Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.33【私のカレー、返せッ!!】

アルティメギル基地。

ここではいよいよ修行も終わりへと近付いている。

元々、打倒テイルブルーを目標とし、皆邁進していた。

しかし、何処で間違えたのか…

時が経つ毎に内容が変わり、共に目的を見失いつつあった。

 

「4Pの集中線はどうすれば良いか!?」

「シュビビッとすれば良かろう」

 

ビートルギルディの監視の下、混成部隊は同人誌作製に勤しんでいた。

見れば、そのどれもがテイルレッドばかり。

 

「本末転倒だろ、これ…」

 

陰から様子を窺っている"怨み"は、違和感しか感じなかった。

片手を顔に着け、酷くなる頭痛を抑える。

 

「皆が恐怖心を克服したのは属性力(エレメーラ)でわかった。しかし、なぜその道へ向かう?!」

「"怨み"様…」

 

一人静かに悩む姿に、スワンギルディが問いかける。

彼は隊から離れているため、この様な同人誌作製に関わっていないのだ。

 

「スワンギルディ… 僕が見ているのは現実か?」

「恐れながら、現実です」

「あぁ… これなら、本拠地に戻った方がマシだ」

 

頭を抱え発狂するユウに、スワンギルディは何も言えなかった。

その間にも同人誌は、驚異的ハイペースで作製されていく。

もうあの場には、誰もが有無を言わさぬ絶対の領域に既に化していたのだ。

 

☆☆☆

 

「…で」

 

私はかなり不機嫌である。

本来ならば、私は観束君達とコミケにいるはずだ。

なのに---

 

「どうして、オープンキャンパスに行かなきゃいけないのよ!?」

 

私は某大学のオープンキャンパスに参加することになったのだ。

あぁ、コミケが…

 

「しゃあないやろ。オープンキャンパスに参加して、それについてのレポートを書かなアカンのやから」

「分かってるけどさぁ…」

 

何の陰謀か、テキストの課題より面倒な物を私達はしなければならないのだ。

私だって高校生だし、進路について考えなければならない。

オープンキャンパスも、夏にしか行わないところも多い。

それに大学は、外側だけでは不明点が多いから、実際に体験しなければならない。

 

「だからって、最低6大学以上参加しろは酷いよ…」

「それは、ウチも思うわ」

 

なにしろ、ハードルが高過ぎる。

この事について、夏休み前に大ブーイングが起こったぐらいだし。

基本的に大学部に進学する陽月学園の生徒にとって、本当に酷い出来事であった。

 

「私だって暇じゃないのに」

 

そう溜め息混じりに呟いた。

私達がいる大講義室には、大勢の参加者がいる。

制服姿の者がいれば、私服と様々である。

ちなみに、私は私服にした。

七分丈のパンツに、ピンクのシャツとかなりラフな格好だけど、暑い天気にはちょうど良い。

ふと目線を変えれば、前にある巨大スクリーンにはこう書かれている。

 

『〇〇大学オープンキャンパスにお越しの皆様。コミケ〇日目なのに御苦労様です』

 

正直、腹が立つ。

こんな事書かれるくらいなら、バックれたい。

 

「---ねぇ、もう帰っていい?」

「そろそろ始まるけどな」

 

どうやら、私に『帰る』という選択肢は無いらしい。

なんと鬼畜な。

 

☆☆☆

 

ビートルギルディの指示により、2体のエレメリアンが地球へ向かった。

皆々、あの過酷な修行を乗り越えてきた。

だからこそ、残った者は皆敬礼で送った。

打倒テイルブルーを願って。

そして、皆の汗と血の結晶である同人誌の完売も願う。

 

(…)

 

しかし、盟友の中に釈然としない者がいた。

凶暴な眼差しに鋭い爪、更に極限まで鍛え上げた筋肉。

その体から放たれる威圧感は、何者も黙らせてしまう。

彼の名は、ライオギルディ。

先日行方不明となったモールギルディは、彼の数少ない友である。

 

(何故、今日まで姿を見せぬのだ…?)

 

如何に数が多くとも、この部隊を管理するビートルギルティや参謀のスパロウギルティは気付くはず。

彼らに聞いてみるも、「知らない」の一点張りであった。

 

「どうした、浮かない顔をして」

「スワンギルディ…」

 

彼に声をかけるのは、隊を離れ一人修行を続けているスワンギルディである。

同じ孤独を持つ者同士、何かを感じ取ったのであろう。

 

「モールギルディの姿が見えぬのが、少々気になってな」

「私も見てはいないな…」

 

やはり、彼は必要時以外部屋から出ないせいか、知らなかったようだ。

 

「そういえば、ダークグラスパー様も最近は見てはいない」

「ふむ… 何か緊急の任務では?」

「そうであれば良いが…」

 

彼は不安げに歯に力を込める。

彼女によってデコレーションされた携帯電話が握り潰されそうなほどに。

幾ら人気が無かろうと、不器用にエレメリアンに接してきたダークグラスパー。

その上、彼女とメールをやり取りしてきたスワンギルディにとって、心配でならないのだろう。

 

「何をしている!? 戦闘員(アルティロイド)からの中継映像が出るぞ、早く会議室に再集合せよ!!」

 

突如、2人に怒号がかけられた。

彼らを探していたと思われるエレメリアンから、命令を受ける。

モールギルディの事は気になるが、会議室へと向かう2人であった。

 

☆☆☆

 

説明会も終了し、時間は13:12。

昼御飯にはちょうどいい時間ね。

 

「やっほ-ぃ、食券GET!!」

「お前の欲求は、その程度かいな…」

 

リンが呆れたように言うが、一人暮らしにとっては有難いのだ。

日々御飯の事を考えれば、タダで食べられる以上の喜びはないのに。

 

「リンだって、助かるでしょ? それとも、使わないつもり!?」

「いや、使うけどなぁ…」

 

やっぱりリンも欲しいじゃないの。

人間、素直が一番ですよ?

 

「てなわけで…おばちゃん、カレーライス!」

「あいよ、ちょっと待っててね」

 

私は定員に注文を告げ、ワクワクしながら待つことにする。

今日はかなり熱いけど、カレーライスは外せないっ!

 

「ハイテンションやな…」

「リンが落ち着き過ぎだけだよ♪」

 

 

 

「待ってました-!」

「はしゃぎ過ぎやって…」

 

注文したカレーライスが完成し、今私の目の前にある。

リンは冷やし中華を注文していた。

 

付属しているスプーンをコップの水につけ、お米がくっつかないようにする。

そして、コップからスプーンを取り出し、狙いをカレーライスに向ける。

 

「さて、お味は---」

 

私がスプーンをカレーライスにつけようとしたら、突如空から何かが飛来した。

それは広場の中心部に着弾し、衝撃と爆風が周りを襲った。

何も知らない一般人も多くいたため、幾人かはそれに巻き込まれてしまう。

やがてそれは、私達がいるテーブルにまで押し寄せてきた。

 

「むわぁっぷ!?」

「あぁ…」

 

衝撃により生じた爆風がカレーライスを吹き飛ばした。

それは空中で何回転もする。

やがてそれは地面に差し掛かり---

 

カシャン…

 

皿が割れた。

カレーライスも地面にこぼされた。

これでは、食べられないではないか…

この時、私の中で何かが切れた音がした。

 

「あの…伊織…?」

「私のカレーライス、返せ---!!」

 

私は来訪者に違う部分で怒りを感じていた。

そして、エレメリアンが現れたと思われる場所に急行した。

 

☆☆☆

 

「やるではないか」

「いいぞ、そこだ-!」

 

会議室にて、2体の雄姿がスクリーンスクリーン大きく映し出されていた。

シケーダギルディとモスキートギルディ。

彼等の戦い方は、格段に変化していた。

それにより、圧倒的な力でねじ伏せていたブルーは翻弄されている。

 

「モケ-」

「何、別の場所にエレメリアン反応が! それも未確認だと!?」

 

この報告に、部隊は混乱する。

未確認のエレメリアン。

それは本来、報告される内容ではない。

 

「現地にいる戦闘員を2,3名、そちらに向かわせよ! 直ちに解明するのだ!!」

「モケケ-ッ!!」

 

ビートルギルティの指示の下、戦闘員は速やかに行動に移る。

この惑星には、まだまだ想定外の事が起こる。

その事実に、彼は深く考え込んでいた。

 

☆☆☆

 

ようやく落下点に到着した。

周りには、衝撃により怪我をした人が多数いる。

 

(酷い…)

 

そして、ただ一人立っていながら、異彩を放っているのは---

 

「遂ニタドリツイタ…」

 

白いエレメリアンだった。

顔は馬面だが、額から角が出ている。

全身を西洋式の甲冑に纏われている。

そして右腕にはスピアーを装備。

 

「我ガ仲間ノ下ニ…!」

 

スピアーを地面に突き刺し、クツクツと笑う。

話す言葉もたどたどしいし。

まるで、習いたての言葉を使う外国人みたい。

 

『伊織、奴の周りにはまだ沢山の人がおる。何とかせんと、不味いで!』

「分かってる!!」

 

リンが通信で注意をしてくれた。

やはり、あれは只者ではないかもしれない。

そのためにも、私が囮になるしかないか。

 

「テイル・オン」

 

私は物陰に隠れ、テイルギアを起動した。

前の戦闘でだいぶ損傷したアーマーだが、自動修復機能があるのか、キズが見当たらない。

これなら大丈夫そうだ。

 

「サテ、ドコニイル---」

「待ちなさい!」

 

彼に聞こえるよう、大声でかける。

予想通り、彼は私に顔を向ける。

 

「ナンダ、小娘」

「私と遊ばないかしら?」

「遊ブ…?」

 

エレメリアンは地面に突き刺したスピアーを引き抜く。

彼は私の方に、ゆっくりと向かってきた。

 

(よし…!)

 

このまま、私だけを見てくれれば…

しかし、そう思うようにいかないのが現実。

這いつくばりながらも逃げようとする一般人に、エレメリアンが気付いた。

 

「待テ」

 

彼は左手を一般人に向けると、電撃を放出した。

それは容赦なく彼女を襲った。

襲われた彼女は、再び意識を失った。

 

『「なっ…!?」』

 

私とリンは目の前の光景を疑った。

確かアルティメギルは、人間を尊重する組織。

どんな理由があろうとも、人間を傷つける真似はしないはず。

 

「聞ケ、人間ドモ。コレヨリ、我ト彼女ノ殺シ合イヲ行ウ。観客ドモハ、決シテ逃ゲルナ。サモナクバ、コノ女ノ様二ナルゾ…?」

 

それはもう、脅迫でしかなかった。

まだ左手からは、電気が発生している。

狙おうとすればいつでもできる、と言うことだろう。

 

「ちっ…」

「サァ、始メルゾ」

 

スピアーを私に向けるエレメリアン。

お互いの間は約15m。

武器を考えれば、一瞬で攻撃できる距離ではある。

私は覚悟を決め、ハンマーを取り出した。

 

「フンッ!!」

 

やはり、スピアーを構えての突貫か。

モールギルティの経験もあり、簡単に予測できた。

しかし、スピードが伊達じゃない。

私が気付いた時には、ハンマーの細い柄にスピアーの先が当たっている。

もし構えていなければ、私は既にスピアーの餌食となっていた。

 

(ぐっ…)

「マダ始マッタバカリダ。モット我ヲ楽シマセロ!!」

 

私はスピアーを右にずらし、ハンマーを短く構え直した。

そして、思いっ切り横に振った。

威力は幾分弱くなるけれど、これなら当たるはず!

 

「フ」

 

だが、彼は上半身を反らすことで回避したのだ。

ハンマーが通り過ぎたのを確認したと同時に、上半身を戻しつつスピアーを横に払う。

それは、ハンマーの攻撃により隙ができた私の腰に当たる。

私は痛みに耐えつつ、体を右に回して彼の方に向けた。

 

「でやあッ!!」

 

左側にハンマーを構え、私は彼に向けて降り下ろす。

エレメリアンは後ろに下がることで回避した

私でも、こんな丸見えな技が当たるわけが無い。

だから---

 

(少し、捻りを加える!)

 

途中で降り下ろすのを止め、ハンマーの頭部を彼に突き出した。

ハンマー自体かなりの重さがあるから、これでもダメージは期待できるはず。

回避に動いていたエレメリアンは、私の攻撃に反応できない。

スピアーを構えて防御姿勢を取ろうとするが、タイミングが合わずにまともに喰らった。

 

「グウゥ…」

 

腹部を抑えて後ずさる。

私は追撃として、左に回転する。

遠心力により威力が増したハンマーは、エレメリアンの左の脇腹にめり込んだ。

骨が折れる音が聞こえてくる。

 

「貴方、アルティメギルなの!?」

 

こんな残虐さ、今までの彼らには無かった。

ツインテールを奪うためとはいえ、人間に危害は加えていない。

ならば、彼は一体何者か。

私は無性に気になった。

 

「アルティメギル…? ソノ様ナ物ハ知ラナイ。我ハ、エレメリアントシテ、マダ日ガ浅イ」

(えっと…)

 

つまり、目の前のエレメリアンは生まれたて、ということ?

 

「我ハ今、心ガ餓エテイル。ダカラ、楽シミヲ求メル」

 

だが、この言葉に怒りを感じた。

ただ快楽のために、人間をいたぶるのか。

 

「---ないで」

「…?」

 

正直、ここまで頭にきたのは初めてだ。

 

「ふざけないで!! 人間は、貴方の道具じゃないの!!」

 

こんな奴、アルティメギルであろうとなかろうと、絶対に許さない!

正眼の構えを行い、いつでも攻撃できる態勢を取る。

対してエレメリアンはスピアーを奥に構える。

今度こそ、私を貫くつもりなのだろう。

 

「我ヲ愚弄スルカ、人間」

「愚弄も何も、貴方がしているのは、非道そのものよ。だからこそ---」

 

何のための力か。

何を守る力なのか。

最初は戸惑ったけど、今なら何となく分かった気がする。

グラビティハンマーを握る手に力を込める。

 

「貴方を"叩き潰す"!!」

 

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