紫炎の転生者   作:12月の雹

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今回クライマックス。次回で一応1巻は終了予定となります。


15話  親友、覚醒します。

教会の前にたどり着いた俺たちは、リアス先輩が外にも堕天使の気配を感じるということなので、二手に分かれることにした。

 教会に突撃する班と、外の堕天使を殲滅する班である。儀式をやるということなので、きっとあの女堕天使は教会内にいる。そう思った俺はイッセーにその旨を伝え、イッセーを中心としたメンバーを組んでもらった。その結果、外の堕天使は俺、リアス先輩、朱乃さんである。このメンバーなら何があっても対処できると踏んだのだ。過剰戦力のような気もしないでもないが、そこは気にしてはいけない。

 反対に教会内部への潜入班はイッセー、小猫、木場、櫛名である。本当を言うなら、アーシアを助けに行くなら友人である俺が行くべきなのかもしれないが、まだ櫛名を堕天使との直接対決させるわけにはいかないのではないかと思ったのだ。というのも、人間と違い、堕天使は3次元の動きもある。それに慣れていない、というか人間の動きに慣れすぎている櫛名だからこそ、堕天使には苦戦するような気がしたのだ。という訳で潜入班ということになっている。

 

「じゃあ、うまくやれよ? 櫛名がいるから潜入なんかは大丈夫だと思うが、その後の戦闘もあるからな。あんまり櫛名のみに負担をかけてくれるなよ?」

 

 些か過保護だっただろうか。まぁいい。

 

「あはは、本当に心配なんだね。大丈夫。いざとなったら僕が身を挺して守るからさ。そりゃ、君には及ばないかもしれないけど、僕だって速度には自信があるんだ。友人の1人くらい守ってみせるよ。何せ、リアス・グレモリーの『騎士』だからね」

 

 そう答えた木場はにこやかな笑みを浮かべて小猫との打ち合わせに行った。さて、俺も行くとしますか。そう思ってリアス先輩に声をかけようとするとイッセーと会話をしているところだった。

 

「イッセー。『兵士』の特性は覚えているわね?」

「はい! 『王』を除くすべての駒になれるんですよね?」

「そうよ。ここから先の教会は私たちの敵の領土。頑張ってきなさい。私の可愛い『兵士』」

「はい!」

 

 ほう? なかなかに真面目な表情じゃないか。てっきりそんなことをしてデレデレしているかと思いきや、な。話が終わったようなので、俺もイッセーに檄を飛ばしてやるか。

 

「話は終わったな? なら『神器』使いの先輩からのアドバイスだ。心して聞けよ?」

「おう! もちろんだぜ!」

 

「上等。『神器』の力は思いの力だ。お前がアーシアを心底助けたいと思ってるのなら必ず『神器』はその思いにこたえてくれる。自分の『神器』を信じろよ? お前は侯爵の『兵士』の駒を8つも使用してるんだ。やってやれないことは無い。自分の力を過信する堕天使はぶん殴ってやるといいさ」

 

 そう言って思いっきり肩をたたいて森に向かう。後方で痛ぇ! と叫んでいた気がしたが気にしない。森の中に入ろうかという時にふと視界に櫛名が見えたので、ついでに話をすることにする。

 

「やっと来たの? 一番最後とはおねーさん悲しいなぁ」

 

 よよよ、とわざとらしく泣きまねをしながら『薄情者』と書かれた扇子を開く。いや、まぁ、そうなんだろうが、実際櫛名を心配することは無いんだよな。だって教会の中にいるのはただ単に武装したはぐれ『悪魔狩り』だし。その程度でやられるような強さしてないだろ、というと頬をふくらませて、

 

「それは女の子に向かって失礼だと思わないの? デリカシーにかけるわよ?」

 

「そりゃ悪かったな。でも、櫛名のことを信頼してるからこんなことやってるんだぞ? まずないとは思うが危なくなったら木場でも小猫でもどっちでもいいから頼れよ? 人間相手とはいえ堕天使の加護付きだからな」

 

「そうね。本当に危なくなったらそうさせてもらうわ。で? 名前の出なかった兵藤君は?」

 

「あいつは、ある種の切り札だ。できるだけ護衛してやってくれ。それとなく、な」

 

「ふぅん。OK。頼まれてあげる。そっちも無理しない程度に頑張ってね?」

 

 ふわりときれいな笑みを浮かべて彼女も教会の入り口に向かう。これで準備は完了だ。リアス先輩たちと目を合わせて、森の中、堕天使のところへと向かう。後方ではドアを破壊したのか大きな音が響いていた。……ダイナミックお邪魔しますだなぁ……。よけいな体力使うなよ……。そう思いながら俺は先輩たちに続いた。

 

 

 

 

 

 しばらくしても一切堕天使に会わない。なんだこれは。

「ずいぶんと奥に隠れたものね」

「私たちが怖いんじゃありませんか?」

 

 いや、そんなやっすい挑発に乗るはずが……

「そんなわけないじゃん。ずっとここに来るのを待ってたんだっての」

「ここならばすぐに助けには向かえないからな。あっちはもうレイナーレ様にやられてるかもしれないぞ?」

「もっとも、すぐに貴様らも我々にやられるのだがな」

 

 本当に出てきたよ。あっちもやっすい挑発だな。流行ってんのか、それ。でてきた堕天使は3人。ゴスロリの女堕天使、露出の激しい女堕天使。そして俺を見下してくれやがった男の堕天使。カッと血が沸騰するような感覚に襲われるがもう少し我慢するとしよう。

 

「おあいにく様。私の眷属は堕天使ごときに負けるほど弱くはないわ。さて、それじゃ、私の可愛い下僕を傷つけたこと、この領地に入ってきたこと、まとめて後悔させてもらうわ。掛かってきなさい!」

 

「さて。夕方に俺を見下したこと。貴様らのような努力のしない奴がしていいことではない。それを身を持って教えてやるよ。掛かってきな」

 その言葉を合図に堕天使3人は俺たちに向かってきた。

 

 

 

 

 イッセーside

 

「あっちも向かったようだね。それじゃ、僕たちも行くとしようか」

 

「でも、ここ、カギ掛かってるんじゃないのか? あいつらにとって大事な儀式なんだろ?」

 

 そう俺が言ったら、櫛名さんが、

「大丈夫。ただの頑丈な扉じゃない。こうすれば、カギなんか、必要ないわ、よ!」

 

 思いっきり扉を蹴りでぶち破った! って何してんのこの人は!

 

「いきなり何してるんですか!? 気づかれますよ!?」

 

「もうとっくに気づかれてるでしょ。ほら、行くわよ。それとも、か弱い女の子に先頭を行かせるつもり?」

 

 縁ならここで誰がか弱いんだ、とか言いそうだよな。俺は命が惜しいから言わないけど。木場も小猫ちゃんも呆然としてたけど、すぐに気を取り直して櫛名さんに続いた。こうして一緒に行動してみて、あの人のハチャメチャにいつも付き合ってる縁が本当にすごいやつだと思った。

 

 

 入った先は聖堂になっていた。ロベルトさんが言うにはここの地下で儀式が行われているようだけど……、

 

「地下への階段ってどこにあるんだ?」

「それだったらこの教壇の下でござい」

 

 陰から出てきたのは、あの白髪神父!

 

「あら? またおねーさんにやられに来たのかしら? 物好きねぇ」

 

 パン、と乾いた音を立てて櫛名さんの持っていた扇子が開かれる。そこに書かれていたのは、え、えっと……Masochism……? まぞひずむ……ああ、マゾヒズムな。その文字を見てか、もしくは挑発に乗ってか、神父の顔が怒りにゆがむ。

 

「てんめぇ……あんときの借りはしっかり返させてもらうぜ!」

「ふふ。おねーさんが遊んであげるわ。今度はしっかり当てなさいね?」

 

 そこからは本当に櫛名さんの独壇場だった。縁ほどの速度はない。木場よりも遅いぐらいだ。でも、櫛名さんの戦いはきれいだった。相手の剣を扇子で受け流してカウンターを放つ。1回相手が体制を崩したと思ったら流麗な連撃が決まる。

 

「……うまい……」

 

 木場がぼそりとつぶやいた。櫛名さんの戦いは、確かに強いとはっきりわかる物だったが、それ以上に戦い方がうまかった。まるで対人戦に慣れているかのように。 そう思うとパァンと快音が響く。櫛名さんの掌底が綺麗にあの神父の眉間に決まっていた。

 

「勝負、ありかしら? まだやる?」

「ぐ……が……」

 

 神父は地面にうずくまって腹を押さえていた。眉間に当たっただけなのになんであ

んな腹が苦しそうなんだ?

 

「兵藤君。どうして彼がうずくまってるかわからない?」

「え、あ、ハイ」

 そう答えると猫のような笑みを浮かべて、

「眉間に掌底を打ち込んだ後に思いっきり踏んづけただけよ。ただそれだけ。芸がないわね~、私」

 

 いや、俺には一切見えなかったんですが! それだけ早いってことか!? と思っていると苦しみながらも神父は立ち上がり、

 

「ぐ……さすがの俺様でもこれは分が悪いのよ。命あっての物種だし、ここは……バイチャ!」

 

 そう言って何かを地面にたたきつける。その瞬間に光が目を焼いた。まぶしっ!

 

「……逃げたみたいです」

 目を見開いてみるとそこに神父の姿はなかった。逃げ足早いなぁ、おい!

 

「じゃあ、先に進もう。そこの教壇の下だったよね」

 そう言って木場と小猫ちゃんは思いっきりそれをどける。すると地下に続く階段が現れた!

 

「囚われのお姫様はこの先ね。ほら、先頭は兵藤君でしょ。感動の対面をしないと」

 そう言って櫛名さんは俺の背中を押してくる。そうして俺たちは階段を下って行ったのだった。

 

 

 会談を下ってたどり着いた先は広間になっていた。そこには大量の『悪魔祓い』。そしてその奥の小高くなったところには、夕麻ちゃんと、

 

「アーシア!」

「イッセーさん!?」

 

「ちっ。フリードの奴。こんな早くにやられるなんて。まあいいわ。もう準備は出来た。もう誰にも儀式の邪魔はさせないわ!」

 

 そう夕麻ちゃん、いやレイナーレが叫ぶと大量の『悪魔祓い』が殺到する! ってこれはまずくないか……? そう思って俺たちの最大戦力の方向を向くと、すでにそこには姿がなかった。

 

「ちょ~っと数が多いかな。おねーさんとしては1人1人来てほしいんだけどなぁ。ま、無理か。……仕方ないなぁ」

 

 ぼそりと後半をつぶやいた瞬間。彼女を中心に強烈な冷気が吹き寄せた! 『悪魔祓いのほうを向くと全員きれいな氷像と化していた。すげぇぇぇ!

 

「な、なんなのよ……それは……」

「おい、こんなのきいてないぞ……」

「勝てない……もうだめだ、おしまいだぁ……」

 

 『悪魔祓い』たちが困惑していた。今のうちに! そう思って俺はアーシアに向けて駆け出す。さすがは抜け目のない櫛名さん。最短ルートで行けるように凍らせてくれていた。後でお礼言っとかないと。

 

「アーシア!」

「な! そんな、儀式はまだ終わってないのに……」

「儀式だかなんだか知らないが、アーシアは返してもらうぜ!」

 

 そう言いながら勢いに乗せて思いっきりレイナーレをぶん殴る。不意打ちだったのか、勢いよく吹っ飛んで行った。ざまぁみろ。

 

「アーシア! 大丈夫か!?」

「イッセーさん……ありがとうございます。……あの人は?」

「縁は外の堕天使を相手にしてる。さぁいこう!」

 

 アーシアを拘束していた鎖を力任せに引きちぎり出口に向かって駆けだす。すでにあらかたの『悪魔祓い』は無力化されていた。……半分以上が凍結させられてたのは流石は櫛名さんの手際という訳か。そう思いながら出口に向かって走っていくと不意に「危ない!」と木場の声が聞こえた。いやな予感がして、アーシアを出口に向かって突き飛ばす。そして振り向いた瞬間、俺の前には光の槍が刺さっていた。

 

「間一髪。ぶっつけ本番は好きじゃないんだけど。そんなこと言ってらんないわよね」

 

 俺の目の前にあったのは限りなく透明に近い氷の楯。当然櫛名さんだ。

 

「すみません! ありがとうございます!」

 

「気にしなくてもいいわ。けど、あれ、どうするの? このまま私が仕留めてもいいんだけど」

 

 そう言って小首をかしげる櫛名さん。かわいいんだけど!

 

「いや。俺がやります。……俺がやらなきゃいけないんです」

「そっか。危ないと思ったら手助けするからね? 思う存分やってきなさい」

 

 そう言って送り出してくれた。向かう先はレイナーレの元。アーシアを殺そうとしたこと。許すわけにはいかない!

 

 

 

 

 縁side

 戦闘は一方的だった。3対3であるように数の上では対等だが個々人の技量が違う。あっという間に俺以外の2人は決着をつけて、教会のほうに向かっていた。というのも俺が促したからだ。じゃないとわざと戦いを引き延ばした意味がない。その引き延ばしている間にまた小馬鹿にされたが些末なことだ。相手はもう余裕がない。当然だ。あそこまで大口をたたいておいてふたを開けてみたら圧倒されたのだから。

 

「さて、そろそろいいかな」

 

「何がだ? 俺に一切手出しできていないくせに。まさか人間風情が堕天使に勝つつもりか?」

 

「それだよそれ。根拠も何もないのに偉ぶるってのが気にくわない。俺は努力して地位に就いた人が威張り散らすのは別に何も言わない。だがお前らの様に持って生まれた力を絶対として、努力した存在をあざ笑うことだけは許さん。そんなわけで、説教したところで変わらんだろう。生かしておいても何もない。せめて俺の憂さ晴らしのために苦痛のうちに死んでいくといい。手に持っているこの刀以外は一切『神器』を使用しないからさ。抗って見せろ」

 

 怪訝な表情を浮かべたドーナシークだったがすぐに不敵な笑みになって槍を構える。だが、

 

 

 

「遅すぎる」

 

 スパンと一閃。槍を持っていた右腕を切り落とす。傷口からは大量の赤い血。堕天使も血は赤いんだな。と思いながらも攻撃の手は休めない。奴が放心しているうちに後ろに回って双閃。翼を切り落とす。当然飛べなくなったドーナシークは地に落下する。空中にいた俺も重力に引きずられて落下するが、ただ落下したのでは面白くない。鞘を下にドーナシークの頭をめがけて全体重をかける。さすがに今回は放心していてはまずいとお持たのか転がって避ける。しかし傷口に土やら砂利やらが刺さるのだろう。顔は苦痛にゆがんでいた。当然血を失えば多少は動きが鈍くなる。そこを狙ってもう一閃。今度は左足を切り落とす。これで奴はもう、どうしようもないだろう。

 

「さて。死ぬ前に少し教えてやる。この運動能力自体はとある人物にもらったものでな。いや、俺自身が作りものだ。だけどな。この世界で獲得した絆や努力は紛れものなく俺のものだ。おまえも、もう少し努力すれば、超常の力だけに頼りすぎなければもうちょっと違った運命もあったのかもな」

 

 もう朦朧としているのだろう。焦点の合わない目でこちらを見返すドーナシーク。

 

「お別れだ。もし冥府に行って閻魔に会ったらよろしく言っといてくれ。俺は元気にやってますってな」

 

 最後の言葉を紡ぎ終わると同時にドーナシークの首を切断する。と同時にドーナシークの体は消え、最後には黒い羽根とあたりにまき散らされ、森を赤く染める大量の血だけが残った。

 

「あ~……どうすっかな。この服……」

 俺は返り血に染まって真っ赤になった制服を見て悩んだのだった。

 

 

 

 

 櫛名side 

 

 

 兵藤君が戦い始めてから1分ちょっと。私は意外と兵藤君が善戦できていることに驚いていた。的確に相手の動きを見て、攻撃を避ける。アドレナリンが出ているといっても、いくら悪魔だったとしても、素人でこれはすごいだろう。

 

 そう思いながら隣をチラリとみると不安げな表情で戦いを見つめるアーシアちゃんの姿があった。心配なんだろうね。っと兵藤君が『神器』を発動させて戦っている。私には縁が言ってたようなすごいものには見えないんだけどなぁ……。あの堕天使もそれをみて油断しているようだ。確かに10秒ずつ倍加していくってのはすごいのかな、とは思うんだけど……。なんかまだ寝てるのかな。私の『神器』もそうだったしね。となるとそろそろ……死線は潜り抜けてる。

 

 そう思ってると兵藤君の動きが止まった。なんか困惑してるみたい。でもそれは悪手だね。戦いの最中にそんなことをやってたら……

 

「イッセーさん!」

 

 アーシアちゃんが悲痛な叫びをあげる。しかし、兵藤君は落ち着いてさっきよりも切れのいい動きで槍を躱した。あ、これは……目覚めたかな。堕天使のほうも大分焦りが出てきてる。ん? 兵藤君、すごく力が上がってるね。これで倍化は3回目かな。これで大体同等くらい。あ、逃げようとしてる。だめだね、真剣勝負の最中に逃げようとしたらさ!

 

「きゃぁ!」

 

 逃げようとしてたからつい馬上槍を投げちゃった♡ これぐらいのテコ入れはいいよね?

 

「逃がすか、吹っ飛べクソ堕天使!」

 

 そこに腕をつかんで逃がすまいとする兵藤君。堕天使の顔はすでに真っ青になっている。あの力じゃ、すでに超えられてるもんね。思いっきり拳を振りかぶって籠手のついた方の手で思いっきり堕天使の顔を殴った。あれはいたそうだね。というか女の子の顔は殴っちゃ駄目でしょ。吹っ飛んでって壁にぶち当たってクレーターを作った。ま、悪役の末路だもんね。

 

 と心配そうに兵藤君に駆け寄っていくアーシアちゃんを横目に見ながら、私は1人階段を上って縁のほうに行くことにした。私の勘が正しかったら今頃おたおたしてる頃だろうしね。

 

 




という訳で大分駆け足です。イッセーsideのレイナーレ戦は今日から明日にかけてあげるであろうエピローグに掲載予定です。

今回は微妙に難産でした。
やっぱ戦闘シーンは向かないのかもしれないですね。


それでは次回更新まで

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