Which do you love ?   作:ズケズケ

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久し振りにあの子が出ます


Episode.35【長い間会ってないと、人の顔って忘れるよね~】

まだ暑さの残る夏休みに、私は学校にいる。

その理由としては、

 

「これより、作戦会議を行います」

 

ツインテール部にそぐわぬ台詞から、部活は始まった。

この場にいるのは、部長の観束君、津辺さん、慧理那、私、リンの5名。

顧問の桜川先生は、教師としての仕事があるため参加できないらしい。

 

「まず、この映像を見てください」

 

テーブルに置かれているプロジェクターから出されたのは、この前の戦闘シーンだ。

しかし、私のではなく彼らツインテイルズについての、である。

今回ツインテイルズが戦ったのは、蝉と蚊のエレメリアン。

どちらもはかなく散った、実に夏らしいエレメリアンであった。

 

「しっかし、まさかアルティメギルが、ブルー相手に特訓しているなんて思いませんでしたよ」

「アンタに言われたくないわね!」

「まぁ、約束がありますから、愛香さんには大人しく従ってもらいますよ~」

「ぐっ…」

 

約束…

何だっけ?

まぁ、私には関係がないからいいけれど。

 

(検めてみると、昨日がテイルレッドばっかりだった理由がわかるわね)

 

戦闘の最中、彼女は敵の能力によってコスチュームを変えられていたからだ。

正確には上からかぶせている、と言った方が適切か。

ブルマに始まり、婦警、ウエディングドレス。

その衣装の綺麗さに、観客は皆興奮していた。

 

(日本の若者は大丈夫かしら…?)

 

私も一応若者の一人だけど、心配になる。

私は正常なはずだ…たぶん。

 

「ムフフ… テイルレッドの新たな魅力が発見できましたよ」

「仮装を正装に… アンタもアンタやなぁ」

 

気味悪いトゥアールさんに、リンが冷静につっこむ。

私もここに来て少し経つけど、変態に耐性ができたなぁ…

 

「さてさて愛香さん、お約束を」

「あーもぅわかったわよ! 総二、後ろ向いてて!!」

「ハァ!? ちょっと待て!!」

 

…何の約束だか知らないけど、それは流石に不味いでしょ!!

何としても、ここは回避しなきゃ。

 

「観束、スマン」

「ガッ…!?」

 

私が止めるよりも早く、リンが観束君に回し蹴りを決めた。

それは容赦のない蹴りだったようで、彼はお腹を抱えたまま地面に倒れてしまった。

 

「ふぅ… 一件落着」

「「何が一件落着よ!!」」

 

まぁ、そうでしょうね。

普通なら、後ろを向いてもらえれば良かったのに、まさかの実力行使とは…

 

「総二様の大切なお身体に、何してくれやがります?」

「一回、本気で戦いましょうか…?」

 

完全に2人がブチ切れてる。

これじゃ、今回の会議が進行できなくなる。

 

「ストップストップ。リンは後回しにして、会議を再開させる!」

「そうでした!」

「怖かったわ、伊織~」

 

一触即発だった空気が、一瞬で収まった。

リンが助けを求めに私にすり寄ってきたけど、

 

「自業自得よ。後で、説教ね」

 

リンに阿修羅のような怒り顔を向ける。

ガーン、という音が聞こえてきそうな感じがするほど、彼女はショックを受けていた。

 

☆☆☆

 

「…さて、コミケの戦利品はかなり手に入った。皆に分け与えねばならない」

 

ここは会議室。

この広いスペースには、山積みにされた段ボールが並べられていた。

そして、各エレメリアンに渡すため、戦闘員(アルティロイド)が仕分けを行っている最中である。

 

(問題はあの戦士だ)

 

戦闘員からの中継映像に映った、緑のツインテイルズ。

彼らにとって、この増援はかなり痛い。

その上、新手のエレメリアンがあれ程非道であることが苦痛に感じる。

 

(あのような乱暴な行為では、属性力(エレメーラ)は一切盗れぬ。何故、あのような真似を…?)

 

人間を尊重するアルティメギルとして、あの行動は許さない行為である。

新入りだとしても、それは遵守しなければならない、暗黙の了解なのだ。

 

(するべきことは決まった。後は誰に願おうか…)

 

天井近くまで積み上げられた段ボール箱を見ながら、ビートルギルディは静かに考えていた。

 

☆☆☆

 

「…コホン。続きに入ります」

 

トゥアールさんがスクリーンの隣に立ち、説明を再開させる。

先程強烈な蹴りを喰らった観束君は、予備のパイプ椅子を並べて作った簡易なベッドで横になっている。

まだ気絶しているけれど、時折寝言が聞こえる。

断片的にだけど、悪夢を見ているみたい。

 

「ツインテイルズが戦闘を行った場所は、このコミケ会場です」

 

画面が拡大され、会場の中心に複数のポイントが付けられた。

色分けされているみたいだけど、これって…?

 

「青で表示されているのはツインテイルズ、赤はエレメリアンです」

 

青は3つに赤は2つ。

たぶん、属性力(エレメーラ)反応を基に表示しているのだろう。

 

「トゥアール、アンタまさかこれだけのために、緊急会議を開いたんじゃないでしょうね?」

 

なぜかいらついている津辺さん。

目線が時々リンに行っているあたり、まだ怒っているのかも。

 

「本題はここからです。確かに、我々の戦いは重要ですが---」

 

急に画面が縮小し、今度は違う場所を拡大した。

その場所は、

 

「この場にも、反応が確認されました」

「「「!?」」」

 

オープンキャンパスが開催された、あの大学だった。

この事実に、ツインテイルズは驚きを隠せない。

寝ていた観束君も、飛び起きるほどに。

 

「まさか、陽動作戦!?」

「てことは、属性力(エレメーラ)が奪われたの?」

「どうしましょう…?」

 

3者3様にリアクションがあった。

私は特に驚きはしなかったが、そのフリをしておいた。

 

(もしかしたら、あのエレメリアンかもしれない)

 

落ち着きでもすれば、怪しまれる可能性があるからだ。

「今はただ、機会を待て」って2人に止められているからね。

 

「しかし、その反応はたった10分。その後は確認できませんでした…」

 

トゥアールさんが頭を下げて、謝罪した。

 

「反応が追えなかった、ってこと…?」

「途中で切り上げたのか、それとも…」

 

そのエレメリアン、私が倒したんだけど…

 

「いずれにせよ、皆さんには注意してください。まだ情報が不足していますので」

 

かつてない緊張感が部室に漂う。

空気までピンと張っている。

 

(余計なこと、したかなぁ…?)

 

気まずい雰囲気の中、私は何度目かわからない後悔をしていた。

 

☆☆☆

 

アルティメギル基地、会議室。

そこには基地に駐在する全てのエレメリアンが集められていた。

 

「急に隊長から召集されるなど、何事か?」

「恐らく、コミケの戦利品を配布されるのでは!?」

「そういえば、まだであったな…」

 

皆、この状況に対して気が緩んでいた。

テイルブルーを攻略できる道が見つかり、希望を見出しているのだろう。

 

「皆の者、待たせたな」

 

講壇に現れたのは隊長のビートルギルディと副官のスタッグギルディ。

彼らが現れると同時に、会議室は落ち着きだした。

 

「まず、お前達に戦利品を配給する。各自、列を組んで並べ」

『オォ!?』

 

ビートルギルディの指示に従い、各エレメリアンは複数の列を形成する。

戦闘員(アルティロイド)が配達員となり、一体ずつ戦利品を配る。

皆、戦利品を取ったことに喜びを噛み締めている。

 

「この作品は、テイルレッドの躍動感が見事に描かれているぞ!!」

「こちらのも、なんという可愛さ…」

 

皆、作品に描かれている彼女のみ注目している。

だが1体、真剣に読もうとしていない者がいる。

 

(圧倒的にテイルレッドばかりだ… 他の奴はどうして描かぬ!?)

 

彼は格闘家属性(ファイター)のライオギルディ。

同人誌を持つ手が、震えている。

彼の属性にとって、戦闘の描写が少ないことにいら立ちを感じているのだ。

 

(まぁ、出動した時に戦えれば良いか。それより---)

 

読んでいた同人誌をしまい、ビートルギルディが見える場所まで近づいていく。

 

「隊長。ただこれだけのために、召集されたのですかい?」

 

彼は疑問に感じていた。

ただコミケの戦利品を配るだけならば、段ボール箱に詰めて配送すれば良いはず。

本当にこれだけなのか…

 

「そうだな。これも必要なことだが、そろそろ本題に入るとするか」

 

ゆっくりと歩き出すビートルギルディ。

その動きから、隙が全く見当たらない。

 

「先日現れた、新たなツインテイルズ。今回はその戦士の調査だ」

 

その発言に、エレメリアンは騒ぎ出す。

まさかまた戦いになろうとは、誰もが予想していなかったからだ。

 

「自薦、他薦は問わぬ。誰かこの任務を受ける者はおらぬか!?」

 

ビートルギルディの勧誘も虚しく、誰も立候補しようとしない。

しかしそんな中、群衆を抜けてライオギルディの横に並ぶ者がいた。

 

「是非ともその任務、このスワンギルディに申し付けくださいませ!!」

 

深く頭を下げて、出撃を願い出るスワンギルディ。

その自信さに、周りのエレメリアンは驚きの声をあげる。

 

「確か、今は隊を離れ、一人修行に投じているはずだが…?」

「仰る通りです。しかし、私は実践する機会に恵まれておりませんでした。今この好機を逃せば、私はいつまでもくすぶったままとなり、亡くなられたドラグギルディ様に示しがつきませぬ!!」

 

それほどまでに、彼の覚悟は堅かった。

ビートルギルディは腕組みをして、深く考え込む。

 

「ならば、お前には幾つかテストを行うとしよう」

 

ゆっくりと席を立つと、ビートルギルディはプレッシャーを放った。

それは衝撃波という見える形で現れた。

しかしスワンギルディは身動ぎをせず、彼を見据えていた。

 

「ドラグギルディの話通り、気合いは十分。しかし---」

 

ビートルギルディは左腕を軽く挙げる。

それを合図に、1体の戦闘員(アルティロイド)があるものを持って現れる。

議長席に置かれたのは、スワンギルディのノートパソコン。

彼にとって、またあの悪夢が甦るのか…

周りのエレメリアンはざわつく。

 

「再び倒れるか否か--- 試そうではないか」

 

スワンギルディのノートパソコンが起動する。

ホーム画面はやはりテイルレッドのみ。

そしてビートルギルディは1つのアイコンを開いた。

それは彼の属性に相応しき、看護士(ナース)を攻略するエロゲ。

かつてドラグギルディが行ったように、ビートルギルディはスワンギルディの秘密を赤裸々に明かしてゆく。

 

「喚きもせぬか。つまらん」

「私は悟ったのです。自らの属性力(エレメーラ)に誇りを持つこと、それは誰が何と言おうと我が道を突き進むと。だからこそ隠さずに我が身を晒すことに至りました」

 

僅かな間に、スワンギルディはここまで成長した。

これならばドラグギルディに顔向けができる。

そうビートルギルディは判断した。

 

「---よかろう。ただし、新手と戦うとなれば、ツインテイルズが介入するのは間違いない。お前には護衛として、戦闘員(アルティロイド)を三個大隊付かせる」

「ありがとうございます」

 

かくして、スワンギルディの出撃が決まった。

ビートルギルディに深く頭を下げ、会議室を後にする。

しかし、彼が去った後にビートルギルテディに近づく者がいた。

 

「隊長、やっぱりあいつだけじゃ不安だぜ。俺にも出撃の許可を!!」

そう自分も出撃させろと迫ったのは、ライオギルディ。

 

「何故、そう思う?」

「どうせあいつの目的はテイルレッドだけだ。だが彼女と正々堂々と戦っても、ブルーに横やりを入れられるのは一目瞭然だ」

「だから、補佐役を買って出ると?」

「今回の任務は『新ツインテイルズの戦力調査』。それが十分だと判断すれば、首根っこ掴まえてでも撤退させますぜ」

 

笑って答えるライオギルディだが、対してビートルギルディの顔には曇りが見える。

先日に2体の仲間を失ったことから、いたずらに出撃させたくはないのだろう。

 

「スタッグギルディ。どう考える?」

「勿論、彼の実力は認めるよ。だけど、彼には厳しい任務かもしれないな」

「やはり、お前もそう考えるか…」

 

ビートルギルディと長い付き合いがある彼も、同様の意見であった。

 

「その『厳しい任務』を、奴一人に背負わせるつもりで? あいつが進んで志願したとは言っても、そいつぁ無責任じゃねぇか」

 

ライオギルディの鋭い指摘に、2体はハッとした。

一応三個大隊の戦闘員を付かせたとはいえ、責任を負うのは彼一人。

もし負けても、彼に示しがつかなくなってしまうではないか。

そこまで考えてでの、この提案だったのか。

 

「よし、お前は急いでスワンギルディの後を追え!!」

「解ったぜ、隊長!!」

 

焦りに駆られ、ビートルギルディはライオギルディに指示を下した。

しかし返事するよりも速く、彼も会議室を後にした。

だが、そのスピードが速すぎたのか、

 

「慌てすぎだ」

「アアハ… 彼らしいね」

 

自動ドアに、ライオギルディの形がくっきりとくりぬかれていた。

その結果に2体は苦笑いするしかなかった。

何とも締まりのない彼である。

 

☆☆☆

 

「ただいま~」

「お帰りって、あら?」

「ぉ、お邪魔します…」

「いらっしゃい、伊織ちゃん。すぐに用意するわね」

 

私がぎこちなく挨拶すると、おばさんは嬉しそうに出迎えてくれた。

わざとらしくターンした後、スリッパをパタパタ鳴らしてキッチンに向かった。

 

「今さらだけど、本当によかったの?」

「どうせ、家に帰っても寝るだけやろ? それやったら、楽しみいや」

 

私はリンに尋ねるが、彼女にスルーされてしまった。

彼女は靴を脱いで、リビングへと向かう。

玄関にいつまでも立っているわけにはいかないので、私は渋々上がることにした。

 

「ちょっと時間がかかるから、先にお風呂に入ったら?」

 

おばさんから、お風呂が使えるとの情報が。

最近は基地のシャワーだったから、ゆっくりできるね。

 

「では、使わせてもらいます」

「ウチも入るわ」

 

何故、リンが…

別に一緒に入る必要はないはず。

しかし今入らなければ、入る順番に影響が出る。

そんな訳で、一緒に入ることにした。

 

 

 

 

「……」

「いや~、やっぱ風呂は人生のオアシスやわ~」

 

湯船に浸かりながら、何やらおっさんくさい台詞を言ってるし。

そんな光景をスルーしながら、体を洗っている。

何だかんだで、今日も汗でベトベトだ。

これも、夏の日差しにせいに違いない。

しかし、私の体は不思議だな…

 

「ねぇ、リン。私ってどこかおかしい?」

「ん~? よく見れば、ちょっと太ったんと(ちゃ)うか?」

「---! どこ見てんのよ!?」

 

一応リンに訪ねてみるも、彼女らしいボケが返ってきただけだった。

誰も受けを狙ってないし、誰も突っ込まないから!

 

「っ、そうじゃなくて… 私の体に傷が無いのがおかしいのよ!」

「確かに… 空想装甲(テイルギア)による加護が無かったら、今頃伊織は死んどる」

 

リンの指摘通り、私は幾度もそうなりかけた。

脇腹、太もも、肩、左手---

今こそ傷なんてなかったような綺麗な状態だが、本当ならば私の体は傷だらけ。

こうして、日常の何気ない至福を享受していることが信じられないくらいだ。

 

「…そういえば、前のエレメリアンのはどうだった?」

「アイツの属性力(エレメーラ)はポニーテール… 使うには、ちと扱い難いで」

 

暴れ馬ってわけか…

属性玉変換機構(エレメリーション)でも扱えるかどうか。

確か私のテイルブレスは、ポニーテールの属性玉(エレメーラオーブ)から生成されたはず。

そこで、リンにある提案をしてみた。

 

「ねぇ、それで新しいテイルブレスは作れないの?」

「今は、唯乃のレリーフに集中したいんや。ウチもそんな暇やないわ」

「そっか…」

 

期待できるとすれば、唯乃---フェニックスギルディだけか。

まぁ、ツインテイルズが前線に出るだろうし。

私の仕事も激減するだろうな…

そんなことを考えつつ、シャワーを被る。

シャワーの水によって、頭に付いた泡が落ちていく。

 

(この泡みたいに、全て洗い流せたら…)

 

叶わぬ夢を思いながら、私は蛇口をひねる。

 

 

 

 

「伊織さん、いらっしゃい」

「一輝、帰ってきとったんか」

「こんばんは~」

 

お風呂から上がり、パジャマに着替えてリビングに向かうと、テーブルに一輝君がいた。

彼の手には途中まで読んでいたであろう文庫本が。

私と違って、真面目だなぁ…

 

「そろそろできるから、支度お願いね」

「「はーい」」

 

さすが姉弟、息の合ったコンビネーションでテキパキと容器を並べていく。

だけど、その数は4人分しかない。

まだ帰ってきていないおじさんを含めたら、5人分になるはず。

 

「あの、4人分しかないんですが…?」

「あぁ。さっきお父さんから連絡が来てね。『遅くなるから、先に食べな』って」

 

それでか。

ならば、私は空いている席に座らせてもらおうかな。

場所はちょうど、一輝君と隣になる。

 

「一輝君、今晩はよろしくね」

「…わかった」

 

私が声をかけると、文庫本で顔を隠した。

何か、不味いことでも言ったのかな…?

 

「ふふっ… 青春ね~」

「それは、ちょいと(ちゃ)うとは思うけどな」

 

おばさんは口に手を当てて笑い、リンは呆れ顔で私を見る。

もう一度言うけど、不味いこと言った??

一生懸命考えてみるが、頭の回転が遅い私の中からは答えは出なかった。




しばらく出していないと、私も忘れがちになりますね。
今後は、彼を主軸とした物語を作ってみてもよさそう…?
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