Which do you love ?   作:ズケズケ

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Episode.38【道草って、食べられる?】

会議室に喚声が上がる。

会議室中央に映し出されているのは、危機に陥ったスワンギルディを救ったところである。

 

「やるではないか。最初に現れないと思えば、全滅を回避するためであったか…」

「まさかランスを止めるなんて… 一体何処でそんな力を?」

 

会議室中のエレメリアンのみならず、美の四心(ビー・テイフル・ハート)の2体も驚いていた。

だが1体、この映像を異なる見方をしている者がいる。

 

「あの力は、やはり"師範"の… これでますます面白味が増すね」

 

壁際で腕を組み、ニヤリと笑った。

 

「これなら、ツインテイルズに勝てる!!」

「行けー、ライオギルディ!!」

 

皆が盛り上がる中、隊長と副官はこの事態の静観に徹底した。

 

☆☆☆

 

無精(ぶしょう)のスワンギルディに代わって、この俺がツインテイルズの相手をする」

 

そう高らかに宣戦布告するライオギルディだが、面倒くさそうに話しているのでいまひとつやる気が見えない。

こいつ、本当に闘う意志があるのか?

襲撃を危険視したのか、ブルーはウェイブランスを解除した。

なので、彼の手にそれは握られていない。

 

「待て、ライオギルディ。お前では、ブルーに殺されr---」

「お前は黙っていろ」

 

今だオーラピラーに拘束されて、動けないでいるスワンギルディが止めようとするが、彼に軽くあしらわれてしまう。

敵である俺達に背を向け、彼はスワンギルディの方へ向かう。

 

(何をする気だ…?)

 

彼の前に立つと、右腕を彼に構えた。

手の平を広げつつも、指先は半分ほど曲げている。

まるで、何かを鷲掴みにするみたいな。

 

「お前、一体何を---」

「だから黙れと言ったろ!」

 

怯えるスワンギルディに対し、ライオギルディは手の平を地面に叩きつける。

その衝撃でスワンギルディ周辺の地面に亀裂が生じ、大きく崩壊し始めた。

安定した足場を失ったため、オーラピラーは効果を急速に失った。

結果、スワンギルディはよろめきながらも脱出に成功した。

 

『そんな…!? いくらエレメリアンでもオーラピラーはそう簡単に壊せないはず!!』

 

トゥアールも通信を通して、驚きを隠せないでいる。

だけど、今目の前でそれが起こった。

ここまで掟破りなエレメリアンに出会うのは、俺も初めてだ。

 

「どうやって、この捕縛陣を…!?」

「無駄口叩く暇があったら、さっさと離脱しろ!」

 

負傷しているスワンギルディに、顔面を鷲掴みにするライオギルディ。

片手でエレメリアンを持ち上げるなんて、かなりのパワーがあるぞ。

 

「(スワンギルディに就いた部隊は、撮影隊を除いて全滅か…)おい、一中隊はスワンギルディを護衛しつつ、基地に帰還しろ!!」

『モケケ-ッ!!』

 

また別の戦闘員が現れ、スワンギルディを何処かに連れて行った。

こいつ、戦闘馬鹿と思っていたが、実際は幹部クラスか!?

 

「さて、これで堂々と戦える」

「「……」」

 

指を鳴らし、ウォーミングアップを行うライオギルテディ。

 

「レッド、ブルー… 楽しもうじゃないか」

 

彼は構える。

そして、大地を蹴った。

 

「最も---」

 

俺達の向こう側にいたはずの彼は消えた。

しかし気付いた時には、隣にいるブルーの腹に拳が入れられていた。

 

「ガッ…!?」

「ブルーッ!!」

「こちらの言い分を聞かない奴は、容赦しない」

 

身体をくの字に折り曲げられたまま、病院の壁に飛ばされる。

間を空けずに、ライオギルディはそばにある乗用車を片手で掴み、ブルーに投げ込んだ。

そして彼女は、壁と乗用車にサンドされてしまった。

 

「さぁ、次はレッド… お前だ」

「……」

『総二様、早く逃げてください!! このエレメリアンは危険です』

 

勝てる訳がない。

逃げるにしても、あのスピードではすぐに追い付かれる。

フェニックスギルディとは別の恐怖が俺を襲う。

 

「どう料理しようか… ぬっ?」

 

突如、上空から弾丸の雨が降ってきた。

これは---

 

「ご無事ですか!?」

「イエロー!!」

 

助かった!!

空中から援護射撃をしてくれたのか。

紐属性(リボン)の飛行能力を利用し、俺のいる場所にゆっくりと降り立った。

 

「レッド、ご無事でなによりです」

「テイルイエロー… 水を差すな!!」

 

イエローは俺の無事を確認して安堵した。

しかし突然の乱入で、ライオギルディは御立腹のようだ。

 

「ところで、ブルーはどちらに?」

 

この疑問は、俺の心に深くえぐっていく。

あの惨劇がまだ残っているからだ。

 

「ブルーは---」

「ブルーなら、そこで寝ている」

 

中々切り出せずにいる俺の代わりに、ライオギルディが答える。

彼の指の先は、先程投げ込まれた乗用車を指している。

イエローは瞬時に理解はするが、その事実を認められない。

 

「そんな… 嘘ですわ。ブルーが倒されるなんて」

「……」

 

俺は何も言えなかった。

否定も、慰めさえも。

俺の身体的能力、そして機転の利かなさを呪った。

 

「---許しませんわっ!!」

 

涙を目尻に貯めた彼女は、倒した本人に容赦ない攻撃を浴びせる。

普段の乱れ撃ちではなく、一点集中砲火である。

その威力は凄まじく、ライオギルディ周辺を爆煙に包み込んだ。

 

「ブルー、仇は討ちまs---」

「生死確認は怠るなっての」

 

その答えは、俺達の上空から出てきた。

全身に土埃を被せてはいるが、ほぼ無傷。

 

「面白いもの見せてくれたお礼だ」

 

またも薄気味悪い笑みを浮かべると、吼えた。

大気を振るわせる攻撃は、確実に俺達を狙ってやがる。

 

「チッ…!」

 

辛うじて、横へ跳んだ俺は回避できた。

だが、武装を詰め込んだイエローはその重さ故にそれができなかった。

 

「無事か!?」

「えぇ… しかし、武装の大半は使用不可となりましたわ」

 

彼女の周りに散らばる武装を見れば、小さく放電しているものが多い。

これでは、満足には使えないだろう。

 

「"獅子咆哮"… 俺の技の一つだ。貴様らがどの属性力(エレメーラ)を使おうが、この技は防げまい」

 

俺達の後ろに着地したライオギルディは、俺達を見ずにそう自慢げに話す。

確かにどの属性玉変換機構(エレメリーション)を使っても、効果が無いのは見え見えだ。

恐らくあれは、遠吠えのごとく空気を震わせて相手に攻撃を与える技。

乳属性(バスト)を使用しても、効果は半減できないはず。

 

(可能性があるとすれば、属性玉多重変換機構(エレメアディッション)か…)

 

俺は数少ない希望にすがろうとした。

 

「行くぞ、レッドォ!!」

 

迷いもなく、真っ直ぐ俺に突っ込んでくる。

もう目と鼻の先という距離まで詰められたとき、何かが両者の間を埋めた。

 

「「!?」」

 

その前に危険を本能で感知したのか、俺は自然に後ろに下がっていた。

見れば、それはボディが酷く破損した()()()だ。

 

「ィ、イエロー!?」

 

更にその自動車の前には、ほとんど戦えない状態だったはずのイエローがいた。

しかも、何気に構えながら。

 

「レッドには、指1本触れさせませんわ!!」

 

その決め台詞と共に、乗用車を蹴り上げる。

何処にそんな力が、と思っていたがそれはすぐに理解できた。

右太腿のホルダーにボルティックブラスターが装着されている。

ならば、答えは明白。

 

"属性玉多重変換機構(エレメアディッション)脚属性(レッグ)兎属性(ラビット)"

「グヌオゥ!?」

 

乗用車は上手くライオギルディを巻き込んだみたいだ。

しかし、ただやられる彼ではなかった。

 

「ケッ、甘く見るn---」

 

自慢の拳で乗用車を粉々にしたが、更に驚きの顔をした。

彼を青い線が貫いたからだ。

まともに喰らった彼は、着地できずに落下した。

 

「それは私の台詞よ… 私は案外、タフなんだから」

 

うつ伏せになっているブルーが、誇らしげに言った。

あの状態から、"エグゼキュートウェーブ"を放ったのか…

彼女の気合いもそうだが、ブルーとイエローのコンビネーションもスゲェ…

 

「なめてたぜ。それで性格が少し丸けりゃな…」

 

右肩を押さえつつ、ライオギルティは苦笑いをした。

あの変格的な攻撃ですら、奴を倒しきれなかったか…

だけど、これで道筋は付けられたかもしれない。

 

「あの絶望的な状況でよく…」

『これで3人揃いましたか。しかし、それでも状況は好転するかどうか…』

 

ん、3人?

そうか、あの手が使える!!

 

"属性玉変換機構(エレメリーション)三つ編み属性(トライプライド)"

 

俺は属性玉変換機構(エレメリーション)を起動させる。

破損したイエローの武装は、普段よりも遅めにだがユナイトウェポンを形成する。

 

「無茶ですわ! わたくしの傷付いた武装では、十分な威力は出ませんわ!!」

『撃てば、こちらが吹き飛ばされる可能性が高いです! お止めください!!』

 

イエローとトゥアールが止めにかかるが、あえて無視した。

たまに強引にしなければ、開かれない道だってあるんだ!!

 

「奴を怯ませれば、それで十分だ。後は俺一人で倒す!!」

 

今までおじけついて戦えなかった分を、取り返す。

ブルーやイエローに戦わせてばかりするわけには、いかない。

 

「"フュージョニックバスター"、ファイアーッ!!」

 

放たれた大質量の光線はライオギルティを襲った。

なんとか上手く発動できたが、トゥアールの言う通り長くは持たなかったようだ。

発射前に生じていた放電は大きくなり---

 

「「きゃああぁっ!!」」

『ブルー、イエロー!?』

 

思いっきり壊れてしまい、破片がブルーとイエローを襲った。

だが俺は、破片を掻い潜った。

どうやって?

 

"形態変化(チェインカスタム)、フォーラーチェイン"

 

スピードに特化した形態変化を行い、低姿勢で接近する。

ブレイザーブレイドはもう1本ある。

まだ、倒す手段はあるんだ!!

 

「ツインテールの底力、見せてやる!」

 

ライオギルディが見えないほどの高速移動を行いつつ、全方位からの連続攻撃を放った。

彼は構える顎を守るように両手を交差させ、防御に集中している。

 

(これなら押し切れる!)

「"オーラピラー"!!」

 

止めを刺そうと、彼を完全に封じ込めに入る。

防御体勢にあった彼は、回避することなく受けた。

 

「なるほど… 確かに動けねぇなぁ」

 

彼は余裕の表情を見せる。

すぐにその余裕をブッ飛ばす!!

 

「"ライジングブレイザー"!」

 

彼の正面を狙うため、上段にブレイドを構える。

 

()()エレメリアンならな」

"獅子咆哮"

 

まさか、オーラピラーを破壊する程の威力なんて…

オーラピラーを破壊したその技は、俺をも襲った。

それにより、俺はブレイドを降り下ろすタイミングがずれてしまった。

だが彼には、それで十分だった。

 

「あぅぅ…」

「埃まみれ、しかし何処か凛々しい顔… これでこそ、格闘家の顔だな」

 

ライオギルディは、左腕で俺の身体を掴んだ。

かなりの力で掴んでいるのか、身体が悲鳴をあげている。

両手でブレイドを掴んだままだったので、全く動けないわけではない。

暴走(オーバードライブ)を防ぐため、プログレスバレッターを外しておく。

 

((このまま終わるのか…!?))

 

必死にもがく俺を、彼は何処か神妙な顔で見ていた。

何故、そんな顔をするんだ…?

 

「「レッド!!」」

『総二様!』

 

やべぇ、このままじゃ握りつぶされちまう。

だがこの力、そう簡単には脱出できそうにない。

 

(何か策はないのか?)

 

☆☆☆

 

「こいつは厳しいみてぇだな」

「だからって、勝手に出たらあかんで。ややこしいだけやから」

 

伊織たちの基地にて、留守番の2人は前方のモニターで確認していた。

状況は最悪、これほどまでに厳しい戦いは久しぶりかもしれない。

現にインターネット上では、テイルレッドに対する応援のコメントが寄せられていた。

 

「相変わらずテイルレッドだけか… 寂しい世界だな」

「それが『ヒロイン』の定め、ってことやな」

 

目線をパソコンのモニターから動かさずに、唯乃の独り言に答える。

 

「心配じゃねぇのか?」

「……」

 

没頭したのか、もう彼女には何の音にも反応しなくなった。

それほどまでに重要なことなのか…

 

(にしても伊織の奴、遅いじゃねぇか。何処で道草食ってんだか…)

 

頭を掻きつつ、会議室(ブリーフィングルーム)を後にした。

 

☆☆☆

 

「ここは一体どこなの…?」

 

私は迷っていた。

転送装置(ゲート)で無事に転送は、できた。

問題は、現場から離れた場所に指定されていたことだ。

 

(さっきから、同じ道を通っている気がする…)

 

加えて、私が方向音痴であることが助長した。

かれこれ20分くらいは迷っているはず。

せめて、看板でも立っていたら…

 

「体力はある程度回復したけど、これじゃ日が暮れる」

 

たま~に自動販売機があるので、喉が渇くことはない。

でも、いつまでもここにいるわけにも---

 

「遅ぇと思っていたが、まさか本当に道草食ってたとはな…」

「ぃ、いひゃいよ、ゆひのぉ~」

 

急に頬を引っ張られた。

横目に見れば、それは唯乃の手だった。

 

「すぐそこじゃねぇか! 何処をどう間違えたらそうなる!?」

「本当に迷ったんだってば…」

 

彼女はかなり御立腹の様子である。

私は腫れた頬をさすりながら、そう答えた。

 

「まぁいい、とっとと変身しろ。俺様が行かせてやる」

(えっ!?)

 

『逝かせて』の間違いじゃ…?

しかしこれ以上、彼女を怒らせるわけにもいかないので従った。

その後、後ろを向くよう指示された。

 

「えっと、唯乃さん…? って、ギニャーッ!?」

「行ってこい!!」

 

思いっきり蹴飛ばされた。

容赦しないね、彼女。

 

(ここ最近、ろくな事がないよ…)

 

眼下に広がる町の風景を眺めながら、私はそう思い返していたのだった。

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