会議室に喚声が上がる。
会議室中央に映し出されているのは、危機に陥ったスワンギルディを救ったところである。
「やるではないか。最初に現れないと思えば、全滅を回避するためであったか…」
「まさかランスを止めるなんて… 一体何処でそんな力を?」
会議室中のエレメリアンのみならず、
だが1体、この映像を異なる見方をしている者がいる。
「あの力は、やはり"師範"の… これでますます面白味が増すね」
壁際で腕を組み、ニヤリと笑った。
「これなら、ツインテイルズに勝てる!!」
「行けー、ライオギルディ!!」
皆が盛り上がる中、隊長と副官はこの事態の静観に徹底した。
☆☆☆
「
そう高らかに宣戦布告するライオギルディだが、面倒くさそうに話しているのでいまひとつやる気が見えない。
こいつ、本当に闘う意志があるのか?
襲撃を危険視したのか、ブルーはウェイブランスを解除した。
なので、彼の手にそれは握られていない。
「待て、ライオギルディ。お前では、ブルーに殺されr---」
「お前は黙っていろ」
今だオーラピラーに拘束されて、動けないでいるスワンギルディが止めようとするが、彼に軽くあしらわれてしまう。
敵である俺達に背を向け、彼はスワンギルディの方へ向かう。
(何をする気だ…?)
彼の前に立つと、右腕を彼に構えた。
手の平を広げつつも、指先は半分ほど曲げている。
まるで、何かを鷲掴みにするみたいな。
「お前、一体何を---」
「だから黙れと言ったろ!」
怯えるスワンギルディに対し、ライオギルディは手の平を地面に叩きつける。
その衝撃でスワンギルディ周辺の地面に亀裂が生じ、大きく崩壊し始めた。
安定した足場を失ったため、オーラピラーは効果を急速に失った。
結果、スワンギルディはよろめきながらも脱出に成功した。
『そんな…!? いくらエレメリアンでもオーラピラーはそう簡単に壊せないはず!!』
トゥアールも通信を通して、驚きを隠せないでいる。
だけど、今目の前でそれが起こった。
ここまで掟破りなエレメリアンに出会うのは、俺も初めてだ。
「どうやって、この捕縛陣を…!?」
「無駄口叩く暇があったら、さっさと離脱しろ!」
負傷しているスワンギルディに、顔面を鷲掴みにするライオギルディ。
片手でエレメリアンを持ち上げるなんて、かなりのパワーがあるぞ。
「(スワンギルディに就いた部隊は、撮影隊を除いて全滅か…)おい、一中隊はスワンギルディを護衛しつつ、基地に帰還しろ!!」
『モケケ-ッ!!』
また別の戦闘員が現れ、スワンギルディを何処かに連れて行った。
こいつ、戦闘馬鹿と思っていたが、実際は幹部クラスか!?
「さて、これで堂々と戦える」
「「……」」
指を鳴らし、ウォーミングアップを行うライオギルテディ。
「レッド、ブルー… 楽しもうじゃないか」
彼は構える。
そして、大地を蹴った。
「最も---」
俺達の向こう側にいたはずの彼は消えた。
しかし気付いた時には、隣にいるブルーの腹に拳が入れられていた。
「ガッ…!?」
「ブルーッ!!」
「こちらの言い分を聞かない奴は、容赦しない」
身体をくの字に折り曲げられたまま、病院の壁に飛ばされる。
間を空けずに、ライオギルディはそばにある乗用車を片手で掴み、ブルーに投げ込んだ。
そして彼女は、壁と乗用車にサンドされてしまった。
「さぁ、次はレッド… お前だ」
「……」
『総二様、早く逃げてください!! このエレメリアンは危険です』
勝てる訳がない。
逃げるにしても、あのスピードではすぐに追い付かれる。
フェニックスギルディとは別の恐怖が俺を襲う。
「どう料理しようか… ぬっ?」
突如、上空から弾丸の雨が降ってきた。
これは---
「ご無事ですか!?」
「イエロー!!」
助かった!!
空中から援護射撃をしてくれたのか。
「レッド、ご無事でなによりです」
「テイルイエロー… 水を差すな!!」
イエローは俺の無事を確認して安堵した。
しかし突然の乱入で、ライオギルディは御立腹のようだ。
「ところで、ブルーはどちらに?」
この疑問は、俺の心に深くえぐっていく。
あの惨劇がまだ残っているからだ。
「ブルーは---」
「ブルーなら、そこで寝ている」
中々切り出せずにいる俺の代わりに、ライオギルディが答える。
彼の指の先は、先程投げ込まれた乗用車を指している。
イエローは瞬時に理解はするが、その事実を認められない。
「そんな… 嘘ですわ。ブルーが倒されるなんて」
「……」
俺は何も言えなかった。
否定も、慰めさえも。
俺の身体的能力、そして機転の利かなさを呪った。
「---許しませんわっ!!」
涙を目尻に貯めた彼女は、倒した本人に容赦ない攻撃を浴びせる。
普段の乱れ撃ちではなく、一点集中砲火である。
その威力は凄まじく、ライオギルディ周辺を爆煙に包み込んだ。
「ブルー、仇は討ちまs---」
「生死確認は怠るなっての」
その答えは、俺達の上空から出てきた。
全身に土埃を被せてはいるが、ほぼ無傷。
「面白いもの見せてくれたお礼だ」
またも薄気味悪い笑みを浮かべると、吼えた。
大気を振るわせる攻撃は、確実に俺達を狙ってやがる。
「チッ…!」
辛うじて、横へ跳んだ俺は回避できた。
だが、武装を詰め込んだイエローはその重さ故にそれができなかった。
「無事か!?」
「えぇ… しかし、武装の大半は使用不可となりましたわ」
彼女の周りに散らばる武装を見れば、小さく放電しているものが多い。
これでは、満足には使えないだろう。
「"獅子咆哮"… 俺の技の一つだ。貴様らがどの
俺達の後ろに着地したライオギルディは、俺達を見ずにそう自慢げに話す。
確かにどの
恐らくあれは、遠吠えのごとく空気を震わせて相手に攻撃を与える技。
両
(可能性があるとすれば、
俺は数少ない希望にすがろうとした。
「行くぞ、レッドォ!!」
迷いもなく、真っ直ぐ俺に突っ込んでくる。
もう目と鼻の先という距離まで詰められたとき、何かが両者の間を埋めた。
「「!?」」
その前に危険を本能で感知したのか、俺は自然に後ろに下がっていた。
見れば、それはボディが酷く破損した
「ィ、イエロー!?」
更にその自動車の前には、ほとんど戦えない状態だったはずのイエローがいた。
しかも、何気に構えながら。
「レッドには、指1本触れさせませんわ!!」
その決め台詞と共に、乗用車を蹴り上げる。
何処にそんな力が、と思っていたがそれはすぐに理解できた。
右太腿のホルダーにボルティックブラスターが装着されている。
ならば、答えは明白。
"
「グヌオゥ!?」
乗用車は上手くライオギルディを巻き込んだみたいだ。
しかし、ただやられる彼ではなかった。
「ケッ、甘く見るn---」
自慢の拳で乗用車を粉々にしたが、更に驚きの顔をした。
彼を青い線が貫いたからだ。
まともに喰らった彼は、着地できずに落下した。
「それは私の台詞よ… 私は案外、タフなんだから」
うつ伏せになっているブルーが、誇らしげに言った。
あの状態から、"エグゼキュートウェーブ"を放ったのか…
彼女の気合いもそうだが、ブルーとイエローのコンビネーションもスゲェ…
「なめてたぜ。それで性格が少し丸けりゃな…」
右肩を押さえつつ、ライオギルティは苦笑いをした。
あの変格的な攻撃ですら、奴を倒しきれなかったか…
だけど、これで道筋は付けられたかもしれない。
「あの絶望的な状況でよく…」
『これで3人揃いましたか。しかし、それでも状況は好転するかどうか…』
ん、3人?
そうか、あの手が使える!!
"
俺は
破損したイエローの武装は、普段よりも遅めにだがユナイトウェポンを形成する。
「無茶ですわ! わたくしの傷付いた武装では、十分な威力は出ませんわ!!」
『撃てば、こちらが吹き飛ばされる可能性が高いです! お止めください!!』
イエローとトゥアールが止めにかかるが、あえて無視した。
たまに強引にしなければ、開かれない道だってあるんだ!!
「奴を怯ませれば、それで十分だ。後は俺一人で倒す!!」
今までおじけついて戦えなかった分を、取り返す。
ブルーやイエローに戦わせてばかりするわけには、いかない。
「"フュージョニックバスター"、ファイアーッ!!」
放たれた大質量の光線はライオギルティを襲った。
なんとか上手く発動できたが、トゥアールの言う通り長くは持たなかったようだ。
発射前に生じていた放電は大きくなり---
「「きゃああぁっ!!」」
『ブルー、イエロー!?』
思いっきり壊れてしまい、破片がブルーとイエローを襲った。
だが俺は、破片を掻い潜った。
どうやって?
"
スピードに特化した形態変化を行い、低姿勢で接近する。
ブレイザーブレイドはもう1本ある。
まだ、倒す手段はあるんだ!!
「ツインテールの底力、見せてやる!」
ライオギルディが見えないほどの高速移動を行いつつ、全方位からの連続攻撃を放った。
彼は構える顎を守るように両手を交差させ、防御に集中している。
(これなら押し切れる!)
「"オーラピラー"!!」
止めを刺そうと、彼を完全に封じ込めに入る。
防御体勢にあった彼は、回避することなく受けた。
「なるほど… 確かに動けねぇなぁ」
彼は余裕の表情を見せる。
すぐにその余裕をブッ飛ばす!!
「"ライジングブレイザー"!」
彼の正面を狙うため、上段にブレイドを構える。
「
"獅子咆哮"
まさか、オーラピラーを破壊する程の威力なんて…
オーラピラーを破壊したその技は、俺をも襲った。
それにより、俺はブレイドを降り下ろすタイミングがずれてしまった。
だが彼には、それで十分だった。
「あぅぅ…」
「埃まみれ、しかし何処か凛々しい顔… これでこそ、格闘家の顔だな」
ライオギルディは、左腕で俺の身体を掴んだ。
かなりの力で掴んでいるのか、身体が悲鳴をあげている。
両手でブレイドを掴んだままだったので、全く動けないわけではない。
((このまま終わるのか…!?))
必死にもがく俺を、彼は何処か神妙な顔で見ていた。
何故、そんな顔をするんだ…?
「「レッド!!」」
『総二様!』
やべぇ、このままじゃ握りつぶされちまう。
だがこの力、そう簡単には脱出できそうにない。
(何か策はないのか?)
☆☆☆
「こいつは厳しいみてぇだな」
「だからって、勝手に出たらあかんで。ややこしいだけやから」
伊織たちの基地にて、留守番の2人は前方のモニターで確認していた。
状況は最悪、これほどまでに厳しい戦いは久しぶりかもしれない。
現にインターネット上では、テイルレッドに対する応援のコメントが寄せられていた。
「相変わらずテイルレッドだけか… 寂しい世界だな」
「それが『ヒロイン』の定め、ってことやな」
目線をパソコンのモニターから動かさずに、唯乃の独り言に答える。
「心配じゃねぇのか?」
「……」
没頭したのか、もう彼女には何の音にも反応しなくなった。
それほどまでに重要なことなのか…
(にしても伊織の奴、遅いじゃねぇか。何処で道草食ってんだか…)
頭を掻きつつ、
☆☆☆
「ここは一体どこなの…?」
私は迷っていた。
問題は、現場から離れた場所に指定されていたことだ。
(さっきから、同じ道を通っている気がする…)
加えて、私が方向音痴であることが助長した。
かれこれ20分くらいは迷っているはず。
せめて、看板でも立っていたら…
「体力はある程度回復したけど、これじゃ日が暮れる」
たま~に自動販売機があるので、喉が渇くことはない。
でも、いつまでもここにいるわけにも---
「遅ぇと思っていたが、まさか本当に道草食ってたとはな…」
「ぃ、いひゃいよ、ゆひのぉ~」
急に頬を引っ張られた。
横目に見れば、それは唯乃の手だった。
「すぐそこじゃねぇか! 何処をどう間違えたらそうなる!?」
「本当に迷ったんだってば…」
彼女はかなり御立腹の様子である。
私は腫れた頬をさすりながら、そう答えた。
「まぁいい、とっとと変身しろ。俺様が行かせてやる」
(えっ!?)
『逝かせて』の間違いじゃ…?
しかしこれ以上、彼女を怒らせるわけにもいかないので従った。
その後、後ろを向くよう指示された。
「えっと、唯乃さん…? って、ギニャーッ!?」
「行ってこい!!」
思いっきり蹴飛ばされた。
容赦しないね、彼女。
(ここ最近、ろくな事がないよ…)
眼下に広がる町の風景を眺めながら、私はそう思い返していたのだった。