アルティメギル基地。
ここではいよいよ修行も終わりへと近付いている。
元々、打倒テイルブルーを目標とし、皆邁進していた。
しかし、何処で間違えたのか…
時が経つ毎に内容が変わり、共に目的を見失いつつあった。
「4Pの集中線はどうすれば良いか!?」
「シュビビッとすれば良かろう」
ビートルギルディの監視の下、混成部隊は同人誌作製に勤しんでいた。
見れば、そのどれもがテイルレッドばかり。
「本末転倒だろ、これ…」
陰から様子を窺っている"怨み"は、違和感しか感じなかった。
片手を顔に着け、酷くなる頭痛を抑える。
「皆が恐怖心を克服したのは
「"怨み"様…」
一人静かに悩む姿に、スワンギルディが問いかける。
彼は隊から離れているため、この様な同人誌作製に関わっていないのだ。
「スワンギルディ… 僕が見ているのは現実か?」
「恐れながら、現実です」
「あぁ… これなら、本拠地に戻った方がマシだ」
頭を抱え発狂するユウに、スワンギルディは何も言えなかった。
その間にも同人誌は、驚異的ハイペースで作製されていく。
もうあの場には、誰もが有無を言わさぬ絶対の領域に既に化していたのだ。
☆☆☆
「…で」
私はかなり不機嫌である。
本来ならば、私は観束君達とコミケにいるはずだ。
なのに---
「どうして、オープンキャンパスに行かなきゃいけないのよ!?」
私は某大学のオープンキャンパスに参加することになったのだ。
あぁ、コミケが…
「しゃあないやろ。オープンキャンパスに参加して、それについてのレポートを書かなアカンのやから」
「分かってるけどさぁ…」
何の陰謀か、テキストの課題より面倒な物を私達はしなければならないのだ。
私だって高校生だし、進路について考えなければならない。
オープンキャンパスも、夏にしか行わないところも多い。
それに大学は、外側だけでは不明点が多いから、実際に体験しなければならない。
「だからって、最低6大学以上参加しろは酷いよ…」
「それは、ウチも思うわ」
なにしろ、ハードルが高過ぎる。
この事について、夏休み前に大ブーイングが起こったぐらいだし。
基本的に大学部に進学する陽月学園の生徒にとって、本当に酷い出来事であった。
「私だって暇じゃないのに」
そう溜め息混じりに呟いた。
私達がいる大講義室には、大勢の参加者がいる。
制服姿の者がいれば、私服と様々である。
ちなみに、私は私服にした。
七分丈のパンツに、ピンクのシャツとかなりラフな格好だけど、暑い天気にはちょうど良い。
ふと目線を変えれば、前にある巨大スクリーンにはこう書かれている。
『〇〇大学オープンキャンパスにお越しの皆様。コミケ〇日目なのに御苦労様です』
正直、腹が立つ。
こんな事書かれるくらいなら、バックれたい。
「---ねぇ、もう帰っていい?」
「そろそろ始まるけどな」
どうやら、私に『帰る』という選択肢は無いらしい。
なんと鬼畜な。
☆☆☆
ビートルギルディの指示により、2体のエレメリアンが地球へ向かった。
皆々、あの過酷な修行を乗り越えてきた。
だからこそ、残った者は皆敬礼で送った。
打倒テイルブルーを願って。
そして、皆の汗と血の結晶である同人誌の完売も願う。
(…)
しかし、盟友の中に釈然としない者がいた。
凶暴な眼差しに鋭い爪、更に極限まで鍛え上げた筋肉。
その体から放たれる威圧感は、何者も黙らせてしまう。
彼の名は、ライオギルディ。
先日行方不明となったモールギルディは、彼の数少ない友である。
(何故、今日まで姿を見せぬのだ…?)
如何に数が多くとも、この部隊を管理するビートルギルティや参謀のスパロウギルティは気付くはず。
彼らに聞いてみるも、「知らない」の一点張りであった。
「どうした、浮かない顔をして」
「スワンギルディ…」
彼に声をかけるのは、隊を離れ一人修行を続けているスワンギルディである。
同じ孤独を持つ者同士、何かを感じ取ったのであろう。
「モールギルディの姿が見えぬのが、少々気になってな」
「私も見てはいないな…」
やはり、彼は必要時以外部屋から出ないせいか、知らなかったようだ。
「そういえば、ダークグラスパー様も最近は見てはいない」
「ふむ… 何か緊急の任務では?」
「そうであれば良いが…」
彼は不安げに歯に力を込める。
彼女によってデコレーションされた携帯電話が握り潰されそうなほどに。
幾ら人気が無かろうと、不器用にエレメリアンに接してきたダークグラスパー。
その上、彼女とメールをやり取りしてきたスワンギルディにとって、心配でならないのだろう。
「何をしている!?
突如、2人に怒号がかけられた。
彼らを探していたと思われるエレメリアンから、命令を受ける。
モールギルディの事は気になるが、会議室へと向かう2人であった。
☆☆☆
説明会も終了し、時間は13:12。
昼御飯にはちょうどいい時間ね。
「やっほ-ぃ、食券GET!!」
「お前の欲求は、その程度かいな…」
リンが呆れたように言うが、一人暮らしにとっては有難いのだ。
日々御飯の事を考えれば、タダで食べられる以上の喜びはないのに。
「リンだって、助かるでしょ? それとも、使わないつもり!?」
「いや、使うけどなぁ…」
やっぱりリンも欲しいじゃないの。
人間、素直が一番ですよ?
「てなわけで…おばちゃん、カレーライス!」
「あいよ、ちょっと待っててね」
私は定員に注文を告げ、ワクワクしながら待つことにする。
今日はかなり熱いけど、カレーライスは外せないっ!
「ハイテンションやな…」
「リンが落ち着き過ぎだけだよ♪」
「待ってました-!」
「はしゃぎ過ぎやって…」
注文したカレーライスが完成し、今私の目の前にある。
リンは冷やし中華を注文していた。
付属しているスプーンをコップの水につけ、お米がくっつかないようにする。
そして、コップからスプーンを取り出し、狙いをカレーライスに向ける。
「さて、お味は---」
私がスプーンをカレーライスにつけようとしたら、突如空から何かが飛来した。
それは広場の中心部に着弾し、衝撃と爆風が周りを襲った。
何も知らない一般人も多くいたため、幾人かはそれに巻き込まれてしまう。
やがてそれは、私達がいるテーブルにまで押し寄せてきた。
「むわぁっぷ!?」
「あぁ…」
衝撃により生じた爆風がカレーライスを吹き飛ばした。
それは空中で何回転もする。
やがてそれは地面に差し掛かり---
カシャン…
皿が割れた。
カレーライスも地面にこぼされた。
これでは、食べられないではないか…
この時、私の中で何かが切れた音がした。
「あの…伊織…?」
「私のカレーライス、返せ---!!」
私は来訪者に違う部分で怒りを感じていた。
そして、エレメリアンが現れたと思われる場所に急行した。
☆☆☆
「やるではないか」
「いいぞ、そこだ-!」
会議室にて、2体の雄姿がスクリーンスクリーン大きく映し出されていた。
シケーダギルディとモスキートギルディ。
彼等の戦い方は、格段に変化していた。
それにより、圧倒的な力でねじ伏せていたブルーは翻弄されている。
「モケ-」
「何、別の場所にエレメリアン反応が! それも未確認だと!?」
この報告に、部隊は混乱する。
未確認のエレメリアン。
それは本来、報告される内容ではない。
「現地にいる戦闘員を2,3名、そちらに向かわせよ! 直ちに解明するのだ!!」
「モケケ-ッ!!」
ビートルギルティの指示の下、戦闘員は速やかに行動に移る。
この惑星には、まだまだ想定外の事が起こる。
その事実に、彼は深く考え込んでいた。
☆☆☆
ようやく落下点に到着した。
周りには、衝撃により怪我をした人が多数いる。
(酷い…)
そして、ただ一人立っていながら、異彩を放っているのは---
「遂ニタドリツイタ…」
白いエレメリアンだった。
顔は馬面だが、額から角が出ている。
全身を西洋式の甲冑に纏われている。
そして右腕にはスピアーを装備。
「我ガ仲間ノ下ニ…!」
スピアーを地面に突き刺し、クツクツと笑う。
話す言葉もたどたどしいし。
まるで、習いたての言葉を使う外国人みたい。
『伊織、奴の周りにはまだ沢山の人がおる。何とかせんと、不味いで!』
「分かってる!!」
リンが通信で注意をしてくれた。
やはり、あれは只者ではないかもしれない。
そのためにも、私が囮になるしかないか。
「テイル・オン」
私は物陰に隠れ、テイルギアを起動した。
前の戦闘でだいぶ損傷したアーマーだが、自動修復機能があるのか、キズが見当たらない。
これなら大丈夫そうだ。
「サテ、ドコニイル---」
「待ちなさい!」
彼に聞こえるよう、大声でかける。
予想通り、彼は私に顔を向ける。
「ナンダ、小娘」
「私と遊ばないかしら?」
「遊ブ…?」
エレメリアンは地面に突き刺したスピアーを引き抜く。
彼は私の方に、ゆっくりと向かってきた。
(よし…!)
このまま、私だけを見てくれれば…
しかし、そう思うようにいかないのが現実。
這いつくばりながらも逃げようとする一般人に、エレメリアンが気付いた。
「待テ」
彼は左手を一般人に向けると、電撃を放出した。
それは容赦なく彼女を襲った。
襲われた彼女は、再び意識を失った。
『「なっ…!?」』
私とリンは目の前の光景を疑った。
確かアルティメギルは、人間を尊重する組織。
どんな理由があろうとも、人間を傷つける真似はしないはず。
「聞ケ、人間ドモ。コレヨリ、我ト彼女ノ殺シ合イヲ行ウ。観客ドモハ、決シテ逃ゲルナ。サモナクバ、コノ女ノ様二ナルゾ…?」
それはもう、脅迫でしかなかった。
まだ左手からは、電気が発生している。
狙おうとすればいつでもできる、と言うことだろう。
「ちっ…」
「サァ、始メルゾ」
スピアーを私に向けるエレメリアン。
お互いの間は約15m。
武器を考えれば、一瞬で攻撃できる距離ではある。
私は覚悟を決め、ハンマーを取り出した。
「フンッ!!」
やはり、スピアーを構えての突貫か。
モールギルティの経験もあり、簡単に予測できた。
しかし、スピードが伊達じゃない。
私が気付いた時には、ハンマーの細い柄にスピアーの先が当たっている。
もし構えていなければ、私は既にスピアーの餌食となっていた。
(ぐっ…)
「マダ始マッタバカリダ。モット我ヲ楽シマセロ!!」
私はスピアーを右にずらし、ハンマーを短く構え直した。
そして、思いっ切り横に振った。
威力は幾分弱くなるけれど、これなら当たるはず!
「フ」
だが、彼は上半身を反らすことで回避したのだ。
ハンマーが通り過ぎたのを確認したと同時に、上半身を戻しつつスピアーを横に払う。
それは、ハンマーの攻撃により隙ができた私の腰に当たる。
私は痛みに耐えつつ、体を右に回して彼の方に向けた。
「でやあッ!!」
左側にハンマーを構え、私は彼に向けて降り下ろす。
エレメリアンは後ろに下がることで回避した
私でも、こんな丸見えな技が当たるわけが無い。
だから---
(少し、捻りを加える!)
途中で降り下ろすのを止め、ハンマーの頭部を彼に突き出した。
ハンマー自体かなりの重さがあるから、これでもダメージは期待できるはず。
回避に動いていたエレメリアンは、私の攻撃に反応できない。
スピアーを構えて防御姿勢を取ろうとするが、タイミングが合わずにまともに喰らった。
「グウゥ…」
腹部を抑えて後ずさる。
私は追撃として、左に回転する。
遠心力により威力が増したハンマーは、エレメリアンの左の脇腹にめり込んだ。
骨が折れる音が聞こえてくる。
「貴方、アルティメギルなの!?」
こんな残虐さ、今までの彼らには無かった。
ツインテールを奪うためとはいえ、人間に危害は加えていない。
ならば、彼は一体何者か。
私は無性に気になった。
「アルティメギル…? ソノ様ナ物ハ知ラナイ。我ハ、エレメリアントシテ、マダ日ガ浅イ」
(えっと…)
つまり、目の前のエレメリアンは生まれたて、ということ?
「我ハ今、心ガ餓エテイル。ダカラ、楽シミヲ求メル」
だが、この言葉に怒りを感じた。
ただ快楽のために、人間をいたぶるのか。
「---ないで」
「…?」
正直、ここまで頭にきたのは初めてだ。
「ふざけないで!! 人間は、貴方の道具じゃないの!!」
こんな奴、アルティメギルであろうとなかろうと、絶対に許さない!
正眼の構えを行い、いつでも攻撃できる態勢を取る。
対してエレメリアンはスピアーを奥に構える。
今度こそ、私を貫くつもりなのだろう。
「我ヲ愚弄スルカ、人間」
「愚弄も何も、貴方がしているのは、非道そのものよ。だからこそ---」
何のための力か。
何を守る力なのか。
最初は戸惑ったけど、今なら何となく分かった気がする。
グラビティハンマーを握る手に力を込める。
「貴方を"叩き潰す"!!」