2話でようやくスタートみたいな感じですね。
でも、ブルーの残虐さもそろそろ放映されるのか…
「しっかし、ここは凄いわ~ ウチらが使ってたのとはまるで
「当然じゃろう。
無機質な金属の壁ではなく、西洋風の壁紙に包まれた廊下を歩くのは、ダークグラスパーとメガ・ネ。
壁に一定間隔で置かれた、豪華な燭台と燃えているろうそく。
全体的に暗く、前に誰かがいたとしても顔は認識しにくいだろう。
そして彼女らは、先日この部隊の一員としてここに赴任してきたのだ。
(それにしても、"怨み"は何を考えておる? わらわ達など、彼らにとっては邪魔な存在。アルティメギルからあ追放した方がかなり楽なはずじゃ。何故、わらわ達をこの部隊に加えたのか---)
「ダークグラスパー殿」
「うひゃあっ!?」
彼女が考え事をしている時に、こう後ろから声をかけられては驚くのも無理はない。
彼女らしくない、間抜けな悲鳴を上げてしまった。
「ななな、何じゃ!?」
「あら、あんたは…?」
「御初に御目にかかります、
振り向き、手を慌ててあちこちに振るダークグラスパー。
そんな彼女に対し、相棒は冷静に対応した。
そしてメガ・ネの問いに、エレメリアンは丁寧に答えた。
全身をダークブルーのローブに包み、顔にガスマスクを着けた、何とも奇妙なエレメリアン。
もっとも、エレメリアンが表情を変えることは無いが。
全身から出る雰囲気からして、猛者であることは間違いない。
「何用じゃ?」
「御多忙の"怨み"殿の替わりに、私が貴女方のサポートをさせていただきます。尚、貴女方は我々の一員となった以上、勝手な行動は控えさせてもらいます」
(気に食わん奴…)
ダークグラスパーの心の中では、彼の評価は少し下がってしまった。
彼女も解っているのに、態々言葉にするなど、嫌味が混じっている。
「それでは」
そう言ってエアロゾルは、地面に吸い込まれるように消えた。
消えた後の地面には、そこにいた証拠は残されていなかった。
「ここは変わり者の巣窟やけど、なんか嫌な気分やね」
「まだ他の部隊の方が、幾分かマシだったやもしれぬな」
頬を軽く掻きながら本音を話すメガ・ネに、ダークグラスパーは賛同した。
そして、先の暗い廊下へと2人は消えていった。
☆☆☆
『津辺さん、誕生日おめでとう!!』
8月8日。
観束君の実家・アドレシェンツァにて、津辺さんの誕生日パーティーが行われた。
参加者は主役の津辺さんを始め、観束君、エリナ、桜川先生、トゥアールさん、リン、店主の未春さん、そして…
「何でこの店の常連さんまでいるのよ~!」
津辺さんがそう叫ぶように、何故かここのお客様まで祝ってくれるのだ。
「いいじゃありませんか、愛香さんの数少ない晴れ舞台なんですから。どうせなら、大勢で祝ってもらいましょうよ」
「そうだけど…」
トゥアールさんの正論に、津辺さんはしぼんでしまった。
パーティーこそ、私も盛り上がりたいし。
「ぁ、やっぱり駄目じゃないですか! 愛香さんの貧乳が大勢に曝されてしまいますね」
「無駄な脂肪を付けてるアンタには、言われたくないわ!!」
既にテイルブルーとして、その貧乳は人目に曝されているけれど…
相変わらず津辺さんとトゥアールさんは仲が良いな。
「伊織さん、だったかしら? 妹のパーティーは楽しんでる?」
「えぇ、こんなイベントは久し振りです」
私に声をかけたのは、津辺さんの姉・恋香さん。
確か、陽月学園大学部の2年だっけ。
こう言ったら津辺さんに失礼だけど、本当に正反対だなぁと思う。
性格は穏やかだし、美人だし、巨乳だし…
同性の私から見ても、かなり羨ましい。
「何か言った?」
(地獄耳かっ!?)
心の中で呟いていたのに、津辺さんに聞かれたのか。
報復が恐ろしいし、何より彼女の記念日をぶち壊すわけにはいかないので、争い事は避けねば…
そう思った私は、必死で首を横に振り、否定した。
「伊織さん、折り入って貴女にお願いがあるの」
「…はぁ」
そんな愛香さんから、お願いとは。
ツインテール部はおろか、妹さんにすら言えないことかな?
「もしもの時は、貴女が総二くんを護ってね」
「えっ!?」
何で私?
もっと適任者がいるのに、分からない。
「う~ん… あの娘達も頼りにしてるけど、がっつき過ぎるって言うか… 気持ちが空回りしそうなのよ。だから、第三者的存在な人が良いと思ったの」
「あぁ…」
なるほど、確かに彼女達では安心はできないだろう。
おまけに、観束君が朴念仁というかツインテール馬鹿なので、彼女達の好意すら気付いていない。
気付かせるために、彼女達は更なるアピール…
以下、無限ループ。
側にいる私ですら、恐ろしいもの。
「恋人になるには、一過性では駄目なの。彼が本当に好きなら、無理矢理じゃなくて自然に振り向かせなきゃ」
「それ、当人達に言ってもらえません…?」
ちょっと離れた場所にいますし…
何故こうも、こそこそコソコソ話さなきゃいけないの?
「貴女も、愛香達ほどじゃないけど、匂うわ」
「!?」
何ですと…
まさか、貴女はラブ臭を感知できると!?
「だからこそ… 頑張ってね」
私に爆弾放り込んどいて、当人は涼しい顔ですか…
彼女はなに食わぬ顔でパーティーに戻っていった。
私の心の中では、怒りに燃えていた。
「トゥアールファイアー!!」
テーブルにはもうろうそくが付けられた特大ケーキが置かれている。
観束君が点火役になっていたが、トゥアールさんが何やら手品で一斉に付けてくれたのだ。
その見事な手品に常連客も拍手を彼女に送る。
「何やっとるんや? 早くせんと、メインイベントが始まっってまうで」
「わぁぁ、ちょっと待って---」
リンの呼び掛けで、ハッと気付いた。
私が急いで向かおうとしたら、津辺さんがバースデーソングの途中でろうそくの火を消した。
凄まじいまでの肺活量を持っているのか、一気にろうそくの火が消えた。
ただ、その直線上には私がいたわけで---
「…」
『…』
皆のところへ向かおうとしている私を、強風が襲った。
津辺さんの強烈な息によって、髪型がボサボサに崩れてしまった。
呆然と立ち尽くす私。
そして、そんな私をかわいそうな顔で見るパーティー参加者。
「…すみません」
静まり返る店内に、観束君の謝罪はよく通った。
いや、貴方は悪くないから。
「本当にすみません!!」
「別にいいわよ。慌てていた私も悪かったんだし」
津辺さんが頭を下げ、必死で無礼を詫びる。
それを私は優しく受け取った。
あの硬直後、皆が私を心配しに集まった。
特に、観束君が心配してはくれたのだが、
「先輩の髪は痛んでいませんか?」
「私より髪の心配かよ!?」と思わず突っ込みそうになった。
ツインテール馬鹿だとは、初めて会った時から知っているけれど、私自信を心配してくれないなんて…
正直、かなりショックだった。
「それよか、プレゼントは?」
「おぉ、そうだ。彼女に相応しいものを渡さねば---」
「私もだ。さて、どこに置いたかな---」
そのリンの何気ない一言が、皆を我に変えさせてくれた。
あのまま気まずい状況だったら不味かった。
本当に助かった。
「俺も渡さなきゃな。ほれ」
「何よ、これ…?」
観束君が手渡したのは、小さな紙袋。
不思議に思いつつも、津辺さんは促されるままに開けてみる。
「これって---」
「お前のツインテールは綺麗だからな。それを高めるのも、俺の仕事だと思ってな」
入っていたのは、ライトブルーのシュシュ。
なるほど、確かに似合いそうね。
「ありがとう、総二」
「おう」
2人の間に、和やかな雰囲気が生まれた。
逆に、私の隣ではかなりの邪気を感じる…
「貴女にピッタリなプレゼントを用意しましたよ!!」
そう自信ありげにトゥアールが津辺さんに近付いた。
白衣のポケットに手を入れ、何かを探しているみたい。
やがて、彼女が取り出したのは、
「…」
ブラジャーだった。
しかも、事前に彼女のサイズを知っていたのか、やたらと薄い。
サイズはAA、かな。
「これで、貴女のバストにも磨きがかかりますよ♪」
「あんたは、私を卑下するのかぁ!?」
うん、予想通り津辺さんがキレた。
いつものことね。
「私からも、これを」
私からもプレゼントしなくちゃね。
そう言って、鞄からプレゼントを取り出した。
「滅茶苦茶カワイイ~」
それはフェルトでできた、兎のぬいぐるみ。
出来がイマイチだったので、もし嫌われたらどうしようかと考えていた。
だけど、かなり気に入ってくれたので有り難かった。
「先輩、私大事にしますから」
「良かった」
ところで、いつそんな物を作る時間があったかって?
それはね---
☆☆☆
初勝利した翌日。
流石に体へのダメージがきたのか、ベッドから降りれずにいた。
普段あまり運動しないので、筋肉痛だろう。
だからといって、何もせずに過ごすのもなぁ…
「---よし!!」
私は暇潰しに、ある事をしようと決めた。
「何をやっとるんや?」
「暇だからねぇ…」
私は図書館で借りた作り方の本を参考に、ぬいぐるみを作っている。
裁縫は時々するけれど、ここまで真剣にするのは初めてかもしれない。
「ここまで真面目ちゃんやと、苦労するわ」
「まったく、めんどくさいぜ」
そこにタイミングを合わせるように医務室の扉が開く。現れたのは唯乃だ。
「ほらよ、不足してた布と脱脂綿だ」
「ありがとう」
彼女はぶしつけに、袋を私につき出す。
袋の中身を確認すると、ちゃんと指定した物を買ってきている。
「唯乃に買い出しさせとったんか」
「今日1日は、安静にしないとね。どうせ、私の家でゴロゴロしているならと思って」
「伊織、容赦ねぇな…」
唯乃が悲しい顔をするが、無視した。
私が目覚めた後、私の家の写真をリンが見せてくれたが…
人間、あそこまで部屋を汚くできるんだな、と返って感心したものだ。
「で、何やそれ? 兎か?」
「えぇ。だけど、耳の部分が難しいのよね」
兎の耳はなるべく端を縫わないと、後で脱脂綿が上手く入らない。
きっちりと縫わなければ---
「後でミシンでも使うんか?」
「えっ、何で…」
「さっきから、波縫いでしとるから、そう思ってな」
言われて、初めて気付いた。
これじゃあ、糸の緩みにもなってしまう。
「本返し縫いは?」
「できるけど、時間が…」
何を作るのか決めてから、かなり時間が経ってしまっている。
下手すると、徹夜は避けられないかも…
「しゃあない、ウチも手伝ったるわ」
「…良いの?」
彼女も色々と忙しいと思う。
…何をしているかは、知らないけど。
「ウチがプレゼント渡すのに、アンタが渡さんわけにはいかんやろ」
「リン…」
今日ほど、リンが頼もしく思えた事は無かった。
私は彼女の手を、優しく握った。
「一緒に作ろう!」
「おぅ!」
これで、間に合う!!
今から急ピッチで作業しなくちゃ。
「なぁ、俺様も一緒に作って---」
「「貴女(アンタ)は駄目よ(や)!!」」
「息を揃えて言うなよ…(涙)」
リンと唯乃のおかげで、何とかぬいぐるみは完成できた。
縫う間隔は均等、かつ緻密に縫わないといけないが、リンもかなり裁縫が得意みたい。
私より早く本返し縫いを行っていたのを横目で見て、私はかなり驚いた。
「結局、俺様は買い出し係かよ…」
「唯乃の不器用さは、私がよく知っているからね」
買い出し係とは言っても、既に必要な物は揃っているため、彼女はハンドメイド雑誌を退屈しのぎに読んでいる。
雰囲気は緩やかに、しかし手元は高速で作業していく。
こうして、ぬいぐるみ作製は進んでいった。
☆☆☆
「これって、もしかして手作りですか?」
「リンも手伝ってくれたけどね」
一応、唯乃のことは伏せておいた。
彼女に強く言われたからだ。
「大変じゃなかったですか?」
「裁縫自体、久し振りだったからね。苦労したわ」
なるべく見えないようにしているが、指に絆創膏を付けている。
不器用なりに頑張った、勲章だ。
「あの… 今度、ぬいぐるみの作り方を教えてくれませんか? 先輩の誕生日の、プレゼントにしたいんです」
貰った兎のぬいぐるみ優しくを抱きしめながら、そうお願いされた。
そう言ってくれると、作った私も嬉しい。
「…良いよ」
「ありがとうございます!!」
そう決まると、周りから拍手が。
その後、誕生日パーティーは滞りなく進み、無事に終わることができた。
帰り道。
右手に土産のクッキーの袋を持ち、伊織が喜びながら歩くのを、リンは眺めていた。
しかし、その顔は険しいものであった。
(気付いていないんやな)
彼女が何を考えているかなど、伊織は当然知らない。
(ポニーテールとツインテールは共存すれど、相容れない存在。この先、伊織だけに任せるわけにはいかへんな…)
何かを覚悟したかのように、拳を握り締める。
「リン、遅いよ?」
「あぁ、スマン…」
慌ててリンは伊織に追い付く。
その後は他愛ない会話をした後、途中で別れることにした。
誕生日…
そういえば去年、私は何も貰っていない。