…あれ?
よく考えたら、今までまともに戦闘描写していない気が…
「…そら不味いな」
そこで起きたことを、総二は事細かく話した。
聞こえてきたのは、リンの溜め息交じりの発言であった。
「要約するとやな。フェニックスギルディはアルティメギルの裏切り者で、組織とは別に行動している。そして、
「それで間違いないと思います」
そう答えたのは、トゥアールだ。
愛香と総二は部屋の端で何やら話し込んでいる。
「気にするなよ。人間誰だって匂いはあるもんだろ」
「だって、私だけに言ったんだもん…」
先程の戦闘のことなのだろうか。
しかし、あれ程落ち込んでいる愛香も珍しい。
「しかし、まさか一隊丸ごとこの世界に来るとは… 強化が必要ですね」
トゥアールは愛香と慧理那からテイルブレスを渡すように指示した。
愛香はまだ自身の匂いについて心配している、それに従った。
「
「
聞けば、アラクネギルディの
しかしそれだけでは不十分なため、
「その効果って?」
「今まで一つしか
「いいじゃないか」
「ただし、テイルギアに物凄く負担がかかるので、一日に一回が限度です」
その入力コマンドを入れるためにも、一度スタートゥアールに戻らなければならないらしい。
まぁ、そんな凄い機能を何度も使えたら苦労しないか。
そこに、城に在住するメイドさんからお風呂が使えると報告してくれた。
ツインテイルズ達は先程の戦闘で疲れているため、大喜びしていた。
女性陣が入り終わり、総二は風呂場へと向かって行った。
先程使ったのは来客用の風呂場であった。
しばらく使われていなかったと言ってはいたが、予想以上に広く、掃除が細部までされていたことに驚いていた。
今貴賓室にいるのはリンとトゥアール、愛香のみ。
桜川先生はロエルとリルナと共に城内を歩き回っている。
メイドとして気になる場所でもあるのか。
慧理那については誰も知らない。
迷子になったとは考え難いが…
「あの姉妹、何か隠しとるな」
「えぇ」
トゥアールは作業中のため、リンと愛香は時間潰しの会話をする。
「まぁお姫様ってのは何かと重い立場だから、隠し事の1つや2つあるでしょうけど」
「……」
ロロリー、フェニックスギルディ、
とてつもなくきな臭いモノを感じるが、それに気付いていないふりをするリン。
テーブルに顎を付き、深く溜め息をついた。
すると突然トゥアールが席を立つ。
「どした?」
「いえ、何やらイベントの予感が…」
「予感??」
「行ってきますねぇ~」
そう言って、部屋を出ていった。
しばらくしてから風呂場の方角から、騒がしいのが聞こえた。
「トゥアール、あいつは…!」
猛ダッシュで風呂場へと向かって行った。
残ったのはリンのみ。
(毎度毎度、騒がしいわ…)
その後、ボコボコにされたトゥアールは、夜のまくら投げの犠牲となった。
リンはそれを予知してか、コッソリと寝室を抜け出してソファーで寝ることにしたのであった。
翌朝。
案の定と言うか、寝室はひどい有様であった。
ベッドはおろか、壁に穴が…
寝室で寝ていたメンバーは例外なく寝不足であった。
(別で寝といて良かったわ…)
寝るだけなら別室の総二に頼れば良かったのだが、別問題が起こりそうなのでソファーにしたのだ。
ベッドと比べて寝心地は悪いが、睡眠不足になるよりはマシである。
身支度を終えた後、総二と合流した女性陣。
「皆、ロエルが朝食後に城下町に観光に行こうだってさ」
「賛成です!」
「前はエレメリアンとの戦いでろくに見てなかったからね」
総二の提案に愛香と慧理那は賛同する。
しかし、トゥアールはは別行動を提案した。
「私はスタートゥアールに戻ります。尊さん、護衛お願いします」
「何故私なのだ!? こういうのは雨宮などが適任だろう!」
指名された桜川先生は抵抗する。
先生に指名されたリンの回答は、
「えぇ… ウチ、弱いし。それに観光もしたいわ」
結局、桜川先生はトゥアールの護衛として別行動することとなった。
ただ、桜川先生との会話でトゥアールが機嫌を悪くしていた。
彼女曰く、
「女性に年齢を尋ねるのは、タブーですよ♡」
…のようだ。
城下町。
そこにお姫様のロエルとリルナが現れただけで、パレードへと変化した。
「姫様かっこよかったよ~」
「うん、ありがとう」
騎士団に守られて住民に手を振る姉妹。
その後ろには、総二達4人がいる。
前回はかなりの騒ぎとなったが、姫公認とされているのか特に注目もされなかった。
一応、
「お若いの」
白髭を生やした老人に、声をかけられる。
「珍しいですなぁ。ツインテールが活き活きとしとる。この世界ではもう見られんよ」
「ありがとうございます」
老人の言葉に、総二は礼をした。
「どうじゃ、若いの。熟女に興味は無いか」
「若いので、ありませんね」
「熟女を愛せば世界の見え方も変わるぞい」
そうして、両者は青く広がる空を見た。
しかし、それは突如朱色に染まった。
「これは…?」
突如、町に雪が降り出した。
しかし、それは我々の知るそれでは無い。
「粉…? それにしては、赤いな」
だが、静観していられたのはたった数秒でしかなかった。
「!? なんだこれ…」
見れば、総二達の周りでバタバタと倒れ始めたのだ。
沿道で喝采を送っていた住民はおろか、前にいる兵士たちも倒れている。
「どうかしましたか!?」
総二はそばにいる老人を横たわらせながら状態を確かめる。
「うぅ… あれ程好きだった熟女が、今では何とも思いませぬ… まるで心に穴が空いたようじゃ…」
「まさか、この粉が原因か!?」
すぐさま、周りを確認してみる。
近くにいる姉妹はロロリーに合体変身し、膝をついている。
「お兄ちゃん、この粉が皆の
そう答えるロロリーも苦しそうだ。
「ったく… 周り程やないけど、ウチもキツイわ。タンクに小さな穴が空いたような感じ… 長くは持たん」
よろよろになりながらも、なんとか立っているリン。
状態が異なるのは、彼女が地球人だからか…
トゥアールに確認してみれば、この星全体が赤い粉に覆われている。
今総二達3人が無事なのは、テイルギアによる加護があるからだ。
状況がこれ以上悪化しないためにも、早く止めなければ…!
「リン先輩は、粉が入らない場所にください!!」
「入らない場所… スタートゥアールやな!?」
「急いで!!」
言うが早いか、総二達は変身し、何処かへと飛び去った。
恐らく、この粉の元凶へと向かったのだろう。
「スタートゥアールか… 遠いな。取り敢えず、お城へ向かうか」
赤い粉による体力の消耗と戦いながら、足を前へと動かした。
「さっさとお城に戻らな」
「よぉ」
城に向けて走っているリンを誰かが呼びかけた。
その声の主は…
「ユウ…」
時間がない彼女には、彼と悠長に話している余裕など無い。
現に、隠しもせずに苦虫を噛み潰したような表情をしている。
「悪い、そこどいてほしいんやけど」
「折角会いに来たのに、冷たいねぇ」
飄々とした態度に、リンのイライラは更にエスカレートする。
この星の住民程ではないが、雪による
「ウチに用があるんやったら、さっさと用件言いや」
「いやなに、僕はある
「ある人…?」
彼女の脳裏に、ロエルとリルナの姉妹が浮かんだ。
「もしかして、この星のお姫様か?」
「いや、違う」
「あら」
しかし、その答えはあっさりと否定されてしまった。
「テイルレッド。僕はそいつを探しているんだ」
「…!?」
背中に冷汗が伝う。
彼は今、この雪を止めるために別行動している。
彼を専念させるためにも、邪魔を入れる訳にはいかない。
何としても、この場を乗り切らなければ。
「---さぁ、知らんな」
「誤魔化しは効かないよ。早く彼を出せ。さもなければ---」
彼は右手をボールを下から持つかのように構える。
すると、手の平から紫炎が出現、火の玉に形成される。
大きさは、ハンドボールぐらいであろう。
そして、リンに打ち出した。
「!」
普通の人間には無理であろう光景に驚きつつも、彼女は体を右に転がることで回避することができた。
「逃がさないよ」
今度は両手に紫炎の球を形成し、矢継ぎ早に打ち込んでいく。
リンはそれに当たらないように猛ダッシュで駆け抜け、道路の脇に寝ている兵士から西洋剣を抜き取った。
「へぇ。君、戦えるのかい?」
「本当なら、日本刀の方がええんやけどな」
軽く口を叩いた後、リンはユウに真っ直ぐ突っ込んでいく。
「それで僕を倒せるとは僥倖だな!!」
容赦無く紫炎球を打ち込んでいくが、リンは慣れない剣を上手く使って左右に弾いていく。
ユウの手前10mまで進んだとき、彼はその足を止めようと彼女の手前に大きめの球を打ち込んだ。
その威力は、普通の人間ならば当たれば重体は避けられない程の。
そしてそれは地面へと着弾し、ユウの前面が煙で見えなくなった。
(やったか)
だが、その期待は辛くも崩れ去る。
爆煙の中からリンが飛び出したからだ。
彼女は体を斜めにひねり、2回転ほどした後に彼に斬撃を与えた。
しかし、その剣から聞こえた音は彼女の望んだものでは無かった。
(金属音…!?)
彼女の斬撃による威力で後ろに押されつつも、ユウは余裕の表情だった。
彼の左手に握られていたのは、剣。
しかしリンが今持っている西洋剣とは何処か異なり、異様に白い。
ロウソクをモチーフとした長剣、と表現すれば良いのだろう。
「それは、フラグってもんやで」
「そうだったな。君は予想以上に強いね」
「護身術として色々教わったから、意外と役立っとる」
「なら、もっと見せてくれ!」
突如、ユウがリンの視界から消えた。
いや、違う。
身体を極限にかがめ、下から高速で接近しているのだ。
見えなくなったことで動揺している彼女を、逆袈裟切りが襲う。
しかし、存在に気付いた彼女は右肩を後ろにずらし、半身にすることで回避。
その勢いで回転し、空いているユウの脇腹に剣の柄頭で叩き付ける。
「…やるねぇ」
脇腹を抑えつつもなお、笑みが消えない。
「ただの人間がこの強さ… フフフ」
「??」
ユウの言葉に違和感を感じたが、リンの体は消耗が激しい。
体を屈めて左足に重心を移し、剣を下に構える。
そして速攻で決めるために、猛然と突っ込んだ。
「ヤベッ!!」
片手を脇腹で抑えていたために、片手で構えていた剣をリンの下からの斬撃により弾かれてしまった。
そして、ガラ空きとなったユウに上段から一気に振り下ろした。
しかし---
「それでヤラれる僕じゃないんだよねぇ♪」
「くっ…」
リンの斬撃を、ユウが左手で掴んだのだ。
しかも、それだけではなかった。
(…? なんか異様に熱い…!?)
リンの嗅覚が、異臭を感知した。
ふと掴まれている剣を見ると、刀身が赤い。
身の危険を感じ、剣を手放してユウから距離を取る。
そこには、剣が融けて2つに折れてしまったのだ。
音を立てて落ちた剣から、白い煙が立ち込めている。
「さて、この剣の様になりたくなければテイルレッドの居場所を教えてもらいたい」
脇腹の痛みは治まったのか、剣を掴んでいた左手を降ろし、右手をリンに突き出してジリジリと距離を詰めるユウ。
彼女に武器がない以上、抵抗の手段が無い。
万事休す---
「フェニックス・キィィィック!!」
突如、両者の間に何かが落ち、凄まじい煙をあげた。
煙が晴れ、その姿を映し出したのは、
「誰?」
「わざわざそっちから出向いてくれるとはな---」
その目からはマグマの様な危険な気配を感じる。
背中からは美しい翼が生え、全身から強者の威風を放つ。
「フェニックスギルディ!!」
リンのピンチを救ったのは、アルティメギルの裏切り者・フェニックスギルディであった。
「よお、久しいな。そんな姿に化けて何をしている?」
「解りきったことを」
フェニックスギルディとユウの間には、緊張感が漂っている。
しかし、すぐに後ろを振り向くとまるで久しぶりの友人にあったかのように話しかけた。
「お前がポニーテールの
「せやけど」
「…悪くはねぇ、ただ発育がイマイチだな。特に、胸の脂肪が---」
「貧乳で悪かったなぁ―!!」
フェニックスギルディが放った一言は、リンを激しく傷つけたようだ。
ガラ空きだった彼の顎に、思いっきりアッパーをかました。
「~ッ、いいパンチだったぜ!!」
「余計なお世話じゃ!」
顎をさすりながら褒める彼だったが、興奮状態のリンには無効果だった。
突然始まったコントに、ユウは置いてけぼりだ。
彼はただ呆然と見るしかできなかった。
そして、フェニックスギルディはユウに向き直す。
「さて、こいつは俺の仲間だ。これ以上こいつを傷つけるなら容赦しないぜ」
さらっとリンが仲間にされている。
色々とツッコミたいが、これ以上彼女はユウとは戦えないのでスルーした。
(お願い…)
彼はしばらく考え込んでいたが、やがて口を開いた。
「---分かりました。今回は引きましょう」
「俺様はいいのか?」
「貴方を倒すのは彼女の役目。人の仕事を横取りするほど、僕は悪者ではないので」
そう言って
危機は去ったのだ。
「助かったわ、ありがとうな」
「いいってことよ。俺はアイツに会わなくちゃいけねぇから、またな!」
フェニックスギルディも背中の翼を展開し、赤く染まった空へと消えた。
「…何やったんや?」
疑問に思いつつも、この雪を回避するために城へと進んでいった。
無事に城にたどり着いたリンは、適当な部屋に入り込んだ。
部屋の窓と扉を全て閉め、雪が入らないようにした。
「さて、連絡はと…」
一段落したところで、彼女はトゥアールに連絡しようとした。
だが、
(…アホか、ウチは)
映し出された画面には、圏外のマーク。
異世界だという事をスッカリ忘れていたようだ。
(しかし、あのエレメリアン… あれがポニーテールの力か)
雪が収まるまでの間、リンは先程の出来事を思い返していた。
トゥアールの話では、アルティメギルはツインテール以外の
それ以外の髪形の
例として、ライブで遭遇した
もしかして、彼は---
赤い雪が止み、街に平和が戻った。
あの赤い雪の正体は、
そしてそれは、人間の
テイルレッドが倒していなければ、この世界はどうなっていたか…
「総二、行ってしまうんだな」
「お兄ちゃん、また会える…?」
「君がツインテールを愛している限り」
今そこで総二と姉妹が別れの挨拶をしている。
また総二がキザったい台詞を言っているが、またスルーされてしまうのだろう。
そう言えば、愛香とロエル達が結構仲が良くなったようだ。
どんな経緯があったのかは知らないが、彼女の事だろう、殴り合いでもしたのかもしれない。
そんな青春ドラマっぽい展開は、彼女には似合っている。
「ロエル、リルナ」
「「父様!!」」
『えええっ!?』
脇から現れたのは、豪奢なマントと鎧を着込んだ人が。
その人は、雪が降る前に出会った白髭の老人であった。
彼が姉妹の父親だと知り、皆は大いに驚いていた。
「父様、どうして」
「いや、空が紅かった時、お前達の近くでのびておったんじゃがのう」
どうやら姉妹には気付いてもらえなかったようだ。
「父上ってことは、もしかして…」
「あぁ、この星の国王さ」
その事実に、皆は更に驚いた。
幼子達の父親が、老人であることが信じられないのだろう。
「ふぉふぉふぉ。ああしてこの国を周り、娘達が定めた法を遵守を検めておったのですが」
「解った。ツインテール禁止法は廃止する。」
国王と王女の決断により、ツインテール禁止法は廃止された。
これで町にツインテールが戻ることに、総二は内心で喜んでいた。
そして、総二達を乗せた戦艦は
様々な出来事があったが、当初の目標は達成できた。
「皆、お疲れ様。凄い夏合宿だったわね」
艦長である(?)未春さんから労いの言葉を受ける。
「いやぁ、疲れましたねぇ~」
トゥアールのその発言が、皆の状態をよく表していた。
「てか、口に出して言うな! 更に疲れが…」
何か言おうとした愛香だったが、疲労が勝ったようでシートに突っ伏してしまった。
慧理那と桜川先生は、何やら話し込んでいる。
リンに関しては、よく分からない。
窓に映る異世界の景色を見ながら何か考え中のようだ。
「先輩。どうでした、異世界は?」
「……」
総二の問いかけに、顔を向けるリン。
彼女は黙り込んだままだ。
外に映る景色は、マーブル状に変化。
ゲートの中に入ったのだ。
「……寝る」
そう言って、リンは目を閉じてしまった。
長い沈黙の末に出されたのは、彼女らしいものだった。
総二は軽く溜め息をついて席に戻る。
しかし、その顔は何処か嬉しそうに見えた。
その間にもスタートゥアールは、今度は何事もなく地球へと向かう。
次話から、オリジナル展開へ移行します。
それに伴い、タイトルも変更しようと思っています!
何かGoodなタイトルがあれば、是非提供してください☆