ライカレ短編集   作:喜怒哀楽

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ライが少し迫る話。


ちゃんと閉めましょう

黒の騎士団アジト。

 

「ふぅ、暑い」

 

そう言ってライは演習用コックピットから出てきた。

 

ラクシャータが設定した『敵の出現率鬼レベル』の戦闘シュミレーションを、普通なら5分も持たずにLOSTする所を30分も持ち堪えたのだ。

 

当然その分だけ神経を使い、大量の汗が吹き出していた。

 

(汗で気持ち悪い。シャワー室に早く行こう)

 

そう思ったライは汗で濡れた髪をかきあげ、首まであるパイロットスーツのファスナーを鎖骨あたりまで下ろす。

 

.........少し遠い所で黄色い悲鳴と倒れる女団員達がいたが、ライは気付かなかった。

 

 

 

━━━━━━・・・

 

 

 

「あ、ライ!お疲れ様」

「ああ、カレン。お疲r...カ、カレンッ!」

 

シミュレーター室から出ると、廊下で横からカレンに声をかけれて、ライは挨拶を返そうとそちらを向いた。

 

が、慌ててカレンに近寄って行った。

 

カレンのパイロットスーツのファスナーが、なんとヘソ下まで下ろされていたのだ。

 

当然そこまで下ろしていては形のいい鎖骨も、豊満な胸の谷間も、くびれたお腹にある可愛らしいおへそも全て丸見えである。

 

「きゃっ!ちょ、ちょっとライ?」

「なんて格好をしているんだ!君は!」

「え?...あ...ご、ごめんなさい、つい...」

 

カレンのファスナーを首まで持ちあげ、肌の露出度を下げる。

ついでに鼻の下を伸ばしていた団員達をギロリッ、と睨んで顔を覚えておくのも忘れない。

 

本当は今この場で、カレンの肌を見た不届き者達の記憶を消し去ってやりたかったが、今はそれよりもやらねばならない事があった。

 

「カレン...ちょっとこっちへ」

「えっ...ちょっ...」

 

ライはカレンの手を引いて、廊下を後にした。

 

 

 

 

━━━━━━━━━・・・

 

 

 

 

「なんで君はそう迂闊なんだっ!!」

「うぅ...ごめんなさい...」

 

ライがカレンの手を引いて連れてきたのは、ゼロから与えられたライの自室。そこで、カレンへのお説教が始まっていた。

 

戦闘隊長として活躍し、更にその高い頭脳から書類仕事等も完璧にこなす彼には、特別に彼専用の部屋が与えられていたのだ。

 

ここならば、気兼ねなく話をする事が出来る。

 

「いつから...」

「えっ?」

「...いつからあの格好でいた?」

「あ、えっと...私もライと同じシミュレーションしてて、終わったのがちょっと前だったから......10分前ぐらい?」

「10分もあんな格好でいたのか...?」

 

ライはその事実に愕然とした。それを見て、カレンは慌てて言い訳をする。

 

「だ、だって...暑かったし、汗で気持ち悪くて...」

「シャワー室には行かなかったのか?」

「行ったけど、満員ですぐに出来そうになかったから...」

「それで、あんな格好でうろうろと...?」

「ま、まぁ...うん」

 

ジトッとした目で見られて、カレンはバツが悪そうに目を逸らした。

 

ライは顔を右手で覆って、深い.....それはもう深いため息をついた。

 

10分...それだけの時間、カレンのあの扇情的な格好を他の団員達に見られていたのかと思うと、軽い頭痛に襲われそうになる。

 

先程廊下にいた団員達の顔は覚えているが、10分となると、どれだけの人数に見られているのかわかったものではない。

 

学園では病弱なお嬢様として、きっちり制服を着こなしているのに、なぜ素だとこんなに開放的なのだろうか?

 

いや、素だからこそ、開放的になっているのか.....

 

ライは再度、深いため息を吐いた。

 

「あ、あの...ライ?」

「...............なんだ?」

「(うっ、何よその間は...)その...怒ってる?」

「.....怒ってない...呆れているだけだ」

 

そう言って、3度目のため息を吐いた。

 

「まったく......もし変な男に襲われでもしたらどうする」

「だ、大丈夫よ!これでも、黒の騎士団のエースパイロットだもの!そこいらの男になんか負けないんだから!」

 

そう言って胸を張るカレンだが、ライが聞きたいのはそんな言葉ではない。

 

自分がこんなに心配しているのに、どうしたらこのかわいい恋人は危機感を持ってくれるのだろうか?

 

(少しお灸を据えないとダメなのかもしれないな.....)

 

ライは口に手を当ててそう考えると、ニッコリと笑い、次の言葉を紡いだ。

 

「ふぅん...じゃあ、僕が襲っても平気なんだな?」

「そうよ!ライに襲われたって平気........へっ!?」

 

カレンがその言葉の意味を理解するのに、数秒を要した。

その間に、ライはゆっくり、1歩、また1歩と距離を縮めていく。

 

「え?え?ちょっ...ライ?」

「ほら、僕に襲われても平気なんだろう?」

 

笑顔でゆっくりと追い詰めてくるライに、カレンはジリジリと後退りをしてしまう。

だが、悲しいかなここはライの自室。

 

すぐに壁際まで追い詰められ、更に顔の両側にライの手が置かれたことによって完全に逃げ道を塞がれてしまった。

唯一の脱出口である扉はライの真後ろにある。

 

「〜〜っ!!?(な、何この状況!?何このライ!?なんで私は壁際まで追い詰められてるの!??襲う...って、誰が?ライが?襲う.....私を!!??)」

「どうした?抵抗しないのか?」

 

顔の両側に置かれている腕を曲げて、ゆっくりカレンの顔を覗き込んでくるライ。

 

汗によって濡れた髪に、鼻腔をくすぐるライの匂い。パイロットスーツの襟から除く形のいい鎖骨。そして、この状況と先程の言葉によって、やっとその機能を取り戻そうとしていたカレンの頭は、ボシュッという音を立てて再度その機能を停止させてしまう。

 

「えっと...えっと...」

 

顔を真っ赤にして、涙目になりながらおろおろと目線を泳がしているカレン。一応抵抗のつもりなのか、両手をライの胸に押し当ててはいるが、いつもの力が出せず、弱々しい。

 

どう見てもいっぱいいっぱいになっているカレンに、ライは更に追い打ちをかけるように言葉を続けた。

 

「ほら、抵抗しないと...襲うぞ?」

「うぁっ...ラ、ライ...」

 

スルッ...と右手を頬に持っていくと、それだけでビクッと体を震わせるカレン。

 

困惑と、羞恥と、少しの期待が綯い交ぜにになった感情が、潤んだ空色の瞳に載せられる。

 

それを見て、ライは壁に手をついていた左手もカレンの頬に添え、ゆっくりと顔を近づけていく。次にされるであろうライの行動を予想して、カレンは目をギュッと瞑り、覚悟を決めた。

 

「.......」

 

むにっ

 

「ふぁ!?」

「.......全然ダメじゃないか」

 

キスをされる...そう思って目を瞑っていたカレンだったが、それはライに頬を引っ張られた事により叶わなかった。

 

驚きで目を開けると、呆れたような顔をしたライが目に飛び込んでくる。

 

「そこいらの男には負けないんじゃなかったのか?抵抗らしい抵抗、全然されてないんだけど?」

 

むにむにっ

 

「そもそも君は隙が多すぎるし、自分がどれだけ他の男に狙われてるかわかってない」

 

むにむにむにっ

 

「ちゃんと危機感をもってだな.....」

「ひょっ!ひょっひょ!ひゃい、いひゃいいひゃい」

「.....ああ、ごめん。つい力が入ってしまった」

 

そう言ってライはカレンの頬から手を離す。カレンは赤くなった頬を擦りながら、涙目になった瞳をキッ、と鋭くさせて睨んできた。

 

「うぅ〜、いたた...なにするのよ!」

「なにするのよ、じゃない!君が襲われてもそこいらの男には負けないから大丈夫と言ったんじゃないか!やってみたら、全然抵抗出来てないし.....僕じゃなかったら確実に襲われてたぞ!?」

「うっ...だってそれは...相手があなただったから...」

 

先程の威勢はどこへ行ったのか、怒られてしゅん、としてしまったカレンに、ライは4度目のため息を吐いた。

 

ビクリっ、と散々呆れられて愛想を尽かされてるんじゃないかと怯えているカレンに、ライはカレンの頭を撫でて、優しく語りかける。

 

「まあ、さっきのは僕もやりすぎた。すまない。でも、本当に心配してるんだ。君は、自分がどれだけ魅力的かわかってない。さっきだって、どれだけの男が鼻の下を伸ばしていたか.....」

 

形のいい眉を八の字にさせて懇願するように言うライに、カレンは魅力的と言われて嬉しい様な、申し訳ないような複雑な感情が入り交じる。

 

少し...本っ当に!少し残念ではあったが、ライがあんな事をしてまで自分を心配してくれたのだ。

 

あんな.....妖しげに微笑んで...迫られて...襲うと言われて.....

 

カレンは先程のライとのやり取りを思い出し、また顔を赤くするが、今度は首をぶんぶんと振って顔の熱をとる。

 

そして、ライに向き直ると、素直に頭を下げた。

 

「ごめんなさい...次からは気を付けるわ」

「わかってくれたなら、もういいよ。さぁ、もうシャワー室も空いてるだろう。一緒に行こう」

「うん!」

 

そう言ってライが手を差し伸べると、カレンははにかむような笑顔になり、その手をとる。

 

そして、嬉しそうに、手を繋ぎながらライと一緒にシャワー室に歩いていく。

 

 

 

カレンは知らない。

 

ライもかなりドキドキしていた事を...

 

ギリギリの所で鋼の理性が働いてくれたが、もし、この理性が崩壊していたら...

 

「結構、危なかったのかもな(ボソッ)」

「え?ライ何か言った?」

「いいや、なんでもない」

 

そう言って、ライは自分の欲望を笑顔で隠した。

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