周りは0から自分は1から
暗い……最初に思った事はただ暗いということだけだった。
それは幸せな微睡みであったし、何より暖かかった。
外に出たくない。
そんな怠惰な感想が飛び出る位にはこの心地よい闇に浸っていた。しかし現実は非常である、もぞもぞと体が移動しているのがわかる。これは自分の意思か否か。まぁどちらでもいいだろう、そろそろ目を開けて大学の準備を始めねばならぬ。しかしどうだろう目があかぬではないか、さては目くそが瞼にくっついて離れなくなってるのだな?
そう思い手を瞼付近に持ってこうとしても上手く動かない。
変だなぁふざけてる場合じゃなくなってきたぞ。暗闇でジタジタしてると頭の方からズルリと移動した。
うぉ……眩しっ
明るい蛍光灯、よく聞き取れない声、見知らぬ男女と慌てる看護師さん。その全てがハッキリと見ることは出来ないが大体事情は察したし。自分の心象とすべき事が合致してしまった。
不詳私24歳大学生(名前が思い出せなかった)人目もはばからず大泣きする事になりました。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」
「おめでとうございます! 元気な男の子ですよ!」
「あぁ良かった……本当によく頑張ってくれたよ。美智子!」
「産まれて来てくれて……ありがとうね」
どうやら僕は大勢に祝福されて2度目の生を送ることになるらしい。
さて状況の整理を始めよう、時は進む事約1年と半年。授乳とオムツの羞恥に耐えながら過ごすことになっている乳幼児期間。先ずは自己紹介から始めさせて頂こう、僕の名前は田中健太、一般家庭に生まれた非凡な乳児だ。前世はうだつの上がらない大学3年生、特に事故にあったとか神様にあったとかの記憶は存在しない。しかし僕は自分の名前意外の記憶はハッキリと覚えている。松葉教授の講義の内容から親友の荒木のタバコの銘柄と荒木の彼女が4股かけてた事まで鮮明にだ。なんなら楽しみにしてたゲームソフトでさえ記憶に新しい。ただ転生するような事象に陥った記憶はただのひとつとして存在していない。
この1年と半年の間うんうん…失礼えんえん泣き声を上げながら考え尽くした事だが、結局これといった答えは探せずにいる。そしてこの世界で不思議な事がひとつある。
「だーだーうーぶー」
「あらあらけんちゃんサッカーが見たいのぉ?」
「けんちゃんも一緒に見ようよ!サッカーの試合!!」
「まゆ。あまり大きな声を出すとけんちゃんびっくりしちゃうでしょ?」
ロリロリしい見た目の元気ハツラツ女の子は自分の姉の田中真弓である。ぱっちりお目目に透き通った声、将来は間違えなくべっぴんさんである。
『ストライク!!サンバァ!!!』
『決まったァァ!!ブラジル代表今年のW杯も優勝を勝ち取りましたぁぁ!!』
「ママ!今のシュート凄いよ!!」
「まゆは本当にサッカーが好きね。」
「まゆ将来はね!サッカー選手になる!!」
「うーうーだぁー!」
「けんちゃんも応援してくれるの?」
もちろんだよぉ?(ネットリスマイル)おっと失礼。話を戻そう今のブラジル代表選手のシュートを見てもらえればわかる通りこの世界には必殺技が存在する。それが意味する事はつまり…
イナズマイレブンの超次元な世界観ですね。サッカーで校舎破壊だったり、サッカーで世界滅亡だったり。が繰り広げられる超次元な世界観。前世を振り返ってイナズマイレブンは超人気サッカー作品である。ゲームからアニメ、劇場版まで展開し、幅広い層を魅了した伝説の作品。今の年代が分からないとこではあるが自衛手段としてサッカーを身につける必要があるだろう(感覚麻痺)では超次元サッカーをプレイするに欠かさない事はなんだ…そう必殺技である。そして必殺技は己の気をイメージで定着させ解き放つと言うなんともドラゴンボール感の強い脳筋システムである。これはサッカーであってサッカーではない、爆炎やペンギンが飛び交い神の手が出現するし相手の腹をボール越しに蹴りあげ顔面をボールで破壊する。血で血を洗う狂気…おっと失礼競技である。ファンタジーはすぐそこにあるのだ、誰もが1度は夢想したファイアトルネードにエターナルブリザード、果ては皇帝ペンギンからエクスカリバーまで厨二心を刺激する技のオンパレードが自分でも打てるかもしれない…やるしかないしやるっきゃない!ゲームではモブキャラだって必殺技を使うしなんなら栗松だって使う。俺にできない道理はないだろう?そうと決まれば今できる事でやる事はひとつ。TPの概念があるかは謎だがドラゴンボールでは瞑想で気を増やしていた。やってみる価値しかないだろう?
「マァァァァ!!!」
ママァ!!オムツかえてー!!
月日がたって健太君3歳に突入しました。はいみんな拍手ー!3歳で既にサッカーボールを蹴り始めている僕は間違いなく天才である。(ドヤ顔)
「けんたんまたしゃっかー?」
呂律の回ってない声でお隣のフェンス越しにこちらを見る少女が1人、名を蓮馬小百合と言う。
「だってさっかーってやっててあきないだろ?」
「ちゅまんないよーおままごとしおー?」
「わかったよすこしまってて」
フッサッカーの良さが分からんとはな…まぁ自分もサッカーはあまり好きな方ではないけども。前世がうだつの上がらないパンピーだったこともありウェイな集団スポーツとは点で無縁な生活を送ってきたのだ。そんな自分がサッカーなんて続けれるわーけがない。ではなぜこんな舌っ足らずのクソガキの歳からぷに足ドリブルを決め込んでいるのかと言うと。それは必殺シュートによるものが大きいのです。サッカーは自衛手段である。怖いお兄さんにはファイアトルネードを生意気ないじめっ子にはグラディウスアーチをってね。かっけーもんはかっけーんだからとにかく体が出来上がるまで基礎を作ってるのである。
蓮馬さんと井戸端会議を繰り広げているうちのマミーにボールを預け、マイエンジェルこと小百合ちゃんの元へと駆けつける。
「けんたんわーおとおさんやくねー。わたちがおかあしゃんやくねー。」
「わかったよ」
僕のサッカー人生はまだ始まったばかりなのだ。
500文字位ちょろまかしてもバレへんやろ…
感想乞食なんで感想下さい(鼻ほじ)