「一緒にお買い物に行きません?」
放課後、慧理那からそんな誘いを受けた。
何故、そうなったかと言えば…
昼頃、食堂で何食べようか考えながらスマホをいじっていた。
ふと画面を見ると、1通のメールが入っていたのだ。
この時間に珍しい。
(シフトの予定変更かなぁ?)
そう思い、メールを開いてみた。
その内容は、
『放課後、生徒会室に来てください』
簡潔だが、緊急性を匂わせるものだった。
だから、何か重要な話でもあるのかと思ってたんだけど…
「…はい?」
「買い物か~」
開口一番がそれだったので、反応が遅れた。
一緒にメールで呼ばれたリンは、呑気に返す。
「最近、都内に新しいデパートができたことはご存知でしょう?」
「もちろん」
「ですので、一緒に来てほしいのですが…」
一緒に行こうって言われても、ねぇ。
何時もメイドさんが付いていては、買い物してても落ち着かない。
何より、今日はバイトが入っている。
正直そんな余裕はない。
うん、断ろう。
「えっと、今日はバイトが入っているんだけど…」
「それなら大丈夫ですわ」
えっ、どう大丈夫なの!?
今からじゃ、出て行っても間に合わないけど。
「代わりの者を送らせている。今日のバイトについては、心配しなくてもいいぞ」
慧理那の側にいるメイド―――
仕事早いわぁ~…
ちなみに、彼女は数日前に本校の体育教師となった。
私がいるクラスにも挨拶に来てくれたけど、やはりメイド服だった。
ただ、袖部分が破れているのが気になった。
一体、何があったのか…
って、それは今はどうでもいい。
慧理那さんよ、私達に選択肢は無いのかしら…
一緒に買い物へ行きたいなら、前もって連絡してほしかった。
そして、私達は買い物を楽しんでいる。
「いや~、助かるわ。最近ええ服
「そう言っていただけると、お連れした甲斐がありますわ」
…いや、主にリンが、と言うべきか。
彼女は、衣類を買うときは大抵家族で出かけたときなので、あまり自由が無かった。
その反動なのか、色々衣服を手に取っている今のリンはかなり輝いている。
私?
私は一人暮らしだし、ある程度はお金の自由もある。
現時点で、欲しい衣服は無いかなぁ。
冷蔵庫の中身も、ある程度入っているから困らないし…
最初に言ったけど、元々はバイトの予定だったから買い物することすら考えていなかった。
「随分はしゃいでいるな、リン」
「うむ。あれ程喜んでくれれば、お嬢様も誘って良かったとお思いになるはずだ」
リンの様子を見ていた私に、桜川先生が同情してくれた。
バイト行っても激務だろうから、私にとっても良かったのかもしれない。
そうだ、私の代わりをしている人にお礼しなくちゃ。
「すみません、桜川先生。今日、私の代わりをしている人の連絡先を教えてほしいのですが」
「そうだな―――」
そう桜川先生が答えようとしたとき、
「おい、あっちで怪物が現れたぞ!」
「何!? じゃあ、テイルレッドたんの活躍が見られるチャンス!!」
「急げ―――!!」
何やら、周りが騒がしい。
しかし、エレメリアンが現れたのに、逃げるどころか観戦とは…
いくらテイルレッドが強くとも、私達一般人の身の保証は出来ないんだけど。
そこ分かってる、皆??
「ほらリン、逃げるよ!」
「うえぇ~、折角いい服見つかったのに…」
服選びの途中だったリンの腕を掴み、無理矢理動かす。
そうやって、私はリンとここから脱出するつもりだったんだけど、
「何をしてますの、2人共!? 早くテイルレッドを応援しなければ!!」
「あぁ、お嬢様! お嬢様~!?」
熱心なテイルレッドファンである慧理那は、我先にと向こうに行ってしまった。
慌てて桜川先生がその後を追う。
私は、その様子を呆然と見ていた。
見事にバラッバラだな、こりゃ。
「どないするん?」
リンは私に支持を求めてきた。
そういえば、腕を捕まえてたままだったな。
なんかもう、この空気に疲れたよ、精神的に。
「しょうがない。行くか」
着いたのは、大きめのホール。
そばにある看板から、何かのコンテストが行われていたみたい。
アルティメギルって、本当に人が多いところに出るのね。
あいつらの目的が
さて、会長は…
「もう、どいて!!」
「あ痛ッ!?」
「慧理那はん、どこや~?」
「ちょっと邪魔なんだけど!?」
元々コンテスト会場だったところに、怪物の乱入があったのだ。
テイルレッド見たさに集まった、野次馬の数が半端じゃない!!
慧理那と桜川先生を探すどころか、移動すら困難とは…
退路確保すら、ままならない状態だ。
あんたたち、死にたいの?
「テイルレッド―! 頑張ってくださいまし―!!」
数分かかかってようやく慧理那達を見つけた。
随分、熱心に応援していることで…
「だぁ~、やっと見つけた!」
「おっつ~」
観衆の中、私はリンの腕を引っ張りながらここまで来たので、
そんな私達を見て、桜川先生は
「遅かったな。ここが特等席だぞ」
「私は戦い見たさに、ここに来たワケじゃない!!」
何故か、隣を勧めてきた。
そして、そんな先生に私はキッパリと断りを入れておいた。
ただでさえ疲れてるのに、これ以上疲れさせるんじゃないよ!!
しかし、視線をテイルレッドの方に向けると、2体のエレメリアンがいた。
1体はイカで、もう1体は…ウミヘビ?
イカは、テイルブルーに向けて孔雀みたいに触手を広げていた。
それを見た彼女は、かなり怯えている。
(あぁ、あれのせいか。確かに見るのも嫌だよね)
私だって、触手は嫌いな部類だ。
あんなウネウネしたもの、滅びればいいのに。
そんな蔑んだ目で戦闘を観ていた。
「むう、あちらにも中々のツインテールが! だが、いずれにしt---」
慧理那を見て、ウミヘビは彼女のツインテールを賞賛しようとしたが…
途中で何故か、私をロックオンしていた。
「こ、これは… 俺が求めていた、いやそれ以上の巨乳だ!!」
「ふえっ!?」
何で私?
だがそう戸惑っている間にも、ウミヘビは私の方に近づいてくる。
だから逃げようって言ったのに…
でも、この距離じゃ逃げられない。
(襲われる…!!)
そう確信したとき、
「その人から離れろ!!」
「グオッ!?」
近づいてきているウミヘビを、テイルレッドがタックルで吹き飛ばした。
私しか見ていなかった彼は、思いっ切り吹き飛ばされる。
「ヌググ…? 貴様、よく見ればツインテールでは無いではないか!? これ程見事な巨乳を有しているにも関わらず、なんと嘆かわしい!」
「ツインテールじゃなくて悪かったわね!!」
よろめきながら、ウミヘビは私がツインテールでないことを非難した。
こうもストレートに言われると、ムカッとくる。
そこまでツインテール属性が大事?
そんな風に私が非難されている間、テイルブルーはイカ相手に大苦戦、というより怯えていた。
あちらの会話については、ウミヘビに意識が行っていたために全く分からない。
戻っていったレッドがなんとか奮い立たせようとするが、うまくいっていないようだ。
「…ちっ! 興が殺がれたわ! もともと小手調べのつもりだったが、ここではそれすらも叶わん!」
ウミヘビがイカの肩を掴み、退却を促す。
「テイルレッド! 今日のところは勝負を預ける! 次の戦いまでに不甲斐ない相棒の涙を拭いておくがよい!!」
そう言った後、私の方を向き、
「俺の名はリヴァイアギルディ!
最後に、やはり嫌味を残して去っていく。
しろと言われると、逆にしたくなくなるんだが…
それに小さい頃からポニーテール一筋なので、それ以外の髪型のイメージがほとんど出来ないのだ。
「ぐううっ! 姫、姫エッ!!」
イカが何かをブルーに投げた。
よく見ると、それは彼の一部であろう触手。
それがブルーの手の甲につくと、
「え、お…きゅう」
あ、気絶した。
そりゃするわな、あんなものがついたら。
すると、ブルーの身体が光り始める。
それに気付いたレッドはブルーを抱え、猛スピードでどこかへ去っていく。
「心配ですわ!」
「お嬢様!?」
「あっ、ちょっと!!」
「?」
テイルレッドを追いかける慧理那。
今回は翼で飛んで帰るわけではないのか、近くにいると踏んだようだ。
慌てて私と桜川先生が後を追う。
リンだけ状況が飲み込めていなかったが、なんとなくついていく。
でも、その時私はそうするべきじゃなかった。
だって、更に面倒な事態に巻き込まれてしまったのだから。