アルティメギル基地にて。
「しばらくアラクネギルディの姿が見えぬが、どうしておるかのう?」
「たぶん、自分の部屋におるんとちゃうか? 一応、"怨み"から作戦お件については聞いとるはずやけど…」
いつもの2人組が何やら話していた。
「どうした、2人共そこにいて」
「おぉ、ウワサをすれば」
「??」
そこを偶々通りかかった彼には、当然何の話かは知るはずが無い。
「アラクネギルディはどうしておるのか、気になってのう」
「成程。失敗の件は彼には既に伝えた。加えて、勝手な行動は控えるように釘を差しておいたが」
「…それにしては、数日も姿が見えんのが心配でなぁ」
その言葉で、しばらく3者間に沈黙が生じた。
何しろ、アルティメギル4頂軍の中でも特に信頼が置かれている副官。
しかし、彼の自室で何かを行っているとの報告がある。
不安感を感じながらも、様子を見に行くことを決めた。
「そろそろ、アラクネギルディの部屋だがーーー」
『師範!!』
廊下の角を曲がろうとしたとき、複数の声が聞こえた。
「もう一度、考え直してはくれませんか?」
「拙者も、悩み抜いて決めたこと。もう止められぬ」
「し、師範…」
エレメリアンたちが必死に彼を止めようとしている場面に、ちょうど出くわしたようだ。
(ちょっと、どういうことや? ちゃんと釘を差しておいたんとちゃうんか!?)
(あぁ、きちんと場をわきまえよと言ったのだがな…)
確かに話しておいた。
副官である彼が出撃し、万が一失えば、部隊の士気が下がることは明白である。
その事を彼は知っているはずだが…
「されど、拙者の愛するワームギルディの敵を討たねばならぬのだ!」
(((ハアアアアァァァ!?)))
だがアラクネギルティの言葉は、隠れて聞いていた者達を困惑させるには十分であった。
(何じゃ『拙者の愛する』て!? ついていけんわ!!)
(…もうダメじゃ、この組織)
(おぃおぃ… 確かあいつの
言わずとも、彼の
それを考えれば、こうした展開は予測できたはずだが…
その耐性があまり無かったダークグラスパーには厳しいようだ。
「しかしながら師範、我々もワームギルディを愛しておりました」
「しかし、師範のその気持ちをくんで隠しておりました…」
「ぉ、お主ら…!」
更なる爆弾発言の数々に、ついに言葉を失った3名。
「この世界では、必ず
そのような言葉を残し、自室を去るアラクネギルディ。
見送る弟子たちは、彼に敬礼を送った。
途中で気絶したダークグラスパーと、彼女を抱えて自室へ戻ったメガ・ネと別れたユウ。
トンデモな展開を目撃してしまったことで、まだ頭が痛むようだ。
「あの野郎…! 突っ走ってんじゃねえよ!!」
彼は苛立ちを隠しきれずにいた。
ただ、それは彼に対してではない。
(どうしてこうも、面倒事ばかり起こすんだ…!?)
☆☆☆
ツインテール部の合宿から戻ってきて、数日が経った。
ソーラが編入してできた、ソーラファンクラブもさらに活発化しているみたい。
いや、様々な派閥に細分化しているようだ。
例えば、
ソーラが男口調で話した時にできた『罵っていただいてありがとうございます班』。
治安維持組織なのに自ら騒ぎを起こしている『ソーラちゃん見廻組』。
女生徒だけで構成された『私たちなら合法団』などなど。
ソーラファンクラブが大人数だっただけにその派閥も凄まじい。
休み時間になっても、ソーラの奪い合いは半端なものじゃない。
「さぁさぁ、どうですかソーラさんまたMIKOSHIを味わってください」
「お前たち何をやっているか!? 我々が最優先であろう!?」
「それより、この体操服着てみてよ!!」
彼女の人気が更に高まっているのは構わないが、巻き込まれている本人を無視するのはどうかな。
ほら、彼女が困っているじゃない。
「総二、早く!!」
「ボケッとしていないで、ほらこっち」
彼らがもめている間に、津辺さんと何とか彼女を引っ張り出した。
「伊織先輩…! た、助かりました…」
「そう思うなら、皆に『止めて』って言えばいいのに」
遠くから見ていて、いつもそう思う。
学校の雰囲気が良くなるのは構わないけど、本人が無理をするのは良くはないはず。
「そうですけど… 折角、皆にツインテールの良さを広められるチャンスを逃したくは無いので」
彼女、いや彼の根底には常にツインテールあり、か。
ツインテール部の部長としては素晴らしい。
「ねぇ、何でツインテールが好きなの?」
「えっ?」
「なんて言うのかな… 他の人よりもツインテールにこだわりがあるっていうか…」
「……」
ふと気になっていたことを、聞いてみた。
初めてあった時ーーーテイルレッドとしてーーーから、彼はツインテールしか見ていなかった。
初めは、それについてかなり嫌いだった。
だって、ツインテールをしている本人を見ていないような感じがしたからね。
『何故、ツインテールが好きなのですか?』
『好きになるのに、理由は必要ですか?』
部室に初めて入ったとき、彼は慧理那にそう答えた。
あそこまで真っ直ぐに見る目は、本物だった。
だからこそ、気になる。
「…自分でも、よくわかりません。ですが俺にとって命よりも大切なものなのは間違いないです」
「命よりも、ねぇ…」
これは苦労しそうだな。
明らかに、津辺さんやトゥアールさん、慧理那を見ていて、彼に好意を寄せているのはわかる。
でも、当の本人はそれに気付いていない。
(どうしてこうも、鈍いのかねぇ…)
男って、いつもそう。
案外、大切な物は近くにあるものだよ。
「ツインテールが好きなのは結構だよ。だけどーーー」
「私ビッチャーで! ビッチだから!」
うぉい、いきなりだね!?
私、何か失礼なこと言った?
「ちょっと愛華、どうしたのよ?」
「ゴメンゴメン、この携帯の着信音でね。着信音変えるから」
前に見たね、あのスマフォ。
確か、名前が『トゥアールフォン』。
観束君や慧理那も持っていたはず。
「どうかしたの?」
(トゥアールから連絡。エレメリアンが来たみたい)
なんと!?
それはまずいね。
(伊織先輩。何とかここを切り抜けないと…)
(分かってる)
周りにはまだ多くの生徒たちが。
中央突破するには危険すぎる。
それに、もうすぐ予冷が…
「今回は私と津辺さんが出撃しますので、伊織さんは何とかソーラさんを教室へ送ってください」
「慧理那…」
ソーラ---観束君を戦わせるわけにはいかない。
彼女なりの配慮なのだろうか。
だけど、今回は四の五の言っていられないか。
(いえ… ここは俺がいないとダメなんです…!)
でも、時間が…!
「ごめん。ソーラちゃん、ちょっと具合が悪いから、保健室まで連れていくよ」
「な、なんと!!」
「それなら、私たちが適任じゃ---」
ここでも私たちの邪魔をするか---!
「私が責任持って送るから。良いね…?」
『は、はぃ…』
ちょっと怒気を含んだ声で、皆を脅しておいた。
そしたら、皆が左右に分かれて道を作ってくれた。
私はソーラをおんぶさせて、早歩きで皆のそばを通り過ぎる。
かなり強引な手法だけど、仕方ないよね。
(もしかして、先輩を怒らせるとまずいのか…?)
ただ、観束君には私の間違ったイメージが植えつけられてしまったことは知らなかった。
☆☆☆
なんとか部室には着いた。
もうおんぶをする必要は無いな。
そう思って、彼を降ろした。
後は、ツインテイルズに任せれば問題はない。
「さて、私は教室に戻るt---」
「待ってください…」
「観束君?」
急に彼に呼び止められた。
まだ何かあるの?
「折角ここまで来たんだ。ここで、俺たちの戦いを見てほしい」
「…ぇ?」
私は彼の言っている意味が分からなかった。
「ちょっと、話が分からないんだけど…」
「この際ハッキリ言います。先輩は今までエレメリアンと少なからず関わりがありますよね?」
「えぇ、そうだけど」
私は観束君と出会ってから、彼とその友人たちにいつも巻き込まれていた。
ユウと出会ったことで、彼が未知の怪物と戦う存在だということも知った。
「でも、それがどうして貴方の戦いを見ることに繋がるの?」
「先輩は俺と同じくらいの
「やっぱりそうなんだ… だから私…」
これで彼が、ツインテール部が執拗に勧誘を進めた理由が分かった。
今の私は、か弱きお姫様なんだ。
「この戦いは、トゥアールがいるモニタールームで見られます。俺たちの覚悟を、そして俺のツインテールを見てほしい」
「……」
「まだ、俺はツインテールを… あいつらを救えるはずだ!」
そういって彼はテイルレッドに変身し、戦場へと向かった。
(…なんで)
私は悲しかった。
(なんで私じゃないの?)
常に疑問に思っていた。
あの時も、そうだ。
『慧理那ッ!!』
初めてエレメリアンに会った時、私は何もできなかった。
慧理那が怪物の餌食にされてしまったのを、ただ見るしかなかった。
『あれが… 慧理那…!?』
慧理那がテイルイエローとして戦っていた。
私よりもちいさくて、特撮が大好きで。
皆から好かれる生徒会長で。
そんな彼女が、私たちを守るために戦っていた。
(どうして、私は無力なの…?)
私の周りで、危険な橋を渡りながらも懸命に闘っている人たちがいる。
そんな人たちのそばで、私はのうのうと過ごしてきたのか。
自信が危険な存在であると知った絶望感と、自らの無力感に悩まされながらも、モニタールームへと向かった。
☆☆☆
「伊織先輩!?」
「観束君に言われたの。俺たちの戦いを見てほしいって」
突然の来客に、トゥアールさんは驚いていた。
だけどそれも僅かなことで、すぐにパソコンに目を向けた。
「…どうなっているの?」
「不味いですね。テイルレッドのツインテール属性が弱まっています」
モニターには、身にまとっている装備---テイルギアが激しく損傷しているレッドが。
顔には何処か戸惑いが見える。
「もしかして、観束君が女体化したのもそのせい?」
「いえ… 関連性は不明ですが、このままでは総二様の
ブルーとイエローは、蜘蛛型の黒いエレメリアンと交戦中。
レッドに廻せる余裕は無いか。
『御免ッ!!』
そう言い、似たような蜘蛛型エレメリアンは
あれを通過したら、観束君は
戦う理由を失ってしまう…!
「何よ… 俺のツインテールを見てほしいって…」
「伊織先輩…」
「こんなくだらない奴だっけ!?」
私が向こうに言って、彼を助けることはできない。
私は無力だ。
だけど、大切な友達を助けたいという思いは私だってある!
「何ボサッとしてるの!? 貴方が貴方自身を信じないでどうするの?」
彼には聞こえないかもしれない。
だけど、思いは届くはず…!
「立ちなさい、レッド---!」
光の輪がレッドの間近にまで近づいたとき、それが真っ二つに割れた。
『ぬぅ!?』
いや、切ったのだ。
レッドの剣---ブレイザーブレイドを使って。
『ハアッ!!』
そして、一直線にアラクネギルティに切りかかる。
その剣には、一切の迷いがなかった。
『男子3日会わざれば括目して見よとは言うが、この短時間にこれ程の進化を遂げようとは…』
『確かに。総二なんだけど総二じゃないっていうか…』
何かが違う。
それは、戦場だけでなく画面越しで見る私たちにもハッキリとわかった。
『レッド、大丈夫?』
『あぁ、心配かけたな』
よくわからないけど、本人が言うからには大丈夫なのだろう。
だけど、あの短時間に一体何が?
『自分の、内なるツインテールと話してきた』
『レッド…、大丈夫?』
ブルーが呆れていた。
イエローも、呆然としていた。
もう、彼以外の誰もが呆れていた。
『それに、伊織先輩の声も聞こえた。ブルーやイエローもいる。トゥアールの想いがある』
そういって、海で付けていた髪留めを取り出す。
『そうだ…! 俺は、俺のツインテールはまだ失っていない…!』
菱形状に収納されている髪留めを、半分に割った。
『プログレスバレッター!』
そして、それをツインテールに束ねている部分に取り付ける。
『チェインカスタム… ライザーチェイン!!』
「総二様!」
「あれが…新しい力…!」
アラクネギルディはその姿を警戒してか、黒い蜘蛛を護衛にと周りに集めていく。
そして、剣をもう一本取り出すと猛然とその中へと突っ込んでいく。
「二刀流って、扱いが難しくないの?」
「ツインテールを愛する者が、二刀流を扱えないわけがありません!!」
「何、その自信!?」
だけど、実際に扱えてる。
あの大軍を、ブレイザーブレイドを振る度に数を減らしていく。
『トゥアール…』
「はい」
『…良かったね』
ブルーの通信から、そんなねぎらいの言葉が送られてきた。
ふと横を向くと、彼女は笑っていた。
確かレッドが着けたのは、元々トゥアールのだったはず。
(…そうか)
彼女も戦えないんだっけ。
だけど、そんな彼女の想いも彼はきちんと受け止めているんだ。
(全て、私の思い違いなんだ)
『チェインカスタムーーーフォーラーチェイン!!』
戦場では更に激しさを増していく。
「総二様、その形態は約22秒しか持ちません! インターバルとして、ノーマルチェインを挟みながら戦ってください!」
『分かった! そのぐらいなら、体内時計で計れるぜ!!』
もしかして、ツインテールになぞらえての制限時間なのかな?
まぁ戦場の範囲が狭いことを考えれば、彼を倒すには十分だと思う。
『止めの… ライジング・ブレイザー!!』
圧倒的な強さだった。
2つの形態変化を使い分け、敵を翻弄させた。
『ワームギルティよ… 不肖な拙者を許せ…』
巨大な蜘蛛人間となった怪物は、炎に包まれながらその巨体が崩れていった。
「あれ…?」
テイルレッドが変身を解いた。
だけど、そこには『ソーラ』がいなかった。
「何で元の姿に戻れたの?」
『たぶん、真のツインテールを手に入れたから、ですかね』
…何、それ?
たまにあるけど、その意味がよくわからない。
まぁ、戻れたのだから良しとしよう。
『どうでした、俺たちの戦いは?』
「……」
普段の彼らは、本当にトラブルメーカーで、いつも苦労する。
正直、関わりたくないと何度思ったことか…
だけど、この戦いで本当の彼らを見た気がする。
彼らになら安心できる。
…決めた!
「かっこよかった。貴方達なら、たぶんこの世界を救えるよ」
『よかったじゃない、総二』
『伊織さん…!』
「それと---」
このままのグダグダした関係じゃ、彼らにも危険にさらされてしまう。
「私、ツインテール部に入るよ。だからーーー」
『……!』
ツインテールじゃないけど。
この星を、皆を守りたいという思いなら、誰にも負けない!
「よろしくね、観束君」
『俺、ツインテールになります。』アニメ化おめでとうございます!
何とか放送前には彼女の活躍を書きたい…!
そんな焦りのせいか、文章が飛び飛びに…