Which do you love ?   作:ズケズケ

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前の文章構成では読みにくいと思ったため、構成を変更しました。
それに伴い、前の話も順次変更していきます。


Episode.29【私はどうすれば…】

ここは私の部屋。

現在、22:00。

リンは「今日はいおりんの家に泊まるから」ということで、一旦自宅に戻って止まりの用具を持って戻ってきた。

それで今何をしているかと言うと、

 

「「「……」」」

 

カーペットの上で座り込み、互いの顔をチラチラ見てます。

さっきから、3者の間には会話は無いです。

えぇ、気まずい雰囲気ですよ。

何しろ…

 

「?」

 

赤ドレスの少女がいる。

勿論、私の知っている子ではありません。

何でそんな彼女がいるのかと言うと、

 

『話があるから、落ち着いたところはないか?』

『ほな、いおりんの家はどうや』

 

…というわけ。

せめて、私に話を通してからにして。

やっと補修地獄から解放されたと思ったら、これだよ。

一難去ってまた一難、って言うんだっけ。

それよりも、

 

「貴女、一体誰なの!?」

「俺様か?」

 

貴女以外、誰がいるのよ…

 

「しっかし、ウチかて心当たりは無いで。早く帰したらええんと(ちゃ)うか?」

 

私を通さずに、赤の他人を家に上げたのはどこの誰ですか…(怒)

 

「お前なら、心当たりはあるはずだろ」

 

えっ、リンの知り合い?

そう思って彼女を見るが、首を傾げるばかりだ。

 

「まったく、もう少し食べた方が良いんじゃねえのか? だから、そんな胸が貧相なことに---」

「お前まで言うか―!?」

 

言うが早いか、リンは女の子に向けて容赦ないストレートを繰り出す。

しかしそれは、あっけなく受け止められてしまう。

 

「久し振りだってのに、冷てぇな」

「---まさか!?」

 

どうやら、本当にリンとは知り合いだったようだ。

途端にリンの前で、炎の渦が発生した。

 

「ちょっと、私の家を燃やす気―!?」

 

だがそれは、ほんの数秒で収まった。

天井や床には、燃えた跡が一切残っていなかった。

…不思議なもんである。

 

「やっぱりお前か」

「うっす、やっと分かってくれたか」

「……へ?」

 

私の前に居たのは、赤いドレスの女の子ではなかった。

身長は2mくらいか。

全体が流線状の鎧に覆われ、背中には赤い双翼が生えている。

頭に細長い羽が生え、マスク(?)から見える双眼からはとてつもなく危険な匂いを感じた。

と言うか、目の前の(元)彼女の周りがかなり熱い。

ほんの少し離れている私でも、汗が止まらない。

ここが私の部屋という閉鎖空間であることもあり、まるでサウナだ。

 

「どちらさんで?」

「俺様は、フェニックスギルディだ」

「…」

 

どうリアクションすればいいんだろう。

普通の人間ならば、この姿を見ればすぐに逃げようとする。

私の目の前にいるのは、間違いなくエレメリアンだ。

なまじ、パソコンの画面越しに見てるし、実際に会った事もある。

 

「おぃ、大丈夫か?」

「怯えとる訳では、無さそうやな」

 

フリーズしている私を、2人が心配している。

 

「ほら、前に話したやろ。ユウの攻撃から守ってくれたエレメリアン」

「---あぁ!?」

 

ようやっと思い出した!

その時の恩人が、目の前の彼女か。

 

「いゃ~、リンを助けてくれて、本当にありがとうございました」

「そんなものじゃねぇよ。てか、俺様の姿を見ても驚かねぇなんて、大した度胸だな」

「見慣れてるんで」

 

流石にエレメリアンでは狭いのか、人間の姿へと変化した。

確かにあの姿のままじゃ、ドアのにぶつかるだろうし。

見慣れている、その一言で片付けたことに彼女はキョトンとしていた。

その仕草1つ1つが、何だか可愛く見えてくる。

そんな事を考えていたけど、重大な事を忘れてた。

 

「自己紹介しなきゃ! 私は長瀬(ながせ)伊織(いおり)

「ウチは雨宮(あまみや)鈴音(すずね)

リンって呼ばれとる」

「よし、伊織にリンだな。覚えたぜ」

 

最初に会ったときもそうだったけど、男口調だね。

私の友達の中にもそういうのがいるから、別にどうって訳ではないけど。

 

「フェニックスギルディって、人間に化けれるんだよね。その時の名前とかあるの?」

「そうだな、化けると言うよりは変化が一番近いな。人間の姿では、結翼(いわばね)唯乃(ゆの)だ」

 

…日本人なのかな。

人間の姿が何処か外国人っぽいから、それらしい名前を連想したので軽くびっくりした。

 

「それよか、一体何の用やねん?」

 

リンが本題にメスを入れた。

話が脱線しすぎたせいか、彼女の額には青筋が…

唯乃には胸について色々言われているせいで、リンにとって彼女の印象は最悪らしい。

アニメではよくある表現だけど、現実でできる人、初めて見た。

フェニックスギルディ---唯乃がなぜ私達に接触したのかは、私も気にはなっている。

 

「ただの観光やったら、この辺のホテルにでも泊まっときぃ」

「わかったから! 話すから、そう結論を早めるな!」

 

リンのボケに本気で対応するエレメリアン。

人間の姿でとはいえ、なんだかシュールで仕方ない。

手を後ろにまわし、何かを探すようにゴソゴソとした後、私達の前に拳を下向きに突き出した。

 

「先ず、これを見てくれ」

「これは---属性玉(エレメーラオーブ)!?」

 

開いた手の中にあったのは、属性玉(エレメーラオーブ)だった。

何故、これを彼女が持っているの!?

 

「…ただの属性玉(エレメーラオーブ)ではないようやな」

「あぁ。これは、ポニーテールの属性力(エレメーラ)を含んでいる」

 

マジか…!?

まぁツインテールがあるのなら、それに対となるものがあってもおかしくはないけど…

 

「コイツを使って、テイルレッドが持ってるのを作ってくれねぇか?」

「エェ!?」

 

もしかして、テイルブレスを作ってほしいってことなの?

でも、ただの高校生である私にはそんな事はできない。

リンもできないはずだし---

 

「ええで」

「本当かよ…」

「まさかの2つ返事!?」

 

あっさりOKしちゃったよ、この子!?

あまりの展開に、思考が着いていけない。

 

「(ちょっと、大丈夫なの?)」

「(ウチに任しとき)」

 

唯乃から少し距離を離して、リンに問い詰める。

それに対して彼女は、自身満々に貧相な胸を叩く。

 

「テイルブレスを作る事はできるで。

ただ、時間は少しかかるけどな」

「別に構わねぇぜ」

 

唯乃の方に振り向き、説明をした。

今日は驚きの連続だ。

 

「今日は徹夜で、コイツを調べるか。そんでその後は、テイルブレスの製造に専念するんやけど、唯乃はどないする?」

「俺様も手伝うぜ。

少しでも完璧に近づけてぇからな」

 

わぁ~、随分と張り切ってるな。

私は、何もしない方がいいかな。

なにせ、ドジっ子だし。

 

「伊織はどうする?」

「せやな… ウチが製作しとる間、唯乃を泊まらせてほしいわ」

「えぇ!?」

 

そう来たか。

何もしないよりは、良いけれど…

 

「そう不安な顔するなって。色々手伝ってやるからさ」

 

迷っている私の肩に手を置く唯乃。

その手には、かなり力が込められている。

滅茶苦茶痛いんですけど…

 

「---それなら」

 

渋々ではあるけど、了承した。

どちらにせよ、私には選択肢は無いらしい。

 

☆☆☆

 

ユウは現在、最大のピンチにあった。

 

「貴様…、何のつもりだ!?」

「まぁ落ち着け」

 

ユウは壁際にまで、追い詰められている。

そして、彼に対して壁ドンをしているのは美の四心(ビー・テイフル・ハート)の隊長・ビートルギルディ。

 

「何故(おさ)たるダークグラスパー様が前線離脱し、貴様の部隊に入らねばならない!?」

「それは、お前達の行動にあるんじゃないのか? いつも敗北してばかりで、ツインテールはおろか他の属性力(エレメーラ)の繁栄すらしていない」

 

その言葉に、ビートルギルディは渋い顔をした。

確かに敗北はしていた。

それ故に今も修業に励んでいる。

しかしその内容は、テイルブルーの絵描きだが…

 

「ダラダラしているお前に言われたくはない!仮にも幹部たる者ならば、自重すべきだ」

「別に好きでなった訳ではないし… 僕はシナリオ作りに忙しいんだ」

 

ユウは不適な笑みを浮かべる。

その不気味さにビートルギルディは顔をしかめる。

彼にとって"怨み"は、何処か掴めない存在として苦手としている。

 

「君達の行動には何も指図しない。だから、僕の判断を信じて欲しい」

「……」

 

ビートルギルディは顎に手を当て、思案する。

この件について様々な問題が付きまとう。

彼の部下や残留部隊がこれを知れば、暴動が起こる可能性を秘めている。

このまま容認していいのか、判断を迷わせていた。

 

「無論、首領殿の許可を得ている。安心してくれ、彼女を悪いようにはしない」

 

首領の認可済みということならば、彼は何も手出しはできない。

彼は諦めるしかなかったのだ。

彼は壁から手を離し、ユウを解放した。

 

「何かしら考えがあるようだな。貴様が責任を持って彼女を保護できるならば、黙認しよう」

 

彼は深く溜め息を吐き出し、その場を去った。

ようやく解放された事に、ユウは安堵した。

彼が完全に見えなくなった後、誰もいない虚空を見ながら、独り言を呟いた。

 

「…彼らにお叱りを受けてしまうな」

 

☆☆☆

 

リンがテイルブレスを製作する間、フェニックスギルディ---唯乃は私の家で住むことになった。

まぁ元々は一人暮らしだし、寂しい思いはしなくて済むかな。

って、何お婆ちゃんみたいなこと言ってるの、私!?

服装に関しては、初日は私のを貸して、後日彼女に合う服を購入した。

おかげで、私の預金残高が…

だけど彼女と生活しているだけでも、精神的疲労が半端じゃない。

例えば---

 

「うゎちちっ!?」

「キャーッ、コンロの火が-!?」

 

エレメリアンは、基本的に食事をしない。

だけど「居候だから役に立ちたい」と言うことで、朝メニューの1つ、ウインナーを焼いてもらった。

流石に服が汚れるのは不味いので、ヒヨコの絵が付いたエプロンを着けておく。

キッチンに立った彼女に、隣から見てみる。

そしたら、この大惨事ってわけ。

 

「…何これ」

「上手く焼けねぇもんだな、こいつは」

 

私の前にあるのは、謎の物体X。

時折ブスブス言ってるし。

どう反応すれば良いか困惑してる私に対し、唯乃は頭を掻いて弁明する。

 

「唯乃、普段炎を使うのに何でこう、黒焦げになるの!?」

「料理は初めてなんだから、しょうがねぇだろが!?」

 

他にも洗濯、買い物、掃除もからっきし。

毎日がハラハラで仕方がない。

なので、私の指導のも(もと)、徹底的に一通り教え込んだ。

正直、ここまで手がかかるとは思っていなかった。

まるで、歳の離れた妹みたい。

一緒にいると大変だけど、なんだか家族が増えたみたいで楽しく思えた。

 

 

 

 

数日後。

 

「でけたで」

「おぉ!」

「これが、テイルブレス…」

 

本当にできるとは…

でも、よく見ればツインテイルズのとは何処か異なる。

色も薄い灰色だし。

 

「流石にトゥアールのようなブレス程はできんかったけど、変身とかは問題ないはずや」

「やるなぁ」

 

数なくとも、これでツインテイルズの応援ができる。

依頼した唯乃も、喜んでいるみたい。

 

「さぁ、着けてみぃ」

 

そう言って、開発者は唯乃にブレスを渡す。

しかし、彼女はそれを拒んだのだ。

 

「確かに俺様はブレスを造ってくれと頼んだ。

だが、それは俺様が着けるには相応しくねぇ」

「じゃあ、誰が着けるの?」

「それはな…」

 

彼女は人差し指を直上に上げ、ゆっくりと下げていく。

降ろされた指を指していたのは---

 

「私!?」

 

訳がわからない。

どう適任なのだろうか。

 

「お前は出会った時から、凄まじいまでのポニーテールを感じた。それこそ、俺様を上回る程のな。だからこそ、お前はコイツを着けろ!!」

 

着けろって言われてもねぇ…

あの変な怪物と闘うんだよね。

 

「私はそこまで強くないってば。それに、貴女はどうするのよ!?」

 

テーブルに置かれてるのが彼女の物でないならば、どうするつもりなのか気になった。

 

「俺様にはこれがある」

 

取り出したのは、レリーフ。

その中央には、何かのマークが付いている。

 

「…それは?」

「俺様の友人の形見みたいな物だ。俺様はコイツを使う」

 

なるほど、それでブレスを着けるのを拒んだのか。

それにレリーフ自体がテイルブレスの代わりなのかもしれない。

前に見たダークグラスパーもブレスは持っていなかった。

けど、ブレスの機能を保有した道具があるはず。

 

「これはブレスの仲間か?それにしては、酷く雑な気がするわ」

「そうだな、Prototype(プロトタイプ)って言った方が良いかもしれねぇ。なんせ、途中で凍結されたシステムだからな」

 

顔をレリーフに近付け、興味深く眺めるリンと、説明をする唯乃。

…なんか、難しい話で2人が納得してる。

私には、ただのレリーフにしか見えないけど…

 

「なら、そっちも面倒見るわ。色々と勝手は(ちゃ)うとは思うけど、何とかするわ」

「マジか!? いやぁ、助かるぜ!」

 

話に入れないので、ブレスをいじってみた。

一応、私の腕にもフィットするように作られているようだ。

いじっている間に、何かのボタンを押したのか2つに割れた。

いや、一方はレンズの両端が金属製品で繋がっているいるから、"C"の字のように変化した。

 

「その空いとるところに手を突っ込んでみ」

「ちょっとストップ!!」

 

リンがさり気なく着けるように促しているけど、私はそれを遮った。

 

「私はまだ戦うとは言ってない!」

「だが、ポニーテールの属性力(エレメーラ)は強大だ。お前以上の適任者はいないと思うが…」

 

属性力(エレメーラ)が強いから、戦うの?

…なにそれ?

 

「私が適任者? 冗談じゃない!? 私は弱虫だし、体は貧弱だし、皆の足を引っ張ることしかできない最低の人間なんだよ!? そんな私がブレスを着けて戦って何になるの!?」

「「……」」

 

涙ながらに訴える私を、2人はただ黙って見ている。

こんな姿を(さら)して、恥ずかしいとは思う。

でも本当に、できない。

 

「私はリンのようにブレスなんて作れない。唯乃みたいに戦闘ができるわけでもない。なのに、なんで---」

 

そこまでしゃべったとき、何かが私を包み込んだ。

誰かが抱きしめているのか、仄かに暖かみを感じる。

 

「唯乃…?」

「なぁ、伊織。俺達エレメリアンも強い奴がいれば、弱い奴だっている。だがお前ら人間は、戦闘だけで強弱を計ってはいない」

「じゃぁ、何なのよ…」

「そいつは"優しさ"だ」

「優しさ…?」

 

顔を離し、両肩に手を置いて、しっかりと目を見据えながら語りかける彼女。

急にそんなフレーズが飛び込んで来たから、思わず思考停止した。

 

「俺様に料理や洗濯、色んな事を一から教えてくれた。それは、俺様一人では決して得ることのできなかったものばかりだ。それに、お前は自分を"最低の人間"なんて言っていたが、それは違う。お前がこの場所に居ることが大切なんだよ」

「私が…大切…」

 

そんな事、考えたことも無かった。

常に何かを要求されるこの世界で、存在するだけでは意味が無いと感じていた。

何もできない私は、いつか捨てられるのではと焦燥感に駆られていた。

でも、必要としてくれる人がいる。

それが実感できただけでも、幾らかは落ち着いた。

 

「いいか、自分を卑下するな。人間の強さってのは1つじゃねえんだ。人間一人一人には、それぞれの強さがある」

 

そう言って、唯乃は私の胸を軽く突いた。

身体にトンという感触を感じた。

なんだろうか、こう直接心に響くような…

 

「確かにお前は最強のポニーテールの属性力(エレメーラ)を持っている。だがその優しさも、お前の強みなんだよ」

「…!」

 

少し、元気が出てきた。

そうだよね。

いつも他人と比較しているから、気付かなかった。

私は私なりの"強さ"を持っているんだ。

 

「それに、お前には護りたいモノがあるんだろ?」

 

脳裏に浮かんでくる。

リン、唯乃、慧理那、観束君、津辺さん、トゥアールさん、桜川先生、学校のクラスメイト---

皆、私にとって大切な存在だ。

 

「お前には力がある。だったら、その力を、護りたいモノを護るために使え!!」

 

この言葉で、吹っ切れた。

 

「…わかった」

 

私は覚悟して、手にしているテイルブレスを右腕に通す。

右手首の辺りで止め、ブレスを両側から押し込んでロックすると、ブレスの色が変化した。

 

「これって…?」

 

主張を示さない灰色から、緑に変化していく。

一体どういう原理なんだろう。

 

「生体認証は確認できた。もう、これはお前のモンだぜ」

「私のブレス…」

 

ブレスをさすってみるが、どこにも痛みはない。

そして右手を上に突き出す。

それは光に反射し、一層輝いている。

 

「これで私も当事者か…」

「もう既に当事者の気がするけどな」

 

何か空耳が聞こえたけど、気にしないでおこう。

 

(この力で、アルティメギルから皆を護ってみせる!!)

 

心に新たな決意を誓い、手に強く握り締めた。

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