親からラインが来た。
『明日から父さんと母さんアメリカに出張する事になったけど、どうする?』
「は」
あまりに狂気じみてびっくりした。なんですかこれ。
『いや行きたくないけど』
『じゃあ日本に残って一人暮らしするか?』
『ボ?』
え?まじ?
『昔住んでたところのアパート借りてそこで暮らしてもらうことになるけど』
え、そこって
『東京』
『ヌ〜〜〜』
は?やばいやばいやばいやばい
『ちょっと待って、そこ以外じゃダメ?』
『別にいいけど、その代わり家賃とかは全部自分でなんとかしろよ?』
『は、無理』
『アメリカ行きたくないなら大人しく行け』
『おはgsんs』
もうヤケになってラインを閉じた。
なぜ俺がこんなに東京を拒むのか。理由は簡単だ。
会いたくない人がたくさんいるから。
ここからちょっと回想しよう。
-----------------------------------
昔、俺は東京で生まれ、しばらくそこで育った。幼稚園の頃、俺はあまり人と接するのが得意ではなく、友達は一人もいなかった。
ある日、一人でブランコ振り回して遊んでいたら、
「ねぇ、きみひとり?」
「え?」
一人の女の子が俺に話しかけて来た。
「ひとりであそんでもつまんなくない?わたしといっしょにあそぼう!!」
なんと遊びに誘ってきたのだ。今までこんなことはなかったので、びっくりした。
「うん!!!あそびたい!!」
「それじゃこっちきて!!」
女の子に手を引っ張られ、一緒に走る。
「むにちゃーん!!このこといっしょにあそぼー!」
「だれ?」
女の子はまた一人の女の子に話しかけた。どうやら友達同士みたいだ。
「えーっと、だれだっけ?」
そりゃそうだ。俺もお前らを知らない。
「ぼく、健太(けんた)、加賀谷健太(かがやけんた)!!」
「けんたくん!じゃあけんくんってよぶね!!わたしのなまえは愛本りんく!!」
「あたしは大鳴門むに、よろしくねけんた」
こうして、俺たちは友達になった。
それから3人で遊んでいるうち、だんだん自分に自信がついてきて、自分から話しかけることができるようになった。あの二人のおかげで、俺は変わることができたのだ。だが、
「ねぇ、なんでわたしたちいがいのことあそぶの??」
「あたしたちじゃフマン?」
「「ネェ、ナンデナノ??」」
「ひぇ」
いろんな友達と遊ぶことが多くなったからか、りんくとむにと一緒に遊ぶことが少なくなってしまった。そのせいで、寂しくなったのだろう。
「ごめん、これからはもっとあそぼう」
これで幼稚園の後だけでなく、休日も遊ぶようになった。それだけでなく、りんくとむには俺を巡って喧嘩することが多くなった。
「りんくちゃんだけずるい!あたしもけんたにくっつきたい!」
「むにちゃんさっきまでほっぺにチュウしてたでしょ!!」
こんな感じで、俺は幼い体ながらも疲れ切っていた。
しかし、それも終わりを告げる。
「ごめん、パパがおしごとつごうでおひっこしすることになったんだ」
「そんな」
「うそよね、けんた」
「ごめん、またあおう!!!じゃあね!!!」
「「まって!!!」
俺は二人が襲いかかってくるかもしれないと恐れていた反面、寂しかったのもあり、俺は走り去った。二人は公園のゲートまで追いかけて来たが、外からは追いかけてこなかった。
-----------------------
「思えば俺最低だったよなぁ」
だから会いたくないのだ。もしかしたらあの二人は今でも東京に住んでいるかもしれない。
「でも、覚えてないかもしれない」
きっと俺だけ覚えているだけで、向こうは忘れているかもしれない。
「ま、行くしかないよな」
静かに引越しの準備を始めた。