Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.37【横槍を入れるなよ、ランスだけにな】

リンの後をついてきた私達が着いたのは、見慣れない部屋だった。

構造としては、一方が100mほどの立方体かな。

壁は金属製だが、ある一面のみ小さなガラスが付いている。

たぶん、あそこで観察でもするんでしょ。

 

「テスト会場はここか?」

「でなきゃ、何処で行うのよ…」

 

兎に角説明をしてもらおうとリンを探す。

しかしいつの間にか、彼女がいない。

 

『早速やけど、始めるで』

 

部屋全体から、リンの声が聞こえた。

上を見ると、ガラス越しに彼女の姿が確認できた。

 

「ってもなぁ… これ、どうやって使えばいいんだ?」

『簡単やから。アンタの武器にレリーフを付けたらええ』

 

リンの指示通り、唯乃はガンソードを形成させて、トリガー上部にレリーフを取り付けた。

確か、『フェニックスラッシューター』だっけ。

色々とくっつけたような名前で、スラッとは言えないんだよね…

瞬間、ガンソードから炎が放出し、唯乃を包んだ。

この光景はフェニックスギルディが人間体に変身する時以来だね。

 

「おぉ!? こいつはスゲェぜ!!」

 

炎の中から現れたのは、テイルギアをまとった唯乃。

カラーは紫を基調としている。

腰部分に浮遊している翼が付いている。

恐らく、スラスターなのだろうな。

あれで飛ぶと同時に、姿勢補佐を行うのかも。

 

『それじゃ、適当に飛んで』

「っしゃ!!」

 

唯乃は大きく上昇し、部屋全体を旋回した後、リンの近くまで行った。

かなりのスピードだ、それもツインテイルズをも凌駕するほどの。

 

「コイツなら、十分使えるな」

 

あっという間に制御するなんて…

吸収が早い。

 

『じゃ、実際に戦うか。伊織、よろしく』

「えっ…!?」

 

まさかの訓練の付き添いとは。

しかも、実践形式だなんて。

 

「お前もまだ、テイルギアを十分に扱えてねぇんだ。これも修行だと思って付き合え」

 

いや、貴女絶対本気でするでしょ

何度死にかけたことか…

 

『フェニックスラッシューターの性能も見たいんや。頼む』

「---わかったわよ…」

 

あんまり戦いたくないんだけどなぁ…

私は渋々テイルギアを装着した。

私のはアーマーがある分、動きに差がでるかも。

 

「いくぜっ!!」

「ちょっと-!」

 

いきなり、空中からビームの雨が降ってきた。

まぁ、ある程度距離があるから何とか避けられる。

だけど、正確な気がするど…

 

「ちまちま撃つのは合わねぇ! 今度は接近戦といくか!!」

「不味い!?」

"属性玉変換機構(エレメリーション)手属性(ハンド)"

 

唯乃が一気に距離を詰めてきた。

あのガンソードじゃ、簡単に吹き飛ばされちゃいそう…

咄嗟に私は、属性玉変換機構(エレメリーション)を起動させる。

 

「そんなちゃちい攻撃で、俺様を止められるのか?!」

 

片手持ちのガンソードを構え、切り裂こうとする唯乃。

タイミングを合わせ、私は右裏拳でそれを受け流した。

ガンソードは私を掠め、すぐそばの床にヒビを入れた。

 

「誰も止めるとは言ってない」

「何ぃ!?」

 

体重がかかった左足で、唯乃の脇腹を蹴った。

そこには何も装備されていないため、クリーンヒットした。

 

「ちっ」

 

痛みに苦悶しつつ、ガンソードを引き抜いて距離を図る。

後ろに飛ぶと同時に、更に射撃を行ってきたよ。

 

「なんの」

 

ボクシングのように、ビームをジャブで弾いていく。

今私の拳は、属性玉で強化されているから当たっても問題はない。

ビームが地面に着弾すると同時に彼女の足元に飛び込んだ。

確実に彼女の心臓部を狙ったが、ギリギリでかわされた。

地面にめり込んだ手を引き抜くと、属性玉変換機構(エレメリーション)の効果は切れていた。

 

「最初から離れて戦うべきだったぜ」

 

スラスターを起動して、浮遊している。

あの距離では、私にはどうすることもできない。

 

「今度は容赦しねぇぞ!!」

 

彼女の言葉通り、本気で狙ってきた。

全力で走り回るが、何とか避けられる感じだ。

このままじゃ、袋小路に立たされちゃう。

展開している障壁も、そろそろ---

 

(ん? 障壁??)

 

脳裏にふと、ある考えが浮かんだ。

だけどそれは咄嗟なので、自信がない。

 

「ねぇリン、障壁を足場にすることはできる?」

『できるけど、あまり持たんで。すぐに跳ばんと真っ逆さまや。そもそも、本来の使い方やないしな』

 

一瞬の足場、か…

元々は重力砲(グラビティキャノン)の調整に使用するためのものだから、当然ではあるか。

兎に角、やってみよう。

 

「やっとやる気になったか」

 

唯乃がニヤリと笑った。

同時にガンソードの引き金を引く。

私は足に力を込め、一気に跳んだ。

ビームは私の頬を僅かに掠める。

 

(って、勢いつけすぎだ!)

 

すぐに唯乃のそばまでたどり着くけど、直線的な動きだったから簡単にかわされた。

 

(するなら、ここだ!!)

 

私の数m先に障壁を展開させる。

私は、前転し身体の向きを逆にした。

やがて両足は、障壁をつかんだ。

そして---

 

「でやぁっ!!」

 

障壁を蹴る。

足が離れると同時に、障壁は壊れてしまった。

リンの言う通り、脆いみたい。

油断している唯乃にパンチをくり出した。

だけど、それはガンソードの腹で受け止められた。

 

「ちったあ、考えたな」

 

硬直状態を振りほどくために、唯乃は私を押し返す。

私は後方に障壁を展開させ、別の方向へ逃げる。

そして散乱するボールのごとく、逃げ回った。

 

(単調な動きじゃ駄目。何とか隙を作らないと…)

 

そう考えての行動だったけれど、唯乃には無駄骨だった。

しばらく動かずにいたが、ある方向へビームを撃った。

 

「ガッ…!?」

 

運悪く(・・・・)それは私の軌道上に入り、肩を掠めた。

でも、それだけでも彼女にはチャンスであった。

 

「貰ったぁ!!」

 

お腹にガンソードを叩きつけられた。

その衝撃が凄まじく、肺の空気が押し出されそうな感じだった。

その力で、私は思い切り壁に飛ばされる。

壁にクレーターを形成した後、地面に落下した。

 

『お~ぃ、無事か?』

「あちゃ~… やり過ぎたか…」

 

アーマーの厚さと日頃の鍛練のお陰で、すぐに意識は回復した。

だけどまだ、身体が思うように動けない。

感覚もマヒしている状態だ。

 

「訓練とは言っても、ここまで差が出るなんて…」

「まぁ、戦闘経験はこっちが上だ。そう簡単にやられちゃ困るな」

 

拳を握り締めるような悔しさが私を支配している。

 

「連勝したからって、良い気になるな。先はまだ長い」

「そうね」

「さっきの仕合でもそうだ。俺様だったらな、もっと---」

 

唯乃が私にアドバイスをしようとしたが、遮られてしまう。

突如、彼女が苦しみだしたのだ。

テイルギアから、多数の放電が発生している。

 

「どうしたの…?」

 

しかし、私には手を差し出すこともできずにいた。

できることは、声をかけるのみ。

 

「ぐあああぁぁっ!?」

 

放電が最高潮に達すると同時に、変身が強制的に解除された。

私のように倒れはしないが、片膝を着いて荒い息遣いに変化した。

 

「何だ、今の…?」

 

どうやら本人にも理由が分からないみたい。

自分でも信じられないといった表情をしているのだろう。

 

『まだ不安定やな。これやと実践は不可能や』

「何だと!?」

 

リンがあれほど苦心して調整したレリーフがまだ不安定らしい。

もし問題なく使えていれば、ツインテイルズを凌駕すると思ったのに…

 

『テストはそこまで。唯乃、レリーフをまた渡してくれへんか?』

「ちっ、わかったよ」

 

そんな感じで終わるかと思ったが、更なる異変が私達を襲う。

基地全体に、けたましい警報が鳴り響いたからだ。

 

「これは…?」

『エレメリアン反応を感知! S県の記念病院や』

「でも…」

 

私も満足には動けないだろうし。

唯乃も、突然の不調で戦えない。

 

「今回はツインテイルズだけじゃ、厳しいだろうな。兎に角行って来い」

「---わかった」

 

ダメージが残る身体を引きずりながら、私は転送装置のある場所に向かった。

 

☆☆☆

 

俺達が見たのは、滑稽なものだった。

 

「はいはい急患です。どいてください-!!」

「ちょっと、私は何処も悪くありません! 早く降ろしてください!!」

 

何処も怪我をしていない、至って健康な看護士がストレッチャーに乗せられ、エレメリアンに運ばれるという光景であった。

 

「ちょっと待ちなさいよ!!」

「ムッ、ツインテイルズか!?」

 

ようやく気付いたエレメリアンだが、無視してストレッチャーを運ぶ。

 

「テメェ… さっさと看護士さんを離せ!!」

「やはり直球だな」

 

俺は怒りのままに、エレメリアンへと走る。

ブレイザーブレイドを下段から上段に構え直し、切り裂こうとした。

対して彼は、呆れながらもストレッチゃーを蹴る。

俺は彼のレイピアに軽く当てた後、反動を利用してストレッチャーへ向かった。

 

「大丈夫ですか?」

「はい。ありがとうございます、テイルレッドさん」

 

ストレッチャーを力づくで止めたことで、看護士さんを救出することに成功した。

彼女をストレッチャーから降ろし、逃がそうと思ったが、彼女は予想外な行動をしだした。

 

「はあぁ… 可愛い」

「うぷっ」

 

俺をうっとりと見つめると、彼女は俺を抱き締めたのだ。

今の俺の姿はテイルレッドで、背丈がかなり低い。

必然的に俺は彼女の胸元に抱かれる形になってしまった。

 

「一般人だからって、やっていいことと悪いことがあるでしょ!!」

 

一足で俺のところに着くと、看護士さんの襟首を掴んだ。

そしてテイルギアの出力を利用して、無理矢理剥がした。

 

「あんたじゃ駄目ね。イエロー、御願いできる?」

「勿論ですわ」

 

エレメリアンの足元にエネルギー弾を乱射することで、動きを封じ込める。

撃ち終わると同時に、ブルーは看護士を乱暴に投げる。

 

「おい、一般人にそんな扱いはねぇだろ」

「キチンとコントロールしているから安心して」

 

彼女の言葉通り、山なりに投げられた彼女は綺麗にイエローに届いた。

上から落ちてくる形であるため、自然とお姫様抱っこになってしまった。

 

「あぁ、イエローに抱っこされちゃった… もうお嫁にいけない」

「なっ!? それは酷いですわ!!」

 

確かイエローも、メディアでは変人扱いされていたんだ。

それを差し引いても、これは酷すぎる。

 

「どうせなら、テイルレッドちゃんにしてもらいたかった…」

 

そう愚痴をこぼす看護師さんの目には、涙が。

したくてもできないだろうな。

例えば、身長差とか体格とか見た目とか。

絶対支えきれない。

 

「ったく、早く安全な場所に避難させて!」

「わかりましたわ」

 

妙なやり取りに業を煮やしたのか、ブルーは急かせる。

指示を受けたイエローは紐属性(リボン)を発動させ、この戦域から離脱した。

 

「さて、この私と一戦交えてもらいたい」

「良いわよ」

 

エレメリアンの誘いに、ブルーは乗り気のようだ。

しかし、それは彼にとって不満でしかなかった。

 

「この私、看護士属性(ナース)のスワンギルディが望むのは、テイルレッドのみ! お前には聞いていない!!」

「なんですって…!?」

 

蚊帳の外に投げ出されたブルーは、軽くイラついていた。

こめかみに血管が浮いているのが、その証拠だ。

 

『随分と邪険にされてますね。まぁ、今までの行いを振り替えれば当然の解釈ですが』

「何よ、エレメリアンを倒して悪い!?」

 

トゥアールの通信にキレ気味に反論するブルー。

倒すこと事態は悪くないけど、方法がなぁ…

それさえ無ければ、今頃は違う評価を得たかもしれない。

 

「ブルー、お前には戦闘員(アルティロイド)と戦ってもらうとしよう」

 

その言葉を合図に、戦闘員が次々にわいてきた。

数はざっと200ってところか。

 

「まるでドラグギルディの時ね」

 

この状況、ブルーにも思う節はあったか。

あの戦いに勝ったことで、俺達の仲間であるイエローが生まれたんだ。

 

「さっさと片付けてくるから、その間エレメリアンを抑えておいて」

 

どうやら最後は、自分が止めを刺したいらしい。

自然とウェイブランスを握る手を強める。

 

「それじゃ、お望み通り戦うか」

 

俺もブレイザーブレイドを正眼に構え、突出する。

対してアルティメギル側は、スワンギルティのみ動かない。

中間で俺と戦闘員は交差し、それぞれの敵に向かった。

 

「我が修行の成果を見せてやる!」

 

スワンギルディが繰り出すのは、レイピアによる突きの連続攻撃。

まるで雨のように隙が全く無い。

ブレイザーブレイドをレイピアの来る方向へ向けるが、なにぶん接地面が小さいので、何発かは掠めてしまう。

 

「何故そうまでして、俺を狙う!?」

「決まったことを。私はお前に、お前のツインテールに恋したからだ!!」

 

ハァ!?と思ったが、俺の正体が男であることは一般に知られていない。

エレメリアンには、ツインテールを宿した女の子に見えるだろうな。

 

「だからこそお前に、我が愛の突撃を受けてもらいたい!」

「そう喰らって、たまるかってんだ!?」

 

余裕の表情を見せるが、実際かなり危うい。

どうやら俺を目標に修行したのは、本当のことらしい。

やがてその攻撃は、ツインテールを構成するフォースリボンを掠める。

 

「おっと… リボンを掠めてしまったか。だが、ツインテールが無事ならば問題ない」

 

その謝罪の仕方に、俺は怒りを覚えた。

この考え方をしたのは、異世界のポニーテール騎士以来だ。

 

「問題ありだ! リボンが無くなれば、ツインテールができないじゃないか!?」

「確かにそうだ…!」

 

これ以上ツインテールが侮辱されないためにも、ここで終わらせる!!

無意識の内にプログレスバレッターを取り出し、フォースリボンに装着する。

 

"形態変化(チェインカスタム)、ライザーチェイン"

 

テイルギアを安定化させるための力すら攻撃力に転換させる形態(チェイン)

その代償に、この姿での稼働時間は22秒。

それまでに再び元のテイルレッド(ノーマル)に戻さないと暴走(オーバーフロー)を起こす危険性が出る。

 

「絶対に、許さねぇ!!」

「ぐわぁぁ!!」

 

怒りに身を任せ、上段から真っ向両断を放つ。

それによりレイピアは途中から折れる形となった。

それに終わらず、突きでスワンギルディを弾き飛ばした。

 

「これで---」

「スト-ップ!!」

 

オーラピラーを撃たずに必殺技を使おうとしたけど、ブルーに止められてしまった。

 

「何!?」

「何しやがる、ブルー!!」

 

戦闘員を全て倒してきたのだろうな。

俺は彼女の行動を疑問視したが、彼女に問うことはできなかった。

見れば、首筋にウェイブランスの刃を当てられている。

 

「私に代わりなさい」

「…ハイ」

 

その尋常じゃない威圧感に、俺は従うしかなかった。

プログレスバレッターとブレイザーブレイドを解除し、両手を上に挙げて『降参』した。

 

「素直でよろしい」

 

俺に戦う意志が無いことを知ると、ランスを戻した。

それと同時に、俺のそばから投擲した。

 

「「なっ…!?」」

 

折れたレイピアでは到底受けきれず、スワンギルディは後ろに飛ばされてしまう。

 

「"オーラピラー"ッ!!」

「ヌグァッ!!」

 

その隙を逃さず捕縛陣を展開、彼を拘束した。

彼に投擲したウェイブランスは、山なりに軌道を描いた後に彼女の手に戻る。

 

「"完全開放(ブレイクレリース)、エグゼキュートウェーブ!!"」

 

青色に発行したウェイブランスは、彼女の投擲により再びスワンギルテディを目指す。

 

「倒されるなら、やっぱりテイルレッドたんが良い---ッ!!」

 

オーラピラーによって動けずにいるスワンギルディに、止めが刺された。

そうなる、はずだった。

 

「「!?」」

 

あと僅かの距離で、ウェイブランスが止まっている。

否、止められたのだ。

 

「相変わらず、ブルーは横槍を入れてくれるぜ。折角スワンギルディが武士道を見せたってのに」

 

反対の手で頭を掻くのは、仲間のエレメリアンだった。

顔はライオンで、たてがみの後ろがかなり伸びている。

何処か拳闘士を彷彿させる格好であることから、軽量タイプのエレメリアンなのだろう。

並のエレメリアンでないことは、先程の技量で分かる。

ブルーでなくても、飛んでいる槍を掴むのは至難の技だからだ。

 

「お前…一体誰だ!?」

 

ブレイザーブレイドを構え、彼の名を聞く。

万が一に備え、プログレスバレッターも用意しておく。

 

「俺か? 俺は格闘家属性(ファイター)のライオギルディだ。この無用な戦いを終わらせようと思ってな」

 

彼はめんどくさそうに俺達の方に向いた。

首を何度か左右に鳴らし、面倒くさそうな目で俺達を見る。

 

「無精のスワンギルティに変わって、俺が相手をしてやる」

 

その顔には狂喜が見える、俺はそう感じた。




原作とかなり時間系列が違うかもしれません。
でもそうしなければ、オリキャラが光りませんから…
しかし、他作品でもオリジナルの敵が次々と出てきました。
何とか被らないようにせにゃあ…
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