ダンジョンで魔人拳を打つのは間違いではない! 作:カタキモノ
今回は最初から書きたくてしょうがないシーンだったので結構難産でした!
大三元さん、ハイブリッチさん、ザンライザさん、ドラン1515さん!高評価ありがとうございます!
それでは!
ズシャァァ!!!
剛の力で思い切り投げられたベートは西地区の歩道を勢いよく滑って行った。その光景に誰もが驚いている中、剛は店の外に出てベートから3M程の所で立ち止まった。
「クソがぁ!テメェいきなり何しやがる!!」
「あぁ、そう言えば名乗ってなかったな。甲斐剛、冒険者だ。そして、
剛は拳に力を込める。右手に魔力が集中し、手のひら全体が妖しく紫色に光る。
「とりあえず、俺が今からするのはただの
「ハァ?何を言ってやがる。オレがテメェに謝る必要なんざねぇだろうが?しかも何で雑魚のテメェが上からものを言ってやがる。」
「謝罪は俺にではなくベルにするのだが。それも理解していない低脳にはこれ以上言葉は不要だな。」
「アァ!?」
売り言葉に買い言葉。互いにこれ以上ない程剣呑な雰囲気になっており道ゆく通行人達も距離をとり、店の入り口ではベートの仲間は見知らぬ黒い鎧の冒険者を心配していた。
「ね、ねぇこれ不味いんじゃない?あの黒い鎧の人が大怪我とかしちゃったら、、、。」
「そうなる前に止めるしかあるまい。あの青年もベートもお互いに冷静ではない、その状況ではいくら止めても無駄だろう。アイズ、すまないが危険と判断したらその時は頼むぞ。」
「うん。(…あの人、ミノタウロスの時の人だ。)」
ベートは剛を鋭い目つきで睨みつけ左手を顔の前、右手を顔の横に構える。対する剛は身体を半身に構え肩を引き右手は握らずに軽く開いている。ピリつく空気の中赤髪の中性的な女性が入り口から一歩前にでた。
「そんじゃあウチが審判や。二人共、地面に背中がついた時点で負け。気絶しても負け。それ以上の攻撃は禁止や、ええな?」
「あぁ。」
「構わん。」
「ほんじゃ、
「ッシャア!!」
何処かで聞き覚えのある開始の合図とともにベートは姿勢を低くし剛に突っ込んで来る、それに対し剛は何もせずにただ真っ直ぐ突っ込んでくるベートを睨みつけている。
「(一撃で沈めてやる!)ッオラァ!!」
ベートは剛に肉薄するとその勢いを殺さずに右足を振り上げ、剛の顎を狙ったハイキックを放つ。
「甘いわっ!!」
剛は数多くのゲームの経験からベートの出方を伺っていたがベートの狙いが顎を狙った一撃と読み身体を退け反らせることで回避した。そして魔力を集中させていた右手でベートの胸ぐらを掴み持ち上げる。
「喰らえ。」
「ッ!!!」
剛は右手に集中させた魔力にさらに力を込める。行き場を失った魔力は次第に熱に変換されていき、そしてついに
対象を握り、集中させた自分の魔力を炎に変換させ爆発によって大ダメージを与える。この技の名は
炎獄握
ボンッ‼︎
「ギャウン!!」
首元を掴まれたまま剛の手のひらが爆発した為、ベートの首の皮膚は焼け、皮膚の下の肉が露になっていた。しかしそこはlv5冒険者としてのいステータスの高さ故か、ベートは倒れそうになったもののその目は闘志を失っておらず、剛に対してもう一度攻撃を仕掛けようとしていた。
しかし、
「もう一丁!」
ドカッ‼︎
剛の無慈悲な前蹴りがベートの保っていた意識を完全に刈り取った。
剛が行ったのはゲーム版で良く使われていたガノンお得意のコンボであり、強化された身体能力で思い切り腹部を蹴られたベートはほぼ地面と並行に吹っ飛び意識を失って倒れていた。ベートを自分の手で仕留めたことで剛の溜飲は先程と比べるとかなり下がっていた。
「おい審判、終わったぞ。」
「…!しょっ、勝負アリ!!」
剛に言われ、思い出した様に終了の合図をする審判。
大方の予想を覆しlv5のベートを下した無名の冒険者にギャラリーもベートの仲間も審判でさえも言葉を失って居た。そんな中剛は会計を済ませようと店の中に入ろうとすると金髪の少女と目が合う。
「……」
「?」
こちらを見つめてくる少女を不思議に思いながらも剛は会計を済ませようとカウンターに居たリューに話しかける。
「会計お願いします、ベルくんのも。」
「あっ、はい……5000ヴァリスになります。」
「じゃあ丁度で。」
「はい、あのカイさん。」
「何ですか?」
試合が終わってからずっと視線を感じている為、とっとと外に出ようとして居た所リューに呼び止められた。
「私は、どうやら何か勘違いをしていたようです。その為貴方に不快な思いをさせてしまっていたと思いまして。」
「あー、まぁ初対面でしたから不審に思うでしょうから。気にしてないんで大丈夫っすよ!」
「そうでしたか。なら良かったです。」
「んじゃ!俺はこれで!」
「ご来店ありがとうございました。」
突然のリューの謝罪に戸惑ったが「どうやら不器用なだけで悪い人じゃないと」思い笑いながら店の入り口の方に振り向いた、するとそこには金髪の少女がまたもこちらを見つめて居た。
「あの、、、、。」
「…何でしょう?」
「どうやったら強くなれますか?」
「…難しい質問だな。」
適当に答えて店を後にしようとして居た剛は思わぬ質問に立ち止まり思考を巡らせる。が、考えている間も他の客からの視線が刺さる為、剛としてはすぐにでも店を出たかった。しかし少女は真剣な目でこちらを見つめているため無下にも出来ない。
「(不味い、どうすればこの場を乗り切れる。多分この子は適当なことを言えば質問してくるに違い無いし、、、あ。)」
立ち止まり悩むこと数秒、剛は一つの答えを見つけた。
「…何故強さを求める。」
「…え?」
「強さとは目的によって求める強さも違う。君はそんな中でどんな強さを求める?」
「……理由。」
「答えが出たならまた来るが良い。」
剛はとあるアニメで言っていた台詞を思い出し、それっぽく後回しにしてこの場を去ろうと考えた。そして少女はアニメのように悩み始めたため、剛は足早に店の外に向かう。が、しかし。
「待ってくれないか?」
「……はい、なんでしょうか?」
この短い間に3回も止められた上に視線が痛いため流石にもう帰りたくなってきた剛だったが、声を聞く限り女性であった為無下に出来ないともう一度立ち止まった。
「先程は仲間がすまなかった。恐らく酩酊して居たのであろうが君の仲間にも大変な事をしてしまった。」
「…その言葉はあんたではなく外で伸びてるヤツが言うことだ。それにあんたはヤツを止めてただろ?別に俺は何もされてないから平気だ、もう行って良いか?」
剛は思った事をそのまま口に出し、帰ろうとする。
「待ってくれ!君と君の仲間の子を私達の
「…あー、勘違いしてる様だけど別に俺とベルは友達ってだけで仲間じゃないし、そもそもファミリアも違うからベルがどこに居るか俺も知らん。」
「そうだったのか…」
「あと俺は行くの面倒だから謝罪は要らん、そんでもってあの子の名前はベル・クラネルだ。調べりゃ本拠地くらいわかるだろ、そんじゃ!」
「最後に一つだけ頼む!君の名前はなんだ?」
「……………甲斐剛だ。」
そう言い残すと、剛は足早にその場を去って行った。話しかけてきた女性と少女の視線を背中に感じながら。
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ゲルダの家
「…ヤベェ、遅くなること言ってなかった。」
剛は
「これは野宿も覚悟するしか無いよなぁ」
そう思って扉に手をかけると驚くことに鍵が空いていた。
なにやら不穏な空気を感じる剛だったが、「ここで迷っていても仕方がない」と意を決して中に踏み入った。
「た、ただいま帰りました〜。」
「………。」
するとそこにはゲルダが
「(何がどうしてこうなった!?)」
正直目の前にゲルダが立って居たことで剛は声も上げられないほどびっくりした。当のゲルダはゆっくりと剛に視線を合わせると幽鬼の様な雰囲気を纏って剛に近づいて来る。ビビる剛。そして腕を振れば当たる程の距離まで近づくとゲルダは口を開いた。
「こんな時間までドウシテタノ?ワタシ凄ク寂シカッタンダカラネ?」
ゴクリッ
思わず息を呑む剛。そして、ゲルダは言う。
「オハナシシマショウ?」
剛の長い夜が始まる、、、
これ書いててもの凄い別人視点から書きたくてしょうがなくなったのですがしばらくはとりあえず主人公視点メインで行きます。
正直一話で複数人視点を入れると毎日投稿出来なくなりそうな文字数になってしまいまして。
これからも出来る限り投稿頻度を落とさないように頑張りますので応援よろしくお願いします!
それでは!