ライカレ短編集   作:喜怒哀楽

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お久しぶりです。
長らく投稿しないで申し訳ありません。


マフラー

「……ックシュ」

「大丈夫?ライ」

「ああ、大丈夫だ」

 

 そう言って取り繕うライだが、明らかに寒そうだった。

 授業が終わり放課後。ライとカレンは暖房の効いた教室を出て、玄関まで向かっていた。教室と違い底冷えしそうな冷気が2人を包み、校舎から出ると肌を刺す程鋭い風が吹いた。

 カレンの格好はマフラーにコート。対してライは指定の制服のみだ。今の季節は12月。いくら最近まで暖かかったとはいえ、彼の格好は明らかに薄着だった。

 

「ねえ、ライ。あなたコートとか持ってないの?」

 

 カレンの純粋な問いかけに、ライは気まずそうに目を逸らす。そしてバツが悪そうにボソボソと喋った。

 

「……持ってきてない」

「なんで?」

「教室は暖かいし、クラブハウスが近いから多少寒くても大丈夫だと思って……」

 

 そこまで言ってチラリ、とカレンを見れば呆れたような顔でため息を吐かれた。

 

「……すまない」

「いつも言ってるでしょ?自分の事を適当にしないでって」

「はい……」

 

 素直に謝るライだが、再度ため息を吐くカレン。

 それにライは母親に叱られた子供のようにしょんぼりとしてしまった。

 そう、カレンが呆れてライがこんなに気まずそうなのは普段の彼の行いが原因だった。

 

 特区日本が無事設立し、日本とブリタニアは友好関係になった。

 だがそれは表向きの話。現実は元植民地への平等な対応に不満を抱くブリタニア人と、『ブリタニアに媚びた』という日本人の反乱やテロが、まだまだ続いていた。

 それに伴いユーフェミアとコーネリアを主軸とするブリタニア軍と黒の騎士団が協力し、騒動を納めているのだが、いかんせん10年も続いた蟠りを溶かすことは容易くない。

 皆死に物狂いで働いていた。

 しかし、彼ほど自分の身を削って働いている者はいないだろう。

 特区反対派のテロリストとのKMF戦闘。

 ブリタニアや諸外国への外交。新しい法律の作成。予算会議。意見交換会。ゼロと同伴の貴族のパーティー。書類仕事の山、山、山。

 二徹三徹当たり前。食事は酷い時だと塩と水で済ませ、カラスの行水の様なシャワーで最低限の汚れをとる。明らかにオーバーワークだった。

 しかし、彼以外の人間で、彼以上の仕事の成果を出す人間も残念ながらいなかった。

 普通なら、自分から休みが欲しい、休みたいと言うだろう。

 だが彼は、休みはいらないという。

 それ所か、今のこの現状が幸せだと言っているのだ。

 

『君の望んでいた日本解放とは少し違うかもしれないけど、ブリタニア人や日本人が共に笑って過ごせる世界を今、僕達は造っている。皆が幸せになれる、優しい世界が実現しようとしてる』

 

 そう言って笑いかけるライに、カレンは嬉しくなった。

 しかし、次の言葉で憤慨した。

 

『 その為なら、僕の事なんてどうでもいいんだ』

 

 彼が優しい事は知っている。

 他人の助けになるのなら、喜んで力を貸すだろう。

 だが、裏を返せば自分の事を蔑ろにしているのだ。

 KMFでの戦闘や外交、書類仕事は完璧にこなすのに、自分の事になると身なりも食事も、睡眠さえ忘れてしまう事がある。

 その度に彼は適当に済ませて『大丈夫』と言うが、適当にも限度があった。

 カレンはそれが心配だった。

 ブリタニアと日本の為に、2人で笑いあえる日々を過ごしたいと願った。

 それなのに、このままではいつか彼だけが倒れてしまう。

 

(そんなのは、嫌)

 

 自分では何ができるだろう?彼の為に、恋人である彼の為に、今出来ることは?

 

「……あ」

「……?どうしたんだ?」

 

 ぐるぐると回った頭に、ちょっとした妙案が浮かんだ。

 本当に些細な事だが、しないよりかはマシだろう。

 

「じゃあ……こういうのは?」

「ん?……ッ!?」

 

 自分の赤いマフラーを取って、ライの首にかける。

 そのままライの首だけに巻こうとも思ったが、彼の驚いた顔は珍しい。もっと見たくなって、勢いのまま自分と一緒に巻いてしまう。

 

「…………」

「よしッ……っと、ほ、ほら!こうすれば貴方もちょっとは暖かいかなって……」

 

 巻き終わって、それでも終始固まっているライに、中々大胆な事をしたのではないかと恥ずかしくなったカレンは、顔を背けて早口に捲し立てた。

 数秒しても何も言わないままの彼に、チラリと視線を向ければ、ライはそのまま巻かれたマフラーに触れながら

 

「これは……少し、恥ずかしいな」

 

 はにかむ様に笑った。

 その頬は心無しか赤い。寒いのもあるのだろうが、きっとそれだけが理由ではないだろう。

 

「そ、そうね。でもほら、何もしないよりあったかいでしょ?」

「ふふ……そうだな」

 

 赤くなったカレンの顔。ライは愛しくなって、彼女の手をそっと握る。

 当然握られた手に驚きながらも、カレンも優しく握り返した。

 カレンの熱が、じんわりとライに浸透していく。

 

「あったかいな」

 

 ライの嬉しそうな顔に、カレンも自然と笑みがこぼれていた。

 

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