Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.21【平和、か…】

津辺さんとトゥアールさんは、まだ砂浜にて爆走中。

何時も思うけど、トゥアールさんの体は大丈夫なんだろうか。

 

「気にするな。あいつはあぁ見えて頑丈だ」

 

何、その自信?

いやむしろ、母親のような目であの2人を見ている桜川先生。

 

「心配してないんですか、先生?」

「部室内では、あれは日常茶飯事だからな」

 

周りを見れば、先生だけでなく私以外はスルー状態。

そうか、もうこれが日常となっているのか…

 

(ハハハ…)

 

ここには、まともな人がいないのね。

あぁ、誰かこの状況にツッコミを入れて…!

 

「しかしだな---」

 

おっと先生、何か不服があるようで。

 

「お前が一番似合っているのが、納得がいかん!!」

「えぇ―!?」

「観束君、結構お似合いですわ」

 

そう言って、先生は人差し指をビシッと観束君に向けた。

いや、今は『ソーラ』だっけ。

確かに彼女のスタイルは、私から見ても羨ましい。

慧理那も純粋に評価している。

 

彼女の水着は、赤をメインとし、縁が白(ブラは2色の間にオレンジ)であるビキニ。

私やトゥアールさんと比べれば幾分バストサイズは小さいが、全体的にバランスが整っている。

 

「えっとじゃあ、ほどくよ…」

 

そう言って、自身のツインテールをほどき始める彼女。

 

「おぃ、何故ツインテールをほどく?」

「いや、納得いかないって言うから…」

「貴様は心臓の代わりにツインテールでも入っているのか!? 何でもかんでもそれに結びつけるな! ツインテールだけにな…」

 

絶対『上手いこと言った』と思っているな、お互いに。

先生なんか、「フフン」と鼻を鳴らしているし。

 

「ん? 今、心の中で婚姻届にサインしなかったか?」

「い、いえ何も」

 

妙に焦っているな、ソーラ。

その反応は『アタリ』と言っているようなものだけど。

しかし、桜川先生は読心術を使っているんじゃないか。

度々そう思える節があるな。

 

「どれ、その髪留めを貸せ。結び直してやる」

 

そう言って、先生はソーラから髪留めを取った。

そして、丁寧に結び直していく。

途中、くすぐったいのかソーラの体がピクピクと震えているのが見えた。

 

「もしかして先生、これ…」

「うむ。私と同じように上結びにしてみたのだ。気分転換にどうだ?」

「……いいかもしれない」

 

結び直したツインテールを優しく撫でながら答える。

何処か嬉しそうにも思えるが---

 

「み、観束君、こちらはどうでしょうか?」

 

急にソーラと先生の間に割り込む慧理那。

普段ならば、こう積極的には出なかったはず。

ツインテイルズとしての活躍が、結果的に出た証拠なのかな。

そんなことを考えている内に、またソーラは別の結び方へと変わった。

 

「今度は下結びか」

「えぇ、ですがその長さでは立っても髪が地に着いてしまいますわ」

「それは気を付けないとな。だけど、この2つの結び方もなかなか良いな。今度は自分で出来るように頑張ってみるよ」

 

ふーん。

ツインテール1つとっても、色々な結び方があるんだなぁ。

今度調べてみようかな、ポニーテールで。

普段、髪形とかはあまり気にしないけど、いい機会かもしれないしね。

 

「というか総二、あんたは男に戻る努力をしなさいよ!! そんな呑気にしていていいの!?」

 

もっともらしい言い分を突きつける津辺さん。

だけど、散々引っ張っていたトゥアールさんはどこへやら。

でも、そう探す必要はなかった。

 

「現状では総二様を治す手段もありませんし、仕方ないですよ」

「そ、それはそうだけど…」

 

フラフラな状態で近づいてくる人影が一つ。

引きずられていた跡が、羽織っている白衣からうかがえる。

 

「『女の子』らしく振舞うことが、最も最善の方法なんですよね」

「…本音は?」

「そりゃあもう、女体化した総二様をペロペロt---」

「あんた、後でお仕置きね」

「ギャアアアアッ!? 私は関係ありませんよね―!!?」

 

津辺さんに思い切り肩を掴まされ、凄まじいプレッシャーをかけられるトゥアールさん。

…本音を言わなければ良いものを。

バカ正直は時としてアダになることを、このとき改めて思い知った。

 

「あの、観束君。日焼け止めを背中に縫っていただけませんか?」

 

取り敢えずこの微妙な空気を変えようと、慧理那がソーラにそうお願いしてきた。

 

「お嬢様。それでしたら、私が塗りましょう」

「いえ、私は観束君に---」

 

変なところで桜川先生が出てくるなぁ。

まぁ先生は慧理那のメイドでもある(最近は忘れかけているが)。

その職務を全うしたい気持ちは、よく分かる。

だけど…

 

「何故です、お嬢様? 何も遠慮なさらず---」

「ですから、私は是非とも観束君に---」

 

先生がボトルを取ろうとするが、慧理那がそれを遠ざける。

以下、無限ループ。

これでは、日が暮れてしまう。

 

(ねぇ、慧理那に日焼け止め塗ったら?)

(ですけどねぇ…)

 

私はソーラの耳元で軽く促したけど、本人はどうも乗り気ではなさそう。

 

(どうも女の子の体に触れるのには抵抗が…)

(その体で言うこと!?)

 

妙なところで律儀だなぁ。

普通の男の子なら、喜んで行くはずなのに。

 

「この娘、さり気なくエロい方向に持って行きますね… 小っちゃい娘、皆で触れば怖くありません!!」

 

いたよ。

男ではないが、この状況に喜んでいる(やから)が。

実際に、彼女の口からよだれが垂れているし。

 

(だけど、なんとなく桜川先生が今まで結婚できない理由が分かった気がする…)

 

恐らく、先生は俗にいう『フラグを折る人』なのだろう。

自分にチャンスが来たとしても気付かない。

最悪、そのフラグを折ってしまうのだろう。

現に、慧理那のフラグを折ろうとしている。

 

「何でだろう、私この人が結婚できない理由が分かった気がする」

「そして愛華さん。あなたもその例に追従する結果になりますよ(笑)」

 

何故ひどい目に会うことを分かっていながら、彼女津辺さんをからかうのか。

 

「皆、スイカ割りしない?」

 

おもむろにテイルブルーに変身すると、トゥアールさんの首根っこを掴み地面に潜った。

出来上がったのは、頭以外砂浜に埋まったトゥアールさん。

 

「ちょっと、私の頭に何する気ですか―!?」

 

…本当に味方に対しても容赦ないな、ブルー。

 

☆☆☆

 

しばらく私たちは、ビーチで悠々と楽しんでいた。

 

私は最初こそ海で思い切り泳いだが、体力が元々ない方だったためにビーチパラソルの下で涼んでいる。

皆はというと、

 

「津辺さん、ビーチバレーしましょうよ! 運動神経良いんですから、ねぇ?」

「何でよ、そんないかがわしい」

「とにかく揺らしたいんですよおっぱいを!!」

 

実際にやっていたのは、トゥアールさんがボールとなったマンツーマンのバレー。

傍から見るに地獄絵図だろうけど、彼女なら持ち前の回復力で何とかなるだろう。

 

その他にも、水上スキーを楽しんでいた。

またこちらも、トゥアールさんが板となり、津辺さんが華麗な水上テクニックを披露するというものだけれども。

その近くには、泳ぎ着かれたのか波に漂っているソーラが。

あっ、水上バイクの旋回で起きた波に巻き込まれた。

 

「何で総二様がそのイベントを発生させるんですか---!」

 

見れば、ソーラのブラが何処かへと流されてしまったみたい。

何気に腕で隠しているところが、既に女の子らしさを際立たせている。

なんか女の子よりも『女の子』らしくて、腹が立つ。

透明度の高い海なので、探すのには困らないだろう。

 

「ほら総二、あったわよ」

 

津辺さんが見つけてくれたみたい。

そのとき、ソーラが何を言ったのか彼女が照れているようだった。

ただ、トゥアールさんがまた何か妙なことでも言ったのか、海草を使って海中にトゥアールさんを沈めてしまった。

うーむ、もう彼女は人間じゃないかも。

そんなことを、私は薄々感じるようになった。

 

 

 

 

「しっかし、桜川先生も空気読んでくださいよね~」

 

トゥアールさんたちと一悶着があった後。

桜川先生は一人寂しく砂のお城を作っていた。

しかも、何気に本格的だし。

取り敢えず、その様子を観察がてら話しかけてみる。

 

「ぅ、うるさいな。私はお嬢様の事を思ってだな---」

「その慧理那の自発性を砕くようなことをしなければ、あそこまで怒られることは無かったと思いますがねぇ…」

「うぅ…(涙)」

 

結局、慧理那はソーラ(観束君)に塗ってもらえなかった。

一応塗らずにいるのはまずいので、私が塗ることにしたのだ。

あの状態ではいつまでも決まらなかったので、立候補した。

ただ、塗っている最中、ずっと不機嫌だったことが心に残っている。

 

「あなたが邪魔をしなければですね---」

「申し訳ありません、お嬢様」

 

塗り終わった後、慧理那珍しく怒った顔を見た。

幼女にしか見えない彼女が、大人の桜川先生を叱っている。

思わず『フツー、逆だろ』と言いかけたけど、何とか我慢した。

 

「先生は本当に、慧理那のことを大事に思っているんですね」

「当たり前だ。私は神堂家のメイドだからな」

 

その横顔は、何処か誇らしげに見えた。

私もいつか、こう誇らしく思えるような仕事に就きたいなぁ。

 

「しかし、お嬢様に先に言われるとは思わなかった」

「…え?」

「欲を言えば、私が観束に塗ってもらいたかった…!!」

「さっきの良い雰囲気、返せ---!!」

 

やっぱこの人、ダメだ―!!

真剣に聞いて、損したわ。

 

(ん? あれは慧理那と観束君…?)

 

ちょっと距離が離れているところに、2人がいた。

何やら不思議な踊り?をしているみたい。

 

「む? あれは観束とお嬢様か。一体何を---」

 

その時、異変は起きた。

ソーラが突然、慧理那を押し倒したのだ。

 

「ちょ、ちょっと何をやってんのよ!?」

「お嬢様!!」

 

何とかして止めなきゃ!!

猛ダッシュで駆けつけると、慧理那との顔の距離はもうすぐそこまで来ていた。

 

「おのれ観束、妻となる私を差し置いて一体何をしている―!」

 

暴走しているソーラを桜川先生が羽交い絞めにして、なんとか慧理那から距離を離した。

先生がソーラを抑えている間に、何とか慧理那を救出できた。

見た感じ、どこもケガをしていないみたい。

 

「総二様、なんで私にしてくれないんですか~?」

「ちょっと総二、一体どうしたのよ!?」

 

どうやら騒ぎを聞きつけて、津辺さんとトゥアールさんも来たみたい。

 

(ねぇ、一体どうしたらこうなった訳?)

(そ、それは… 教えられませんわ…)

 

どうにかソーラが暴走した原因を、慧理那に問い詰めようとした。

けれど、本人は頬を赤らめながら答えようとはしなかった。

よっぽど彼女が恥ずかしいことをしたのか、それとも…

 

☆☆☆

 

先程の騒動について、ソーラはしばらく皆から尋問される破目となった。

まぁ、普段の()からはあり得ないものだったし。

それに、一歩間違えれば慧理那に危害を加える危険性もあったからね。

 

「…ふぅ」

 

私は、皆と別れてホテルで休むことにした。

本当に寝不足で、体力がかなり減少しているのか。

これじゃあ、海に来た意味ないじゃない。

取り敢えず、着替えますか。

 

「それにしても…平和だなぁ」

 

それは本当に思ったことだ。

4月になってから、かなりの確率で化け物---エレメリアンと関わっている。

それに、ツインテール部の皆と出会えた。

最初にテイルレッドに会ったときは、本当の英雄(ヒーロー)に出会えたと思った。

だけど、彼やその仲間と深い関わりを持つことで、彼らも普通の人間なんだと知ることができた。

 

こうして思い返せば、たった3ヶ月でかなり経験しているな。

このまま、皆と楽しく過ごせればーーー

 

『何もかも忘れ、幸せに生きろ』

 

どこからか、渋いオッサン声でそう聞こえた。

思わず、周りを見回した。

私以外には、誰もいないはず…

まさか、覗き!?

まぁ、今は着替え終わってはいる。

ホットパンツにピンクのキャミソールと、かなりラフな格好だけど。

もしかして、さっきの着替えを見られた…?

 

「と、取り敢えず、寝るか…」

 

先程の空耳を忘れるために、掛け布団をスッポリと被った。

かなり体を動かしたことも助長し、すぐに寝ることができた。

 

 

 

 

 

気が付けば、私は長い時間寝ていたようだ。

 

「ふあ~ぁ、お帰り~って---」

 

寝ぼけた頭で取り敢えず出迎えるが、その皆の様子に驚いた。

津辺さんとトゥアールさんは、やはり取っ組み合いをしたのか互いにボロボロに。

慧理那は、何かを成し遂げたかのように、キラキラと輝いている。

ソーラは、どこかお疲れのような感じが見えた。

 

「みんな、一体どうしたの!?」

 

一応、皆にその理由を聞いてみたけど、

 

「なんで愛華さんだけに見せなければいけなかったんですか…」

「うっさいわね、あんたが余計なことしなければ良かったのに」

「あぁ、新しい境地に入りましたわ」

「ここ最近、どうなってんだよ…」

 

とそれぞれ、返ってきた意見がバラバラだった。

 

「桜川先生、一体何が…」

「エレメリアンと交戦したらしい」

 

それだけで、あんな風になるのか?

色々と突っ込みたいところだけど、お疲れのようだったためにスルーしておいた。

 

観束君のリフレッシュにと企画された、この旅行。

色んな意味で、満喫はできたと思う。

…たぶん。

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