リンの後をついてきた私達が着いたのは、見慣れない部屋だった。
構造としては、一方が100mほどの立方体かな。
壁は金属製だが、ある一面のみ小さなガラスが付いている。
たぶん、あそこで観察でもするんでしょ。
「テスト会場はここか?」
「でなきゃ、何処で行うのよ…」
兎に角説明をしてもらおうとリンを探す。
しかしいつの間にか、彼女がいない。
『早速やけど、始めるで』
部屋全体から、リンの声が聞こえた。
上を見ると、ガラス越しに彼女の姿が確認できた。
「ってもなぁ… これ、どうやって使えばいいんだ?」
『簡単やから。アンタの武器にレリーフを付けたらええ』
リンの指示通り、唯乃はガンソードを形成させて、トリガー上部にレリーフを取り付けた。
確か、『フェニックスラッシューター』だっけ。
色々とくっつけたような名前で、スラッとは言えないんだよね…
瞬間、ガンソードから炎が放出し、唯乃を包んだ。
この光景はフェニックスギルディが人間体に変身する時以来だね。
「おぉ!? こいつはスゲェぜ!!」
炎の中から現れたのは、テイルギアをまとった唯乃。
カラーは紫を基調としている。
腰部分に浮遊している翼が付いている。
恐らく、スラスターなのだろうな。
あれで飛ぶと同時に、姿勢補佐を行うのかも。
『それじゃ、適当に飛んで』
「っしゃ!!」
唯乃は大きく上昇し、部屋全体を旋回した後、リンの近くまで行った。
かなりのスピードだ、それもツインテイルズをも凌駕するほどの。
「コイツなら、十分使えるな」
あっという間に制御するなんて…
吸収が早い。
『じゃ、実際に戦うか。伊織、よろしく』
「えっ…!?」
まさかの訓練の付き添いとは。
しかも、実践形式だなんて。
「お前もまだ、テイルギアを十分に扱えてねぇんだ。これも修行だと思って付き合え」
いや、貴女絶対本気でするでしょ
何度死にかけたことか…
『フェニックスラッシューターの性能も見たいんや。頼む』
「---わかったわよ…」
あんまり戦いたくないんだけどなぁ…
私は渋々テイルギアを装着した。
私のはアーマーがある分、動きに差がでるかも。
「いくぜっ!!」
「ちょっと-!」
いきなり、空中からビームの雨が降ってきた。
まぁ、ある程度距離があるから何とか避けられる。
だけど、正確な気がするど…
「ちまちま撃つのは合わねぇ! 今度は接近戦といくか!!」
「不味い!?」
"
唯乃が一気に距離を詰めてきた。
あのガンソードじゃ、簡単に吹き飛ばされちゃいそう…
咄嗟に私は、
「そんなちゃちい攻撃で、俺様を止められるのか?!」
片手持ちのガンソードを構え、切り裂こうとする唯乃。
タイミングを合わせ、私は右裏拳でそれを受け流した。
ガンソードは私を掠め、すぐそばの床にヒビを入れた。
「誰も止めるとは言ってない」
「何ぃ!?」
体重がかかった左足で、唯乃の脇腹を蹴った。
そこには何も装備されていないため、クリーンヒットした。
「ちっ」
痛みに苦悶しつつ、ガンソードを引き抜いて距離を図る。
後ろに飛ぶと同時に、更に射撃を行ってきたよ。
「なんの」
ボクシングのように、ビームをジャブで弾いていく。
今私の拳は、属性玉で強化されているから当たっても問題はない。
ビームが地面に着弾すると同時に彼女の足元に飛び込んだ。
確実に彼女の心臓部を狙ったが、ギリギリでかわされた。
地面にめり込んだ手を引き抜くと、
「最初から離れて戦うべきだったぜ」
スラスターを起動して、浮遊している。
あの距離では、私にはどうすることもできない。
「今度は容赦しねぇぞ!!」
彼女の言葉通り、本気で狙ってきた。
全力で走り回るが、何とか避けられる感じだ。
このままじゃ、袋小路に立たされちゃう。
展開している障壁も、そろそろ---
(ん? 障壁??)
脳裏にふと、ある考えが浮かんだ。
だけどそれは咄嗟なので、自信がない。
「ねぇリン、障壁を足場にすることはできる?」
『できるけど、あまり持たんで。すぐに跳ばんと真っ逆さまや。そもそも、本来の使い方やないしな』
一瞬の足場、か…
元々は
兎に角、やってみよう。
「やっとやる気になったか」
唯乃がニヤリと笑った。
同時にガンソードの引き金を引く。
私は足に力を込め、一気に跳んだ。
ビームは私の頬を僅かに掠める。
(って、勢いつけすぎだ!)
すぐに唯乃のそばまでたどり着くけど、直線的な動きだったから簡単にかわされた。
(するなら、ここだ!!)
私の数m先に障壁を展開させる。
私は、前転し身体の向きを逆にした。
やがて両足は、障壁をつかんだ。
そして---
「でやぁっ!!」
障壁を蹴る。
足が離れると同時に、障壁は壊れてしまった。
リンの言う通り、脆いみたい。
油断している唯乃にパンチをくり出した。
だけど、それはガンソードの腹で受け止められた。
「ちったあ、考えたな」
硬直状態を振りほどくために、唯乃は私を押し返す。
私は後方に障壁を展開させ、別の方向へ逃げる。
そして散乱するボールのごとく、逃げ回った。
(単調な動きじゃ駄目。何とか隙を作らないと…)
そう考えての行動だったけれど、唯乃には無駄骨だった。
しばらく動かずにいたが、ある方向へビームを撃った。
「ガッ…!?」
でも、それだけでも彼女にはチャンスであった。
「貰ったぁ!!」
お腹にガンソードを叩きつけられた。
その衝撃が凄まじく、肺の空気が押し出されそうな感じだった。
その力で、私は思い切り壁に飛ばされる。
壁にクレーターを形成した後、地面に落下した。
『お~ぃ、無事か?』
「あちゃ~… やり過ぎたか…」
アーマーの厚さと日頃の鍛練のお陰で、すぐに意識は回復した。
だけどまだ、身体が思うように動けない。
感覚もマヒしている状態だ。
「訓練とは言っても、ここまで差が出るなんて…」
「まぁ、戦闘経験はこっちが上だ。そう簡単にやられちゃ困るな」
拳を握り締めるような悔しさが私を支配している。
「連勝したからって、良い気になるな。先はまだ長い」
「そうね」
「さっきの仕合でもそうだ。俺様だったらな、もっと---」
唯乃が私にアドバイスをしようとしたが、遮られてしまう。
突如、彼女が苦しみだしたのだ。
テイルギアから、多数の放電が発生している。
「どうしたの…?」
しかし、私には手を差し出すこともできずにいた。
できることは、声をかけるのみ。
「ぐあああぁぁっ!?」
放電が最高潮に達すると同時に、変身が強制的に解除された。
私のように倒れはしないが、片膝を着いて荒い息遣いに変化した。
「何だ、今の…?」
どうやら本人にも理由が分からないみたい。
自分でも信じられないといった表情をしているのだろう。
『まだ不安定やな。これやと実践は不可能や』
「何だと!?」
リンがあれほど苦心して調整したレリーフがまだ不安定らしい。
もし問題なく使えていれば、ツインテイルズを凌駕すると思ったのに…
『テストはそこまで。唯乃、レリーフをまた渡してくれへんか?』
「ちっ、わかったよ」
そんな感じで終わるかと思ったが、更なる異変が私達を襲う。
基地全体に、けたましい警報が鳴り響いたからだ。
「これは…?」
『エレメリアン反応を感知! S県の記念病院や』
「でも…」
私も満足には動けないだろうし。
唯乃も、突然の不調で戦えない。
「今回はツインテイルズだけじゃ、厳しいだろうな。兎に角行って来い」
「---わかった」
ダメージが残る身体を引きずりながら、私は転送装置のある場所に向かった。
☆☆☆
俺達が見たのは、滑稽なものだった。
「はいはい急患です。どいてください-!!」
「ちょっと、私は何処も悪くありません! 早く降ろしてください!!」
何処も怪我をしていない、至って健康な看護士がストレッチャーに乗せられ、エレメリアンに運ばれるという光景であった。
「ちょっと待ちなさいよ!!」
「ムッ、ツインテイルズか!?」
ようやく気付いたエレメリアンだが、無視してストレッチャーを運ぶ。
「テメェ… さっさと看護士さんを離せ!!」
「やはり直球だな」
俺は怒りのままに、エレメリアンへと走る。
ブレイザーブレイドを下段から上段に構え直し、切り裂こうとした。
対して彼は、呆れながらもストレッチゃーを蹴る。
俺は彼のレイピアに軽く当てた後、反動を利用してストレッチャーへ向かった。
「大丈夫ですか?」
「はい。ありがとうございます、テイルレッドさん」
ストレッチャーを力づくで止めたことで、看護士さんを救出することに成功した。
彼女をストレッチャーから降ろし、逃がそうと思ったが、彼女は予想外な行動をしだした。
「はあぁ… 可愛い」
「うぷっ」
俺をうっとりと見つめると、彼女は俺を抱き締めたのだ。
今の俺の姿はテイルレッドで、背丈がかなり低い。
必然的に俺は彼女の胸元に抱かれる形になってしまった。
「一般人だからって、やっていいことと悪いことがあるでしょ!!」
一足で俺のところに着くと、看護士さんの襟首を掴んだ。
そしてテイルギアの出力を利用して、無理矢理剥がした。
「あんたじゃ駄目ね。イエロー、御願いできる?」
「勿論ですわ」
エレメリアンの足元にエネルギー弾を乱射することで、動きを封じ込める。
撃ち終わると同時に、ブルーは看護士を乱暴に投げる。
「おい、一般人にそんな扱いはねぇだろ」
「キチンとコントロールしているから安心して」
彼女の言葉通り、山なりに投げられた彼女は綺麗にイエローに届いた。
上から落ちてくる形であるため、自然とお姫様抱っこになってしまった。
「あぁ、イエローに抱っこされちゃった… もうお嫁にいけない」
「なっ!? それは酷いですわ!!」
確かイエローも、メディアでは変人扱いされていたんだ。
それを差し引いても、これは酷すぎる。
「どうせなら、テイルレッドちゃんにしてもらいたかった…」
そう愚痴をこぼす看護師さんの目には、涙が。
したくてもできないだろうな。
例えば、身長差とか体格とか見た目とか。
絶対支えきれない。
「ったく、早く安全な場所に避難させて!」
「わかりましたわ」
妙なやり取りに業を煮やしたのか、ブルーは急かせる。
指示を受けたイエローは
「さて、この私と一戦交えてもらいたい」
「良いわよ」
エレメリアンの誘いに、ブルーは乗り気のようだ。
しかし、それは彼にとって不満でしかなかった。
「この私、
「なんですって…!?」
蚊帳の外に投げ出されたブルーは、軽くイラついていた。
こめかみに血管が浮いているのが、その証拠だ。
『随分と邪険にされてますね。まぁ、今までの行いを振り替えれば当然の解釈ですが』
「何よ、エレメリアンを倒して悪い!?」
トゥアールの通信にキレ気味に反論するブルー。
倒すこと事態は悪くないけど、方法がなぁ…
それさえ無ければ、今頃は違う評価を得たかもしれない。
「ブルー、お前には
その言葉を合図に、戦闘員が次々にわいてきた。
数はざっと200ってところか。
「まるでドラグギルディの時ね」
この状況、ブルーにも思う節はあったか。
あの戦いに勝ったことで、俺達の仲間であるイエローが生まれたんだ。
「さっさと片付けてくるから、その間エレメリアンを抑えておいて」
どうやら最後は、自分が止めを刺したいらしい。
自然とウェイブランスを握る手を強める。
「それじゃ、お望み通り戦うか」
俺もブレイザーブレイドを正眼に構え、突出する。
対してアルティメギル側は、スワンギルティのみ動かない。
中間で俺と戦闘員は交差し、それぞれの敵に向かった。
「我が修行の成果を見せてやる!」
スワンギルディが繰り出すのは、レイピアによる突きの連続攻撃。
まるで雨のように隙が全く無い。
ブレイザーブレイドをレイピアの来る方向へ向けるが、なにぶん接地面が小さいので、何発かは掠めてしまう。
「何故そうまでして、俺を狙う!?」
「決まったことを。私はお前に、お前のツインテールに恋したからだ!!」
ハァ!?と思ったが、俺の正体が男であることは一般に知られていない。
エレメリアンには、ツインテールを宿した女の子に見えるだろうな。
「だからこそお前に、我が愛の突撃を受けてもらいたい!」
「そう喰らって、たまるかってんだ!?」
余裕の表情を見せるが、実際かなり危うい。
どうやら俺を目標に修行したのは、本当のことらしい。
やがてその攻撃は、ツインテールを構成するフォースリボンを掠める。
「おっと… リボンを掠めてしまったか。だが、ツインテールが無事ならば問題ない」
その謝罪の仕方に、俺は怒りを覚えた。
この考え方をしたのは、異世界のポニーテール騎士以来だ。
「問題ありだ! リボンが無くなれば、ツインテールができないじゃないか!?」
「確かにそうだ…!」
これ以上ツインテールが侮辱されないためにも、ここで終わらせる!!
無意識の内にプログレスバレッターを取り出し、フォースリボンに装着する。
"
テイルギアを安定化させるための力すら攻撃力に転換させる
その代償に、この姿での稼働時間は22秒。
それまでに再び
「絶対に、許さねぇ!!」
「ぐわぁぁ!!」
怒りに身を任せ、上段から真っ向両断を放つ。
それによりレイピアは途中から折れる形となった。
それに終わらず、突きでスワンギルディを弾き飛ばした。
「これで---」
「スト-ップ!!」
オーラピラーを撃たずに必殺技を使おうとしたけど、ブルーに止められてしまった。
「何!?」
「何しやがる、ブルー!!」
戦闘員を全て倒してきたのだろうな。
俺は彼女の行動を疑問視したが、彼女に問うことはできなかった。
見れば、首筋にウェイブランスの刃を当てられている。
「私に代わりなさい」
「…ハイ」
その尋常じゃない威圧感に、俺は従うしかなかった。
プログレスバレッターとブレイザーブレイドを解除し、両手を上に挙げて『降参』した。
「素直でよろしい」
俺に戦う意志が無いことを知ると、ランスを戻した。
それと同時に、俺のそばから投擲した。
「「なっ…!?」」
折れたレイピアでは到底受けきれず、スワンギルディは後ろに飛ばされてしまう。
「"オーラピラー"ッ!!」
「ヌグァッ!!」
その隙を逃さず捕縛陣を展開、彼を拘束した。
彼に投擲したウェイブランスは、山なりに軌道を描いた後に彼女の手に戻る。
「"
青色に発行したウェイブランスは、彼女の投擲により再びスワンギルテディを目指す。
「倒されるなら、やっぱりテイルレッドたんが良い---ッ!!」
オーラピラーによって動けずにいるスワンギルディに、止めが刺された。
そうなる、はずだった。
「「!?」」
あと僅かの距離で、ウェイブランスが止まっている。
否、止められたのだ。
「相変わらず、ブルーは横槍を入れてくれるぜ。折角スワンギルディが武士道を見せたってのに」
反対の手で頭を掻くのは、仲間のエレメリアンだった。
顔はライオンで、たてがみの後ろがかなり伸びている。
何処か拳闘士を彷彿させる格好であることから、軽量タイプのエレメリアンなのだろう。
並のエレメリアンでないことは、先程の技量で分かる。
ブルーでなくても、飛んでいる槍を掴むのは至難の技だからだ。
「お前…一体誰だ!?」
ブレイザーブレイドを構え、彼の名を聞く。
万が一に備え、プログレスバレッターも用意しておく。
「俺か? 俺は
彼はめんどくさそうに俺達の方に向いた。
首を何度か左右に鳴らし、面倒くさそうな目で俺達を見る。
「無精のスワンギルティに変わって、俺が相手をしてやる」
その顔には狂喜が見える、俺はそう感じた。
原作とかなり時間系列が違うかもしれません。
でもそうしなければ、オリキャラが光りませんから…
しかし、他作品でもオリジナルの敵が次々と出てきました。
何とか被らないようにせにゃあ…