゃない……。まして病人に使わせるなんて持ってのほかだ。

 

 

  どうする……。親の部屋はカギがかかっていて入れない。予備の布団も引き出せない。客用の布団はこのありさま。

 

 

 …………最終手段、俺の部屋。俺のベッド……いくらなんでもまずいだろ! さすがにそれはまずい!

 

 そうだ、更識家から布団を借りてきたらいいんじゃないか? ……無理だ。今誰もいないってことは侵入者向けのトラップが発動してるはず。そこに入って行ったら……。

 

 

 

 夢で具現化させた寝具はなぜか枕以外1日と持たないから却下。やっぱ夢だから睡眠するな、ってことなのか? 意味わからん。八方ふさがり。

 

 

 観念しよう。すっげー気まずい。いくら幼馴染とはいえ、櫛名は女の子。それもスタイル抜群の美少女と来ている。これで異性として意識するなという方が無理だろう。

 

 いつもはからかったり茶化したりで一緒にいるのも気楽なんだけど、こう、しおらしいと、ね。ましてや俺の好みにドストライクな人なんだぜ? 今世で性に興味を持ったのは櫛名のせいであった、のは余談か。

 

 

 

「何よけいなことを考えてんだか……。戻ろう。ほかに手段がない以上は仕方ないからな」

 

 

 ……なんだかんだ理由をつけて櫛名を俺のベッドに運びたかったわけではない。……たぶん。自信ない……。ついでに近くの配置薬をひっつかんで戻るか。

 

 

 

 

「あ、おかえり。お布団は?」

 

 

 手に電話を持って電源ボタンを押している櫛名がそう問いかける。電話は終わったらしい。

 

「悪い、使える状況じゃなかった。というか、俺の部屋以外使えなくてな……。悪いけど、俺のベッドでいいか?」

 

 

 

 何を言ってるのだろう、俺は。これじゃただの変態じゃないか。

 

 

「もう、どこでもいいよ。さっきからすっごく寒くて……」

 

 

「熱上がってるんじゃないのか? 運んでやるからおとなしくしてろよ?」

 

 

 そう言って俺は膝の裏と背中の中心部ぐらいに手を入れて持ち上げる。俗にいうお姫様抱っこだ。

 

 その状態のまま、俺の部屋へ。ドアは空いたままだったのでそのまま入って、櫛名をゆっくりとベッドに下ろす。そのあとに、めくりっ放しだった布団をかけてやる。

 

 

「あったかい……。まだぬくぬくだぁ」

 

 

 いやに恥ずかしいことをつぶやかれた。そりゃまぁ、起き抜け20分と経ってないし、まだ温かいだろう。とりあえず、氷枕だ。

 

 

「ちょっと待ってな。冷えぴたと氷枕、今度こそとってくるから」

 

 

 そう言い残し、顔の赤い櫛名を置いて下に降りる。冷えぴたは2つ、氷枕、あとは……おかゆか? それは後でいいな。まずは持ってくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして戻った俺が見たのは俺の布団に顔をうずめてる櫛名だった……何やってらっしゃる!?

 

 

 

 

「櫛名……? お前、何やってる?」

 

 

「え、縁……はやかった、ね? あはは……」

 

 

 気まずそうに緩慢な動作で俺の布団から顔を上げる櫛名。ずいぶん直接的な行動に出たなぁ……。俺の顔も真っ赤なのだろう。だって熱いもん……。と、とりあえず。

 

 

「ほ、ほら。冷えぴた。首筋とおでこに貼ってな。後氷枕。ほれ、頭挙げて」

 

 

 初めこそ声が裏返ったが、まずやることをやろう。

 

 

「あ、ありがと……」

 

 

 

「…………………」

 

「…………………」

 

 

 やべぇ、会話が続かない。こんなの、初めてなんだけど!? いつもみたいに冗談めかして言ってよ!? あ、そうだ。

 

 

「櫛名、おかゆ、いるか?」

 名前を呼んだところでびくりと体を震わせたが、頷いた。

 

 

 

「卵は?」

 

「入れて、くれると嬉しいかな」

 

 

「O.K」

 

どうであれ、何かおなかに入れないとな。薬を飲むためにもね。

 

 

 

 

 

 

 

 ……これで完成、と。割と自信作だったりする。前世では俺が作っていたからな。多少腕は錆びついているかもしれないが、おかゆならこんなもんだろう。

 

 

 

「櫛名。おかゆできたぞ」

 

 

「わ、ありがとう。縁って料理できたのね」

 

 

「意外だろ?」

 

 

 こんなやり取りをしながら櫛名のそばに置いた椅子に座る。……なんか期待するような目でこっちを見ているんだが……。これは、あれか? あれをやれというのか?

 

 

 

 ……今日だけだぞ。なんだかんだ俺も甘いな。

 

 

 そう思いながらおかゆを1掬い。そしてちょうどいい温度にするためにふー、と息を吹きかけて冷ます。

 

 

 

「ほれ、あーん。……何ぽかんとしてる。お前がやってほしそうに見たからやってやってんじゃないか。さっさと食ってくれ。俺も恥ずかしいんだ」

 

 

 

「いや、まさかやってくれるとは思わなかったから……あなた、本当に縁?」

 

 と懐疑的な目で見られた。失礼な。

 

 

 

「んなこと言うやつにはやってやらん。自分で食ってろ。薬も置いていくし」

 

 

「ちょ、冗談に決まってるじゃない。ごめんってば。おねーさんが悪かったから!」

 

 つーん、とすねるように横を向いていると謝罪の言葉が飛んできた。調子いいなぁ、おい。

 

 

「はいはい。……あーん」

 

 

「あ……ん。………なかなか、おいしいわね。と言っても味覚麻痺してるけど」

 

 

「まぁ、だろうな。安心しな。櫛那のよりはうまくないからさ」

 

 

 

 

 

 

 こんな感じで食事を済ませ、薬を飲ませて、寝かせる。その際、ちょっとした問答があったのだが……別にいいだろう。そして今現在俺は、二度寝の真っ最中だ。

  

 

 

 

 それには訳がある。睡眠をして夢の世界に行った俺はいわば精神体。幽霊みたいなものだ。

 

 ましてや俺の『眠りの王』のおかげで現実世界をほぼ幽体離脱のような形で見て回れる。過去、この力を使って世界1周とかしたからな。今は駒王学園にいる。

 

 

 なぜか。イッセーが悪魔に転生してから初めての日である。その戸惑いをぜひ見ておくべきだと思ってきたのだが……。

 

 

 

「ほら、だから紹介したじゃないか、長い黒髪で……」

 

「そんな子紹介された覚えがないって。大方、妄想彼女だったんじゃないのか?」

 

 

「そんなわけないって。夕麻ちゃんは本当にいて……。あ~なんでこんな時に縁はいないんだよ!」

 

 

 ここにいますが。まぁ、見えないならいないのと同じか。どうやらあの堕天使は記憶操作を念入りにしたらしいな。自分がいた証拠をすべて消したのか。

 

……どうせならイッセーに関する記憶も一緒に消してしまえばよかったんじゃないのかね。あの遺体は明らかに殺されたものなんだし。堕天使の考えることはわからないね。

 

 と、イッセーのほうに意識を向けてみると窓の外を覗いていた。松田と元浜も一緒だ。……ああ、リアス先輩がいたのね。いいのか、あそこ旧校舎だぞ。授業に間に合うのかね。って目があった!

 

 

 あ~……ばれたかな。と思った直後、遠くからケータイの着信音が鳴り響いて、俺は現実に引き戻された。

 

 

 

 

 

「あなた、今日は学校を休んでるんじゃなかったかしら?」

 

 

電話は案の定リアス先輩からだった。

 

 

「あれは霊体みたいなものです。俺の本体は家で寝てましたよ」

 

 そういうと納得したのか何も言わなくなった。

 

 

「ソーナじゃないけど、あなた、ホントに規格外の人間よね。それで? 櫛名の様子はどう?」

 

 

「結構元気ですよ。高熱だったのでインフルエンザかも、と思ってちょこっと調べましたが、普通の風邪でした。たぶんいろいろあって疲れたんでしょうね」

 

 

「ふぅん。……どうやって調べたのよ」

 

 

「それは秘密です」

 

 

 実はちょっとした裏技である。あの時その場しのぎで言った歴代所有者の意識にアクセスしてみたら意外とすんなりいったのだ。それを受けて櫛名の神滅具にアクセスして体調を確認した、という訳。神滅具も体の一部だからね。

 

 もっともこんなだるいことしなくても、夢の世界につれて行ったら本格的な診察は出来るのだが。

 

 

「まぁいいわ。つまり知恵熱みたいなものね」

 

 

「そんなもんですね。とはいっても原義では赤ん坊が知恵がつくころに出る熱だからそういうらしいです。俺も最近知りました」

 

 

 

「え? そうなの? それは知らなかったわ……」

 

 

「転じて冗談でそう言う人もいるみたいですからお気になさらず。それでは、俺は櫛名の様子を見に行かなくてはならないので失礼します」

 

 

 

 

 という感じにくだらない雑学を披露して櫛名の様子を見に行く。もっともまだ寝ているだろうから、そこまで行く必要もないと思うんだけど……。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、縁。やっほ~」

 前言撤回。なんか非常に元気よく起きてた。

 

 

 

「なんでそんなに元気なんだよ。熱はどうした、熱は」

 

 

「ある程度は下がったみたい。あの薬、すごいわね」

 

 

 副作用が心配になる薬だな。どこぞの天才薬師が作ったものじゃないよな!?

 

 

「よくなったとはいえ、大事を取って今日は休んでろ。リアス先輩も心配してたぞ」

 

 

「あ、連絡来たの? とりあえずは大丈夫よ。問題ないわ」

 

 問題がありそうなセリフだが、まぁ本人が言うならいいだろう。

 

 

 

 

「昼食だが……うどんかおじや、どっちがいい?」

 

 

 

「う~ん……さっき食べたのがおかゆだったからうどんかな。お願いね、縁」

 

 

「はいはい。黙って寝てろよ」

「は~い」

 

 

 

 

 

 こんな形で櫛名の風邪というイレギュラーな日は過ぎて行った。

 

 

「そうそう、さっきのことは……忘れて?」

 ……言わなきゃ忘れてやる物を。とはいえ、あんまり櫛名の思いを先延ばしにするのもいけないよな。近いうちに隠してることも全部、打ち明けないと。それでも俺を認めてくれたなら……。

 

 

   sideout……

 

 イッセーside

 

 

 

 いきなりだが俺は絶賛変態から逃げている真っ最中だ。朝からどうにも調子が悪くて、せっかく松田と元浜が誘ってくれたDVD鑑賞会も身が入らなかった。

 

 夜になってなんか妙に走りたくなり、走っていたら全身黒の変態親父に追いかけられているという訳だ。全身から嫌な汗が噴き出る。なんか本能的にヤバいのだ。

 

 

 そして、俺がついに疲れて立ち止まったところは、夢で夕麻ちゃんに俺が殺されたであろう公園。

 

 

「もう抵抗はしないのか?」

 

 

 そう言って男が空から降りてくる……って空ぁ!? よく見たら男の背中には黒い翼。夢で見た、夕麻ちゃんと同じ……。

 

 

 

「では、さらばだ。はぐれ悪魔よ」

 

 

 それと同時に男が光の槍を振りかぶる。また!? 投げられたと同時に何とか急所は躱す、がしかし足に激痛が走る。いってぇぇ! 逃げようとするが足に刺さっているためまともに動けない。

 

 

「ほう、まさか避けるとはな。さらになかなか頑丈なようだ。だが、次のは耐えられまい」

 感心したような声が響くが正直激痛でそれどころじゃない。

 

 

 

「其処までにしてくれるかしら? 堕ちた天使さん」

 

 

 第三の声が響き渡る。この声って……あの時の……。そう思った俺の視界に紅が移りこむ。夢で見たのと同じだ……。

 

 

「紅の髪……グレモリー家の者か。そうか、ここは貴様らの管轄だったな。そして、それは貴様の眷属という訳か」

 

 先輩の名字? 管轄? 眷属? 訳が分からない。俺をおいてけぼりにして会話は進む。

 

 

 

「そうよ。だからこれ以上やるなら、容赦はしないわ」

 

「ふっ、別にこれ以上やろうとは考えておらんよ。だが、眷属にはしっかり首輪をつけておくことだな。でなければ私のようなものがつい狩ってしまうかもしれんぞ……」

 

 

「ご忠告どうも……余計なお世話だけど」

 

「余計なお世話のついでだ。どうせ眷属にするならもっといいのがいたのではないか? たとえば、昨日ここで私の邪魔をした人間とか、な」

 

 

 

「私の眷属は私が決めるわ。勝手に口出ししないでちょうだい」

 

 先輩が不機嫌そうに返すと男はくくくっ、と愉快そうにのど奥で笑う。

 

 

「重ね重ね失礼した。できれば、再び会いたくないものだな。……早く手当をせねば、そいつ、死ぬぞ? ではな」

 

 

 そう言って飛んでいく男。何が、どうなってるんだ……。なんか、意識がもうろうとしてきた……。

 

 

「大丈夫……じゃなさそうね。仕方ないわね。家は?」

 

 そんなことを聞いてくる先輩の声に揺られながら、俺は意識を失った。

 

 

    sideout……

 




過去、テスト1週間前にインフルエンザにかかって復帰したのがテストの日だったという絶望を味わいました。

という訳で櫛名さん回。引き伸ばし引き伸ばしでハーレムは作らないつもりでやってます。正直ここまでやっといて返事なし、とか鬼畜だと思うんですよね。

次回はどこまで進めますかね……。できるなら白髪ぐらいは行きたいところです。

それでは、次の更新はたぶん土日のどちらかです。
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