フリーター転生〜ソマルに憑依したので本気で生きる〜   作:松毬

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いい子にしなきゃダメよ

 やっと歩けるようになった。

 必死にハイハイしていた成果が出たんじゃないだろうか。

 

 しかし、油断するとすぐに転けてしまうのが幼児体型の欠点だ。

 頭を打たないようにだけは気をつけている。

 そのおかげか、最近受け身を取るのが上手くなったような気がする。

 

 歩けるようになったのを見た両親が外に連れて行ってくれるようになった。

 と言ってもうちの所有する畑だけだけど、あっ、実際に土地を持っている訳じゃないらしい。

 あくまでもこの土地はここの領主である貴族様のものであるから税を納めなければならないし、万が一の時は没収されたりもするらしい。

 

 まぁ、そんな話はあまりない。反乱でも犯さない限り最低限の生活は保証されている訳だ。

 それに森にいる魔物なんてのはこの村に住んでる騎士様が率先して守ってくださるらしいので普通に暮らしていればいい。

 

 そんな話を母親が話してくれた。

 実際は、もっと私情が入った話し方だったけれども。

 魔物を一刀両断してしまう騎士様は常在戦場を心がけていていつでも剣を帯刀して居るし、魔物の報がない時は屋敷の庭で剣の修行をして居るらしい。

 それにイケメンで、愛妻家で、イケボで、筋肉がエロくて、少しエッチだとさ。

 

 そんな難しい話を1歳児にするわけがないじゃないかって?

 真剣に聞いている空気を出して相槌をちゃんと打てばこの子もしかして天才かも!?って感じで聞きたいことが話してくれるんだなぁ、これが。

 

 そのせいでソマルも騎士様のことが好きなのね!みたいな勘違いを起こしかけてることには目を瞑ろう。

 本当に母親が話すような謙虚な俺TUEEEイケメンの騎士様がいるのであれば嫌いじゃないし。

 

 伊達に今世で一番最初に話した言語が「あれ何?」じゃない。

 「あれ何?」って聞きすぎてなにちゃんとか揶揄られる様になってしまった。

 ちょっと卑猥に感じるのでまじでやめて欲しい。

 

 両親と祖母は俺が一番最初に誰の名前を呼ぶのかで争っていたらしくてちょっと泣いた。

 なんで泣いてるのか分からなくて怖くなって俺も泣いた。

 まじですまんと思ってる。

 

 あー、そうそう。

 外に連れて行って貰ったんだ。

 そうしたら同じくらいの子供が2人いた。

 

「ソマルです」

 

 親に挨拶しなさいって言われたので名前を名乗ってペコリとする。

 2人とも同じように返してくれる。

 

 あ〜〜〜〜!

 ショタ可愛いんじゃ〜〜!!

 ともだちになろーね♪

 

 やってるのは突発的な鬼ごっことか、バッタを捕まえて見たりだとか、土で山を作って崩したりとかだ。

 

 所詮子供の遊びだが、真剣にやると楽しかったりする。

 これが子供心というやつか。

 真剣にやるとどっちかが飽きて何やってるのか分からなくなっちゃう時もあるが。

 これも子供心ってやつか。

 

 本当急に泣いたりするのはやめてほしい。俺にはどうにもなんないから……。

 

 今は、そんな風に、地道に体力をつけることしか出来ない。

 魔力はまだ見つかっていない。

 

 

 

 そろーり、そろーり。

 

 時刻は深夜、現在極秘ミッション中であります。

 と言っても、単純に昼間に寝過ぎて眠れなくなっちゃったからちょっと庭先まで散歩してみようかなって思いついただけなんだけどさ。

 

 お婆ちゃんを起こさないようにこっそりと抜け出してきた。

 

「モ"ーーー!!」

 

 っと、びっくりした。牛かぁ、驚かせんなよ。

 

 芝生に寝転んで空を見上げる。

 初めてちゃんと見る夜景はとても綺麗だった。

 星も多く見える。

 

 しかし、やっぱり違う世界なんだなぁ、と思ってしまう。

 月なんて柄が違うし、星もなんだか見慣れない。

 

 これからどうなるんだろう……なんて、ちょっとセンチメンタルになってみたり。

 

 

「ソマルッ!!!」

 

 っ!びっくりした。母さんか。

 

「勝手に抜け出しちゃダメでしょ?心配したんだから……」

 

 そう言うと俺の体を抱きしめてぎゅーっと締め付けてくる。

 苦しい……けど、申し訳ない気持ちの方が先に来る。

 そんなに心配させるつもりなんて無かった。

 

「ごめんなさい」

 

 庭先に父さんと婆ちゃんまで出てきてしまった。

 心配させたんだろうな。でもそれが嬉しくて堪らない。

 俺のことを大切に思ってくれて居るってことだろうから。

 

「ソマル。悪いことをしたらね、スペルド族って言う悪い魔族が来て食べられちゃうんだよ」

 

 ……!?それを聞いた俺の頭の中はさっきまでの感情とは違うものに変わっていた。

 

「スペルド族?」

 

「緑髪で額に宝石をつけた悪い魔族よ」

 

 やっぱり……。それは、そう言うこと……なんだろうか。

 死ぬ前に見たあれは世界の導入で、ここはフイットア領のブエナ村で、俺はソマルだ。

 

「だから、いい子にしないとダメなんだからね」

 

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