自分でやったはいいものの楯無さんむずい……。
というわけで閻魔の失敗で強制的に転生させられました。
とまぁ、赤ん坊の頃を回想しても面白くもなんともないだろうから飛ばすよ? だって単純に泣いてる記憶しかないんだもん。
前世の記憶が戻ったのは5歳の頃。それと同時に力の使い方もわかるようになってきた。でも、俺が頼んだ記憶のない能力まで追加されているのにはびっくりした。とりあえずはあの閻魔の厚意ということにしておいて力の使い方を学んでいこう。
と思っていた矢先、俺宛に力の使い方なる本が届いた。宅急便で。しかも代引き……閻魔ぁぁぁ!
それによれば、体力魔力などはこの世界ではかなり高い部類に位置するらしい。さらに戦闘のセンスなどもあるようで……普通の暮らしは望めそうにないです……。
そうそう。サポート役にしてもらった楯無さんですが……普通にお隣さんでした。うちと家族ぐるみの付き合いをやっているようで、小さいころから一緒に遊んでます。簪ちゃんがいないのが原作と違うところかな。後は名前が『更識櫛名』という名前なのも違うのか。俺はずっとくーちゃんって呼んでたみたいです。いや、又聞き。今は普通に櫛名って呼んでるよ。さすがに高校受験する年になってその呼び方は……ねぇ? ISこそないけどやっぱり強い! いや、女の子にこういっちゃ失礼かもだけどほんとに強い。チート持ちの俺ですら素手じゃ勝てないもん。以上、解説終了!
これから俺は私立駒王学園の受験に向かいます!
「何ぼーっと鏡の前で突っ立ってんの? お母さんはナルシストに育てた覚えはないですよ? ほら、受験行ってきなさい。髪のセットはもういいでしょう」
「ん~? って時間がヤバい! 早くいかないと! 母さん、行ってきま~す!」
しまった、受験に遅刻なんてやってられない。急いで玄関まで向かう。そこで、靴を履きながら忘れ物のチェックをする。
全部2セットあるな……よし。問題なし。さて、受験会場に向かうとしますか。
「おっそ~い。何やってたのかしら?」
出た直後に『華蝶』と書かれた俺の家の表札のところにいた櫛名につかまった。手に持っている扇子には『遅刻厳禁』の文字。……あの扇子、どうなってるんだろうね。
「ごめんごめん。ぼーっとしてたらこんな時間になってた」
「ふうん? 緊張して眠れなかったとか? それともおねーさんのことを考えて眠れなかったとか? だいた~ん。まだ高校生でもないのにそんなこと考えるなんて、ス・ケ・べ」
「断じて違う。大体今更どうしろっていうのさ。小さいころは一緒にお風呂に入ったこともあるじゃん」
「それはそうだけど、もう少しノッてくれてもいいじゃない」
ぶーっと頬をふくらましてすねたふりをする。ほんの数か月先に生まれた、というだけでたまにこうやって、1人称がおねーさんになるんだよな。サポートと閻魔は言っていたけれどどうやら正確にはどんな時も味方でいてくれる人、らしい。俺が転生者ってことも知らないようだしな。
「櫛名の冗談にいちいち乗ってたら受験が終わる前に体力を使い切るわ!」
「そうかしら? 私としては楽しいんだけど?」
そういってネコっぽく笑う。一回すべての冗談に振り回されてみたことがある。それだけで毎日行っている自己鍛錬以上につかれたのだ。それ以来、こうやって事前に乗らないか、乗ったとしても適度なところでやめることにしている。
「で? 受験の勉強はどうよ? って聞くまでもないか。櫛名だもんな」
「当然。受かることは目に見えてるわ。目指すは主席合格よ」
そう、この時点ですでに大きな胸を張って言う。ちなみに俺は櫛名程じゃないけど余裕。一回前世でやったことの復習だしね。櫛名はもっと上を狙えたそうだが一番近いのが駒王学園ということで受験することにしたらしい。
その際わざとらしく『べ、別にあなたと同じ学校に行きたいわけじゃないんだからね!』と言っていたのはスルーしたが。
そんなバカげた話をしていたら会場に到着。おしゃれな学校だよね、最近の学校って。廃校舎は見なかったことにしてっと。
「俺の受験教室は……あっちだな」
「私とは別教室になるのね……ざ~んねん」
「お前の残念はからかえないからだろう? ったく。終わったら校門で待っててやるからさ。それで我慢してよ」
「う~ん……まぁいっか。とりあえず頑張ってね。縁」
「そっちも下らんミスをするなよ? たま~にうっかりをやらかすんだからな」
そうやって談笑したのち俺たちはそれぞれの受験教室に向かっていった。
さて、受験教室についたわけだが。なんか後ろから殺気を感じるんだよなぁ……小声で『イケメン死ねイケメン爆発しろ』とか聞こえるし。3重に。これは……あれか。エロ三人組の殺気かな……。いきなりこれはなぁ……。と思っていると
「ちょっとごめんね。鞄をどけてもらえるかな」
とさわやかな声が聞こえた。ふっとそちらを見たら何を隠そう、未来の駒王学園のイケメン王子こと木場裕斗がいた。
「ん? ああ、悪い。ちょっと待って」
少し待たせて鞄をどける。視聴覚室である此処は机が共用の長机なので知らず知らず席に鞄を置いてたようだ。そうしてどけると「ありがとう」の言葉とともに木場が座る。その際に一層殺意が濃くなったり女子の黄色い悲鳴が聞こえたりしたが……些細なことだ。
「調子はどうだい?」
復習を兼ねて過去問を解いていたら木場のほうから話しかけてきた。……まいったな。あんまり原作の人には関わりたくないんだけど。
「まぁまぁかな? そういう君は?」
仕方なく返事を返す。できるだけにこやかに。怪しまれないように、な。
「僕? 僕は結構つらいかな。ここってかなりレベルが高いだろう? だから不安でね。よかったら終わった後に答え合わせとかしてくれると嬉しいんだけど……」
そういって苦笑いをする木場。謙遜っぽいけど、断る理由もないし。いいか。
「俺でいいなら構わないよ。あ、そうそう。受かるかわからないけど、俺の名前は華蝶縁(かちょう えにし)。君は?」
「僕は木場裕斗だよ。よろしくね、華蝶君」
こうして原作キャラの知り合いが出来た。
一限目の国語の終了時、木場と答え合わせをしているときにその事件は起きた。
「問1の漢字なんだけどさ……」
「ああ、そこな。そこは……」
ん? なんか外が騒がしいな。なんか男子の興奮した声が聞こえるし……まさかね。一人騒がれそうな人に心当たりはあるけど、ここまでは来ない……「あ、いたいた。ヤッホー、縁。テストはどうだったかしら?」訳がなかった。
騒ぎの元凶は俺の幼馴染である更識櫛名であった。……うん、予想はしてた。あの櫛名が、教室が違う程度で引き下がるわけがないと思ってたよ。
「……何してんの、櫛名」
ジト目でそう問いかけると、
「実はね、三角定規とコンパス忘れちゃって、貸してもらえないかな~なんて……」
厄介ごとかと思えば頼みごと。ってかさっそくうっかり発動ですかい! こんなことがあろうかと思って用意していた予備の三角定規とコンパスを櫛名に手渡す。後予備に持ってきてるのは、数多くの文房具。うん、おせっかいなのはわかってます。
「ありがと~。助かったわ。お礼に明日、手料理もって遊びに行くわね。それじゃ頑張ってね~」
最後に爆弾投下していきやがった、あいつ! 去り際に笑ってんのが見えたぞ、おい!ただでさえ注目集めてたってのに、んなこと言ったら……うわぁ……受験生の目が血走ってやがる……ありゃあ徹夜したからとかじゃない。完全な殺意からだな。後ろの三人は血の涙を流してるし……スルーだな。うん。
「え~っと……誰?」
だよな木場。普通はそうなるよな。さて、ここで問題発生。よけいなことを言うと俺の命が危険だ。かといってごまかせば、なぜか櫛名の耳に入ってひどいことになりそうだし……。腹くくるか。
「あいつは、俺の幼馴染だよ。家も近い関係上、家族ぐるみの付き合いをしてるんだ」
「へぇ。そうなんだ。……苦労しそうだね」
最後の一言は俺にだけ聞こえるように言った。席が近かったからいたずらっぽい笑みが見えたのだろう。初めて……俺の苦労をわかってくれる人に会えたよ(悪魔だけど)。感動から少し涙が出る。
ちなみに俺の言葉を聞いていた男子連中は世の不公平さを嘆く作業に没頭していた。……受験、大丈夫か?
こうして、俺のテストは平穏無事に、とはいかなかったのだった。その後も櫛名は何かに理由をつけては俺の教室にくる始末……帰る時の背中が怖いよ。
結局、その後は俺が危惧したようなことは一切起こらずに、合格通知をもらって晴れて駒王学園入学が決まったのだった。ついでに櫛名はやっぱり主席合格、木場も何とか合格したらしい。メールで聞いた。帰り際にメアド交換したからな。
木場君いいですよね。動かしやすいです。次は……一年生の状態をダイジェストって形かな。今日中に原作に入りたいけど……無理かな。
とりあえず頑張って見ます。