Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.34【私の答え、合ってる?】

中継映像に映し出されていたのは、彼らエレメリアンにとって信じられないものであった。

 

「何と酷い…」

「あのエレメリアン、見たこと無いぞ!?」

「というか、ツインテイルズも何者だ!?」

 

誰もが皆騒ぎ合い、パニックになる者までいた。

一応コミケの様子も映されているが、それすら眼中にない程である。

 

「兄さん…」

「あぁ、もしあれが会場にいれば、大惨事は免れないだろう」

 

しかし、この会議室もこの有り様では、情報収集ができない。

皆を落ち着かせるために、ビートルギルディは皆の前に立つ。

 

「聞け、この場にいる全てのエレメリアンよ!! 貴様らが幾ら喚こうが、向こうには何も伝わらぬ。今はただ、我等が仲間の有志と新たな戦士の戦いを静観せよ!!」

 

その言葉に、会議室が静まった。

誰もが発言力を失ったかのように、空気が張る。

ビートルギルディが自分の席に戻るのを見て、皆思い出したかの如くスクリーンに目を戻したのだ。

 

☆☆☆

 

エレメリアンは動かない。

まるで出るタイミングを図っているように。

相手がそうだから、こちらもなかなか攻撃に移れない。

周りには、まだ一般人がいる。

彼等は何とか衝撃から回復しているが、エレメリアンが睨みを利かせているために動けずにいる。

 

(このピリピリした感じ、嫌なんだけど…)

 

内心困りながらも、意識はエレメリアンに向けて不意討ちに警戒を緩めない。

ここは戦場だ。

たった一瞬の気の緩みは、死に繋がる。

モールギルディと戦って、それがよくわかった。

 

(さっさと終わらせる!)

 

ハンマーを構えたまま、前に動いた。

そしてエレメリアンに近付くと共に、ハンマーを少し後ろに引く。

彼に突きをするためだ。

スピアーより攻撃面積が広い分、当てやすいはず。

 

「貴方は非道そのものよ!!」

「生命ハ皆、生キル為二他ノ生命ヲ奪ウ。ソレガコノ世界ノ心理」

「貴方を喜ばせるために生きてるわけじゃない!!」

 

ハンマーが当たる瞬間、彼は跳んだ。

私の真上をかすめるように。

その間にスピアーを逆に持ち変える。

当然後ろに隙ができる間を彼は逃さない。

スピアーの先を私に向け---

 

「ナラバ、オマエガ初メテダナ」

 

背中から、私を貫いた。

 

『伊織!?』

 

通信でリンが私に話しかける。

だけど、それすら聞き取りにくい。

 

(またか…)

 

私は攻撃を受けたショックより、呆れを感じた。

リンと唯乃に折角特訓を受けてもらったのに、敵に攻撃されるとは…

まだ私も甘いな。

 

「コレデ、我ハ『殺人者』ダ」

 

スピアーを抜き、付いた血を眺めながらそう呟いた。

その顔は狂喜に満ちている。

 

「まだよ」

 

ハンマーを平行に構え直し、横に払う。

しかし、バックステップでそれを避けると同時に詰め寄る。

今度は心臓を狙っている。

 

「終ワリダ」

 

スピアーは真っ直ぐ心臓に向かう。

しかし、途中で見えない壁にぶつかったように、それ以上先に行けなかった。

 

「ったく、起動するのが遅いわよ」

『帰ったら、また特訓やな』

 

スピアーの先にあるのは、黄緑に発光する障壁だ。

これは、リンが言うには"重力障壁"らしい。

リンが改めてテイルブレスを解析した際に、その機能が発覚した。

特訓で出るようになったものの、まだ発動までに時間差(タイムラグ)がある。

 

「…ナラバ壊レルマデ、攻撃スル!」

 

エレメリアンがスピアーの動きを早める。

それは前に見た、リヴァイアギルディを回忌させる程の技量だった。

 

(壊れる!?)

 

実際、障壁には幾つものヒビが入っている。

障壁が破壊され、私にスピアーが入ってくるのは時間の問題だ。

 

(ガードしなきゃ)

 

せめてと思い、両腕を交差させて急所を防御する。

ガラスが割れたような音が聞こえたのは、その瞬間だった。

障壁が割れ、スピアーの突撃の雨を襲う。

 

「がっ…」

 

ガードしていても、ダメージが軽減されない。

全体的に攻撃されているため、身体を支える足にも力が入らない。

連撃の雨の後、強烈な刺突により吹き飛ばされてしまった。

 

「貴様、ぽにーてーるノ戦士ノ割ニハ弱イ。同ジ戦士トシテツマラヌ」

『同じ戦士…?』

 

リンも同じところで引っ掛かったみたい。

もしかして、こいつの属性力(エレメーラ)って…

 

「イタズラ二攻撃シテモツマラナイ。サッサト終ワラセル」

 

スピアーの先を私に向け、ゆっくりと距離を詰めていく。

細かい傷と最後のダメージで、思うように動けない。

立つだけでやっとだろう。

ハンマーを杖変わりに、脚に力を込める。

傷と疲労で上手く動かないけど、今は弱音は吐いていられない!

 

「ふぃなーれダ」

 

立ち上がりきったところで、エレメリアンが一気に距離を縮める。

私とて、いつまでも重いハンマーを持てるはずがない。

 

(どうせ、ハンマーを振るう程の体力はもう無いんだ)

 

そう考え、ハンマーを近くに乱暴にブン投げた。

そして、そのまま立ち尽くす。

 

「諦メタカ」

 

スピアーが眼前にまで差し掛かる。

相手は油断している。

もし相手の虚を突くなら、ここだ!

 

"重力障壁"

「!!」

 

私は左手を前に突き出した。

上手く手の先に障壁が形成、スピアーを押し留める。

スピアーと障壁の間で火花が飛び散る。

このままでは不味い。

障壁の抗力を上げるために範囲を少し縮める。

 

「ククク…」

「何が可笑しい?」

 

突如、彼は笑い声をあげる。

防御に全力をあげながらも、問いかけてみる。

 

「すぴあート言ウノハ、相手ヲ刺スタメノ道具。シカシ---」

 

彼が語り始めると同時に、スピアーに異変が起こった。

なんと、スピアーが回転し始めたのだ。

 

「我ノハ、少シ違ウ」

 

回転するスピアーはやがて障壁を破壊し、左手を貫いた。

あまりの痛さに意識が刈り取られてしまうが、何とか取り戻す。

そして貫かれた左手で、回転するスピアーを捕まえる。

 

『無茶や、グリーン! 今すぐ離さんかい!!』

 

必死でリンが止めようとするが、私は無視する。

もしリンの指示に従えば、私の後ろにいる人を貫く可能性がある。

だからこそ、

 

「嫌だ!!」

『伊織!?』

 

その言葉に、エレメリアンは嘲笑った。

 

「ナラバコノママ、体ゴト貫カレロ!!」

 

確かにこのままじゃ、私に勝ち目は無い。

でも私には、このエレメリアンにない力がある。

 

「…ねぇ」

「何ダ?」

「ドリルって回転しているから、そう呼ばれるんだよね?」

「ダカラドウシタ!?」

 

彼からすれば、どうでもよいことなのだろう。

でも、私にとっては凄く重要だ。

 

「回転が止まれば、それはもうドリルじゃないよ」

「何…!?」

 

スピアーから、鈍い音が発する。

私の左手がスピアーを掴み、回転を止めているのだ。

やがて掴んでいる箇所から、細かいヒビが入る。

 

「---バカナ!?」

「うぅぅあぁぁぁっ!!」

 

スピアーを鷲掴みにしたまま、手前に持っていく。

それと同時に右腕を折り曲げ、肘で力任せにスピアーを折った。

 

(チャンスだ)

 

軽くふらつくエレメリアン。

私は、左手に突き刺さったままのスピアーの先端を引き抜く。

逃がさないように、彼の右手を残った握力で捕まえる。

ついでに念のために、自分の半径2mに過剰重力を発生させておく。

 

「何ヲシタ…?」

「貴方は終わりよ」

"属性玉変換機構(エレメリーション)手属性(ハンド)"

 

私は右手に力を込めると同時に属性玉変換機構(エレメリーション)を起動させる。

私のテイルギアの能力である重力と、属性力(エレメーラ)を融合させる。

十分に溜まったところで、エレメリアンの腹部にアッパーを繰り出す。

これが私オリジナルの技。

 

「"重力爆砕拳"!!」

 

彼の腹部からトラックが衝突したような重い音が響く。

ヒットすると同時に、通り抜けるような感触があった。

そう感じた一瞬の後、遠くにある建物が一部壊れた。

幸い、あの場所には人はいないはずなので、負傷者は発生しないだろう。

 

「何故---」

「…?」

「何故、貴様ハ強イ?」

 

重力爆砕拳を受けたところから、細かい亀裂が生じていく。

痛みに耐えながらも、私に問いかける。

恐らく彼にとっては大切な質問なのだろう。

だったら、私も正面から答えていかなきゃ。

 

「私には、護りたいものがある。だからこそ、私が負けるわけにはいかないの」

 

これが、私なりの答えだ。

ありきたりだけど、大切なもの。

失ってはいけない、大切なもの。

だから護る、それだけのこと。

 

「…ナルホド。ソレガ答エカ」

 

エレメリアンが微かに笑った気がする。

 

「サラバダ、戦友(とも)ヨ」

 

ガラスが砕け散るようにエレメリアンは消滅した。

そして、その欠片が集まり、一つの菱形の形にまとまる。

 

(属性玉(エレメーラ)…)

 

私は、それのそばまで寄ると、菱形を掴んだ。

それはやがて自身の輝きを失い、消えた。

さっきまで掴んでいた手を開いてみると、そこには何も無かった。

 

(相変わらず、変なの…)

 

戦闘の疲れと安堵感しかなかった私には、そう感じることしかできなかった。

 

 

 

 

「結局、オープンキャンパスは中止か…」

 

私はため息交じりの文句を言う。

何しろ、建物への被害が尋常ではなかったらしい。

コミケ会場にもエレメリアンが複数現れたようだけど、そちらの被害は最小限だったみたい。

その被害を比べるとすれば---

 

「今も立ち入り禁止のテープがあちこちにあるし…」

 

テープと共に、侵入防止の柵まで設置されている。

その向こうでは、重機が音をたてて地面を直す様子がここからでも見える。

 

「やっぱ駄目やわ。今日の大学レポートはでけへんみたい」

「これでパァか…」

 

離れた場所で学園に連絡していたリンが来た。

予想通りの連絡に、もう投げ出すしかなかった。

背中を地面に預け、空を見上げる。

 

「これで2戦2勝か…」

 

天に左手を向ける。

テイルギアの加護があるとはいえ、そう直ぐに回復はしない。

手の甲に、痛々しく包帯が巻かれている。

 

(このままじゃ、本当に死ぬかもしれない)

 

モールギルティでは、大量出血を起こした。

今回のエレメリアンも、前回ほどではないけど、非常に危なかった。

 

(観束君達も、こんな風に戦っていたんだな)

 

目を細め、ぼんやりとそんなことを思っていた。

まだ戦いは終わっていないのに…

 

(返ったら、何しよう…?)

 

急に眠気が襲ってきた。

私はそれに抗えずに、意識が暗転した。

 

 

 

 

基地に配備されているテレビを、3人は見ている。

もしかしたら、私の戦いが流れているかもしれない。

そんな淡い期待を持ちながら、テレビの電源を付けたんだけど---

 

「「「…………」」」

 

無言、ただそれだけ。

その様子から察するに、期待のものではなかった。

何故なら、

 

『テイルレッドに新たな力が!? これにより、玩具業界に更なる進化が期待される』

 

その謳い文句と共に、ツインテイルズの戦いが映し出されていた。

ただ、注目されたのは新機能のチェインカスタムのみ。

戦闘シーンは、イエローが前面に出ているたため、殆ど映されていなかったのだ。

 

「…人気、無いのかな」

 

静かな会議室に、私の呟きが響く。

あれだけ苦労したのに、一切報道されないとは。

 

「仕事に戻るわ」

 

空気に耐えられなかったのか、リンが会議室を出る。

今回入手した属性玉(エレメーラオーブ)の解析だろうな。

 

「何か、他に無いのか?」

 

唯乃が色々リモコンでチャンネルを変えるが、テイルレッド一色。

唯乃はイラつき、リモコンを地面に叩きつけた。

あまりの現実に、私は頭を抱える。

 

(どうして、テイルレッドだけ人気があるの?)

 

そんなことを思っていても、答えてくれる人はいない。

様々なことにショックを感じた一日は、こんな感じで過ぎていった。

 

☆☆☆

 

「『〇〇大学で、老朽化によるヒビが発生。緊急で補強工事を開始した』か…」

 

幾つものモニターは、属性玉(エレメーラオーブ)の情報を映し出している。

しかしその一つには、Webニュースが。

様々なメディアがツインテイルズのみを報道する中、ただ一つ、それもオマケ程度だがそう報道された。

 

「色々と面倒をさせてくれるわ」

 

呆れつつもそう呟くリン。

タイトルの下には、こう記述されている。

 

『8月○日、〇〇大学にてオープンキャンパスが開催されたが、実施された建物が老朽化により、一部が崩れる事態が発生した。その破片が参加者及び従業員を襲い、17名の負傷者を出した。負傷者は大学病院に搬送され、今も治療を受けている。この事態に対し大学関係者は「創設以来、補強工事をしていなかった。学生を護るために、今後はこのような事態が起こらないよう、対処する」と発言した』

 

大学に現れたエレメリアンについて、一切報道されていない。

むしろ、最初からいなかったような扱いである。

 

「ええ加減、何とかせにゃあ」

 

緊張感の無い台詞を発しながらも、凄まじい速さでタイピングしていく。

今回の戦闘で、リンもかなり苦しいものになると痛感していたのだ。

 

(…いよいよやな)

 

彼女の手元にあるのは、唯乃から渡されたレリーフ。

調整が大方終了し、残すはテスト演習のみ。

 

(首洗って待っとれ、ツインテイルズ!!)

 

その顔は、恐ろしいほどに笑みがあった。

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