あと、かなり長くなると思ったために、前後編に分割しました。
先日、私はテイルブレスを受け取った。
それは今、私の右手首で輝いている。
一応
その上、ちゃんと『テイル・オン』で変身もできる機能も搭載済み。
「まぁあったとしても、ツインテイルズが前線に出る可能性が高いからねぇ…これの出る幕、あるの?」
ブレスに語りかけるように、私は独り言を呟く。
アルティメギルの停戦宣言により、現在地球は平和である。
テレビのバラエティー番組も新しい情報が無いのか、ツインテイルズの過去の戦闘を振り返っている。
ただし、テイルレッドを
まぁ、たまにブルーやイエローも出る。
けれど、前者は地球を守るどころか破壊者として。
後者は危ない露出狂として、大きく紹介される始末。
(慧理那… 不憫だねぇ)
心の中で、そっと涙を流す。
「さて、今日は買い物行かないと」
「だったら、お菓子の1つでも買ってきてくれ」
「…ハァ」
テイルブレスが完成した後も、唯乃は同居人として暮らしている。
彼女も最初に比べれば、家事はある程度はできるようにはなった。
けど、食料には限りがあるため料理に関しては私が専任することにした。
「分かったわよ。辛いものがあれば、買ってくる」
「おぅ、よろしく頼むぜ」
彼女のマイブームは、辛いもの。
キムチに始まり、山葵なども気に入ったみたい。
別に好きになるのは構わないけど、食費を圧迫するのよね…
頭が痛いわ。
「それじゃ、行ってくるね」
そして、いつものように玄関のドアを開ける。
☆☆☆
アルティメギル基地。
そこではまだ、打倒テイルブルーを目標に皆邁進していた。
「だがよ、こう何枚も絵を描き続けると疲れるぜ」
そう愚痴をこぼすのはモールギルディ。
モグラのような容姿をしており、両腕には鋭い爪が装填されている。
彼の場合、その爪が描写を邪魔していることも疲労の一因であるが。
「おまけに、この惑星に駐屯してからずっと基地にいるから、退屈でしょうがねぇ!!」
彼のストレスは頂点に達しているようだ。
彼は長い爪を無茶苦茶に振り回し、空を切り裂く。
幸い、彼がいる廊下には誰もいなかった。
ただ爪が空を切り裂く音と、彼の苛立ちが響いている。
「なら、『散歩』に出掛ければ良い」
「ぅ、"怨み"様!?」
彼のそばに、幸運が舞い降りた。
彼は偶々、モールギルティが愚痴を溢しているのを聞いたのだ。
「しかし、ビートルギルディ様の命により、ゲートは現在使用不可なのでは…?」
「なぁに、僕がいつも使っている別のゲートがある。それを使って、行ってみれば? 勿論、案内はするさ」
ユウの物言いには疑問に感じたが、苛立ちを抑えられるならばとモールギルティは了承した。
彼はその言葉通り、モールギルディを連れて、廊下から姿を消した。
☆☆☆
「さてと… 豚ミンチは買った、と。後はキャベツ、この近くのスーパーね」
手に買い物袋を提げ、私は次の目的地に向かっていた。
買い物リストも半分ほど埋まった。
これなら、夕方までには帰れそう。
(そういえば、津辺さんの誕生会開くんだっけ)
前にリンから伝えられたのだ。
日時は8月8日、PM16:00からスタート。
場所は観束君の家・アドレシェンツァ。
ツインテール部は勿論、彼女のお姉さんも来るみたい。
一応唯乃も誘ってみたけど、
『そんな知らねぇ奴のパーティに行って、一体何になる!?』
と断られた。
ちなみにリンは、出席を表明した。
(ついでに、プレゼントも買っておくか。でも、どんなのにしようかな? 手頃なのはお菓子だけど、観束君の家じゃなぁ…)
そんなことを考えながら歩いていると、
「---!」
何やら声が。
それも、何かのトラブルのようだ。
それはちょうど、T字路を左に曲がったところから聞こえてくる。
(何処から…?)
感覚的には左側か。
近づくにつれ、その声は大きくなる。
「ちょっと離してください! 大声で叫びますよ?」
「なんと美しい… 貴女こそ、私の伴侶に相応しい!」
「って、聞いてない!? ちょ、ホントに誰か助けて-!!」
ぅわ、これはヤバい!
誘拐なのかは知らないけれど、これは静観できない。
とは言うものの、いきなり出るのもなぁ…
曲がり角からそっと覗こうっと。
「離してください!」
「いいや、離さぬ! 千載一遇の機会を逃さないぞ」
(へ…?)
曲がり角から少し顔を出して、状況を確認する。
そこには、信じられない光景があった。
「折角の、私好みの『手』が見つかったのだ! さぁ行かん、我らの桃源郷へ」
「いゃ~!!」
(不味いよこれ…)
てっきり、ある男性が女性を口説いていると思っていた。
だけど、まさか『エレメリアン』が女性を口説いているとは…
(って、突っ込むところはそこじゃない!)
確かアルティメギルは、6日まで停戦を宣言したはず…
何故エレメリアンが!?
(とにかく、距離を離さないと…)
ガサガサッ!!
(やっちゃったよ…)
焦りが誘ったのか、提げている買い物袋が、角に擦れてしまった。
絶対バレるよね、これ。
「誰だ!?」
音に気付き、こちらに向かってくる。
足音が大きいから、緊迫感も増す一方だし。
「あぁ、どうすれば…」
私はかなりテンパっていた。
急いで逃げないと。
でも相手がエレメリアンじゃ、すぐに追い付かれる。
「あぅぅ… 天は我を見離したか…」
現世に別れを告げるように、右手を天に掲げる。
その時、手首に着けているブレスがあることを思い出した。
(確か、変身機能が付いているんだっけ。一応声に出さずとも、心の中で呟けば良いみたいだし)
このまま立っているよりは、マシだ!
(『テイル・オン』!!)
右手をグッと握り締め、相手に気付かれないよう、心の中で叫んだ。
その言葉に応えるように、ブレスから激しい光が放出される。
掛け声に合わせ、テイルブレスから放出された光は、伊織を包み込む。
そして、彼女の体にはアンダースーツが装着される。
そのカラーはグリーンを主体としたもの。
更にその上から、強硬なアーマーが装填される。
ただしそれは、イエローの様な遠距離武装ではなく、西洋鎧に近い。
機動性を意識してのことか、腹部まで展開されていない。
それでも、元々身体から主張されている両胸の存在感は、消せない。
両脚にも、ツインテイルズと比べ、鈍重なアーマーが装填される。
右腕にはテイルブレス。
左腕には、ツインテイルズが装備しているような装置が。
恐らく、
全ての
ただ、それにかかった時間は一瞬でしかなかった。
「……」
私は戸惑っている。
私はテイルブレスを持っている。
そして、それはある
ふと手を確認すれば、何やら黒いもので覆われているようである。
体のあちこちを見ると、やたら重そうなアーマーを着けている。
動く度に、音がするし。
もしかして…
「私、変身しちゃった!?」
両膝を地面に着き、うなだれる。
やっちまった…
「お前、何者だ!?」
あぁ、もう!
いつの間にか、敵さん来ちゃってるし。
いつまでも落ち込んではいられないので、立ち上がって相手の方を向いた。
「見れば、どのツインテイルズとも違う… まさか、新手か?」
そう思われるのは当然だよね。
私も、何が起こったのか分からないし。
「まぁ良い。立ちふさがるのが誰であろうと、容赦はしねぇ!!」
「えぇ~…」
もう戦闘モード、入っちゃってるし。
仕方ない、覚悟決めますか!
☆☆☆
「さぁ、新たな幕の始まりだ!」
アルティメギル基地の一室。
そこでは、ただ一人の鑑賞会が行われている。
「長かった… だが、これでようやく本当の物語が始まる…」
その者は笑みを浮かべる。
但しそれは、純粋なものでなく、幾らか不気味さを醸し出している。
「どうでる、新たな戦士よ?」
☆☆☆
「お前を倒し、首領様に献上する」
「そんなの、なってたまるか!」
奴の武器は、あの長い爪か。
私を切り裂かんと、右腕を大きく降り下ろした。
私は切り裂かれないように、左に回避。
ついでに相手の顎に前蹴りをする。
相手の顔が、モグラみたいに前に長いので当てやすいのだ。
「グゥ…」
(行ける!)
重そうなアーマーの割に、意外と動ける。
後ろへよろめくエレメリアン。
両腕をダラリと下げている。
無防備な腹部に、思い切りストレートを当てる。
ヒットした拳からは、確実な手応えを感じた。
「なるほど。こいつは、考え直す必要があるな」
彼はまた私に突進してくる。
しかし、右腕を上げて切り裂くような動作ではない。
手を手刀の構えにして、突きをするつもりだ。
「なんの!」
私はギリギリまで引き付け、今度は左に回避。
彼もそれを予測していたのか、私の側で止まるようにブレーキをかけていた。
空いている左手を横に振り上げる。
それに気付き、半歩前に体をずらして相手の手首を左手で捕まえる。
「飛んでけッ!」
右の回し蹴りで、エレメリアンの背中を蹴る。
くの字となった体は勢いよく、壁にぶつかった。
しばらく土煙で見えなかったけど、まだ生きている。
そしてこちらにガンつけをしてくるエレメリアンが現れた。
「テメエェェッ!?」
怒りで冷静な判断を欠いたのか。
さっきと同じように、突きを繰り出す。
後ろへ退けぞって回避する私を、突きだした手で横に切り裂こうとした。
「だから---」
体を縮め、右手に力を込める。
さっきとは違い、凄まじいものを込めて。
「ワンパターン過ぎるのよ!」
再度、腹部へのストレートを叩き込む。
今度も吹き飛ばされたエレメリアンだが、ただやられた訳では無かった。
左手の爪を私に向けた。
途端、ボウガンのように爪が撃ち出される。
その一本が私に向かってくる。
そして---
(…ぇ?)
打ち出された爪が、私のお腹に突き刺さった。
一拍の間を置いて、吐き気がしてきた。
我満できずに吐き出してみれば、その色が赤い。
(今、何が?)
意識が薄くなる。
息も荒い。
「ワンパターンか… 確かにそうだな。なら、今度は多彩に攻めてやるぜ!!」
そう言って、残りの爪を全て私に撃ち出す。
朦朧としている私が回避できる訳も無く、数本の長爪が私のそばを通り抜けていく。
「どうした? 威勢が良いのは、口だけか!?」
打ち終わった手から、新たな爪が伸びる。
まだまだ撃つつもりなのだろう。
それに対し、腹部に加えて左肩、右太ももに爪が刺さってしまった私。
(何とか、打開策を打たないと…)
動きやすくするために一度抜こうかとも考えたが、刺さった場所が場所だ。
抜けば、更に致命傷になる。
動きにくいけど、仕方ないか。
(先ずは、あの爪を何とかする!)
考えても何も起きない。
行動あるのみ、だ。
私は真っ直ぐエレメリアンへと突っ込んだ。
「少しは学習しろよ。俺の直接上にいると、死ぬぞ? まぁ手は狙わねぇから、安心しな」
また撃ちだすつもりだな。
今度は当たらないよ!
左右に移動し、爪を交わしていく。
途中かすりもしたけど、そんなの気にしていられない。
「ちょこまかと!」
手前数mまで来た時、突きの構えに入った。
やはり、この距離では撃てないのか。
左手の突きを右側斜め下に屈んで回避、無防備な左脇腹に肘打ちを繰り出す。
その後は、体を右方向に回転、右足での足払いをかける。
しかし相手もそれを分かっていたのか、前に飛び込みをすることで回避されてしまった。
その勢いで前に回転し、止まると体勢を立て直し、すぐに私に爪を向けた。
私とエレメリアンは、互いに向き合ったまましばらく動けずにいた。
「そういや、自己紹介が遅れたな。俺は
さっき、女性の手を褒めていたのはそのせいか。
相変わらず、エレメリアンは変態の巣窟だな。
さて、私はどう名乗ろうか…
「ツインテイルズの名を借りれば、私は『テイルグリーン』ね」
「なるほど、テイルグリーンか。良い名前だな」
「まだ仮の名前よ。いつまでも『お前』呼ばわりは嫌だから」
話している間に、脳裏にデータベースが浮かび上がる。
恐らく、このテイルギアの使用法なのだろうか。
最後にあるのは、
名前からして、遠距離用の武器に違いない。
「さて、お話はここまでにしましょうか、モールギルディ!!」
語尾を上げると同時に、左手に力を込める。
そして、
「「!?」」
黒く燃えた手から、小さく黒い球が出てきた。
彼は驚きはするが、構えていた爪を撃つことで相殺した。
「驚きだぜ。そんなのがあるんなら、最初から出せよ!」
「いや、貴方に言われたくないから…」
途中まで、その『爪』を隠していたくせに。
さっきのじゃ、力負けしちゃう。
だったら、これはどうかな?
「オイオイ…」
彼に焦りが出てきた。
私は左手を高く挙げ、さっきより強い力をに込める。
手の先から、ドス黒い球が発生し、大きくなる。
「当たれ-!」
十分な大きさになったところで、全力投球。
それは真っ直ぐ彼へと向かう。
「チート過ぎるなぁ、オイ!?」
モールギルディは左手の爪を全て撃ち、黒球の撃墜にかかる。
2つは私達の中間でぶつかり、しばらく拮抗した後に爆発が起こった。
爆風と共に煙が襲ってくる。
(やれるはず…)
煙が私を包むと同時に真っ直ぐ走った。
彼もまた、煙で状況が把握できないはずだ。
「クソ、何処にいる?」
声は近い。
私は一気にそこへ向かう。
煙が薄くなり、やがて彼の姿が見えてきた。
「!」
彼は私に気付いたけど、まだ体が反応しきれていない。
お腹に刺さっている爪を掴み、抜こうとした。
だけどまるで癒着したかのように、なかなか抜けない。
それでも、私は---
「そこだぁッ!!」
無理矢理腹部の爪を左手で抜き取り、その流れで彼の右手の爪を狙った。
狙い通り、爪に当たり金属同士がぶつかった音が聞こえた。
折れたのは、親指と人差し指、中指の爪。
彼は後ろへ跳び、私から距離を取ろうとする。
(逃がさない)
距離を取られれば、私が不利なのは確実。
ならば、私が取る最善の選択は---
「その爪は、撃たせないよ!」
距離を詰めることで、相手に撃たせる隙を与えない。
だけど…
「ハッ、どうやら決定打が無いようだな!」
凄まじい前蹴りと共に、痛いところを喰らう。
両腕をクロスさせて防御姿勢を取るも、簡単に飛ばされてしまった。
確かに、今の私に武器は無い。
体に刺さった爪を除き、私にはこの体のみ。
「あばよ、テイルグリーン!!」
それが私が聞く、最後の言葉に聞こえた。
モールギルディは、損傷した右手の替わりに左手の全ての爪を撃つ。
吹っ飛ばされ地面に突っ伏す私には、回避する術は無い。
どうすれば…!?
ということで、『テイルグリーン(仮)』の登場です!
今後は戦闘が多くなっていきます。
上手く書ける自信がありませんが、やっていこうと思います。