ねぇさんの足が動かない、その事実は僕に重く重くのしかかる。
「脊髄を強く打ち付けて下半身不随。現代医療で何とかなるか…それすらも分からない状況だ…」
父さんが状況の説明を淡々と行う、この人だってやるせない筈だがその声は酷く冷えきって居る。
ねぇさんはまだ目覚めない。
まだ死んでしまった訳では無い、しかし目が覚めたねぇさんがこの現実を知った時の反応がすでに幻視できるまでに読めてしまう。
「僕…僕は…僕」
「健太…後のことはプロに任せよう…父さん達ができる事は…もう残されていない。家に…帰ろう。」
「父さん先に帰ってくれて構わないよ…僕は後で帰る…後で、必ず」
「そうか…分かった。ほら美智子もう行こう、ここに居ても真弓が目覚める事は無い。」
泣いている母さんを諭すように父さん達が病院を後にする。
ねぇさんのベットの横の椅子に腰掛けて自分の不甲斐なさをひたすら責め続ける。
あぁ自分は愚かだ、浮かれて居たのだ。転生者という大きなアドバンテージに。実に滑稽だ、ねぇさんのサッカーの才能は凄まじいと解っていた筈だ。であるのならばあの男が放っておく訳が無い。
今回の件には心当たりがありすぎてしまっている。影山零治イナズマイレブンにおける悪役的ポジション。サッカーを憎み歪んだ情熱を注いだ、イナズマイレブンの初代におけるラスボス的ポジション。事前に防ぐ事なんて不可能なのかも知れない。しかしねぇさんは僕のファイアトルネードを見るまで必殺技なんて触れてこなかった、あの日あの場所で僕がねぇさんを怪我させる事に加担したのは間違いなく事実だ、サッカーに罪は無い。そんなことは理解している、しかし僕がサッカーを始めなければそういった考えに歯止めは聞かない。放っておくとどんどん出てくる、必殺技の習得なんて目指さなければ、ねぇさんの手を借りてアドバイスを求めなければ、ねぇさんのサッカーを否定しづつけていれば…。後悔後先に立たずとは良く言ったものだ。
「やる事なんてたった一つだけだよね…ねぇさん」
起こってしまった事にとやかく言っても変えられない、もう割り切るしかないのだ。現実改変なんて大それた事は僕には出来ない。
きっとねぇさんはこれからやる僕の行いを酷く咎めるだろう。これは僕のエゴだ、ねぇさんを理由にする訳には行かない彼女は善人だ。間違いなく、自信を犠牲に他者を助ける現代日本からしたら酷く珍しい…だから、だからこそ僕の僕だけの僕のによる僕のためだけの行動…
「復讐だよ…帝国学園…いや、影山零治。」
潰す…徹底的に完膚なきまでに。
サッカーで売られた喧嘩はサッカーで買って返す。貴様が作り上げた史上の存在を地に叩き伏せ、再起不能に追い込む、邪魔するものも障害も打ち砕く。影山の最高傑作である鬼道有人及び奴の息が掛かった世宇子中を粉々に磨り潰し、誰に喧嘩売ったか解らせてやるのだ。
《》
走るけんちゃんを追って着いた先は病院でした。けんちゃんの足の速さには脱帽です、途中なんどか息切れ起こしちゃってとっくに見失って居ましたが道行く人に必死の形相で走り去っていく少年を尋ねれば簡単に目的地までたどり着けました。
息もキレキレで病院に着くと病院側からけんちゃんが歩いて来るのが見て取れました。
「けんちゃん…ハァハァ…急にどうしちゃったの?」
「小百合…ごめんね。しばらく1人にさせてくれ…事情は追追必ず話すから。」
私は常識知らずの図々しい女なのかも知れません…でも今ここでけんちゃんを止めなきゃ。
「だめだよけんちゃん…ほっとけないよ…事情なんて話さなくてもいい、けんちゃん凄く…辛そうな顔してるもん。」
けんちゃんの表情が悲しみで歪んだ顔では無くもっともっと酷く焦燥とした、とにかく良くない顔をしているんです。そんなけんちゃん放ってはおけません。
「小百合ちゃん…頼む…僕は君を突き放したくないし汚い言葉を浴びせたくない。今の僕じゃあ君に何をしでかすか分かったもんじゃない…だから、だから。」
けんちゃんが私と目を合わせようとしません、私もおバカさんではないので事の端末はある程度察せられます。
「私はけんちゃんにどんなことをされても、けんちゃんがどんなに悪い子さんになっちゃったとしてもけんちゃんの味方で居たいと思っています。けんちゃんが辛いならその辛さを分け合いたいしけんちゃんが嬉しいならその喜びを分かち合いたい。けんちゃんが私を嫌いだと言っても私はけんちゃんを嫌いにはなれません。だから…えーとそのー」
自分でも何を言ってるのか分からなくなって来ました。
「とりあえず河川敷までいきませんか?」
疲弊しきったけんちゃんの手を引いて自分本意の考えで河川敷まで向かいました。
私はえらくめんどくさい女です、自覚ありです。
《》
場所は変わって河川敷、僕は小百合ちゃんにポツポツと赦しを乞う様に断片的に話していく。
自分がどんな人間なのか、自分がねぇさんにしでかした事とか。小百合ちゃんに慕われるような人物ではない事とか。自分がこれから行おうとしてる事とか。小百合ちゃんは相槌を打ちながらただただ僕の話を聞いていてくれた。
そして聞いた上でふと小百合ちゃんが口を開いた。
「けんちゃんは今とっても悩んでるのは見て取れます。私はけんちゃんが何を苦しんでいるのか…きっとけんちゃんにしか解らない辛さばっかりだと思うし。気軽に辛さを取っ払うとか出来ないし言えません。でも私もけんちゃんと一緒に悩めるし、けんちゃんと一緒に考えれるから…また今日みたいに私を頼ってほしいし話てほしい…復讐とか贖罪とか難しくて良く分からないし何をしようとしているかなんて考えも付かないけど。味方であることだけは出来るから…世界中の誰がけんちゃんの敵に回っても私だけは絶対にけんちゃんの味方で居続けるからね。」
酷く歪んだ愛情が、僕の心を満たして行く。純白の天使を穢し地に落とすのは何時だって醜く悍ましい悪魔だ。僕はきっと彼女を穢し汚すだろう。その優しさは僕なんかに振る舞われていい代物では決してない。
「わっ!?…けんちゃん?…」
「あり…がとう…グッ…ありがと…う」
しかし差し伸べられた林檎を捨てられる程僕は強くはあれない。
僕が突然抱きついても彼女は僕を振りほどく事無く受け止めて優しく撫でてくれる。この優しさは僕の歪んだ心を愛で満たす。
あぁ…堕ちてしまえよ…あらゆるものよ。
幼女(11歳)にバブみを感じる精神年齢35歳事案ですねクォォレは