Which do you love ?   作:ズケズケ

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ようやく伊織が動きます。
あと、かなり長くなると思ったために、前後編に分割しました。



Episode.30【伊織、初陣!!(前編)】

先日、私はテイルブレスを受け取った。

それは今、私の右手首で輝いている。

一応認識攪乱装置(イマジンチャフ)は機能しているそうで、一般人には見えないらしい。

その上、ちゃんと『テイル・オン』で変身もできる機能も搭載済み。

 

「まぁあったとしても、ツインテイルズが前線に出る可能性が高いからねぇ…これの出る幕、あるの?」

 

ブレスに語りかけるように、私は独り言を呟く。

アルティメギルの停戦宣言により、現在地球は平和である。

テレビのバラエティー番組も新しい情報が無いのか、ツインテイルズの過去の戦闘を振り返っている。

ただし、テイルレッドを強調(クローズアップ)して。

まぁ、たまにブルーやイエローも出る。

けれど、前者は地球を守るどころか破壊者として。

後者は危ない露出狂として、大きく紹介される始末。

 

(慧理那… 不憫だねぇ)

 

心の中で、そっと涙を流す。

 

「さて、今日は買い物行かないと」

「だったら、お菓子の1つでも買ってきてくれ」

「…ハァ」

 

テイルブレスが完成した後も、唯乃は同居人として暮らしている。

彼女も最初に比べれば、家事はある程度はできるようにはなった。

けど、食料には限りがあるため料理に関しては私が専任することにした。

 

「分かったわよ。辛いものがあれば、買ってくる」

「おぅ、よろしく頼むぜ」

 

彼女のマイブームは、辛いもの。

キムチに始まり、山葵なども気に入ったみたい。

別に好きになるのは構わないけど、食費を圧迫するのよね…

頭が痛いわ。

 

「それじゃ、行ってくるね」

 

そして、いつものように玄関のドアを開ける。

 

☆☆☆

 

アルティメギル基地。

そこではまだ、打倒テイルブルーを目標に皆邁進していた。

 

「だがよ、こう何枚も絵を描き続けると疲れるぜ」

 

そう愚痴をこぼすのはモールギルディ。

モグラのような容姿をしており、両腕には鋭い爪が装填されている。

彼の場合、その爪が描写を邪魔していることも疲労の一因であるが。

 

「おまけに、この惑星に駐屯してからずっと基地にいるから、退屈でしょうがねぇ!!」

 

彼のストレスは頂点に達しているようだ。

彼は長い爪を無茶苦茶に振り回し、空を切り裂く。

幸い、彼がいる廊下には誰もいなかった。

ただ爪が空を切り裂く音と、彼の苛立ちが響いている。

 

「なら、『散歩』に出掛ければ良い」

「ぅ、"怨み"様!?」

 

彼のそばに、幸運が舞い降りた。

彼は偶々、モールギルティが愚痴を溢しているのを聞いたのだ。

 

「しかし、ビートルギルディ様の命により、ゲートは現在使用不可なのでは…?」

「なぁに、僕がいつも使っている別のゲートがある。それを使って、行ってみれば? 勿論、案内はするさ」

 

ユウの物言いには疑問に感じたが、苛立ちを抑えられるならばとモールギルティは了承した。

彼はその言葉通り、モールギルディを連れて、廊下から姿を消した。

 

☆☆☆

 

「さてと… 豚ミンチは買った、と。後はキャベツ、この近くのスーパーね」

 

手に買い物袋を提げ、私は次の目的地に向かっていた。

買い物リストも半分ほど埋まった。

これなら、夕方までには帰れそう。

 

(そういえば、津辺さんの誕生会開くんだっけ)

 

前にリンから伝えられたのだ。

日時は8月8日、PM16:00からスタート。

場所は観束君の家・アドレシェンツァ。

ツインテール部は勿論、彼女のお姉さんも来るみたい。

一応唯乃も誘ってみたけど、

 

『そんな知らねぇ奴のパーティに行って、一体何になる!?』

 

と断られた。

ちなみにリンは、出席を表明した。

 

(ついでに、プレゼントも買っておくか。でも、どんなのにしようかな? 手頃なのはお菓子だけど、観束君の家じゃなぁ…)

 

そんなことを考えながら歩いていると、

 

「---!」

 

何やら声が。

それも、何かのトラブルのようだ。

それはちょうど、T字路を左に曲がったところから聞こえてくる。

 

(何処から…?)

 

感覚的には左側か。

近づくにつれ、その声は大きくなる。

 

「ちょっと離してください! 大声で叫びますよ?」

「なんと美しい… 貴女こそ、私の伴侶に相応しい!」

「って、聞いてない!? ちょ、ホントに誰か助けて-!!」

 

ぅわ、これはヤバい!

誘拐なのかは知らないけれど、これは静観できない。

とは言うものの、いきなり出るのもなぁ…

曲がり角からそっと覗こうっと。

 

「離してください!」

「いいや、離さぬ! 千載一遇の機会を逃さないぞ」

(へ…?)

 

曲がり角から少し顔を出して、状況を確認する。

そこには、信じられない光景があった。

 

「折角の、私好みの『手』が見つかったのだ! さぁ行かん、我らの桃源郷へ」

「いゃ~!!」

(不味いよこれ…)

 

てっきり、ある男性が女性を口説いていると思っていた。

だけど、まさか『エレメリアン』が女性を口説いているとは…

 

(って、突っ込むところはそこじゃない!)

 

確かアルティメギルは、6日まで停戦を宣言したはず…

何故エレメリアンが!?

 

(とにかく、距離を離さないと…)

ガサガサッ!!

(やっちゃったよ…)

 

焦りが誘ったのか、提げている買い物袋が、角に擦れてしまった。

絶対バレるよね、これ。

 

「誰だ!?」

 

音に気付き、こちらに向かってくる。

足音が大きいから、緊迫感も増す一方だし。

 

「あぁ、どうすれば…」

 

私はかなりテンパっていた。

急いで逃げないと。

でも相手がエレメリアンじゃ、すぐに追い付かれる。

 

「あぅぅ… 天は我を見離したか…」

 

現世に別れを告げるように、右手を天に掲げる。

その時、手首に着けているブレスがあることを思い出した。

 

(確か、変身機能が付いているんだっけ。一応声に出さずとも、心の中で呟けば良いみたいだし)

 

このまま立っているよりは、マシだ!

 

(『テイル・オン』!!)

 

右手をグッと握り締め、相手に気付かれないよう、心の中で叫んだ。

その言葉に応えるように、ブレスから激しい光が放出される。

 

 

 

 

掛け声に合わせ、テイルブレスから放出された光は、伊織を包み込む。

そして、彼女の体にはアンダースーツが装着される。

そのカラーはグリーンを主体としたもの。

更にその上から、強硬なアーマーが装填される。

ただしそれは、イエローの様な遠距離武装ではなく、西洋鎧に近い。

機動性を意識してのことか、腹部まで展開されていない。

それでも、元々身体から主張されている両胸の存在感は、消せない。

両脚にも、ツインテイルズと比べ、鈍重なアーマーが装填される。

 

右腕にはテイルブレス。

左腕には、ツインテイルズが装備しているような装置が。

恐らく、属性玉変換機構(エレメリーション)を発動させるための物だろう。

全ての動作(モーション)が終了し、伊織を包み込んだ光は役目を終えたかのように消えた。

ただ、それにかかった時間は一瞬でしかなかった。

 

 

 

「……」

 

私は戸惑っている。

私はテイルブレスを持っている。

そして、それはある過程(プロセス)を行った。

ふと手を確認すれば、何やら黒いもので覆われているようである。

体のあちこちを見ると、やたら重そうなアーマーを着けている。

動く度に、音がするし。

もしかして…

 

「私、変身しちゃった!?」

 

両膝を地面に着き、うなだれる。

やっちまった…

 

「お前、何者だ!?」

 

あぁ、もう!

いつの間にか、敵さん来ちゃってるし。

いつまでも落ち込んではいられないので、立ち上がって相手の方を向いた。

 

「見れば、どのツインテイルズとも違う… まさか、新手か?」

 

そう思われるのは当然だよね。

私も、何が起こったのか分からないし。

 

「まぁ良い。立ちふさがるのが誰であろうと、容赦はしねぇ!!」

「えぇ~…」

 

もう戦闘モード、入っちゃってるし。

仕方ない、覚悟決めますか!

 

☆☆☆

 

「さぁ、新たな幕の始まりだ!」

 

アルティメギル基地の一室。

そこでは、ただ一人の鑑賞会が行われている。

 

「長かった… だが、これでようやく本当の物語が始まる…」

 

その者は笑みを浮かべる。

但しそれは、純粋なものでなく、幾らか不気味さを醸し出している。

 

「どうでる、新たな戦士よ?」

 

☆☆☆

 

「お前を倒し、首領様に献上する」

「そんなの、なってたまるか!」

 

奴の武器は、あの長い爪か。

私を切り裂かんと、右腕を大きく降り下ろした。

私は切り裂かれないように、左に回避。

ついでに相手の顎に前蹴りをする。

相手の顔が、モグラみたいに前に長いので当てやすいのだ。

 

「グゥ…」

(行ける!)

 

重そうなアーマーの割に、意外と動ける。

後ろへよろめくエレメリアン。

両腕をダラリと下げている。

無防備な腹部に、思い切りストレートを当てる。

ヒットした拳からは、確実な手応えを感じた。

 

「なるほど。こいつは、考え直す必要があるな」

 

彼はまた私に突進してくる。

しかし、右腕を上げて切り裂くような動作ではない。

手を手刀の構えにして、突きをするつもりだ。

 

「なんの!」

 

私はギリギリまで引き付け、今度は左に回避。

彼もそれを予測していたのか、私の側で止まるようにブレーキをかけていた。

空いている左手を横に振り上げる。

それに気付き、半歩前に体をずらして相手の手首を左手で捕まえる。

 

「飛んでけッ!」

 

右の回し蹴りで、エレメリアンの背中を蹴る。

くの字となった体は勢いよく、壁にぶつかった。

しばらく土煙で見えなかったけど、まだ生きている。

そしてこちらにガンつけをしてくるエレメリアンが現れた。

 

「テメエェェッ!?」

 

怒りで冷静な判断を欠いたのか。

さっきと同じように、突きを繰り出す。

後ろへ退けぞって回避する私を、突きだした手で横に切り裂こうとした。

 

「だから---」

 

体を縮め、右手に力を込める。

さっきとは違い、凄まじいものを込めて。

 

「ワンパターン過ぎるのよ!」

 

再度、腹部へのストレートを叩き込む。

今度も吹き飛ばされたエレメリアンだが、ただやられた訳では無かった。

左手の爪を私に向けた。

途端、ボウガンのように爪が撃ち出される。

その一本が私に向かってくる。

そして---

 

(…ぇ?)

 

打ち出された爪が、私のお腹に突き刺さった。

一拍の間を置いて、吐き気がしてきた。

我満できずに吐き出してみれば、その色が赤い。

 

(今、何が?)

 

意識が薄くなる。

息も荒い。

 

「ワンパターンか… 確かにそうだな。なら、今度は多彩に攻めてやるぜ!!」

 

そう言って、残りの爪を全て私に撃ち出す。

朦朧としている私が回避できる訳も無く、数本の長爪が私のそばを通り抜けていく。

 

「どうした? 威勢が良いのは、口だけか!?」

 

打ち終わった手から、新たな爪が伸びる。

まだまだ撃つつもりなのだろう。

それに対し、腹部に加えて左肩、右太ももに爪が刺さってしまった私。

 

(何とか、打開策を打たないと…)

 

動きやすくするために一度抜こうかとも考えたが、刺さった場所が場所だ。

抜けば、更に致命傷になる。

動きにくいけど、仕方ないか。

 

(先ずは、あの爪を何とかする!)

 

考えても何も起きない。

行動あるのみ、だ。

私は真っ直ぐエレメリアンへと突っ込んだ。

 

「少しは学習しろよ。俺の直接上にいると、死ぬぞ? まぁ手は狙わねぇから、安心しな」

 

また撃ちだすつもりだな。

今度は当たらないよ!

左右に移動し、爪を交わしていく。

途中かすりもしたけど、そんなの気にしていられない。

 

「ちょこまかと!」

 

手前数mまで来た時、突きの構えに入った。

やはり、この距離では撃てないのか。

左手の突きを右側斜め下に屈んで回避、無防備な左脇腹に肘打ちを繰り出す。

その後は、体を右方向に回転、右足での足払いをかける。

しかし相手もそれを分かっていたのか、前に飛び込みをすることで回避されてしまった。

その勢いで前に回転し、止まると体勢を立て直し、すぐに私に爪を向けた。

私とエレメリアンは、互いに向き合ったまましばらく動けずにいた。

 

「そういや、自己紹介が遅れたな。俺は手属性(ハンド)のモールギルディだ」

 

さっき、女性の手を褒めていたのはそのせいか。

相変わらず、エレメリアンは変態の巣窟だな。

さて、私はどう名乗ろうか…

 

「ツインテイルズの名を借りれば、私は『テイルグリーン』ね」

「なるほど、テイルグリーンか。良い名前だな」

「まだ仮の名前よ。いつまでも『お前』呼ばわりは嫌だから」

 

話している間に、脳裏にデータベースが浮かび上がる。

恐らく、このテイルギアの使用法なのだろうか。

最後にあるのは、重力砲(グラビティ・キャノン)のデータ。

名前からして、遠距離用の武器に違いない。

 

「さて、お話はここまでにしましょうか、モールギルディ!!」

 

語尾を上げると同時に、左手に力を込める。

そして、(てのひら)を彼に向けた。

 

「「!?」」

 

黒く燃えた手から、小さく黒い球が出てきた。

彼は驚きはするが、構えていた爪を撃つことで相殺した。

 

「驚きだぜ。そんなのがあるんなら、最初から出せよ!」

「いや、貴方に言われたくないから…」

 

途中まで、その『爪』を隠していたくせに。

さっきのじゃ、力負けしちゃう。

だったら、これはどうかな?

 

「オイオイ…」

 

彼に焦りが出てきた。

私は左手を高く挙げ、さっきより強い力をに込める。

手の先から、ドス黒い球が発生し、大きくなる。

 

「当たれ-!」

 

十分な大きさになったところで、全力投球。

それは真っ直ぐ彼へと向かう。

 

「チート過ぎるなぁ、オイ!?」

 

モールギルディは左手の爪を全て撃ち、黒球の撃墜にかかる。

2つは私達の中間でぶつかり、しばらく拮抗した後に爆発が起こった。

爆風と共に煙が襲ってくる。

 

(やれるはず…)

 

煙が私を包むと同時に真っ直ぐ走った。

彼もまた、煙で状況が把握できないはずだ。

 

「クソ、何処にいる?」

 

声は近い。

私は一気にそこへ向かう。

煙が薄くなり、やがて彼の姿が見えてきた。

 

「!」

 

彼は私に気付いたけど、まだ体が反応しきれていない。

お腹に刺さっている爪を掴み、抜こうとした。

だけどまるで癒着したかのように、なかなか抜けない。

それでも、私は---

 

「そこだぁッ!!」

 

無理矢理腹部の爪を左手で抜き取り、その流れで彼の右手の爪を狙った。

狙い通り、爪に当たり金属同士がぶつかった音が聞こえた。

折れたのは、親指と人差し指、中指の爪。

彼は後ろへ跳び、私から距離を取ろうとする。

 

(逃がさない)

 

距離を取られれば、私が不利なのは確実。

ならば、私が取る最善の選択は---

 

「その爪は、撃たせないよ!」

 

近接格闘(インファイト)!!

距離を詰めることで、相手に撃たせる隙を与えない。

だけど…

 

「ハッ、どうやら決定打が無いようだな!」

 

凄まじい前蹴りと共に、痛いところを喰らう。

両腕をクロスさせて防御姿勢を取るも、簡単に飛ばされてしまった。

確かに、今の私に武器は無い。

体に刺さった爪を除き、私にはこの体のみ。

 

「あばよ、テイルグリーン!!」

 

それが私が聞く、最後の言葉に聞こえた。

モールギルディは、損傷した右手の替わりに左手の全ての爪を撃つ。

吹っ飛ばされ地面に突っ伏す私には、回避する術は無い。

どうすれば…!?




ということで、『テイルグリーン(仮)』の登場です!
今後は戦闘が多くなっていきます。
上手く書ける自信がありませんが、やっていこうと思います。
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