それに伴い、前の話も順次変更していきます。
ここは私の部屋。
現在、22:00。
リンは「今日はいおりんの家に泊まるから」ということで、一旦自宅に戻って止まりの用具を持って戻ってきた。
それで今何をしているかと言うと、
「「「……」」」
カーペットの上で座り込み、互いの顔をチラチラ見てます。
さっきから、3者の間には会話は無いです。
えぇ、気まずい雰囲気ですよ。
何しろ…
「?」
赤ドレスの少女がいる。
勿論、私の知っている子ではありません。
何でそんな彼女がいるのかと言うと、
『話があるから、落ち着いたところはないか?』
『ほな、いおりんの家はどうや』
…というわけ。
せめて、私に話を通してからにして。
やっと補修地獄から解放されたと思ったら、これだよ。
一難去ってまた一難、って言うんだっけ。
それよりも、
「貴女、一体誰なの!?」
「俺様か?」
貴女以外、誰がいるのよ…
「しっかし、ウチかて心当たりは無いで。早く帰したらええんと
私を通さずに、赤の他人を家に上げたのはどこの誰ですか…(怒)
「お前なら、心当たりはあるはずだろ」
えっ、リンの知り合い?
そう思って彼女を見るが、首を傾げるばかりだ。
「まったく、もう少し食べた方が良いんじゃねえのか? だから、そんな胸が貧相なことに---」
「お前まで言うか―!?」
言うが早いか、リンは女の子に向けて容赦ないストレートを繰り出す。
しかしそれは、あっけなく受け止められてしまう。
「久し振りだってのに、冷てぇな」
「---まさか!?」
どうやら、本当にリンとは知り合いだったようだ。
途端にリンの前で、炎の渦が発生した。
「ちょっと、私の家を燃やす気―!?」
だがそれは、ほんの数秒で収まった。
天井や床には、燃えた跡が一切残っていなかった。
…不思議なもんである。
「やっぱりお前か」
「うっす、やっと分かってくれたか」
「……へ?」
私の前に居たのは、赤いドレスの女の子ではなかった。
身長は2mくらいか。
全体が流線状の鎧に覆われ、背中には赤い双翼が生えている。
頭に細長い羽が生え、マスク(?)から見える双眼からはとてつもなく危険な匂いを感じた。
と言うか、目の前の(元)彼女の周りがかなり熱い。
ほんの少し離れている私でも、汗が止まらない。
ここが私の部屋という閉鎖空間であることもあり、まるでサウナだ。
「どちらさんで?」
「俺様は、フェニックスギルディだ」
「…」
どうリアクションすればいいんだろう。
普通の人間ならば、この姿を見ればすぐに逃げようとする。
私の目の前にいるのは、間違いなくエレメリアンだ。
なまじ、パソコンの画面越しに見てるし、実際に会った事もある。
「おぃ、大丈夫か?」
「怯えとる訳では、無さそうやな」
フリーズしている私を、2人が心配している。
「ほら、前に話したやろ。ユウの攻撃から守ってくれたエレメリアン」
「---あぁ!?」
ようやっと思い出した!
その時の恩人が、目の前の彼女か。
「いゃ~、リンを助けてくれて、本当にありがとうございました」
「そんなものじゃねぇよ。てか、俺様の姿を見ても驚かねぇなんて、大した度胸だな」
「見慣れてるんで」
流石にエレメリアンでは狭いのか、人間の姿へと変化した。
確かにあの姿のままじゃ、ドアのにぶつかるだろうし。
見慣れている、その一言で片付けたことに彼女はキョトンとしていた。
その仕草1つ1つが、何だか可愛く見えてくる。
そんな事を考えていたけど、重大な事を忘れてた。
「自己紹介しなきゃ! 私は
「ウチは
リンって呼ばれとる」
「よし、伊織にリンだな。覚えたぜ」
最初に会ったときもそうだったけど、男口調だね。
私の友達の中にもそういうのがいるから、別にどうって訳ではないけど。
「フェニックスギルディって、人間に化けれるんだよね。その時の名前とかあるの?」
「そうだな、化けると言うよりは変化が一番近いな。人間の姿では、
…日本人なのかな。
人間の姿が何処か外国人っぽいから、それらしい名前を連想したので軽くびっくりした。
「それよか、一体何の用やねん?」
リンが本題にメスを入れた。
話が脱線しすぎたせいか、彼女の額には青筋が…
唯乃には胸について色々言われているせいで、リンにとって彼女の印象は最悪らしい。
アニメではよくある表現だけど、現実でできる人、初めて見た。
フェニックスギルディ---唯乃がなぜ私達に接触したのかは、私も気にはなっている。
「ただの観光やったら、この辺のホテルにでも泊まっときぃ」
「わかったから! 話すから、そう結論を早めるな!」
リンのボケに本気で対応するエレメリアン。
人間の姿でとはいえ、なんだかシュールで仕方ない。
手を後ろにまわし、何かを探すようにゴソゴソとした後、私達の前に拳を下向きに突き出した。
「先ず、これを見てくれ」
「これは---
開いた手の中にあったのは、
何故、これを彼女が持っているの!?
「…ただの
「あぁ。これは、ポニーテールの
マジか…!?
まぁツインテールがあるのなら、それに対となるものがあってもおかしくはないけど…
「コイツを使って、テイルレッドが持ってるのを作ってくれねぇか?」
「エェ!?」
もしかして、テイルブレスを作ってほしいってことなの?
でも、ただの高校生である私にはそんな事はできない。
リンもできないはずだし---
「ええで」
「本当かよ…」
「まさかの2つ返事!?」
あっさりOKしちゃったよ、この子!?
あまりの展開に、思考が着いていけない。
「(ちょっと、大丈夫なの?)」
「(ウチに任しとき)」
唯乃から少し距離を離して、リンに問い詰める。
それに対して彼女は、自身満々に貧相な胸を叩く。
「テイルブレスを作る事はできるで。
ただ、時間は少しかかるけどな」
「別に構わねぇぜ」
唯乃の方に振り向き、説明をした。
今日は驚きの連続だ。
「今日は徹夜で、コイツを調べるか。そんでその後は、テイルブレスの製造に専念するんやけど、唯乃はどないする?」
「俺様も手伝うぜ。
少しでも完璧に近づけてぇからな」
わぁ~、随分と張り切ってるな。
私は、何もしない方がいいかな。
なにせ、ドジっ子だし。
「伊織はどうする?」
「せやな… ウチが製作しとる間、唯乃を泊まらせてほしいわ」
「えぇ!?」
そう来たか。
何もしないよりは、良いけれど…
「そう不安な顔するなって。色々手伝ってやるからさ」
迷っている私の肩に手を置く唯乃。
その手には、かなり力が込められている。
滅茶苦茶痛いんですけど…
「---それなら」
渋々ではあるけど、了承した。
どちらにせよ、私には選択肢は無いらしい。
☆☆☆
ユウは現在、最大のピンチにあった。
「貴様…、何のつもりだ!?」
「まぁ落ち着け」
ユウは壁際にまで、追い詰められている。
そして、彼に対して壁ドンをしているのは
「何故
「それは、お前達の行動にあるんじゃないのか? いつも敗北してばかりで、ツインテールはおろか他の
その言葉に、ビートルギルディは渋い顔をした。
確かに敗北はしていた。
それ故に今も修業に励んでいる。
しかしその内容は、テイルブルーの絵描きだが…
「ダラダラしているお前に言われたくはない!仮にも幹部たる者ならば、自重すべきだ」
「別に好きでなった訳ではないし… 僕はシナリオ作りに忙しいんだ」
ユウは不適な笑みを浮かべる。
その不気味さにビートルギルディは顔をしかめる。
彼にとって"怨み"は、何処か掴めない存在として苦手としている。
「君達の行動には何も指図しない。だから、僕の判断を信じて欲しい」
「……」
ビートルギルディは顎に手を当て、思案する。
この件について様々な問題が付きまとう。
彼の部下や残留部隊がこれを知れば、暴動が起こる可能性を秘めている。
このまま容認していいのか、判断を迷わせていた。
「無論、首領殿の許可を得ている。安心してくれ、彼女を悪いようにはしない」
首領の認可済みということならば、彼は何も手出しはできない。
彼は諦めるしかなかったのだ。
彼は壁から手を離し、ユウを解放した。
「何かしら考えがあるようだな。貴様が責任を持って彼女を保護できるならば、黙認しよう」
彼は深く溜め息を吐き出し、その場を去った。
ようやく解放された事に、ユウは安堵した。
彼が完全に見えなくなった後、誰もいない虚空を見ながら、独り言を呟いた。
「…彼らにお叱りを受けてしまうな」
☆☆☆
リンがテイルブレスを製作する間、フェニックスギルディ---唯乃は私の家で住むことになった。
まぁ元々は一人暮らしだし、寂しい思いはしなくて済むかな。
って、何お婆ちゃんみたいなこと言ってるの、私!?
服装に関しては、初日は私のを貸して、後日彼女に合う服を購入した。
おかげで、私の預金残高が…
だけど彼女と生活しているだけでも、精神的疲労が半端じゃない。
例えば---
「うゎちちっ!?」
「キャーッ、コンロの火が-!?」
エレメリアンは、基本的に食事をしない。
だけど「居候だから役に立ちたい」と言うことで、朝メニューの1つ、ウインナーを焼いてもらった。
流石に服が汚れるのは不味いので、ヒヨコの絵が付いたエプロンを着けておく。
キッチンに立った彼女に、隣から見てみる。
そしたら、この大惨事ってわけ。
「…何これ」
「上手く焼けねぇもんだな、こいつは」
私の前にあるのは、謎の物体X。
時折ブスブス言ってるし。
どう反応すれば良いか困惑してる私に対し、唯乃は頭を掻いて弁明する。
「唯乃、普段炎を使うのに何でこう、黒焦げになるの!?」
「料理は初めてなんだから、しょうがねぇだろが!?」
他にも洗濯、買い物、掃除もからっきし。
毎日がハラハラで仕方がない。
なので、私の指導のも
正直、ここまで手がかかるとは思っていなかった。
まるで、歳の離れた妹みたい。
一緒にいると大変だけど、なんだか家族が増えたみたいで楽しく思えた。
数日後。
「でけたで」
「おぉ!」
「これが、テイルブレス…」
本当にできるとは…
でも、よく見ればツインテイルズのとは何処か異なる。
色も薄い灰色だし。
「流石にトゥアールのようなブレス程はできんかったけど、変身とかは問題ないはずや」
「やるなぁ」
数なくとも、これでツインテイルズの応援ができる。
依頼した唯乃も、喜んでいるみたい。
「さぁ、着けてみぃ」
そう言って、開発者は唯乃にブレスを渡す。
しかし、彼女はそれを拒んだのだ。
「確かに俺様はブレスを造ってくれと頼んだ。
だが、それは俺様が着けるには相応しくねぇ」
「じゃあ、誰が着けるの?」
「それはな…」
彼女は人差し指を直上に上げ、ゆっくりと下げていく。
降ろされた指を指していたのは---
「私!?」
訳がわからない。
どう適任なのだろうか。
「お前は出会った時から、凄まじいまでのポニーテールを感じた。それこそ、俺様を上回る程のな。だからこそ、お前はコイツを着けろ!!」
着けろって言われてもねぇ…
あの変な怪物と闘うんだよね。
「私はそこまで強くないってば。それに、貴女はどうするのよ!?」
テーブルに置かれてるのが彼女の物でないならば、どうするつもりなのか気になった。
「俺様にはこれがある」
取り出したのは、レリーフ。
その中央には、何かのマークが付いている。
「…それは?」
「俺様の友人の形見みたいな物だ。俺様はコイツを使う」
なるほど、それでブレスを着けるのを拒んだのか。
それにレリーフ自体がテイルブレスの代わりなのかもしれない。
前に見たダークグラスパーもブレスは持っていなかった。
けど、ブレスの機能を保有した道具があるはず。
「これはブレスの仲間か?それにしては、酷く雑な気がするわ」
「そうだな、
顔をレリーフに近付け、興味深く眺めるリンと、説明をする唯乃。
…なんか、難しい話で2人が納得してる。
私には、ただのレリーフにしか見えないけど…
「なら、そっちも面倒見るわ。色々と勝手は
「マジか!? いやぁ、助かるぜ!」
話に入れないので、ブレスをいじってみた。
一応、私の腕にもフィットするように作られているようだ。
いじっている間に、何かのボタンを押したのか2つに割れた。
いや、一方はレンズの両端が金属製品で繋がっているいるから、"C"の字のように変化した。
「その空いとるところに手を突っ込んでみ」
「ちょっとストップ!!」
リンがさり気なく着けるように促しているけど、私はそれを遮った。
「私はまだ戦うとは言ってない!」
「だが、ポニーテールの
…なにそれ?
「私が適任者? 冗談じゃない!? 私は弱虫だし、体は貧弱だし、皆の足を引っ張ることしかできない最低の人間なんだよ!? そんな私がブレスを着けて戦って何になるの!?」
「「……」」
涙ながらに訴える私を、2人はただ黙って見ている。
こんな姿を
でも本当に、できない。
「私はリンのようにブレスなんて作れない。唯乃みたいに戦闘ができるわけでもない。なのに、なんで---」
そこまでしゃべったとき、何かが私を包み込んだ。
誰かが抱きしめているのか、仄かに暖かみを感じる。
「唯乃…?」
「なぁ、伊織。俺達エレメリアンも強い奴がいれば、弱い奴だっている。だがお前ら人間は、戦闘だけで強弱を計ってはいない」
「じゃぁ、何なのよ…」
「そいつは"優しさ"だ」
「優しさ…?」
顔を離し、両肩に手を置いて、しっかりと目を見据えながら語りかける彼女。
急にそんなフレーズが飛び込んで来たから、思わず思考停止した。
「俺様に料理や洗濯、色んな事を一から教えてくれた。それは、俺様一人では決して得ることのできなかったものばかりだ。それに、お前は自分を"最低の人間"なんて言っていたが、それは違う。お前がこの場所に居ることが大切なんだよ」
「私が…大切…」
そんな事、考えたことも無かった。
常に何かを要求されるこの世界で、存在するだけでは意味が無いと感じていた。
何もできない私は、いつか捨てられるのではと焦燥感に駆られていた。
でも、必要としてくれる人がいる。
それが実感できただけでも、幾らかは落ち着いた。
「いいか、自分を卑下するな。人間の強さってのは1つじゃねえんだ。人間一人一人には、それぞれの強さがある」
そう言って、唯乃は私の胸を軽く突いた。
身体にトンという感触を感じた。
なんだろうか、こう直接心に響くような…
「確かにお前は最強のポニーテールの
「…!」
少し、元気が出てきた。
そうだよね。
いつも他人と比較しているから、気付かなかった。
私は私なりの"強さ"を持っているんだ。
「それに、お前には護りたいモノがあるんだろ?」
脳裏に浮かんでくる。
リン、唯乃、慧理那、観束君、津辺さん、トゥアールさん、桜川先生、学校のクラスメイト---
皆、私にとって大切な存在だ。
「お前には力がある。だったら、その力を、護りたいモノを護るために使え!!」
この言葉で、吹っ切れた。
「…わかった」
私は覚悟して、手にしているテイルブレスを右腕に通す。
右手首の辺りで止め、ブレスを両側から押し込んでロックすると、ブレスの色が変化した。
「これって…?」
主張を示さない灰色から、緑に変化していく。
一体どういう原理なんだろう。
「生体認証は確認できた。もう、これはお前のモンだぜ」
「私のブレス…」
ブレスをさすってみるが、どこにも痛みはない。
そして右手を上に突き出す。
それは光に反射し、一層輝いている。
「これで私も当事者か…」
「もう既に当事者の気がするけどな」
何か空耳が聞こえたけど、気にしないでおこう。
(この力で、アルティメギルから皆を護ってみせる!!)
心に新たな決意を誓い、手に強く握り締めた。