作者はLGBTに偏見は御座いません。
私の恋人であるライはモテる。
尋常じゃないぐらいモテる。
男女問わず(なんで男もいるのよ)、あちこちでフラグを建てては自分の虜にしてしまう一級フラグ建築士だ。
ほら、今も
「ライくーん!これ、調理実習で作ったの!良かったら貰って〜♡きゃー!渡しちゃった!」
「あ、ああああの!ライ先輩!放課後ってお時間、あいてますか...?」
「ライ.....お前ってまつ毛長いよなぁ.....女みたいに綺麗で.....俺、お前ならイケr(シュッ)(ブスッ)ぐあっ!!」ガクッ
「お、おい!!どこからペンが...」
「.................チッ」
こんな風に、今まで建てたフラグから発生したライに群がる煩い虫......もとい、男女が多すぎる。
ライは優しいから、困ってる人がいたらほっとけないしほっとかない。必ず手助けをして、最近はよくする様になった柔らかな笑顔(私のおかげと言っていた。もう、ライったら)で対応するから、それにヤられた人達が次々にライの虜になっている。
ああ鬱陶しい...
ライは彼女である私のなのに...
それなのにここで見守る事しか出来ない。
理由は簡単。今の私は病弱なシュタットフェルト家のお嬢様だから。そのお嬢様が、あんな人混みに突っ込んでライを引っ張り出しに行くなんて出来るわけがない。
レジスタンス活動をしてる事を隠す為にこの設定にしたけど、今日ほど後悔した日はないわ...
「不機嫌そうだなカレン」
「ルルーシュ...」
最も鬱陶しい奴がきた...
こいつもライの事が好きだから、その目には苛立ちの色がありありと見える。
「そう言うあんたも不機嫌そうね」
「当然だ。『俺の』ライがあんな愚民共に群がられて、気分がいい訳ないだろう」
そう言って、ルルーシュはフンっと鼻を鳴らしてライを囲んでる生徒達を睨みつけている。
『俺の』というのを強調しているけど、ライの恋人は私だし、この前も6回目の告白(ライがげんなりしながら教えてくれた)をしてこっぴどく振られているのに何を自信満々に言っているのかしらこいつ。
「ねえ、そろそろいい加減にしてくれない?ライの恋人は私なんだけど?」
「フンッ、お前みたいにガサツな女にライは不釣り合いだ。あいつには眉目秀麗。家事全般完璧。統率者としても優れているこの俺こそが相応しい!」
そう言って無駄に優雅でカッコつけたポーズで私を睨んでくるルルーシュ。
私も周りに悟られないように睨みつけ、バチバチと火花を散らした。
ああウザい。凄くウザい。
こんなのが敬愛していたゼロの正体だなんて知りたくなかった。
私がゼロの正体がルルーシュだと知ったのは今から少し前。私とライが付き合いだしたのを一緒にゼロに報告しに行った時。
執務室にライと手を繋ぎながら入ると、書類整理をしていたゼロはそれを見た瞬間、持っていた書類をバサバサっと落として数秒固まった。
そして、よろよろと椅子から立ち上がったかと思うと、足から崩れ落ち、手を地面について絶望していた(見たくなかった)。
暫くして立ち直ったかと思えばゼロの仮面を脱ぎ捨てて泣きながら自分がどれだけライを愛しているか熱弁し(この時正体を知った) 、ライに抱きつこうとしていた(ライに殴り飛ばされて潰れたカエルみたいな声を出してた)。
それからというもの、ゼロの権限を使って別れさせようとしたり、無理矢理私とライを2人きりにさせないように任務を与えたり、ゼロの左腕として、ちょくちょくライを自分の部屋に呼び付けては襲おうとした前科がある(全部ライが暴れて事なきを得たけど)。
ゼロとしての戦術や統率に関しての手腕は認めるけど、ことライに関しては、私はこいつが大っ嫌いだ。
「あんたねぇ...この前もライに迫ってボコボコにされてたじゃない。もう諦めなさいよ。それ以前にあんた...男でしょ?」
「愛の前に性別等関係ない!それにあれは照れているだけだ!俺のこの熱い想いを伝え続けていれば、ライもきっとお前とは別れるはず「ルルーシュ...」ハっ!!」
私とルルーシュが言い争いをしていると、いつの間にか人垣から抜け出したらしいライが、とても綺麗な笑顔でルルーシュの後ろに立っていた。
目は恐ろしいくらいに笑ってないけど...
「ふふっ、聞き間違いかなぁ?今、僕とカレンが別れるとか聞こえたんだけど?」
─そんなに殺されたいのか?
ライは全く笑ってない目を細めてルルーシュを見る。目が語ってる、本気の目だ。寒気を感じてしまうほど。
その目で直接見られているルルーシュはどれだけの悪寒を感じているのかしら?ガタガタと体を震えさせて、硬直している。
「ルルーシュ...僕は何度も言っているだろう?僕とカレンの仲を引き裂くようなマネはやめてくれと...」
「い、いや!しかしだな「ルルーシュ?」ッ!」
「あまり我儘を言って僕を困らせないでくれ.......死にたくなければ(ボソッ)」
「っぁ......」
ライに耳元で囁かれた事により、ぶるりと体を震わせて少しだけ艶っぽい声を出したルルーシュ。顔は赤くなり、まるで恋する乙女のような顔で、熱っぽい視線をライに送っている。
耳元で囁かれてそうなってしまう気持ちはわからなくもないけど、明らかな殺意を持って脅されてるのにそんな視線を送るなんて......こいつはドMなのかしら?
ライはそれを華麗にスルーして私に向き直ると、ルルーシュに向けたものではない、慈しみを込めた蕩けるような笑顔で私を見る。
正直、突然そんな顔をしないで欲しい...心臓に悪いから...
ああ、ほら。周りの生徒達が顔を赤くして胸を押さえてるし、間近で見てしまったルルーシュなんて鼻血を出して倒れちゃったじゃない。
「すまないカレン、お待たせ。ルルーシュに嫌な事はされなかったか?」
自分の笑顔でどれだけの人的被害があったのか気付いてないライは、そう言って私の頬を優しく撫でた。
撫でられた頬が熱くなる。ライの少しひんやりとした手が心地いい。さっきまで他の生徒とルルーシュのせいでイライラしていた私は、たったそれだけで機嫌が直ってしまう。我ながら単純だと思うけど、嬉しいんだからしょうがない。
「大丈夫よ。ルルーシュとは軽いお話してただけだから」
「そうか、よかった。何か嫌な事があったならすぐに言ってくれ。粛清するから」
私の頬を撫でながら笑顔でサラッと怖いことを言うライに、少しだけ頬が引きつったけど、それ以上に私の心配をしてくれているのかと思うと嬉しい気持ちが込み上げる。
「ふふ、ありがとう」
「それじゃあ、一緒にお昼を食べに行こうか?」
「うん!」
ぎゅむぅっ
「ぐあッ!」
ライは鼻血を出して倒れているルルーシュを踏み付けると、私の手を取って何も無かったかのように歩き出した。
正直可哀想と思わなくもないけど、今までしつこくライに付きまとってライを困らせてるんだから、扱いが酷くなるのは当然よね。
そうして、私とライは手を繋ぎながら一緒にお弁当を食べる為に、教室を後にした。
「くっ!俺は諦めん!諦めんぞぉ!!」
「いや、諦めろよ。どう見たってお前勝ち目ねぇよ」
リヴァルのツッコミはルルーシュの耳には届かなかった。
このゾンビのように倒れても這い上がる不屈の姿が、ライを諦めきれない数多の生徒達に勇気を与えている事を.....ルルーシュは知らない。