(クッ…)
相変わらず、この状況を打破できる手段は見つからない。
しかしこの拘束具、どこか変だ。
どう変かと言われると、まず足につけられているそれにつなぎ目が無い。
ロープでなら、緩めるなり歯や爪で切ることは出来るだろう。
だがこれは、肌に伝わる感触からして、恐らく金属。
どちらも役に立たないだろうな、きっと。
「さて、ぬいぐるみはもう十分だ。すぐに仕事にかかるぞ」
「「モケ―――」」
慧理那のあの姿に満足したのか、怪物が動き出した。
「なぁ、いつになったら外してくれるん?これ、結構痛いんやけど」
「……」
リンが苦しそうに声を上げるが、無視されてしまう。
怪物にとって、余程ツインテールが大事なのだろう。
(……ん?)
何やらでかい金属のリングがあるな。
私達のとは違い、人間なら余裕で通り抜けられる程の大きさがある。
その前には、捕まえられた女の子が一列に並べられており、先頭は空中に浮いている。
…ん、浮いている?なんで!?
(目の前に怪物がおるのに、何でそこに注目するんかな)
リンちゃん、たまに私の心の中を読まないでくれる?
そんなやり取りをしている中、捕まっていた女の子は色彩色の幕を張られたリングに通される。
すると、ツインテールに束ねていた髪が解けた。
あれが、怪物の言う『ツインテールを収める』ってこと…?
次々と女の子達はリングに通され、ツインテールを解かされる。
そして、慧理那も……
私はただ見ることしか出来ない自分自身に腹がたつ。
力さえあれば…
あの子達を救うことが出来たかもしれない。
あらかたツインテールの回収が終わったのだろうか、周りはツインテールを奪われ気を失ってる女の子達はあちこちに寝転がされていた。
暫く時間が経つが、私とリンを縛るリングは緩みそうにない。
「ううむ、素晴らしいツインテール属性。だが、これが隊長殿が究極とまで讃えるこの星最強の力たり得るのか……」
いよいよ私達の番か。
何をされるのだろうな。
そう半ば諦めていたとき、
「止めろ――――!!」
「ぬぅ!?」
誰かが来たようだ。助かった…
現れたのは、小さい女の子…?
かなりのスピードで来たのか、ブレーキの火花と地面の粉じんが凄まじく散る。
「言葉が通じるな、化け物。奪ったツインテールを…返せ」
「な…これは………」
「聞こえなかったのか…てめえが奪ったツインテールを、返しやがれ!!」
一応助けるつもりらしいが、どうも違うっぽい。
あの子もツインテールが目的か…
(こいつらの共通語はツインテールかいな?)
リンがそう私に質問するけど、答えられる訳が無い。
てか、早く助けてよ…
「ウ……ウオオオオ――――ッ!?」
突然、怪物は大きく飛び上がる。
「がはあ―っ!!」
そして顔面から地面に着地。
一人コントか?これって。
「ぐ、ぐうう…あまりの強大な幼気い吹き飛ばされたか…これは…なんと見事なツインテールか!!」
「…は?」
「やはり起点にこの地を選んだ隊長殿の予感は正しかった! 先程の娘など及びもつかぬ……。お前だったのか……! ようやく現れたな! まさに、非の打ち所無き、究極のツインテールだ!」
怪物はお目当てに会えたか、興奮しながら起き上がる。
「究極のツインテール…?」
ふと、横にある車のフロントガラスで自身の顔を見たあと、身体のあちこちに触れる女の子。
「お、お…女になってるじゃねーか---!!」
そんな悲しみの声は、この戦場によく響いたのだった。
…はい?
『女になってる』? ということは、もとは男…?
女の子が自身の姿にショック状態になってる間に、戦闘員は彼女を取り囲んだ。
どうやらチャンスだと思っているようだ。
「モケ―――」
戦闘員の一人が攻撃をしかけようとしていたが、群衆から弾かれ、かべに激突し、放電・爆発した。
「ぬうう…!
「…………何なの、俺?」
うぉい!? 何も考えずに来たの?
…まぁ、自分の姿に驚いてることから、多分そうかな。
「これは特撮番組なんかなぁ」
怪物・戦闘員・
にしては、カメラや音声などのスタッフがいないのが謎だが…
「うおお~っ、よく分からぬがしょんぼりした幼女、たまらぬ!! 誰ぞ、彼女に抱かせる人形を持てい!!」
「モケェー」
そうしている間にも、ジリジリと戦闘員は包囲網を狭める。
しかし、その包囲網は突然の炎により消え去り、その中心には、一振りの剣を構えた少女がいた。
(なんて強さ…! あれだけの数を一撃で)
何か武術を学んでなければ、あの華麗さは出ない。
しかし、怪物はその様子にひるむどころか、何故か感動していた。
「はあはあ、ツインテール……」
「ひ……!?」
結構気持ち悪いよ、あれ…
少女が気の毒だ。
「そのツインテールを親指と人差し指で軽く摘んで、俺の頬をぺちぺちと叩いてくれぬか……!」
なにしろ、ゾンビの様な感じで少女に近づこうとしているもの。
「きゃ―――!!」
あれで悲鳴を上げない訳がない。
色んな意味で恐怖を与えるものだよ、あれ。
しかし、突然動きを止める少女。
精神統一か…?と思いきや、
「……うおおおおおおおおおおお!!」
いきなり走り出したー!?
「騒がしいなぁ、まったく。倒すなら、さっさと
…すっかり観客モードのリン。
誰か、この状況そのものに突っ込んで…
「ペチってやるぜ、
少女は剣道の面のように、大上段に剣を構える。
だが、怪物に軽くかわされ、その手の平から光線を放たれる。
(危ない!!)
光線は確実に少女を捉えていた。
しかし、少女の身体には傷一つない。
「なっ…!?」
「むう!?」
私と怪物は同時に驚きの声を上げる。
普通の人間なら、恐らく蒸発して消えるだろうに。
「フッ……恐るべき奴! 久方ぶりに戦士としての昂揚が吹き上がる! 我はアルティメギルの切込み隊長、リザドギルディ! 少女が人形を抱く姿にこそ、男子は心ときめくべきという信念のもと戦う者よ。改めて聞こう、貴様の名は!!」
「―――テイルレッド!!」
…成程、テイルレッドね。
安直なネーミングだが、意外とフィットしてるかも。
そして、戦いは佳境に入る。
怪物―――リザドギルディは背中のヒレが離れ、浮かび上がる。
そして、少女―――テイルレッドに襲いかかるが、それらを全て弾き落とす。
しかし、誘導ミサイルのようにしつこく攻撃するヒレ。
もしかしたら、捌き切れなくなるかもしれない。
「素晴らしい! 今日のこの日は未来永劫忘れぬであろう! すまぬが記念写真を頼む! こう、俺の肩のこてんと頭を預けてだな、ぬいぐる……」
「やかまし―――ッ!」
だが、テイルレッドが距離を詰め、リザドギルディの顔面に炎を纏った左ストレートを当てる。
それに怒ったリザドギルディは、鱗に纏われた筋肉を隆起させ、全力で潰しにかかる準備に入る。
(これはやばいか…!)
そう思い、テイルレッドのほうを向く。
…テイルレッドの持つ剣に、大きめの炎の球が出来ている?
それを放つと、リザドギルティの前で爆発・螺旋状に取り付き、円柱に変化した。
「クッ…、動けぬ!!」
「うおおおおお!!」
チャンスと見たか、テイルレッドはリザドギルティに向けて突撃する。
剣もそれに応えるかのように、変形していく。
炎を最大限に纏った剣で、捉えている円柱ごと切り裂く。
「ぐおあああああ!!」
全身から放電し、断末魔を上げる怪物。
「ふ、ふははは……素晴らしい……ツインテールに優しく頬を撫でられ果てる……何の悔いがあろうか! 男子本懐の極み!!」
円柱が3倍以上の大きさに膨れ上がる。
「ゲッ…」
「さらばだ―――ッ」
そして、戦闘員とは比でもない爆発が発生する。
この距離では、逃げ切れない…!
「勝手に妙な幻覚見てきえるなああああ!!」
…あれ? 無事だ。何で!?
リザドギルティがいた場所には、少し焦げた跡が。
あれは捕縛と同時に、爆発を抑える効果があるのか…
「よっと」
ツインテールを奪った巨大リングが、テイルレッドにより破壊される。
リングは光の粒子状となり、捕えられた少女達に降り注ぐ。
すると、髪型は元通りツインテールに戻った。
同時に、私達を拘束していたリングも消え去る。
リング痕には、軽いあざが…
長い時間あぁなっていれば、当然のことか。
「―――あの、助けていただいて…ありがとうございます」
「あ、あはは、何のことやら…。俺、いや私は、たまたま通りすがっただけですよ」
(そんなわけないやん。わざわざ自分から突っ込んで何が通りすがっただけか)
リンの厳しい分析。
確かに、それは苦しい言い訳かもしれない。
「いえ、その……途中で目を覚ましていましたの」
「え……」
「と、とても素敵な戦いぶりでしたわ…まだ小さいのに、本当に勇敢で…強くて…わたくし…感激しましたわ!」
感激ねぇ… 確かに強かったけど。
「あの…あなたは一体…!」
「…せせ正義の味方、です。さ、早く逃げてくださ、い」
「セリフ、かみかみやん」
「助けていただき…ありがとうございます!! またお逢いできますか!?」
「あなたが、ツインテールを愛する限り」
「って、無視かい!!」
リンのセリフがスルーされていく。
会話に加わる権利、無し…?
「お嬢様アアアアッ!!」
「うおう!?」
突然リムジンが猛スピードでこっちに突っ込んでくる。
出てきたのは、メイドさん達。
確か、慧理那の護衛も務めていたっけ。
「んぅ…」
おっと、気を失っていた子達が目を覚ましたか。
「すぐに介抱をしなさい! ここは危険ですわ!!」
慧理那の支持のもと、メイドさん達はテキパキと動く。
その後、家族なのだろうか、子供たちに近づき、無事を確認している。
この様子ならば、恐らく大丈夫だろう。
…いつの間にか、テイルレッドがいない。
この場を私達に任せ、去ったのか。
しかし、あの強さは認めるが、
『あなたがツインテールを愛する限り』
あの言葉、まるで…
いずれにしろ、あの子とは遠からずまた会うかもしれない。
何故か、そんな予感があったのだ。
なんだか、原作と似たような感じだなぁ…
オリジナリティーを、もっと出さねば!!