紫炎の転生者   作:12月の雹

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これで長かった原作前の物語も終了です。

これからは原作沿いでゆっくり投稿するつもりです。


7話 過去の俺たち、今の俺たち 後編

それから五日後。現在の彼らの語る事件は起きた。

 

 

 

「おじさん、誰? 危ない人?」

 

 

 

 櫛名の前にいるのは寡黙な壮年の男性。スーツを着ていて、かなり身なりはいい。もっとも背中の黒い1対の翼を見なければ、だが。

 

 

 

「え? きゃ! ちょっと、何するの、下ろして! 下ろしてよ~!」

 

 

 

 そう叫ぶ櫛名を抱えて堕天使は飛ぶ。できるだけ人目に付きにくい場所に。

 

 

 後からわかったことだがこの堕天使は結界関係に限らず、術が苦手だった。

 

 

 たまたまそれを窓から見ていた縁は即座にあの存在が堕天使であり、櫛名に感じていた力の波動が神器である。とようやく確信する。それと同時に、即座に家を飛び出し堕天使の後を追う。

 

 

 堕天使はどうやらちょうどいい場所を探しながら移動しているようで飛行速度はゆっくりだった。

 

 

 今考えればほかの人に見つからなかったのが奇跡に近いのだろう。

 

 

 

 ちょうどいい場所を見つけたのか堕天使は山の中へと降下する。縁もそれを追い山の中に入る。

 

 

 ちょうどいい、そう思った縁は目覚めたての神器『眠りの王』を起動させ、自分の獲物を作り出す。刃渡りは5センチほどの二対の短剣。知らず知らずにもっとも自分に適した獲物を作った縁は堕天使が降下したあたりを探す。すると、

 

 

 

「これをほどいて。ほどきなさい~!」

 

 

 

 櫛名の声であった。この堕天使は子供を殺す、ということに対し罪悪感を感じていて、とりあえずは近くの山小屋に監禁しようと考えていたのだ。

 

 これは好機、とみた縁は中に入るタイミングをうかがう。前世の記憶からあまり近くにいると人質に取られるかも、ということを考えたからだ。

 

 

 

 そして堕天使が櫛名から10歩ぐらい離れた時に縁は飛び込んだ。ちょうど堕天使は扉を正面にしていたため気づかれてしまったがとりあえず櫛名の前に躍り出る。

 

 

 

「えっと……監禁は、犯罪だよ?」

 

 

 

 自分でもずれていると思う。助けに来た、とかもっと気が利いたセリフは言えないものかと思う。

 

 

 

 しかし、結果的には功を奏した。間の抜けた発言に堕天使はぽかんとしてしまったのだ。大人が助けに来たなら櫛名を抱き上げて逃走するチャンスだが、縁は子供である。そんなのはわかってる。だから、まずその隙に櫛名の縄を切る。そして、

 

 

 

「とりあえず、目をつぶってて。何が起きても開かないで」

 

 

 

 そう櫛名に告げる。反抗することもなく従った櫛名を横目に

 

 

 

「えっと……できたら、このまま帰ってもらうとか……できませんよねぇ」

 

 

 

 堕天使は光の槍をだし、臨戦態勢を取る。しかしその構えには迷いが見えた。

 

 

 

 

「殺しは……したくないんで。帰ってくれると、うれしかったんですけどね……!」

 

 

 

 

 

 瞬間、堕天使と縁の間に大きな紫の炎の壁ができる。

「これ、火力調整できないんで……焼きます」

 

 

 

 彼も神器、しかも神滅具持ちだということに驚き、動けない堕天使に炎が襲いかかる。しかしすんでのところで空中に逃げる。

 

 

「むぅ……空はずるいです。……降りてきて、くださいね?」

 

 それを皮切りに世界が極彩色にゆがむ。縁が後ろにかばっていた櫛名は夢の世界には入れない。見たこともない世界に怪訝な様子の堕天使。

 

 

 

「これで、あなたは僕の思うが儘なんですけど……。まだ、やります?」

 

 

 

 子供にしてやられた悔しさに唇をかむ堕天使。そして、持っていた光の槍を手放し降参だ、というように手を頭の上に掲げひらひらと振って見せる。

 

 

 それを見た縁はほっと息を吐き、『眠りの王』を解除する。

 

 

 元の世界に戻った二人は再び向かい合う形になる。これからの話は聞かせるまい、と櫛名を夢の世界にいざなう。睡眠、という形で。

 

 それを終えてから、

「えっと……殺害目的でくーちゃんをさらったんじゃないですか? だったらこんな面倒臭いことをしなくても……」

 

 

 

「おれは、あまり、術が、つかえない。それに、こどもは、殺したくない。だから、ありがとう」

 止めてくれて、とその堕天使はたどたどしい口調で続けた。

 

 

「おれたちのことを、知ってるわけは、聞かない。そのかわり、その子の記憶を、捜査してほしい。おれのことを、忘れさせてやってくれ」

 

 

 生殺与奪の権利を握る相手に対してむしろ人質の心配をする堕天使。縁たちは知ることもないが、この堕天使は上司に言われて仕方なくやっていたのだ。生来優しい性格であり、子供好きのだが、上司には逆らえなかった。

 

 

 

「変わったお願いですね~。……僕はそんなことできませんよ。ただ、あなたの力を借りればできるかもしれないです」

 

 

 

 そう言って縁が提案したのは今この場で堕天使に夢を作ってもらうこと。堕天使のことを変質者だと思うような夢。

 

 彼は、願った。今は縁の力で眠っている少女が堕天使などに今は関わらないこと。自分を変質者だと思うことを。その気持ちをくみ上げ、『眠りの王』は具現化させる。こうして、櫛名の記憶から堕天使、という存在は消え失せ、代わりに変質者に誘拐されたのを縁の機転で助けられた、という記憶に変わったのである。

 

 

 

 

 その後、その堕天使は記憶が完全に改ざんされていることに安堵し、冥界に戻っていった。どうなったのかは、誰も知らない。

 

 

 

 

 次の日から、櫛名の縁に対する態度は変わった。怨敵に対する態度じゃなくて仲のいい友達に対する態度に。

 

 この日をきっかけにして、幼馴染の枠を超えた仲の良さという、櫛名と縁の関係が出来上がっていくのである。    

 

   Sideout

 

 

 

 

 

縁side

 

 

「こんな感じです。櫛名にしかわかんないところは流石に省きましたけどね」

 

 

 たはは、と俺は恥ずかしさを誤魔化す。過去の未熟さを露呈するのは気恥ずかしいな。

 

 

「そのころからすでに企画外だったのですか……」

 

「あの時の力を使ってみて、知ってるのと実践するのはは違うってことに気が付きまして。それからですね。特訓を始めたのは。だから、俺の原点とでも言うべき事件です。ある意味ではあの堕天使には感謝してますよ」

 

 

 

 そうですか。とソーナさんは納得したような顔をする。

 

 

「なんか、長居しすぎましたね。それじゃ俺はこれで……」

「ソーナ様! 緊急ではぐれ悪魔の討伐以来が届きました!」

 

 

 

 入ってきたのは僧侶の由良さん。にしてもなんてタイミングだよ。もっと遅れてきてくれたらよかったのに。

 

 

「ランクは?」

「えっと……B相当だそうです」

 

 

「なら、頼んでいいですか、華蝶君。私は動けませんし。眷属だけというのも不安ですしね」

 

 ソーナさんが書類の山を指さす。確かに無理だろうな。どうせ暇だし、まぁいいさ。

 

 

 

「ええ、わかりました。終わったらメールで知らせますから」

 

 

 そう言って俺は由良さんから出現した場所を聞いて向かうのだった。

 

  Sideout

 

 

 

 

 

 

櫛名side

 

 

 

「こうして、私は堕天使のことを忘れてたってわけみたい。最近縁が教えてくれたの。今の説明だと縁の行動は完全な推測よ? 鵜呑みにしないでね?」

 

 

 

 そう言って締めくくる。堕天使にとらわれた時、いかに怖かったかを描写してたら意外と時間を食っちゃった。

 

 縁が言うには『いい人』らしいから怖がる必要はなかったんだとか。

 

 

 のどが渇いたから朱乃さんが入れてくれたお茶飲もうっと。

 

 

 

「それで、その一件で惚れちゃったのかしら?」

「ぶっ!」

 

 

 リアスさんが爆弾投下。けほっけほ。お茶が気管に入っちゃったじゃない……。

 

 

 

「あら、てっきりそうなんじゃないかと思ったんだけど?」

「だったら素敵ですわね。まさしく王子様とお姫様、といった感じで」

「憧れます」

 

 

 

女性陣は盛り上がってるけど……私そこまで安くない! あ、木場君背中さすってくれてる。

 

「木場君、ありがとう。それが要因で仲良くなっただけよ! 大体5歳6歳よ? 恋愛なんて考えないでしょ」

 

 

 

「でも、一番の要因……」

「しつこい。いろいろあったの。一緒にいると縁はすごい素敵なんだから!」

 

 

 

たぶん、縁について語れ、って言われたら何時間でも語れる。でも当の本人には伝わってないのよね。私は接し方を変えてないから、それが原因なのかな……?

 

 

「はいはい。仲が良くていいわね」

 

 

 

 結局この話はうやむやになったみたい。よかった。ふと外を見ると……結構暗いなぁ。帰ろうかな。縁、迎えに来てくれなかったな。

 

 

 

「あ、もう暗いし、私帰るわね」

 

 そう言って帰ろうとした時だった。

「リアスさんはいますか!?」

 

 

 

 駆け込んできたのは確か……ソーナさんの女王だったかしら?

 

 

 

「どうしたの?」

 

 

「先ほど、私たちのところにはぐれ悪魔の討伐依頼が来たので華蝶君にお願いしたのですが、連絡先の情報が間違ってたようで、B級ではなく、SS級のはぐれ悪魔だったんです! それでリアスさんの力を借りようと……」

 

 

 その言葉を聞いて私は青ざめた。縁がいくら強いとはいえSS級は……。覚悟を決めましょう。私は走り出す。窓に向かって。ここは2階。その程度の高さなら……。

 

 

「リアスさん。先に行きます!」

 

 

 生死の言葉も聞かず、私は窓をぶち破って飛び降り、ケータイを開く。念のため、と思って互いにつけたGPSを見る。その座標に向かって私は全力で走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

      そして前編冒頭に戻る。

 

 

 

【どうした、逃げるしか能がないのか?】

 

 

 

 余裕なのがまたむかつく。はいはい、わかりましたよ。本気でやりますって。

 

 

 そう思いながら俺はくるりと悪魔人面魚に向き直る。

 

 

【観念したか。……では死ねぃ!】

 

 

 そう言って魔弾を飛ばしてくる。もう無駄だっての。

 

 

 

「だれが観念だボケ。お前に負けるほど弱くはないわ!」

 

 

 すかさず神滅具を作動させ飛んでくる魔弾を焼き尽くす。

【な!?】

 

 

 

 

「ずいぶんと余裕じゃないか、魚」

 

 

 

 俺の周りにはすでに多数の炎の塊。これを弾の様に打ち出せば周りには被害が出ずに対象のみを焼けるって寸法。

 

 

【ぐ……小癪な。餓鬼が、粋がるなよ!】

 

 

 やられ役のお手本のようなセリフ。しかしさっきの倍以上の魔弾。

 

 さまざまな属性が混じってるってことは、もとは僧侶の駒だったのかね。どうでもいいか。

 

 

 

「当たらなきゃいいんだよ、当たらなきゃ」

 

 

 的確に自分に当たりそうな魔弾のみを最小の動きでかわす、はじく、炎弾で消し飛ばす。そして奴の弾幕が薄くなったときに俺は攻勢に移る。

 

 

「もっと狙って打てよ。そんなんじゃ何も殺せないよ。弾を撃つってのは……こうやるんだよ!」

 

 

 

 滞空させていたうちの1つを悪魔人面魚に打ち出す。攻撃をすることのみに気を取られていた魚はかわすことなどできずにもろに喰らう。そして喰らったところから燃え上がり始めた。

 

 

【うぉおぉぉぉ! 熱い! 熱い! 痛い!】

 

 

 ビタンビタンとのたうちまわり火を消そうとするが、

 

 

 

 

 

「その炎は消えないよ。あんたを焼き尽くすまで、な」

 

 

 

 すでに大半が焼け落ち、周囲に焦げ臭いにおいをまき散らす魚。それでも最後の抵抗とばかりに最大級の魔弾を撃とうとする。

 

 

 男として最後の1撃を受けて立とうとした瞬間、まだ燃え残っていた魚の頭に氷でできた馬上槍が突き刺さる。

 刺さったところからあっという間に凍り始め、ほとんど時間をおかずに完全な氷像となる。

 

 

 パチン、と指を鳴らす音が響いた瞬間、SS級の魚は氷ごと粉々に砕け散った。

 

 

 

「お前までき来たら、かわいそうだろうが。せめて最後ぐらい華やかに散らせてやれよ、櫛名」

 

 

 

 俺が振り向くとそこには息を切らした櫛名がいた。きっと学園から走ってきたのだろう。しっかり持っている扇子には『木端微塵』と書かれていた。

 

 

 

「心配してくれたのか? ありがとな」

 

 

 

 扇子の言葉には触れずお礼を言う。その一言で安心したのか、櫛名は、ほっ、と大きく息をつく。少し呼吸を整えたのちに

 

 

 

 

「もう少し、人を頼ったらいいじゃない。今回もなんか余裕だったみたいだけど」

 心配して損した、と頬をふくらます。

 

 

 

「悪かったよ……。今度からは、頼りにさせてもらうからさ」

「ならよし」

 

 

 いつもの猫のような笑み。過去の話をした後だからか、あの時の何もできなかった櫛名とかぶって、なんか感慨深いな。

 

 

 あんときの堕天使。あんたがつないだ命、かなり強くなったぜ。もしまた逢えたら、ゆっくり話そう。

 

 

 

 そんなことを心の中で思っているうちに悪魔の皆様が遅れてやってくる。

 

 

 

「遅いですよ。もう、全部終わりました」

 飛んでくる悪魔に大きな声で伝える。その際にくすりと櫛名が笑ったのが印象的だった。

 

 

 

 

 

 その後、俺はソーナさんからはミスの謝罪を受け、櫛名は窓ガラスを弁償したらしい。ソーナ会長(引継ぎも終わり無事に就任しました)が支払うといっても頑なに、自分がしたことだからと支払ったそうだ。

 

 

 これ以降、大きな出来事は起こらず、俺たちは無事に2年生へと昇級。櫛名は俺と同じ進路を選んだようでクラスは同じ。エロ3人組も同じクラスになったらしい。一誠が言ってた。

 

 

 木場が俺たちのどちらとも一緒にならないのが残念だ、とメールで軽く愚痴ってた。下手に慰めができないような文面だったのは伏せておく。

 櫛名がいた1年が相当楽しかったようだ。

 

 

 

 

 

 

そして、ついに原作が始まる。始まりは

 

 

 

 

 

『ねぇ、イッセー君。……死んでくれないかな』

 




終わった~! 長かった~。こんなオリジナルの話に付き合ってくれてありがとうございました。次回作にご期待ください。


じゃなくて。次回からは何度も延期していた原作に入ります。

原作の大きな流れは変わらないはずですが、細かい部分がちょこっとづつ変わるはずです。たぶん。


今回の堕天使とか、いつかもう一回出したいですね。



それでは。
次回からはイッセーが活躍します。
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