Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.23【苦しみ、悩む】

観束君が無事に戻れた。

それによって、ツインテール部はようやく平穏を取り戻すことができた。

ただ、『ソーラ』が消えたことで少なからず学校が騒ぎになってしまったけど…

何しろ、

 

「ソーラちゃん、どこ行っちゃったの~?」

「もう追いかけ回さないから出てきて~!」

 

部室の扉の隙間から見えたのは、彼女の姿を探し回る陽月学園ソーラファンクラブのメンバー。

恐ろしさのあまり、観束君がまたソーラに戻ると言い出す程に。

まぁ、私達が全力で説得して止めさせたけど。

 

しかし、そんな騒動は数日で収まった。

あれだけ熱かったソーラへの熱は、いつしかテイルレッドへと戻されていた。

そうして、ソーラがいた事は過去となった---

 

 

 

 

「う~ん…」

 

私が正式にツインテール部に入部してから、しばらく経った。

バイトや勉強でなかなかハードなスケジュールにはなったけど、意外と充実しているかもしれない。

まぁ、一番の難関である期末テストが終わったし、一息入れても良いよね?

 

「あ、そうだ。久しぶりにリンと何処か遊びに行こうかな♪」

「おい、長瀬」

 

もう誰なの、折角ウキウキな状態に水を差すのは!?

そう思って、振り返ると…

 

「ぁ、足立(あだち)先生…」

 

後ろから声をかけたのは、数学の足立啓吾(けいご)先生。

ちなみに、私の教室の担任ではない。

 

「お前、また数学の点数が赤点だったぞ。これで、夏の補習参加は確定だな」

「ぇ!?」

「お前の夏休みはもう少し先と考えることだ」

「ふえぇ…」

 

そんな…

あれだけ懸命に勉強したのに!?

 

「いいいぃぃやあああぁぁぁ!!」

 

夏休みを間近に控えた空に、我ながら情けない悲鳴が響いた。

 

☆☆☆

 

終業式が終わった後、俺たちはツインテール部の部室に集まっていた。

生徒会については、夏休みは登校日に合わせて一日しかないようだ。

この夏休みをどうするか、会議が行われているんだけど…

 

「伊織先輩、どうしちゃったの?」

「目が虚ろと言いますか…」

「滅茶苦茶怖い!」

 

部室の隅で、パイプ椅子に座りながら何かを呟く先輩がいた。

何があったかは知らないけど、雰囲気がとてつもなく暗くなるから止めてほしい。

 

「リン先輩は知りません?」

「ん? あぁ…」

 

慣れない終業式で疲れていたのか、半分寝ていたリン先輩がようやく起きた。

よく見ると、ヨダレが…

先輩、女の子としてみっともないです。

 

「ふぁ~あ… どうせ、明日から補習があるから軽く落ち込んどるだけや」

「いゃ、軽くって…」

「んで、結局どないするん?」

 

トゥアールの発言すらスルーして、無理矢理本題に戻した。

 

「特訓の合宿などは、いかがでしょう?」

「…どんな内容で?」

「あ、やっと戻ってきた」

 

しばらくどん底モードに入っていた伊織先輩が参加してきた。

というか、最初から参加してください。

 

「特訓って言っても、私たちは文化部扱いなんだけど…」

「活動の一環として海に行ったんやから、今更やと思うで」

 

…ごもっともで。

 

「それに思うだろ、最近の俺たち」

 

戦闘データを見るに、決定的に問題がある。

俺はツインテールに関すると、てんでダメになる。

愛華は、何のためらいもなく攻撃を繰り出す。

そのせいで、日々化け物扱いがひどくなる一方だ。

慧理那は、戦場では脱ぎたがるし。

 

「身体的にも精神的にも、強くならないといけないと思ってる。敵もかなり強くなってきたからな」

「この前戦ったアラクネギルディは、副官でしたよね?」

「ということは、まだ隊長が残ってんのよね…」

 

その言葉に、部員は深く溜め息をつく。

少なくとも、まだ美の四心(ビー・テイフル・ハート)とは戦いが終わっていない事を指すのだから。

 

「いずれにせよ、お前たちは更なるレベルアップをしなければならないな」

「いや、先生が言うことじゃないでしょ…」

 

私は関係ないという態度に、俺は呆れた。

貴女が教室で何をしたか、忘れましたか?!

 

「クラスの男子生徒だけでなく、女子にまで婚姻届を渡して!」

「何考えてるんですか、この年増は!?」

「まさか、アッチに目覚めたんとちゃうか…?」

 

周りにいる部員全員から、白い目線を向けられる顧問。

だけど、先生はそれを軽くあしらった。

 

「何を勘違いしている? 私が女子に婚姻届を渡したとき、その兄弟がいれば是非渡して欲しいと伝えている」

「それを父親にしないから、ドンドン年増になっていくんでしょうが」

「ふっ、流石に私とて家庭を無闇に崩壊させたくはないのでな」

 

俺が気にしているのは、別の事だ。

俺より年齢が低い者に婚姻届を渡したってのは…!

とてつもなく嫌な予感に、冷や汗が背中を伝った。

 

☆☆☆

 

アルティメギル基地。

その大会議室にて、修行が行われている。

 

「描くのはテイルブルーのみだ。それ以外は許さぬ」

 

美の四心の隊長・ビートルギルディの監督の下、テイルブルーの絵を描いていた。

無論、彼は絵の完成度を求めていない。

絵に、どれ程テイルブルーに憎しみが込められているかを見ているのだ。

 

「兄さん、これでどれだけレベルアップできるかな?」

「少なくとも、これでテイルブルーに対する恐怖心を和らげれば良いが…」

 

彼の側に寄ってきたのは、スタッグギルディ。

ビートルギルテディの片腕として、彼に仕えている。

 

「へぇ、随分と熱心にやってるな」

「おぉ、"怨み"様」

「一体どうされましたか?」

 

そんな場所にひょっこりと現れたのは、ユウ。

 

「いや、皆が大会議室で特訓をしていると言うから、何をしているか気になってな」

「皆で、テイルブルーの絵を描いております。"怨み"様も、一緒にどうですか?」

「止めておくよ。恐怖心も、僕の属性力(エレメーラ)にとって重要だからね」

 

そう言って、ユウはやんわりと断った。

彼としてはこのまま恐怖心を抱いてほしい。

しかしそれでは、今後の作戦に支障をきたすため、ただ見守ることにした。

 

「それにしても、随分と必死に描いているな」

「お分かりで?」

「ここからでも、凄まじいまでの怨みを感じる…」

 

まだこの企画を始めて間もないため、皆慎重に彼女を描いている。

その描き方からは、恐怖心が垣間見えているのだ。

 

「だけど、僕を満足させる程では無い、か…」

 

ほくそ笑むユウに、側にいる2体は不気味さを感じた。

 

「そういえば、ダークグラスパー様が近頃出撃なさるようで」

「…やはりか」

 

この空気を変えようと、ビートルギルディは話を変える。

その報告に彼は驚きを見せず、むしろ平然と感じているようだ。

まるで、それをあらかじめ予測していたかのように。

 

「だが今回は、彼女といえど苦労しそうだな」

「何故そう思いで?」

「その任務は、『脱走した裏切り者の確保』だからだ」

「「…!」」

 

その意味は、瞬時に解った。

『確保』というものは、『撃破』よりもはるかに難易度が高い。

更に言えば…

 

「…何故『確保』なので?」

「裏切り者ならば、即刻排除すべきでは?」

 

2体の言い分も納得できる。

1つは、害を成してもなおアルティメギルに利をなす存在。

そして、

 

「首領が直々に封印された奴だからだ」

「まさか---」

「それは、首領に同行した僕が保証する」

 

それは、驚きの発言だった。

 

「既にダークグラスパーは出現した場所に向かっている。僕もその後を追う」

「---なんと!? もう向かわれたか!!」

「お前らは引き続き、修行に励んでくれ」

「「ハッ!!」」

 

そのままユウは、大会議室から出ようとした。

しかし、何かを思い出したのか急に向きを180°変えた。

 

「そうそう、"裏切り者"といえば、お前たちもか」

「何のことで?」

「"アイツ"が裏切り者となったことで、お前は美の四心(ビー・テイフル・ハート)の隊長に指名されたからな」

「「……」」

 

この情報は、ごく一部にしか知られていない。

それを何故態々言うのか。

 

「精々、立派な隊長と思われる様に、頑張ることだな」

 

皮肉を残し、今度こそ大会議室から離れた。

 

「兄さん…」

「解っている。俺とて、この場にいるのは偶然である事は」

 

ビートルギルティの拳は強く握られ、震えていた。

自信の無力感を、彼なりに理解しているのだ。

 

「いずれにせよ、ツインテイルズを倒すには『彼』の協力が必要だ」

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