「…ん」
目が覚めた。
見えたのは、地面と薄暗い部屋。
寝転がっている状態なのだろう。
何処からか、焦げ臭い匂いもする。
(此処は…?)
何とか起き上がって、周りを見ようとした。
だが、身体が思うように動かない。
よく見れば、両方の足首と手首にリング状のモノが付いている。
恐らく、これは拘束具だ。
これでは、逃げ出すことは不可能だ。
てか、まずどうしてこうなったんだっけ?
―回想―
いきなり怪物が現れた。
…って、怪物!?
「ひっ!」
慧理那は思わず短い悲鳴を上げる。
「あ、貴方、何者なの!?」
私は慧理那を守るように前に出る。
私も内心ビビッていたが、一人で逃げ出すわけにもいかない!
…あれ?リンは?
さっきまですぐ近くにいたのに。
だがそれは、すぐに分かった。
「はぁ~、着ぐるみにしては、えぇセンスしとるわぁ」
怪物のすぐ近くで、その身体を眺めていた。
「この…戦闘員さんか?あっちと比べるとデザインがちっとダサいやん」
…リン、何やってるの??
「…む。何だこの娘は?ツインテールでは無いではないか」
怪物も突っ込むところ、ズレてるし。
なんだか話が噛み合わない。
「まぁ良い。目標は一人のみ。今すぐ捕えろ」
「「「モケ--」」」
やばい、このままだと慧理那が連れ去られてしまう。
ここはなんとか時間を稼がないと…
「あんたら、何ツインテールにムキになっとるん?」
「なに…!?」
ぁ…これは、ピ-ンチ!?
何やっちゃってるのょ~!!
「髪型一つで、細かい
「小娘…良い度胸だな…」
うゎ~、完全に怒ってるよ。
理由は、確かにどうでもいいけど。
「面倒だ。ここにいる者を全て捕えろ!」
「「「モケケ―――」」」
-回想終了-
思い出した。
リンのせいで私まで巻き添え喰らったんだ。
そして、その当人は…
少し離れたところに、私と同じ状態でいた。
「気ぃ付いたか」
それも、呑気な声で。
「大丈夫!?」
「あぁ、ウチはな。それより、周りを見てみぃ」
そう言われて、周りを見る。
リンとはまた違うところに、捕えられたであろう女性たちが複数いた。
私やリンと違い、皆ツインテールをしている。
年代は、下は小学生から、上は高校生まで。
ツインテールさえしていれば、年齢はどうでもいいらしい。
拘束具はしていないが、全員怯えている。
怪物に襲われたとなれば、そりゃそうなるか。
むしろ、リンの様な気の強い女性は珍しいだろう。
そして、今気が付いたが、この焦げ臭い匂いは自動車の燃えた匂いだ。
だからか、少し息苦しい。
長く居れば、命に係わる…!
「者ども、集まれい!」
奥から、さらった張本人である怪物が来る。
あの時はよく見れなかったが、その身体は凄まじい。
体長は大人の男性よりも高い。
歩くたび、地面にヒビが入る。
(これはマズイ…!)
今更ながら、恐怖を感じる。
だが…
「ふははははは!!この生きとし行ける全てのツインテールを、我等の手中に収めるのだ――――!!」
相変わらず、この怪物の考えてることはよく分からない。
もぅ何なの、このギャップ。
頭痛がする…
すると、別の場所からまた捕えられた人達が黒い戦闘員に連れて来られる。
(ツインテールを収めると言ってたな。だけど、どうするつもりなんだ?)
いずれにせよ、暫くは動けない。
(様子を見るしかないな)
「それにしても、ツインテールの少ない世界よ―――嘆かわしい!これだけ電気と製鉄にまみれながらその実、石器時代で文明が止まってると見える!!」
(何やねん、あの怪物は。意味が分からん)
小声で、リンがそう言う。
「まあよい、それだけ純度の高いツインテールを見つけられようというもの!!」
確かに、意味が分からない。
一体、何を言ってるの?
「者ども、隊長殿の御言葉を忘れるなっ!極上のツインテール属性は、この周辺で感知されたのだ、草の根分けても探し出せい!!……兎のぬいぐるみの耳を持って泣きじゃくる幼女は、あくまでついでぞ!!」
「………モケェ?モケ」
「応よ、言われるまでもない!究極のツインテール属性の奪取は我らの悲願……だが!この俺も武人である前に一人の男……やはり、ぬいぐるみを持った幼女も見たいのだ1見つけた者には褒美を遣わすぞ!!」
…今更だけど、日本語上手だな。
だが話せる相手じゃないかも、色んな意味で。
「大人に用はない!手早くつまみ出せ!多少手荒でも構わぬ!!」
この指示に、戦闘員はテキパキと動く。
「モケ-」
「何、ぬいぐるみを持っている幼女がいない!?ふむ、女がぬいぐるみを持たぬなら、持たすが男の甲斐性よ!!構わぬ、連れてまいれ!!」
どうしても、ぬいぐるみなのね。
こいつの頑固さには、脱帽よ。
そしてまた、ツインテールの子が連れて来られた。
だが、その子は私がよく知ってる顔で…
「慧理那!?」
そう、一緒に捕まってしまった私のもう一人の友達であった。
「! 長瀬さん、雨宮さん、無事でしたの!?」
「慧理那はん、結構な待遇やなぁ」
慧理那の左右には戦闘員がつき、彼女は両腕を掴れていた。
「くっ…、慧理那をどうするつもり?」
「フッ、直ぐに分かる…」
あぁ、腹立たしい。
目の前にいながら、友達一人助けられないなんて。
「離しなさい!」
絶体絶命の状況で、慧理那は猛然と立ち向かう。
「ほほおう、なかなかの幼な子!しかも、どうやらお嬢様のようだな!!お嬢様ツインテール……まさしく完全体に近い!貴様が究極のツインテールか!!」
「究極……!?それよりあなた、何者なんですの!?人間の言葉が分かりますのね!?他の子たちを解放なさい!!」
「わかるとも。こうして意思の疎通ができているではないか。故に、解放はできぬと断ずる」
「では答えなさい、一体何のもくてきでこんな真似を!」
「いずれ分かる!まずは、者のついでよ――」
「貴様はこの子猫のぬいぐるみを持つがいい!敵意もまた愛らしさと光る……腕白な幼女には、子猫のぬいぐるみがよく似合うさあ、抱けい!!」
どこにあったのか、横幅が3メートルくらいのピンク色のソファーを戦闘員たちが持ってきた。
ぬいぐるみを持たされた慧理那は、そのソファーに座らせる。
「お前たち、この光景をしかと目に焼き付けよ!ツインテール、ぬいぐるみ、そしてソファ-にもたれかかる姿!これこそが、俺の長年の修行の末導き出した黄金比よ!!」
「「「モッケケケーー!!」」」
…その修行、もっと有効活用できたんじゃないかなぁ。
オタクに走った者の末路を垣間見た気がする。