アッシュフォード学園の名物カップルの事を知っているだろうか?
出会って一ヶ月とかからず爆速で仲良くなり、いつのまにやら付き合うまで発展した美形カップルだ。
名前は彼氏をライ。彼女は紅月カレンという。
二人はそれはもうイチャイチャしていた。ラブラブだった。カレンに至っては『え?そんなキャラでした?』と言わんばかりの甘えっぷりに彼女の親衛隊隊員達は愛憎渦巻き、性癖を捻じ曲げられ、悟りを開き、紆余曲折あって今では『ライ君とカレンさんを見守り隊』に名前を変えた。
さて、そんな誰しもが知っている二人だが、問題があった。それは未だにライがモテまくる事だ。
ライがアッシュフォード学園に通うようになってまだ三ヶ月。最初の十日程は無表情で無口。どこか冷たく儚げな記憶喪失の美少年として遠巻きに見られていたのが、カレンにお世話係として色々租界や学園を案内してもらった事により、よく笑う……とまではいかなくとも微笑むようになった。
そして性格は温和で優しく、困った人を見かけるとさりげなく手助けをし、時には漢気をみせてトラブルを解決してはフラグを乱立しまくる……そんな一級フラグ建築士として学園内の、果ては園外の老若男女に絶大な人気を誇っていた。
そのため、カレンと付き合っていると周知の事実であるというのに、ライを狙う男女は後を絶たない。
「っ……!」
窓から見える景色にカレンは持っている携帯をへし折りそうになった。
カレンが先生に呼び出されている間に、ライが近くにいないので携帯で呼び出そうとした所で窓の外を見てしまったのだ。
「好きです!二番目で良いので付き合ってください!」
「っっ!!!」
こちらまで聞こえてくる大きな声の告白に、持っている携帯がミシッと悲鳴を上げた。
その相手は、カレンの恋人であるライ。
ライは困ったように微笑んで何かを言った。きっと断りの言葉だろう。その証拠に告白した女子生徒はシュンとしている。しかし、ライがまた一言二言言って立ち去ると、女子生徒は顔を真っ赤にしてライが去っていった方向を見つめ続けた。
その顔は、やっぱりまだ諦めきれない!といったような闘志に燃えた顔だった。
「ライったら、また余計な事を言ったのね」
カレンの目がすっと細くなる。
廊下の気温が3度ほど下がった気がする。通りかかろうとした生徒達が、ハラハラとした様子で遠巻きにカレンを見守っていた。
「励ますような事を言うのはやめてって言ってるのに……」
そう、ライはちゃんと告白は断るが、その優しさゆえについ励ますような事を言ってしまうのだ。
やれ『君のように優しくて、思いやりのある人は僕よりもっと相応しい人がいるよ』だの『気持ちは嬉しい。ありがとう。君のような素晴らしい人に好かれるなんて僕は幸せ者だ』だの。
こんな歯が浮くような甘い言葉を、微笑みながら素面で言ってしまうのだ。
その為に、フラれたのにも関わらず、まだチャンスがあるのではと可能性を見出して諦めきれずにいる人間がどれだけいるか。そして、それによりどれだけ自分が苦労しているかライはわかっていないのだ。
カレンはため息を吐くと、窓の外でまだライの去った方向を見つめ続ける女子生徒を冷たい目で見る。
「…………」
面白くない。実に面白くない。
人生初の彼氏。しかもベタ惚れで、これ以上の人はいないと思える程の最高の彼氏だ。
モテるのはわかる。わかっているが、それに対してライと自分が一緒にいる時間が少なくなるというのが非常に嫌だった。
ライの事は信じている。しかし、呼び出されたらのこのこ行くのも、告白をいちいち丁寧に断るのも、最後に余計な一言を言って相手にまだ淡い期待を持たせるのも全部面白くない。
もっとキッパリはっきり強く断ってほしい。
「何回言っても直らないのよね」
いっその事、誰が見てもわかる『印』をつけるのはどうだろう。
自分とライがもう
わりと良い案ではないか、とカレンは思った。
「皆にも、ライにも……わからせてあげないとね」
妖しく微笑んで、カレンは壊れそうだった携帯からライに電話をかける。
「もしもしライ?先生の用事終わったから……ええ、そう。じゃあまた貴方の部屋で」
そこまで話してカレンは電話の電源を切った。
そして踵を返してクラブハウスのライの部屋へと進んでいく。
様子を伺っていた生徒達は、そのカレンの妖艶な微笑みに、ほんのりと顔を赤らめるのだった。
付き合ってる?の続き完成してなくてすいません。