ライカレ同棲設定。
「もう少しで今年も終わりね」
炬燵に入っているカレンが時計を見ながらそう呟く。傍らには同じく炬燵に入ったライが、みかんを剥いている。
「ああ、そうだな」
ライは今年あった出来事を振り返った。
記憶をなくし、アッシュフォード学園に迷い込んだ事。カレンがお世話係主任になって色々面倒を見てくれた事。黒の騎士団に入り共に戦った事。撃たれたものの、記憶を取り戻して特区日本を無事に設立し、カレンと結ばれた事。そして...
「ん?どうしたのライ?私の事じっと見て」
「ああ、いや。カレンと一緒にお正月を迎えられて幸せだなって思って」
愛しい人とこうして穏やかな日常を過ごせること。それが、ライには何よりも嬉しい。
柔らかな笑顔でそう言われて、カレンは頬に熱が集まるのを感じた。
「そ、そう?そう思ってくれてるのなら、嬉しいわ」
照れからか、少し目線を逸らして言うカレン。
その表情に愛しさと悪戯心が刺激され、ライはいい事を思いついたと言わんばかりの笑みを浮かべた。
綺麗に剥けたみかんを食べやすい大きさに割り、その1つをつまんでカレンの目の前まで持っていく。
「カレン。あーん」
「ふぇ!?ちょっ、ちょっと!」
突然の事に、カレンは驚く。しかし、ライはキョトンとした顔で首を傾げた。
「何も驚く事はないだろう?僕達は恋人同士なんだから」
さらっと、恋人であるならそれが普通であるかのように振る舞うライ。
「ここには僕と君しかいないしさ」
「うぅ...それは、そうだけど...」
「.....もしかして、嫌なのか?」
不安そうな顔になるライにカレンは慌てて手と顔をぶんぶんと振りながら否定した。
「嫌なわけないじゃない!ただ、恥ずかしいだけで...」
その言葉を聞いた途端、先程までの不安そうにしていたライの顔がパッと明るくなり再度みかんを差し出してくる。
「そうか、嫌なわけじゃないんだな。じゃあ.....はい、あーん」
「うぅ...あ、あーん」
ライにそんな顔をされればカレンはもう勝てなかった。観念したように目を閉じて、恥ずかしそうに口を開ける。それを確認すると、ライはみかんをカレンの口に入れた。
口移しで。
「ん...」
「んんっ!!?」
カレンの空色の瞳が驚きで見開かれる。目に入ったのは悪戯が成功して、楽しそうに目を細めるライの顔。
青紫色の瞳がそのままゆっくりと閉じられ、いつの間にか頬に添えられた手によってキスをもっと深いものにされたのだった。
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しばらくして、ライはやっと満足したのか唇を離す。みかんはとっくに潰れ、カレンが飲み込んでいた。
「ん...はぁ...美味しかったか?」
「はぁ...はぁ...な、なな何してるのよ!!?」
「何って.....みかんを食べさせただけだが?」
クックッ、と少し意地悪く笑うライに、カレンの顔はこれ以上ないぐらい赤くなる。恨めしそうにライを睨むが、涙目になっているのでたいした威力はない。
「ダメだったか?」
「ダ、ダメなわけじゃないけど...急っていうか...その、心の準備があるのよ!」
ぷいっ、とそっぽを向くカレンに、ライは苦笑しながらカレンの頭を撫でる。
カレンは気持ちよさそうにふにゃっと顔を緩め、絆されそうになるが
(だめよ紅月カレン!ここで許したら負けよ!)
らしい。緩んだ顔を引き締め直し、再度ムスッとしている。ライは困った様な笑みを浮かべて次の言葉を紡いだ。
「カレンがあまりにも可愛いから...つい意地悪をしてしまった。すまない」
「か、かわっ!?」
その言葉に、カレンの顔は再び赤くなる。
クスクスと楽しそうに笑うライに、カレンは振り回されっぱなしだ。
「どうしたカレン?顔が赤いぞ?」
「誰のせいよ!誰の!うぅ〜っ!...あ、あなたってこんなに意地悪だったっけ?」
「...ああ、自分でも驚いてる。僕は所謂『好きな子ほど虐めたくなる』性分なのかもしれないな」
そう言うと、ライはカレンの肩を抱き、自分の方へ引き寄せた。
「幸せだな...」
「ライ...?」
ライの雰囲気が変わった。先程までの楽しそうな感じではなく、少し憂いを帯びた表情にかわる。
「本当に...本当に幸せだ。こうして、愛する人と、こんなに楽しい日々を送れるなんて思ってなかった。僕に、その資格なんてないと思っていたから...」
「.......」
話してもらったライの過去を、カレンは思い出していた。
この時代の人間ではない事、ブリタニアの王様だった事、自分のせいで母と妹を死なせてしまった事、魔法で長い眠りに着いていた事...
にわかには信じられない話だが、その話をしたライの表情は苦しそうで...
とても嘘を言っているようには見えなかった。
「あの頃は殺伐とした日々を送っていて、楽しい事なんて母と妹と一緒にいること以外なかった。苦しくて辛くて...最後は僕の過ちのせいで、取り返しのつかない事をしてしまった」
泣きそうな顔でカレンに語り掛けるライは儚げで、苦しそうで...
カレンを抱く腕に力が入る。
「僕に生きる資格はないと思ってた。幸せになるなんて...許されないと...。でも、カレン。君が、僕に生きていてもいいと言ってくれた」
過去を話した時、カレンは罵倒するでも、失笑するでもなく、真剣な眼差しでライの手を握り、生きてもいい、ここにいていいと言ってくれた。
『一緒に生きよう』と言ってくれた...
「君のおかげだ、カレン。君がいたから、僕は今も生きていける」
カレンを抱きしめたまま、ライはまっすぐカレンを見つめる。青紫の、深い海を連想させるその瞳と、カレンの空色の瞳が交差する。
カレンはそっとライの手に自分の手を重ね、柔らかく微笑んだ。
「バカね。生きるのも幸せになるのにも資格なんていらない。私は、貴方と一緒に生きていきたいし幸せにしてあげたい。だから...」
カレンの手が、ライの頬を撫でる。優しい眼差しでライを見つめ、次の言葉を紡いだ。
「来年も再来年も、その先も、ずっと一緒に生きましょう?嫌だって言っても、離さないんだから」
そう言って笑うカレンはとても綺麗で、ライは心の底からカレンに出会えてよかったと思った。
(ああ、本当に...)
「ありがとう、カレン。僕は世界一幸せ者だ」
2人は笑いあい、そのままキスをした。お互いの存在を確かめ合うような、深く優しいキスだった。
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時計の針が、0時になった事を報せる。
年が明けた。
「あけましておめでとう、ライ」
「ああ、あけましておめでとうカレン。
今年もよろしく」
そう言って、ライとカレンは再びキスをして笑いあう。2人の明るい未来を願って.....
おまけ
「...ところで、日本には『姫はじめ』という文化があるらしいな。どういう物か教えてくれないか?」
「.....へ!?」
2人の夜はまだまだ長い.....