アルティメギル基地。
その廊下にて、ユウは一人寂しく歩いていた。
(あいつら、また面倒なことを…)
彼は、別に仕事が無いわけではない。
仕事に必要な材料や道具こそあれど、進んでいないのだ。
何故、動かないのか?
(折角のチャンスを無駄にしたな)
そう、来るべき時を待っていた。
もっとも、彼が言うように、その時を逃す結果となったが…
(せめて、『彼女』がいれば、このようなことにならずに済んだものを…)
そう思って、ユウは上を見上げる。
姿は怪物であるため、表情は変化しない。
しかし、何処か寂しさが出ているような感じで、虚空を見つめ続けていた。
☆☆☆
「「えええぇっ!?」」
「な、何で入らないんですか!?」
私が勧誘を断ったことにひどく驚く、ツインテール部のみなさん。
えっ… 私、悪いことしたかな?
「いや… 入るにしても、場違いじゃないかな、私は」
頬を軽く掻きながら、そう答えるしか無かった。
だって、ポニーテールだよ!
ツインテール部のイメージとしては合わない気がする。
「あっ、もしかして雰囲気に合わないと思っていませんか!?」
「そりゃまぁ、ネ…」
「大丈夫です! 私もツインテールじゃありませんし」
確かに、今はツインテールはしていない。
だが、かつて観たドラグギルディ戦において、私は彼女の過去を知っている。
自身のツインテール属性を手離し、観束君に託したという悲しい過去を。
だからこそ、彼女は本当にツインテールを愛していると感じる。
「…髪型で決めているわけじゃないの」
「えっ」
「悪いけど、私はあなたたちの気持ちには答えられない」
そう答えた後、暫くの静寂が漂った。
熱心な勧誘は素晴らしいけど、ツインテールをしたことが無い私には理解できない。
だから、そう答えるしかなかったのだ。
「それに、無理強いは良くないで」
今まで黙っていたリン、が静寂を破った。
比較的小さい声だったが、元々人気が無い事と静寂が支配していたこともあって、よく聞こえた。
「別に、この学校は強制的に部活に入るわけ
「それはそうですけど…」
更に自信を無くすトゥアール。
「なら、この話は終わりや。そろそろせんと、授業が始まってまうで」
「「「………」」」
もう、お昼ご飯を楽しむ雰囲気では無いな。
リンの言葉に従い、トボトボと自分たちの教室に戻った3人。
(……ごめんなさい)
私は、彼らの背中に向けて謝罪するしかなかった。
本当なら、彼らの力になりたい。
トゥアールが、必死に私を誘う理由も分かっている。
だけど…
「いおりん、行くで」
「…うん」
私とは考え方が違う以上、入るわけにはいかない。
…もしかしたら、彼らと戦うことになるかもしれない。
「……まさかね」
そんな事を考えながら、私も教室に戻ることにした。
☆☆☆
ツインテール部の勧誘を断った翌日。
いつものように、にテレビをつける。
テイルレッドが現れてから、ワイドショーの大半はツインテイルズについてである。
正直、飽きてきた。
実際、新しい戦闘シーンが撮れていないのか、今までのを回していることが多い。
どうせまた、同じようなものでしょ。
そう思っていた。
だけど、今日はそのワイドショーを見過ごす事ができなかった。
『もっと見て下さいませ、ご主人様~!』
そこには、
今まで居なかったことから、新戦士と思う。
だけどそれだけなら、私がテレビに食い付く理由としては足りない。
気になっていたのは、
「ぇ、慧理那…?」
新戦士が私の友達の慧理那だったから。
だけど、身長が全然違うし。
というより、成長してる?
そういえば、観束君の家でトゥアールが説明してたっけ。
『
だけど、これは…
『ですからもう一刻の猶予もならないのです! テイルブルーが味方だと、野党の反対を押し切って放置しておいて、今度はあの凶暴な新しいツインテイルズですよ!?』
『そもそも何故ツインテイルズと呼ばなければいけないのです、もうあれは別のなにかでは!?』
『総理、すでに世界中から非難を受けていますが、いかがなさるおつもりですか!!』
テイルブルーと同じ、化け物扱いって…
力があるのはいいが、ここまで非難される戦士も珍しい。
ただ、その非難の矛先が慧理那でなければ、スルーできたのに…
というより、ついに慧理那も『
(知らない方が良かったな)
とてつもなく、慧理那が遠い存在となってしまった。
その事実に、私はorz状態になるしかなかった。
「…大丈夫?」
「……」
机で突っ伏している私を隣の人に心配された。
あまり親しくない、男子生徒にまで心配されるなんて。
よっぽど落ち込んでいるんだな、私って。
それを見てか、数人が私のところに集まってきた。
「エリナが、エリナが…」
「会長がどうかしたの?」
まさか、ツインテイルズになるなんて。
いや、慧理那もツインテールをしている以上、可能性はあった。
何故、こんなことに…
だけど、ツインテイルズが正体を隠しているから、リン以外誰にも相談できない。
当人である慧理那は、生徒会の仕事か今日は会っていない。
だったら、ツインテール部の3人に会えばいいじゃないか。
そう思ったけど、断っている手前、会いにくい。
「あまり心配事を抱えてもしょうがないよ。もっと前向きに行かなきゃ!」
「そうそう、いおりんらしくないよ!?」
クラスメイト達が励ましのエールを送ってくれた。
そうだよね。
今、落ち込んでいてもしょうがないよね。
「うん。みんな、心配してくれてありがとう」
私は顔を上げてそう返事した。
放課後になったら、リンに会って相談しよう。
☆☆☆
「ふ~ん… 慧理那ねぇ…」
放課後の中庭。
リンは興味なさそうに返事をした。
ぁ、生徒会は終わっているから大丈夫だよ。
「で、様子はどうだった?」
「まぁ、何か悩んでるようなんは確かや」
何か、か…
恐らく、ツインテイルズについてだろうな。
もしかしたら、今後は付き合いが減ってしまうかもしれないね。
そう思うと、ちょっと寂しくなる。
「ウチらはどうするかやな」
「どうもこうも、普通に生活すれば問題ないんじゃ?」
「あぁ、それやけど―――」
『ピピピピッ!! ピピピピッ!!』
リンが話そうとしたとき、どこからか音が聞こえてきた。
着信か何か、かな?
「……」
ふと、リンの方を向くと目を閉じ、何処か沈んだような感じで黙っていた。
「ぇ、えっと…」
「…ハァ」
深いため息をついた後、リンはバッグから何かを取り出した。
「それって…!!」
以前、ユウからもらったノートパソコンだった。
だけど、なぜ今?
「伊織」
珍しく、ニックネームでなく名前で呼んだリン。
それだけでも、ただ事じゃないのが分かる。
「ユウと
「それが、何か?」
「ウチらは、彼らの戦いからは逃れられへんみたいやわ」
そう答えながら、パソコンを操作していく。
やがて映し出されたのは、
『いやああああ触手ーーーっ!!』
『勝負を捨てるか、テイルレッド!?』
ツインテイルズとアルティメギルの戦闘だった。
場所は、市街地からかなり離れた工場跡。
だた、アルティメギル側がリヴァイアギルディとクラーケギルテディなのに対し、ツインテイルズはレッドとブルーのみ。
イエローはどうしたんだ?
「何で、私達がこれを見なくちゃいけないの?」
別に、私はツインテイルズの事はどうだっていい。
でも、エリナの無事は願うけど…
わざわざ、リアルタイムで観ることなの?
「ウチかて見とうないわ!」
「だったらーーー」
「やけど、このパソコンはウチにとって重要なもんやし、何でか追いかけて来るねん」
「ハァ?」
パソコンが追いかける?
どんな怪奇話なのよ、それ…
「あんまり冗談いうと怒るよ…?」
「いやいやホンマホンマ! てか、むっちゃ顔怖いんですけど!?」
私の怒気にたじろぐリン。
その頬には、暑さのせいでない汗が一筋流れている。
「……」
「せやから、信じてーな!!」
リンの目を見る限り、嘘はついていないみたい。
ふと視線をパソコンの画面に戻すと、
『ハハハッ! 貧乳は
『貧乳貧乳うるせえええ!!』
『リヴァイアギルディ!』
リヴァイアギルディがブルーに倒された。
しかも、素手でフルボッコにして。
これ、R-18指定にした方が良くね?
そう思えるほど、映し出された画面は殺戮劇場と化していた。
「慧理那、大丈夫かな…?」
「色んな意味で、常人を超えとるな」
残されたクラーケギルディは、テイルイエロー―――慧理那と対峙する。
いくらヒーローものが好きと言えど、慧理那は戦闘に関しては素人同然。
…戦えるの?
『終わりだ……! 貴様には求婚では無い、全力の攻撃と思い知れ!!』
その言葉と共に、彼の持つ全ての触手がイエローに襲いかかる。
天を覆いつくそうかと言うほどの、無数の触手。
あれじゃ、穴あきにされちゃう…!
「慧理那っ!!」
『こういうのは、全て撃ち落とすのが通例ですわ!!』
イエローは、全ての武器を展開し、触手を撃ち落としていく。
いわゆる
イエローは、遠距離タイプの戦士か。
ただ、リンが何処かつまらなそうに見ていたのは、気のせい…?
やがて、この打ち合いは終わりを告げる。
拮抗していた両者だったけど、『脱ぐ』ことに目覚めたイエローはその威力を増した。
クラーケギルディの触手を押し返し、本体にダメージを与えた。
だけど撃ち尽くしたのか、あんなに重そうだった装備が外れ、無防備に等しい。
これじゃ、分が悪すぎだよ!
『甘く見ていたぞテイルイエロー。ここまでの
『ご覧あそばせ! 私の…
そう言って、ツインテールをバネにして飛ぶイエロー。
それに追従して、撃ち尽くし、周りに転がっていた武装が空中で巨大な武器に。
『ボルティック・ジャッジメント!!』
巨大な武器から撃ちだしたのは、雷をまとったイエロー。
その
そして… 打ち抜いた。
「なっ…!!」
「ぅ、うそでしょ?」
攻撃の威力に耐え切れず、クラーケギルディは爆発した。
あれが、慧理那?
まるで別人じゃない!?
必殺技を使用した後、倒れこんだイエロー。
これで終わったかな…
だがその後、恐ろしい事態が起きた。
「なにあれ!?」
「うわ、気色悪っ!!」
クラーケギルディは、自身の触手をリヴァイアギルディに突き刺し、融合したのだ。
その姿は、触手でツインテールとした怪物。
あれが、最後の切り札的なものかな?
しかし、それにもひるむことなく猛然と切りかかるレッド。
その剣に籠められた『覚悟』に敗れた、怪物。
レッドが
「慧理那…」
彼女が、本当に遠くなったみたい。
あの、小さくて、でも頑張り屋な生徒会長が…
今後は付き合いを改めようかな。
『ピピピピッ!! ピピピピッ!!』
「またか?」
「今度は何!?」
次に現れるのもエレメリアンだと思っていたが、どうやら違うみたい。
今度は、テイルレッドの様子が変だ。
『貴方を迎えに来たのじゃ、トゥアール。わらわと共に、戦って欲しい』
現れたのは、黒い鎧に包まれた少し幼げな戦士。
背丈はレッドと似たようなかんじかな。
あれ、アルティメギルに人間なんかいたっけ?
(でも、この感じ…)
性別こそ違えど、何処かユウと似ているのは気のせいか?
そんなことを思いながら、延長戦は幕を開けようとしていた。