Which do you love ?   作:ズケズケ

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『俺ツイ』見てます。
2話でようやくスタートみたいな感じですね。
でも、ブルーの残虐さもそろそろ放映されるのか…


Episode.32【津辺さんの誕生日】

「しっかし、ここは凄いわ~ ウチらが使ってたのとはまるで(ちゃ)うな」

「当然じゃろう。王室の茶会(ロイヤル・ティー・パーティ)の拠点は、戦艦ではないからな」

 

無機質な金属の壁ではなく、西洋風の壁紙に包まれた廊下を歩くのは、ダークグラスパーとメガ・ネ。

壁に一定間隔で置かれた、豪華な燭台と燃えているろうそく。

全体的に暗く、前に誰かがいたとしても顔は認識しにくいだろう。

そして彼女らは、先日この部隊の一員としてここに赴任してきたのだ。

 

(それにしても、"怨み"は何を考えておる? わらわ達など、彼らにとっては邪魔な存在。アルティメギルからあ追放した方がかなり楽なはずじゃ。何故、わらわ達をこの部隊に加えたのか---)

「ダークグラスパー殿」

「うひゃあっ!?」

 

彼女が考え事をしている時に、こう後ろから声をかけられては驚くのも無理はない。

彼女らしくない、間抜けな悲鳴を上げてしまった。

 

「ななな、何じゃ!?」

「あら、あんたは…?」

「御初に御目にかかります、仮面属性(マスク)のエアロゾルと申します」

 

振り向き、手を慌ててあちこちに振るダークグラスパー。

そんな彼女に対し、相棒は冷静に対応した。

そしてメガ・ネの問いに、エレメリアンは丁寧に答えた。

全身をダークブルーのローブに包み、顔にガスマスクを着けた、何とも奇妙なエレメリアン。

仮面属性(マスク)ゆえなのか、両頬の部分にフィルターをつけたガスマスクを着けているために、表情は全く分からない。

もっとも、エレメリアンが表情を変えることは無いが。

全身から出る雰囲気からして、猛者であることは間違いない。

 

「何用じゃ?」

「御多忙の"怨み"殿の替わりに、私が貴女方のサポートをさせていただきます。尚、貴女方は我々の一員となった以上、勝手な行動は控えさせてもらいます」

(気に食わん奴…)

 

ダークグラスパーの心の中では、彼の評価は少し下がってしまった。

彼女も解っているのに、態々言葉にするなど、嫌味が混じっている。

 

「それでは」

 

そう言ってエアロゾルは、地面に吸い込まれるように消えた。

消えた後の地面には、そこにいた証拠は残されていなかった。

 

「ここは変わり者の巣窟やけど、なんか嫌な気分やね」

「まだ他の部隊の方が、幾分かマシだったやもしれぬな」

 

頬を軽く掻きながら本音を話すメガ・ネに、ダークグラスパーは賛同した。

そして、先の暗い廊下へと2人は消えていった。

 

☆☆☆

 

『津辺さん、誕生日おめでとう!!』

 

8月8日。

観束君の実家・アドレシェンツァにて、津辺さんの誕生日パーティーが行われた。

参加者は主役の津辺さんを始め、観束君、エリナ、桜川先生、トゥアールさん、リン、店主の未春さん、そして…

 

「何でこの店の常連さんまでいるのよ~!」

 

津辺さんがそう叫ぶように、何故かここのお客様まで祝ってくれるのだ。

 

「いいじゃありませんか、愛香さんの数少ない晴れ舞台なんですから。どうせなら、大勢で祝ってもらいましょうよ」

「そうだけど…」

 

トゥアールさんの正論に、津辺さんはしぼんでしまった。

パーティーこそ、私も盛り上がりたいし。

 

「ぁ、やっぱり駄目じゃないですか! 愛香さんの貧乳が大勢に曝されてしまいますね」

「無駄な脂肪を付けてるアンタには、言われたくないわ!!」

 

既にテイルブルーとして、その貧乳は人目に曝されているけれど…

相変わらず津辺さんとトゥアールさんは仲が良いな。

 

「伊織さん、だったかしら? 妹のパーティーは楽しんでる?」

「えぇ、こんなイベントは久し振りです」

 

私に声をかけたのは、津辺さんの姉・恋香さん。

確か、陽月学園大学部の2年だっけ。

こう言ったら津辺さんに失礼だけど、本当に正反対だなぁと思う。

性格は穏やかだし、美人だし、巨乳だし…

同性の私から見ても、かなり羨ましい。

 

「何か言った?」

(地獄耳かっ!?)

 

心の中で呟いていたのに、津辺さんに聞かれたのか。

報復が恐ろしいし、何より彼女の記念日をぶち壊すわけにはいかないので、争い事は避けねば…

そう思った私は、必死で首を横に振り、否定した。

 

「伊織さん、折り入って貴女にお願いがあるの」

「…はぁ」

 

そんな愛香さんから、お願いとは。

ツインテール部はおろか、妹さんにすら言えないことかな?

 

「もしもの時は、貴女が総二くんを護ってね」

「えっ!?」

 

何で私?

もっと適任者がいるのに、分からない。

 

「う~ん… あの娘達も頼りにしてるけど、がっつき過ぎるって言うか… 気持ちが空回りしそうなのよ。だから、第三者的存在な人が良いと思ったの」

「あぁ…」

 

なるほど、確かに彼女達では安心はできないだろう。

おまけに、観束君が朴念仁というかツインテール馬鹿なので、彼女達の好意すら気付いていない。

気付かせるために、彼女達は更なるアピール…

以下、無限ループ。

側にいる私ですら、恐ろしいもの。

 

「恋人になるには、一過性では駄目なの。彼が本当に好きなら、無理矢理じゃなくて自然に振り向かせなきゃ」

「それ、当人達に言ってもらえません…?」

 

ちょっと離れた場所にいますし…

何故こうも、こそこそコソコソ話さなきゃいけないの?

 

「貴女も、愛香達ほどじゃないけど、匂うわ」

「!?」

 

何ですと…

まさか、貴女はラブ臭を感知できると!?

 

「だからこそ… 頑張ってね」

 

私に爆弾放り込んどいて、当人は涼しい顔ですか…

彼女はなに食わぬ顔でパーティーに戻っていった。

私の心の中では、怒りに燃えていた。

 

「トゥアールファイアー!!」

 

テーブルにはもうろうそくが付けられた特大ケーキが置かれている。

観束君が点火役になっていたが、トゥアールさんが何やら手品で一斉に付けてくれたのだ。

その見事な手品に常連客も拍手を彼女に送る。

 

「何やっとるんや? 早くせんと、メインイベントが始まっってまうで」

「わぁぁ、ちょっと待って---」

 

リンの呼び掛けで、ハッと気付いた。

私が急いで向かおうとしたら、津辺さんがバースデーソングの途中でろうそくの火を消した。

凄まじいまでの肺活量を持っているのか、一気にろうそくの火が消えた。

ただ、その直線上には私がいたわけで---

 

「…」

『…』

 

皆のところへ向かおうとしている私を、強風が襲った。

津辺さんの強烈な息によって、髪型がボサボサに崩れてしまった。

呆然と立ち尽くす私。

そして、そんな私をかわいそうな顔で見るパーティー参加者。

 

「…すみません」

 

静まり返る店内に、観束君の謝罪はよく通った。

いや、貴方は悪くないから。

 

 

 

 

「本当にすみません!!」

「別にいいわよ。慌てていた私も悪かったんだし」

 

津辺さんが頭を下げ、必死で無礼を詫びる。

それを私は優しく受け取った。

あの硬直後、皆が私を心配しに集まった。

特に、観束君が心配してはくれたのだが、

 

「先輩の髪は痛んでいませんか?」

 

「私より髪の心配かよ!?」と思わず突っ込みそうになった。

ツインテール馬鹿だとは、初めて会った時から知っているけれど、私自信を心配してくれないなんて…

正直、かなりショックだった。

 

「それよか、プレゼントは?」

「おぉ、そうだ。彼女に相応しいものを渡さねば---」

「私もだ。さて、どこに置いたかな---」

 

そのリンの何気ない一言が、皆を我に変えさせてくれた。

あのまま気まずい状況だったら不味かった。

本当に助かった。

 

「俺も渡さなきゃな。ほれ」

「何よ、これ…?」

 

観束君が手渡したのは、小さな紙袋。

不思議に思いつつも、津辺さんは促されるままに開けてみる。

 

「これって---」

「お前のツインテールは綺麗だからな。それを高めるのも、俺の仕事だと思ってな」

 

入っていたのは、ライトブルーのシュシュ。

なるほど、確かに似合いそうね。

 

「ありがとう、総二」

「おう」

 

2人の間に、和やかな雰囲気が生まれた。

逆に、私の隣ではかなりの邪気を感じる…

 

「貴女にピッタリなプレゼントを用意しましたよ!!」

 

そう自信ありげにトゥアールが津辺さんに近付いた。

白衣のポケットに手を入れ、何かを探しているみたい。

やがて、彼女が取り出したのは、

 

「…」

 

ブラジャーだった。

しかも、事前に彼女のサイズを知っていたのか、やたらと薄い。

サイズはAA、かな。

 

「これで、貴女のバストにも磨きがかかりますよ♪」

「あんたは、私を卑下するのかぁ!?」

 

うん、予想通り津辺さんがキレた。

いつものことね。

 

 

 

 

「私からも、これを」

 

私からもプレゼントしなくちゃね。

そう言って、鞄からプレゼントを取り出した。

 

「滅茶苦茶カワイイ~」

 

それはフェルトでできた、兎のぬいぐるみ。

出来がイマイチだったので、もし嫌われたらどうしようかと考えていた。

だけど、かなり気に入ってくれたので有り難かった。

 

「先輩、私大事にしますから」

「良かった」

 

ところで、いつそんな物を作る時間があったかって?

それはね---

 

☆☆☆

 

初勝利した翌日。

流石に体へのダメージがきたのか、ベッドから降りれずにいた。

普段あまり運動しないので、筋肉痛だろう。

だからといって、何もせずに過ごすのもなぁ…

 

「---よし!!」

 

私は暇潰しに、ある事をしようと決めた。

 

「何をやっとるんや?」

「暇だからねぇ…」

 

私は図書館で借りた作り方の本を参考に、ぬいぐるみを作っている。

裁縫は時々するけれど、ここまで真剣にするのは初めてかもしれない。

 

「ここまで真面目ちゃんやと、苦労するわ」

「まったく、めんどくさいぜ」

 

そこにタイミングを合わせるように医務室の扉が開く。現れたのは唯乃だ。

 

「ほらよ、不足してた布と脱脂綿だ」

「ありがとう」

 

彼女はぶしつけに、袋を私につき出す。

袋の中身を確認すると、ちゃんと指定した物を買ってきている。

 

「唯乃に買い出しさせとったんか」

「今日1日は、安静にしないとね。どうせ、私の家でゴロゴロしているならと思って」

「伊織、容赦ねぇな…」

 

唯乃が悲しい顔をするが、無視した。

私が目覚めた後、私の家の写真をリンが見せてくれたが…

人間、あそこまで部屋を汚くできるんだな、と返って感心したものだ。

 

「で、何やそれ? 兎か?」

「えぇ。だけど、耳の部分が難しいのよね」

 

兎の耳はなるべく端を縫わないと、後で脱脂綿が上手く入らない。

きっちりと縫わなければ---

 

「後でミシンでも使うんか?」

「えっ、何で…」

「さっきから、波縫いでしとるから、そう思ってな」

 

言われて、初めて気付いた。

これじゃあ、糸の緩みにもなってしまう。

 

「本返し縫いは?」

「できるけど、時間が…」

 

何を作るのか決めてから、かなり時間が経ってしまっている。

下手すると、徹夜は避けられないかも…

 

「しゃあない、ウチも手伝ったるわ」

「…良いの?」

 

彼女も色々と忙しいと思う。

…何をしているかは、知らないけど。

 

「ウチがプレゼント渡すのに、アンタが渡さんわけにはいかんやろ」

「リン…」

 

今日ほど、リンが頼もしく思えた事は無かった。

私は彼女の手を、優しく握った。

 

「一緒に作ろう!」

「おぅ!」

 

これで、間に合う!!

今から急ピッチで作業しなくちゃ。

 

「なぁ、俺様も一緒に作って---」

「「貴女(アンタ)は駄目よ(や)!!」」

「息を揃えて言うなよ…(涙)」

 

リンと唯乃のおかげで、何とかぬいぐるみは完成できた。

縫う間隔は均等、かつ緻密に縫わないといけないが、リンもかなり裁縫が得意みたい。

私より早く本返し縫いを行っていたのを横目で見て、私はかなり驚いた。

 

「結局、俺様は買い出し係かよ…」

「唯乃の不器用さは、私がよく知っているからね」

 

買い出し係とは言っても、既に必要な物は揃っているため、彼女はハンドメイド雑誌を退屈しのぎに読んでいる。

雰囲気は緩やかに、しかし手元は高速で作業していく。

こうして、ぬいぐるみ作製は進んでいった。

 

☆☆☆

 

「これって、もしかして手作りですか?」

「リンも手伝ってくれたけどね」

 

一応、唯乃のことは伏せておいた。

彼女に強く言われたからだ。

 

「大変じゃなかったですか?」

「裁縫自体、久し振りだったからね。苦労したわ」

 

なるべく見えないようにしているが、指に絆創膏を付けている。

不器用なりに頑張った、勲章だ。

 

「あの… 今度、ぬいぐるみの作り方を教えてくれませんか? 先輩の誕生日の、プレゼントにしたいんです」

 

貰った兎のぬいぐるみ優しくを抱きしめながら、そうお願いされた。

そう言ってくれると、作った私も嬉しい。

 

「…良いよ」

「ありがとうございます!!」

 

そう決まると、周りから拍手が。

その後、誕生日パーティーは滞りなく進み、無事に終わることができた。

 

 

 

 

帰り道。

右手に土産のクッキーの袋を持ち、伊織が喜びながら歩くのを、リンは眺めていた。

しかし、その顔は険しいものであった。

 

(気付いていないんやな)

 

彼女が何を考えているかなど、伊織は当然知らない。

 

(ポニーテールとツインテールは共存すれど、相容れない存在。この先、伊織だけに任せるわけにはいかへんな…)

 

何かを覚悟したかのように、拳を握り締める。

 

「リン、遅いよ?」

「あぁ、スマン…」

 

慌ててリンは伊織に追い付く。

その後は他愛ない会話をした後、途中で別れることにした。




誕生日…
そういえば去年、私は何も貰っていない。
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