Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.22【覚悟】

アルティメギル基地にて。

 

「しばらくアラクネギルディの姿が見えぬが、どうしておるかのう?」

「たぶん、自分の部屋におるんとちゃうか? 一応、"怨み"から作戦お件については聞いとるはずやけど…」

 

いつもの2人組が何やら話していた。

 

「どうした、2人共そこにいて」

「おぉ、ウワサをすれば」

「??」

 

そこを偶々通りかかった彼には、当然何の話かは知るはずが無い。

 

「アラクネギルディはどうしておるのか、気になってのう」

「成程。失敗の件は彼には既に伝えた。加えて、勝手な行動は控えるように釘を差しておいたが」

「…それにしては、数日も姿が見えんのが心配でなぁ」

 

その言葉で、しばらく3者間に沈黙が生じた。

何しろ、アルティメギル4頂軍の中でも特に信頼が置かれている副官。

 

しかし、彼の自室で何かを行っているとの報告がある。

不安感を感じながらも、様子を見に行くことを決めた。

 

 

 

 

「そろそろ、アラクネギルディの部屋だがーーー」

『師範!!』

 

廊下の角を曲がろうとしたとき、複数の声が聞こえた。

 

「もう一度、考え直してはくれませんか?」

「拙者も、悩み抜いて決めたこと。もう止められぬ」

「し、師範…」

 

エレメリアンたちが必死に彼を止めようとしている場面に、ちょうど出くわしたようだ。

 

(ちょっと、どういうことや? ちゃんと釘を差しておいたんとちゃうんか!?)

(あぁ、きちんと場をわきまえよと言ったのだがな…)

 

確かに話しておいた。

副官である彼が出撃し、万が一失えば、部隊の士気が下がることは明白である。

その事を彼は知っているはずだが…

 

「されど、拙者の愛するワームギルディの敵を討たねばならぬのだ!」

(((ハアアアアァァァ!?)))

 

だがアラクネギルティの言葉は、隠れて聞いていた者達を困惑させるには十分であった。

 

(何じゃ『拙者の愛する』て!? ついていけんわ!!)

(…もうダメじゃ、この組織)

(おぃおぃ… 確かあいつの属性力(エレメーラ)って)

 

言わずとも、彼の属性力(エレメーラ)男の娘(ガールズボーイ)

それを考えれば、こうした展開は予測できたはずだが…

その耐性があまり無かったダークグラスパーには厳しいようだ。

 

「しかしながら師範、我々もワームギルディを愛しておりました」

「しかし、師範のその気持ちをくんで隠しておりました…」

「ぉ、お主ら…!」

 

更なる爆弾発言の数々に、ついに言葉を失った3名。

 

「この世界では、必ず男の娘(ガールズボーイ)は芽吹く。お前たちは拙者が撒いた種を育てておくれ…」

 

そのような言葉を残し、自室を去るアラクネギルディ。

見送る弟子たちは、彼に敬礼を送った。

 

 

 

 

途中で気絶したダークグラスパーと、彼女を抱えて自室へ戻ったメガ・ネと別れたユウ。

トンデモな展開を目撃してしまったことで、まだ頭が痛むようだ。

 

「あの野郎…! 突っ走ってんじゃねえよ!!」

 

彼は苛立ちを隠しきれずにいた。

ただ、それは彼に対してではない。

 

(どうしてこうも、面倒事ばかり起こすんだ…!?)

 

☆☆☆

 

ツインテール部の合宿から戻ってきて、数日が経った。

 

ソーラが編入してできた、ソーラファンクラブもさらに活発化しているみたい。

いや、様々な派閥に細分化しているようだ。

例えば、

 

ソーラが男口調で話した時にできた『罵っていただいてありがとうございます班』。

治安維持組織なのに自ら騒ぎを起こしている『ソーラちゃん見廻組』。

女生徒だけで構成された『私たちなら合法団』などなど。

 

ソーラファンクラブが大人数だっただけにその派閥も凄まじい。

休み時間になっても、ソーラの奪い合いは半端なものじゃない。

 

「さぁさぁ、どうですかソーラさんまたMIKOSHIを味わってください」

「お前たち何をやっているか!? 我々が最優先であろう!?」

「それより、この体操服着てみてよ!!」

 

彼女の人気が更に高まっているのは構わないが、巻き込まれている本人を無視するのはどうかな。

ほら、彼女が困っているじゃない。

 

「総二、早く!!」

「ボケッとしていないで、ほらこっち」

 

彼らがもめている間に、津辺さんと何とか彼女を引っ張り出した。

 

「伊織先輩…! た、助かりました…」

「そう思うなら、皆に『止めて』って言えばいいのに」

 

遠くから見ていて、いつもそう思う。

学校の雰囲気が良くなるのは構わないけど、本人が無理をするのは良くはないはず。

 

「そうですけど… 折角、皆にツインテールの良さを広められるチャンスを逃したくは無いので」

 

彼女、いや彼の根底には常にツインテールあり、か。

ツインテール部の部長としては素晴らしい。

 

「ねぇ、何でツインテールが好きなの?」

「えっ?」

「なんて言うのかな… 他の人よりもツインテールにこだわりがあるっていうか…」

「……」

 

ふと気になっていたことを、聞いてみた。

初めてあった時ーーーテイルレッドとしてーーーから、彼はツインテールしか見ていなかった。

初めは、それについてかなり嫌いだった。

だって、ツインテールをしている本人を見ていないような感じがしたからね。

 

『何故、ツインテールが好きなのですか?』

『好きになるのに、理由は必要ですか?』

 

部室に初めて入ったとき、彼は慧理那にそう答えた。

あそこまで真っ直ぐに見る目は、本物だった。

だからこそ、気になる。

 

「…自分でも、よくわかりません。ですが俺にとって命よりも大切なものなのは間違いないです」

「命よりも、ねぇ…」

 

これは苦労しそうだな。

明らかに、津辺さんやトゥアールさん、慧理那を見ていて、彼に好意を寄せているのはわかる。

でも、当の本人はそれに気付いていない。

 

(どうしてこうも、鈍いのかねぇ…)

 

男って、いつもそう。

案外、大切な物は近くにあるものだよ。

 

「ツインテールが好きなのは結構だよ。だけどーーー」

「私ビッチャーで! ビッチだから!」

 

うぉい、いきなりだね!?

私、何か失礼なこと言った?

 

「ちょっと愛華、どうしたのよ?」

「ゴメンゴメン、この携帯の着信音でね。着信音変えるから」

 

前に見たね、あのスマフォ。

確か、名前が『トゥアールフォン』。

観束君や慧理那も持っていたはず。

 

「どうかしたの?」

(トゥアールから連絡。エレメリアンが来たみたい)

 

なんと!?

それはまずいね。

 

(伊織先輩。何とかここを切り抜けないと…)

(分かってる)

 

周りにはまだ多くの生徒たちが。

中央突破するには危険すぎる。

それに、もうすぐ予冷が…

 

「今回は私と津辺さんが出撃しますので、伊織さんは何とかソーラさんを教室へ送ってください」

「慧理那…」

 

ソーラ---観束君を戦わせるわけにはいかない。

彼女なりの配慮なのだろうか。

だけど、今回は四の五の言っていられないか。

 

(いえ… ここは俺がいないとダメなんです…!)

 

でも、時間が…!

 

「ごめん。ソーラちゃん、ちょっと具合が悪いから、保健室まで連れていくよ」

「な、なんと!!」

「それなら、私たちが適任じゃ---」

 

ここでも私たちの邪魔をするか---!

 

「私が責任持って送るから。良いね…?」

『は、はぃ…』

 

ちょっと怒気を含んだ声で、皆を脅しておいた。

そしたら、皆が左右に分かれて道を作ってくれた。

私はソーラをおんぶさせて、早歩きで皆のそばを通り過ぎる。

かなり強引な手法だけど、仕方ないよね。

 

(もしかして、先輩を怒らせるとまずいのか…?)

 

ただ、観束君には私の間違ったイメージが植えつけられてしまったことは知らなかった。

 

☆☆☆

 

なんとか部室には着いた。

もうおんぶをする必要は無いな。

そう思って、彼を降ろした。

後は、ツインテイルズに任せれば問題はない。

 

「さて、私は教室に戻るt---」

「待ってください…」

「観束君?」

 

急に彼に呼び止められた。

まだ何かあるの?

 

「折角ここまで来たんだ。ここで、俺たちの戦いを見てほしい」

「…ぇ?」

 

私は彼の言っている意味が分からなかった。

 

「ちょっと、話が分からないんだけど…」

「この際ハッキリ言います。先輩は今までエレメリアンと少なからず関わりがありますよね?」

「えぇ、そうだけど」

 

私は観束君と出会ってから、彼とその友人たちにいつも巻き込まれていた。

ユウと出会ったことで、彼が未知の怪物と戦う存在だということも知った。

 

「でも、それがどうして貴方の戦いを見ることに繋がるの?」

 

 

「先輩は俺と同じくらいの属性力(エレメーラ)を持っている。このままじゃ、いつか先輩は襲われてしまう。だから---」

「やっぱりそうなんだ… だから私…」

 

これで彼が、ツインテール部が執拗に勧誘を進めた理由が分かった。

今の私は、か弱きお姫様なんだ。

 

「この戦いは、トゥアールがいるモニタールームで見られます。俺たちの覚悟を、そして俺のツインテールを見てほしい」

「……」

「まだ、俺はツインテールを… あいつらを救えるはずだ!」

 

そういって彼はテイルレッドに変身し、戦場へと向かった。

 

(…なんで)

 

私は悲しかった。

 

(なんで私じゃないの?)

 

常に疑問に思っていた。

あの時も、そうだ。

 

『慧理那ッ!!』

 

初めてエレメリアンに会った時、私は何もできなかった。

慧理那が怪物の餌食にされてしまったのを、ただ見るしかなかった。

 

『あれが… 慧理那…!?』

 

慧理那がテイルイエローとして戦っていた。

私よりもちいさくて、特撮が大好きで。

皆から好かれる生徒会長で。

そんな彼女が、私たちを守るために戦っていた。

 

(どうして、私は無力なの…?)

 

私の周りで、危険な橋を渡りながらも懸命に闘っている人たちがいる。

そんな人たちのそばで、私はのうのうと過ごしてきたのか。

自信が危険な存在であると知った絶望感と、自らの無力感に悩まされながらも、モニタールームへと向かった。

 

☆☆☆

 

「伊織先輩!?」

「観束君に言われたの。俺たちの戦いを見てほしいって」

 

突然の来客に、トゥアールさんは驚いていた。

だけどそれも僅かなことで、すぐにパソコンに目を向けた。

 

「…どうなっているの?」

「不味いですね。テイルレッドのツインテール属性が弱まっています」

 

モニターには、身にまとっている装備---テイルギアが激しく損傷しているレッドが。

顔には何処か戸惑いが見える。

 

「もしかして、観束君が女体化したのもそのせい?」

「いえ… 関連性は不明ですが、このままでは総二様の属性力(エレメーラ)が奪われてしまいます!」

 

ブルーとイエローは、蜘蛛型の黒いエレメリアンと交戦中。

レッドに廻せる余裕は無いか。

 

『御免ッ!!』

 

そう言い、似たような蜘蛛型エレメリアンは属性力(エレメーラ)を奪う光の輪を投げた。

あれを通過したら、観束君は属性力(エレメーラ)を---

戦う理由を失ってしまう…!

 

「何よ… 俺のツインテールを見てほしいって…」

「伊織先輩…」

「こんなくだらない奴だっけ!?」

 

私が向こうに言って、彼を助けることはできない。

私は無力だ。

だけど、大切な友達を助けたいという思いは私だってある!

 

「何ボサッとしてるの!? 貴方が貴方自身を信じないでどうするの?」

 

彼には聞こえないかもしれない。

だけど、思いは届くはず…!

 

「立ちなさい、レッド---!」

 

光の輪がレッドの間近にまで近づいたとき、それが真っ二つに割れた。

 

『ぬぅ!?』

 

いや、切ったのだ。

レッドの剣---ブレイザーブレイドを使って。

 

『ハアッ!!』

 

そして、一直線にアラクネギルティに切りかかる。

その剣には、一切の迷いがなかった。

 

『男子3日会わざれば括目して見よとは言うが、この短時間にこれ程の進化を遂げようとは…』

『確かに。総二なんだけど総二じゃないっていうか…』

 

何かが違う。

それは、戦場だけでなく画面越しで見る私たちにもハッキリとわかった。

 

『レッド、大丈夫?』

『あぁ、心配かけたな』

 

よくわからないけど、本人が言うからには大丈夫なのだろう。

だけど、あの短時間に一体何が?

 

『自分の、内なるツインテールと話してきた』

『レッド…、大丈夫?』

 

ブルーが呆れていた。

イエローも、呆然としていた。

もう、彼以外の誰もが呆れていた。

 

『それに、伊織先輩の声も聞こえた。ブルーやイエローもいる。トゥアールの想いがある』

 

そういって、海で付けていた髪留めを取り出す。

 

『そうだ…! 俺は、俺のツインテールはまだ失っていない…!』

 

菱形状に収納されている髪留めを、半分に割った。

 

『プログレスバレッター!』

 

そして、それをツインテールに束ねている部分に取り付ける。

 

『チェインカスタム… ライザーチェイン!!』

 

「総二様!」

「あれが…新しい力…!」

 

アラクネギルディはその姿を警戒してか、黒い蜘蛛を護衛にと周りに集めていく。

そして、剣をもう一本取り出すと猛然とその中へと突っ込んでいく。

 

 

「二刀流って、扱いが難しくないの?」

「ツインテールを愛する者が、二刀流を扱えないわけがありません!!」

「何、その自信!?」

 

だけど、実際に扱えてる。

あの大軍を、ブレイザーブレイドを振る度に数を減らしていく。

 

『トゥアール…』

「はい」

『…良かったね』

 

ブルーの通信から、そんなねぎらいの言葉が送られてきた。

ふと横を向くと、彼女は笑っていた。

 

確かレッドが着けたのは、元々トゥアールのだったはず。

 

(…そうか)

 

彼女も戦えないんだっけ。

だけど、そんな彼女の想いも彼はきちんと受け止めているんだ。

 

(全て、私の思い違いなんだ)

 

『チェインカスタムーーーフォーラーチェイン!!』

 

戦場では更に激しさを増していく。

 

「総二様、その形態は約22秒しか持ちません! インターバルとして、ノーマルチェインを挟みながら戦ってください!」

『分かった! そのぐらいなら、体内時計で計れるぜ!!』

 

もしかして、ツインテールになぞらえての制限時間なのかな?

まぁ戦場の範囲が狭いことを考えれば、彼を倒すには十分だと思う。

 

 

 

 

 

『止めの… ライジング・ブレイザー!!』

 

圧倒的な強さだった。

2つの形態変化を使い分け、敵を翻弄させた。

 

『ワームギルティよ… 不肖な拙者を許せ…』

 

巨大な蜘蛛人間となった怪物は、炎に包まれながらその巨体が崩れていった。

 

「あれ…?」

 

テイルレッドが変身を解いた。

だけど、そこには『ソーラ』がいなかった。

 

「何で元の姿に戻れたの?」

『たぶん、真のツインテールを手に入れたから、ですかね』

 

…何、それ?

たまにあるけど、その意味がよくわからない。

まぁ、戻れたのだから良しとしよう。

 

『どうでした、俺たちの戦いは?』

「……」

 

普段の彼らは、本当にトラブルメーカーで、いつも苦労する。

正直、関わりたくないと何度思ったことか…

だけど、この戦いで本当の彼らを見た気がする。

彼らになら安心できる。

…決めた!

 

「かっこよかった。貴方達なら、たぶんこの世界を救えるよ」

『よかったじゃない、総二』

『伊織さん…!』

「それと---」

 

このままのグダグダした関係じゃ、彼らにも危険にさらされてしまう。

 

「私、ツインテール部に入るよ。だからーーー」

『……!』

 

ツインテールじゃないけど。

この星を、皆を守りたいという思いなら、誰にも負けない!

 

「よろしくね、観束君」




『俺、ツインテールになります。』アニメ化おめでとうございます!

何とか放送前には彼女の活躍を書きたい…!
そんな焦りのせいか、文章が飛び飛びに…

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